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2021年 11月 25日
今日の渋谷は良く晴れて気温も低めです。 さて、どんどん試訳を続けます。いまから10年前の古い記事ですが、某教育機関で学生に読ませるものとしてはよくまとまっているので訳してみました。 === By ダニエル・スイフト 2011-11/1 NY Times 今から100年前の今日、伊土戦争(1911-12年)において、イタリア人飛行士ジュリオ・ガヴォッティが単葉機から3つの手榴弾をトリポリのすぐ東に位置するアイン・ザラのアラブ・トルコ軍のキャンプに投下した。これが世界初の空爆であった。この時の手榴弾の重さは1個3ポンド(1.5キロ)で、誰も負傷しなかったと思われる。ガヴォッティ中尉は父親に「結果にとても満足して帰還したよ」と書いている。イタリアの新聞はこの出撃を絶賛した。「恐れをなしたトルコ人が逃げ惑った」というのだ。 空襲はこのようにささやかな形で始まり、そこから戦争の一つの型として、規模も想像力も拡大していった。H.G.ウェルズのような大衆小説家は、19世紀後半から飛行船や空飛ぶ機械による戦争を空想していた。 第一次世界大戦が始まると、こうしたSFの世界にあったシーンがが、実際の政策評価の中で繰り返されることになった。軍の計画者たちが「空爆による戦争の勝敗は絶対的かつ即時的なものである」と想定しはじめたからだ。 1914年、ドイツ海軍参謀本部の副長官パウル・ベンケ少将は、ロンドンの官庁街の政府機関の建物が空襲されれば、「住民にパニックを引き起こし、戦争が継続できるかどうかを疑わせることができるかもしれない」と指摘していた。 1915年1月に空襲が始まった。そして終戦までにドイツの飛行船がイギリスに投下した爆弾は6,000発に上り、556人の死者を出した。 1917年にヤン・スマッツ元帥は「敵地を破壊し、産業や人口の中心を大規模に破壊する航空作戦が、戦争の主要な作戦となる日はそう遠くないかもしれない」と予言した。 爆撃は常に戦争を変えるものと約束されていた。1920年代にはアメリカ空軍の生みの親であるビリー・ミッチェルが「継続的な攻撃によって敵の陸軍を疲弊させるという、退屈で費用のかかる方法はもはや無駄となった」と議論した。そして爆撃は「戦争状態の改善と向上」をもたらすに違いないと主張したのである。 航空戦力の最も熱心な推進者は、第一次世界大戦の塹壕戦の記憶に悩まされていた。詩人のウィルフレッド・オーウェンは、「二重に曲がって、袋の下の老いた乞食のように、膝を折って老婆のように咳をして、我々はヘドロの中を罵った」という有名な文章を残している。オーウェンは空兵になりたかったが、他の多くの人々と同様に、フランスの地で兵士として戦死した。「ソンムの戦い」の初日だけで57,000人以上のイギリス兵が犠牲になったのだ。 「あのような戦いほど恐ろしいものはない。戦争をしなければならないとしたら、泥の中よりも空の方がましだ」という考えだ。 1942年5月30日、英国空軍はドイツの都市ケルンに初の1,000機規模の爆撃機による空襲を開始した。その2週間後、爆撃機司令部のアーサー・ハリス司令官は、ウィンストン・チャーチルに手紙を出して、さらに多くの爆撃機部隊の増強を要請した。彼はイギリス軍を「フランドルやフランスの泥沼」での虐殺から守るための唯一の方法がこれだ、と主張したのだ。 1943年1月のカサブランカ会議で、ルーズベルトとチャーチルは共同で爆撃作戦を行うことに合意した。1944年7月から1945年4月までの間に、この英米合同作戦は合計100万トン以上の爆弾をヨーロッパに投下した。 その後も戦争は続き、爆撃も続いた。1950年から1953年の間に、アメリカは63万5千トンの爆弾と、3万2千5百トンのナパームを朝鮮半島に投下した。 歴史家のブルース・カミングスはこう言っている。「朝鮮戦争は、第二次世界大戦中に空軍が唱えていた火炎放射は敵の士気を低下させ、戦争を早期に終結させるという言葉を再現させようとしていたのである」。 そしてこのような希望的観測が、戦略を決定し続けた。 1965年2月13日、ジョンソン大統領は「ローリングサンダー」という爆撃作戦の開始を命じた。マクスウェル・テイラー元帥は、「ゆっくりだが確実に北上する空爆の嵐によって、ハノイ政府に、ハノイ周辺のすべてが破壊されると信じ込ませることができる」と想像した。 たしかに爆弾がこれらの戦争の終結を早めたのかもしれないが、それでも確実なことは分かっていない。しかし、爆弾の投下によって「ベトナム戦争がきれいになった」とか「朝鮮戦争が効率的になった」などと主張する人はいないだろう。 爆弾投下の歴史は、同時に、民間人犠牲者の歴史でもある。爆弾の投下は、他の生命を犠牲にして味方の兵士の命を救うものだからだ。空爆による民間人の死の統計は常に不確かであるが、第二次世界大戦中、連合軍の空襲によってドイツの民間人がおそらく50万人は死亡したと言われている。ローリングサンダー作戦では、18万2千人の北ベトナムの民間人が亡くなったと推定されている。 それにもかかわらず、私たちは爆撃についてのユートピア的な考えに基づいて戦争を形成し続けている。たとえば2011年3月にはNATOの空爆作戦が始まったが、これはフランスの飛行機がベンガジ郊外のリビアの戦車を爆撃し、10月20日にムアンマル・エル・カダフィ大佐が亡くなるまで続いた。アメリカのドローン「プレデター」と、フランスの戦闘機が上空を飛んでいたが、かつての指導者を捕らえたのは地上のリビア軍兵士だった。 空爆は、過去からの逃避として設計された、戦争の一形態である。だが新たな紛争が起こるたびに判明するのは、「コストのかからない勝利」と「クリーンな戦争」を約束してきた空爆の長い歴史に新たなエピソードが加わっているに過ぎない、という点だ。 空軍力で楽になったと思われる紛争の例もあるが、逆に空軍力で複雑化・激化した戦争の例もある。リビアでの紛争は、NATOの空軍力がなければはるかに血なまぐさいものになっていたことは間違いないが、アフガニスタンやパキスタンでの「プレデター」や「リーパー」という無人機による空爆は、反米感情を巻き起こすきっかけとなったのだ。 空爆というのは予測不可能な手段であり、その最大の危険性は「安易に戦える」と勘違いさせることであり、私たちを回避できたかもしれない戦争に引き込むことにある。その意味で、爆撃はテクノロジーへの信頼の象徴であると同時に、私たちが過去に囚われていることの証でもある。 今年(2011年)の夏、NATO軍機がアイン・ザラ(現在のトリポリ郊外)を爆撃した。最初の爆撃から100年たった後、私たちは最初の場所に戻ってきたのだ。 ==== エアパワーの限界点を指摘した、実によくまとめられた議論です。これはリーディングマテリアルとしても使えそう。 主にアメリカからの視点で書かれているわけですが、一つ前のエントリーと共通して見えてくるのは、「政治的に使いやすい」ものが本当に戦略的な効果を発揮するかというと大きな疑問が残る、ということですね。 (台湾が見える中学校) ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-11-25 17:39
| 戦略学の論文
2021年 11月 23日
今日の横浜北部は久しぶりに快晴でした。日々気温が低くなりつつあると実感します。
さて、今日も試訳を載せます。あくまでも試訳なので、誤字脱字、誤訳等はご了承ください。 アフガニスタン撤退を受けたのドローン作戦についてアメリカはやり方を変えるべきだとするテロ専門家のクローニンの意見です。 ==== 21-10/14 フォーリン・アフェアーズ誌 By オードリー・カース・クローニン アメリカ兵はアフガニスタンから撤退したが、米軍と諜報機関はそうではない。ジョー・バイデン大統領が明らかにしたように、米国はアフガニスタンで敵を排除するための無人機攻撃を継続する。 バイデン大統領は8月末に軍の撤退を表明する際に「アフガニスタンやその他の国でテロとの戦いは継続します」と宣言している。「私たちは、無人機を含めた "Over-the-Horizon "と呼ばれる能力を持っており、現地の地上にアメリカ人の兵士がいなくても、テロリストや標的を攻撃することができるからです」というのだ。 バイデン大統領の計画はたしかに論理的であり、必要なものであるとも言えそうだ。アフガニスタンではまだ多くの反米テログループが活動を続けており、地上に軍隊がいなければ、アメリカ政府は潜在的な敵を殺すために武装した無人航空機に頼らざるをえなくなる。 これは悲劇的な皮肉である。無人機による攻撃への依存度を高めることで、アメリカはアフガニスタンでの戦略的敗北で大きな役割を果たした戦術を採用せざるをえないことになるからだ。20年に及ぶアフガニスタンでの戦争において、米国の政策立案者たちは、アフガン国民軍の弱点、アシュラフ・ガーニ大統領の政府の弱点、実行可能な出口戦略の不在などについて考えて取り組むのを先送りするために、ドローン攻撃のような短期的な作戦を用いてきたからだ。 バイデン大統領はこの失敗を引き継いだ。彼の3人の前任者は、いずれも武装した無人機を積極的に使用し、地域的(国際的)な政治的反発を招いた。もし彼がその伝統を引き継ぐならば、バイデンは問題を悪化させるだけだろう。彼はその代わりに、継続的な「人狩り」から脱却し、殺傷力のある無人機を使用するのはテロリストによる攻撃が差し迫っているという明確な証拠がある場合に限定すべきである。 米国は、その意思決定とドローン攻撃の結果について、より透明性を高め、罪のない犠牲者に補償を行うべきである。さもなければ、アメリカは必要のない暴力の連鎖を続けることになる。 無人機は何百人もの罪のない民間人を殺害しており、最近では米国の援助団体で長年働いていたゼマリ・アフマディ氏とその家族9人が犠牲になった。誤爆、特に子供への攻撃は、地元住民を怒らせ、過激派が新たなメンバーを集めることにつながってしまう。 テロリストのリーダーに対する「斬首攻撃」が何年にもわたって行われてきたにもかかわらず、ある試算によると、現在、世界中のイスラム過激派の数は911事件当時の数の4倍以上になっているという。 ▼殺害中毒 2001年10月7日の夜、CIAの無人機プレデター3034号機がウズベキスタンからアフガニスタンに飛来した。ヘルファイア・ミサイルを搭載したこの機体は、カンダハールの屋敷にいたタリバン最高司令官ムラー・オマルを攻撃した。しかしミサイルは外れ、代わりにボディガード数人が死亡した。アメリカのドローンが直接暗殺に使われたのは、このときが初めてだった。 翌月には、CIAのプレデターが40箇所以上のタリバンやアルカイダの標的を攻撃した。ジョージ・W・ブッシュ政権末期には、パキスタンを中心に60回近い無人機による攻撃が行われた。 2001年に制定された「軍事力行使のための権限」(AUMF)に基づき、ブッシュ大統領はこの活動を小規模かつ秘密裏に行っていたが、パキスタンの辺境地域に住む人々はこの活動を知っており、兵器への恐れを抱きはじめていた。 新たに就任したバラク・オバマ大統領は、ドローン作戦の計画を拡大した。2009年から2017年の間に、指定された戦争地域以外での攻撃回数は10倍の563回に増え、少なくとも4人のアメリカ国籍の人間が死亡した。アルカイダの指導者の名前がヒットリストから外れると、兵士や運転手、メッセンジャーが空いた枠を埋めるようになった。 やがて政権は、特定の個人を狙う「パーソナリティ・ストライク」から、全般的なプロファイリングによってターゲットを選定する「シグネチャー・ストライク」へと移行していった。このシステムでは、怪しげな訓練所や邸宅にいる身元不明の軍人年齢の男性らはすべてが対象として狙われることになる。 オバマ大統領は無人機の使用を拡大したが、ブッシュ政権下のシステムよりも規制されたシステムを構築しようとした。 オバマ政権は、ターゲットの選択を厳しく管理した。 パキスタン、ソマリア、イエメンなどに潜むテロリスト容疑者は、「テロの火曜日」と呼ばれる国家安全保障会議を頂点とする省庁間のプロセスによって、アメリカ人に「継続的かつ差し迫った脅威」を与えていると判断される必要がでてきた。政権は、世論の圧力が高まりに屈して攻撃データを公開した。そこでは戦闘地域以外でのドローンの使用が増えたことで、2009年から2017年の間に推定606人の無実の人が亡くなったことが判明している。 大統領に就任したドナルド・トランプは、ドローンによる攻撃のペースをさらに上げた。彼はオバマ政権時代の規制を一掃し、ターゲットの決定をCIAの工作員や軍の司令官に委ねたのだ。 トランプ政権は、特に民間人の成人男性を殺害する際の基準を下げ、差し迫ったテロ攻撃との関連性がより希薄な場合でも攻撃を許可するような規則を密かに通達した。 トランプ大統領は、民間人が犠牲になった事例を調査して賠償金を提供することを各機関に義務づけたオバマ政権後期の画期的な大統領令を撤回した。司令官たちは、テロ組織の末端の戦闘員に対する一方的な空爆の回数を増やし、米国が直接関与していない紛争でもパートナー軍を保護する攻撃を命じた。 トランプ政権は、2020年の最初の6カ月間にソマリアだけで40回の無人機攻撃を行ったが、これはブッシュ政権とオバマ政権の16年間にソマリアで行われた合計41回の攻撃と比肩しうるものだ。 バイデンが大統領就任後に行った最初の国家安全保障上の措置の一つは、ドローンのプロセスに対するホワイトハウスのコントロールを復活させることであり、米軍や諜報機関が攻撃を行う際の新しいルールを提示することだった。 2021年の最初の半年間は、ドローンによる攻撃は行われなかった。しかし、ジェイク・サリバン国家安全保障アドバイザーは、新しい手続きは「暫定的なガイダンス」であると述べており、省庁間の完全なレビューは継続的に延期されている。 その一方で、バイデン政権は証拠能力の基準を引き上げる恒久的な指針をまだ出しておらず、米アフリカ軍は2021年7月末にソマリアで行われた、バイデン政権の無人機による最初の攻撃を「友軍のために行った集団的自衛行為だ」として正当化している。 ▼一歩進んで二歩下がる ドローン攻撃は、たしかにテロとの戦いには役立っている。海外の反乱分子を殺害することで、アルカイダやイスラム国(ISIS)などの指導者たちを空洞化させたことは間違いない。また、武装勢力の移動能力を阻害し、彼らの遠隔地での作戦を計画する能力を低下させた。機密解除されたデータがなければ、どれだけ多くの差し迫った攻撃が阻止されたかを正確に知ることはできないが、標的攻撃によって実際にアメリカ人の命が救われている。 しかし米国のドローンの配備方法は、その有用性を損なっている。オバマ政権下での斬首攻撃は、アルカイダをフランチャイズモデルへと分散させ、他の地域の紛争におけるスンニ派過激派の役割を増大させ、新たな組織を生み出すことにつながった。20年前と比べて、世界のテロ組織の数は増えている。 これらのグループは、ドローンを回避するために都市部に留まり、民間人とより密接に共存するなどの戦術を共有している。9.11事件以降、米国のテロ対策の主な目的は、世界的なテロネットワークを排除し、戦闘員の数を減らし、一般市民から切り離すことだった。しかし、米国は無人機キャンペーンにもかかわらず、あるいはそのせいもあってか、これらの目標を達成できていない。 今後、アフガニスタンで無人機が過去20年間よりも戦略的に成功すると確信できるような根拠はない。今後は米軍が目標を正確に特定して命中させることはさらに困難になるだろう。バイデン政権の当初の計画は「ガーニの許可を得てから攻撃を行う」というものだったが、ガーニが国外に逃亡し、政権が急速に崩壊したことで、それが不可能になった。 「トルコ軍が残って情報を提供する」という計画も、タリバンが彼らに撤退を迫ったことで頓挫してしまった。また、ドローンによる攻撃で誰を殺しすのかを特定したり、もしくは攻撃後に誰を殺したのかを正確に把握するために必要な情報を収集するための簡単な方法もない。 これは、米国が現場にいてもしばしば誤った標的を攻撃していたことを考えると懸念すべきことだ。例えば、8月29日にアフマディと彼の大人の家族2人、子供7人が誤って殺害された事件を考えてみよう。IS-Kの自爆テロで米軍兵士13人とアフガニスタン人170人が殺害された数日後に行われたこの攻撃は、最悪の反発を招いた。 アフマディは、避難民に食事を提供したり、大きな水の容器を持ち込んだりしていたが、オペレーターはそれを爆弾と勘違いした。作戦を指揮していたアメリカ軍の司令官は、標的が誰であるかを知らなかったにもかかわらず、この攻撃が非戦闘員に害を与えない「合理的な確実性」というアメリカの基準を満たしていると判断したと言われている。 ドローンによる攻撃が行われたとき、数千人の米軍兵士たちはまだ地上におり、米国防総省のジョン・カービー報道官によると、攻撃はカブール空港から行われたという。バイデンは、このドローン攻撃が大失敗だったことが明らかになる前に、この攻撃を「理想的なモデル」として挙げていた。 「我々はISIS-Kを遠隔操作で攻撃したが、それはISIS-Kが我々の軍人13人と何十人もの罪のないアフガニスタン人を殺害した数日後のことだった」と、バイデンは攻撃の2日後の演説で宣言したが、これは米国の「オーバー・ザ・ホライズン」能力を誇示した直後のことだった。 米国が現地に部隊を駐留させているときに、危険で目につきやすい状況でこのような重大なターゲティングでの誤りを犯したのであれば、米国の撤退後のドローンキャンペーンを楽観視することはできないだろう。 ▼清く中止せよ アーマディの悲劇を受けて、ホワイトハウスがドローンの使用方法を劇的に変えるかどうかは不明だ。これまでのところ、ホワイトハウスはさまざまなシグナルを発している。CIA長官のウィリアム・バーンズは、IS-Kのような共通の敵を攻撃する許可を得るために、パキスタンやタリバンとも協議しているし、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンに無人機を駐留させることについても議論を進めている。 また、カザフスタン、タジスタン、ウズベキスタンなどでもドローンの拠点化が検討されている。政権は、トランプ大統領の政策とオバマ大統領の政策のハイブリッドで、ドローンの標的ルールを各国の事情に合わせて調整する方向で動いているようだ。例えば、アフガニスタンやソマリアでは現地の司令官は自由にドローン攻撃を行うことができるが、それ以上の地域ではホワイトハウスの許可を得なければならないというものだ。 このようなハイブリッドなアプローチは、トランプ政権時代の最悪の行き過ぎを抑えることはできても、根本的な問題を解決することはできない。バイデン政権が本当に「テロとの戦い」という失敗した政策と決別したいのであれば、無人機の使用を劇的に減らすべきだ。 バイデン政権はまず、オバマ大統領が行ってきた「シグネチャー・ストライク」をやめ、すでに知られていて存在が確認されているターゲットのみを攻撃することから始めるべきだ。アメリカは知らない人を殺すのをやめなければならない。 もしそれを行う場合でも、アメリカ人に差し迫った被害があるという明確な証拠が必要だ。攻撃は、その国の事情に詳しくて政治的背景を見極めることができる現地の米国大使が承認すべきである(それに加えてそのすべての隣国は独自にドローンを持っている)。 アフガニスタンでは、米国は現地の確かな情報源や、中国、パキスタン、ロシア、さらにはイランなどの地域的な関係者と秘密裏に協力するべきである。彼らも自国のすぐ隣にテロリストがいる状態を嫌うからだ。 さらにバイデン大統領は、攻撃の地理的範囲を限定すべきだ。米国は、チャド、リビア、マリ、ニジェールなどの地域で殺傷力のある無人機を使用しているが、これらの地域では、米国本土やアメリカの同盟国に対して武力を行使する能力がない。このような状況が変わらない限り、バイデン氏はこれらの国での無人機攻撃を中止すべきだ。 米軍と情報機関は、民間人の死傷者数を明らかにし、その透明性を高める努力をしなければならない。ドローン攻撃に関する情報を公表し、矛盾が生じた場合には調査して説明するよう各機関に指示したオバマ政権の2016年の指針を復活させるべきだ。 また、ドローン攻撃が失敗した場合、米国政府は賠償金を支払うべきである。(アフガニスタンではタリバンによる占領後に駐留している国連アフガニスタン支援団と連携する必要がある) 。バイデンは、アフマディの家族に、連邦政府の費用で再定住と支援を受ける機会を与えることで、このプロセスを始めることができる。中央司令部の責任者であるフランク・マッケンジー海兵隊大将は、すでに謝罪し、米国は賠償を検討していると述べている。 バイデンは、アフガニスタン撤退に関するスピーチの中で「過去20年間、わが国を導いてきた外交政策のページをめくるにあたり、私たちは過ちから学ばなければなりません」とアメリカ国民に向けて語った。 この言葉を実現するためには、ただ軍を撤退させるだけでは十分ではない。政権は、延々と続く無人機による攻撃を止めなければならない。無人機による攻撃は、あまりにも多くの民間人を殺し、米軍や情報機関を多くの戦いに巻き込み、アメリカ人を守るためにはほとんど貢献していないからだ。 ==== 無人機というエアパワーの一部は使用者側には犠牲者がほとんどでないため「政治的」なコストがかからず、言葉は微妙ですがいわば「クリーン」というか「綺麗な戦い方」ができるために使いやすく、戦術的にも効果があるわけですが、かえってそれが「戦略的」に逆効果になっている事実を指摘している点がこの論文のポイントですね。 リベラルな社会であるアメリカも、実際には中東やアフリカなどで現在も現実的な「汚い戦争」を戦わなければならないわけですが、それを「クリーンな戦争」として社会的に受け入れられるもの、もしくは「見えないもの」として隠せることは、その倫理的な部分も含めて、本来ならば連邦議会などで徹底的に議論しなければならない議題ですね。 (最西端の碑) ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-11-23 23:42
| 戦略学の論文
2021年 11月 22日
今日の和光市駅前は曇っておりまして、すでに雨が降っていたような形跡もあります。
さて、引き続き試訳を掲載します。意見記事を書いたのはオーストラリアの元外相で「北京ボブ」との別名を持つボブ・カーです。オーストラリアが中国に無用に対立することを諌める内容になっておりますが、北京寄りの視点からの意見であるという前提で読むと色々と見えてきて興味深いものです。 === 21-11/17 SMH by ボブ・カー 自制(Restraint): この言葉こそが台湾に関してオーストラリア外交が唱えるべき「マントラ」だ。 この言葉は、オーストラリアの首相が発するすべての声明の最初と最後に使われるべきものだ。なぜなら70年間外交が抑制してきた神経質な問題をめぐって世界の超大国同士が戦争に突入することは、打ちひしがれ傷ついた地球にとっても最悪のことだからだ。 そしてこれは、オーストラリアが最も議論を避けるべきことでもある。このような衝突で核戦争が行われる可能性は不気味なほど高い。アメリカの施設を豪大陸に設置することで、われわれはオーストラリアを標的にしてしまったのだ。この理由だけでも、オーストラリアは平和の陣営に移るべきであろう。 もう1つの理由は、アメリカはこと中国に関しては常に我々を置き去りにすることができるからだ。たとえばホワイトハウスは習近平との間に交渉に基づく新しい関係を築くと突然言い出している。だからこそ、2つの大国の間での外交に力を入れるべきなのだ。 というのも、アメリカの同盟国の中で唯一オーストラリアだけが「いざ対決となれば(おそらく最初の1週間以内に)加勢する」と言っており、これは危険な状態にさらされることになる。 まるでオーストラリア戦略政策研究所や国防省の廊下で、タカ派の人々が第一次世界大戦の兵隊募集曲である「オーストラリアは共に戦う」( Australia Will Be There)を口ずさんでいるかのようだ。 豪外務貿易省は、オーストラリアがどのように戦争回避に貢献するかについて、厳密な分析を行っているのだろうか?あるいは、オーストラリアの外交官は完全に傍観者となったり左遷されたりしているのではないだろうか?という疑問が湧いてくる。スコット・モリソン首相とピーター・ダットン国防相が賛同できるような、別の外交シナリオを作成することはそれほど困難なことではない。 すべての人に自制を求めることから始めるべきだ。とりわけ非難すべきは、紛争解決のための武力の行使だ。平和と安全を維持するため、国連安全保障理事会に役目を果たすように促すのだ。そして1954年から55年、1958年、1995年から96年の危機において、台湾をめぐる戦争を回避するために外交的な言葉を用いてきた双方の歴史的な「自制」を称賛するのだ。 その上で、中国と米国に、大惨事への偶発的なスライドを回避するために双方が使用すべき「ガードレール」(防護柵)と「オフランプ」(高速道路の出口)を思い出させるための、精力的な水面下の外交を展開すべきだ。 キャンベラは、内閣の国家安全保障委員会に文書を提出して、わが国の指導者たちに「ガードレール」と「オフランプ」を提唱するよう要請する必要がある。つまり、戦争への転落を避けるための現実的な対策を、ワシントンと北京に迫るのだ。 オーストラリア国立大学のブレンダン・テイラー教授は、著書『危険な10年』の中で、「両岸の現状維持(cross-strait status quo)と呼ばれる驚くほど単純な取り決めによって平和が保たれてきた」と書いている。テイラーによれば、この言葉こそが北京、台北、ワシントンが海峡の安定を維持するために交わした一連の暗黙の約束を包括したものだという。 たとえば、台湾は正式な独立宣言をさせない。そして北京は台湾を「省」と呼ぶことができる限りこの地方のルールの現実に耐えられる。米国は、台湾が独立宣言をしないように説得し、いかなる侵略に対する反応についても「戦略的曖昧さ」を保つのである。 この現状は意図的に曖昧にされている。そしてこれには、すべての側の行動の「レッドライン」を認めることが含まれる。 わがオーストラリアの国防大臣は、まるでわが国の関与が確実であるかのように語っているが、フリゲート艦と数機の哨戒機を派遣したところでいかなる結果にも微塵も影響を与えないという現実は、ポール・キーティングの言葉を借りれば「山に爪楊枝を投げつける」ようなものであることを忘れている。 しかし、コメンテーターのアラン・デュポンによれば、それがたとえ小規模なものであっても、オーストラリアが軍を派遣すれば、中国はダーウィン港、ティンダル空軍基地、アリス・スプリングス近くのパインギャップにある共同防衛施設など、北部の防衛インフラをミサイルで狙うことになるという。 デュポンは最近ASPIで発表した論文の中で、「北京がオーストラリアを核兵器で脅すことも考えられる。その目的は、台湾側に介入しようとするアメリカとオーストラリアの努力を阻止、あるいは混乱させることであろう」と書いている。 これまで、わが国の外交政策の中心は、わが国の繁栄と安全に対する脅威のためにこのような紛争を防ぐことにあった。しかし今、国防大臣は「オーストラリアの自動的参戦」という新しいドクトリンを暗示しているように見える。 2016年に発表されたランド研究所の研究では、「深刻な」レベルの米中衝突だと、最大で1年続くとシミュレーションされている。そして双方ともに「非常に大きな」軍事的損失を被ることになり、どちらも決定的な軍事的優位性を確立することはできないというのだ。中国の貿易をすべて遮断すれば、世界は不況に陥る。ランド研究所によると、中国がアメリカに報復的なサイバー攻撃を行った場合、アメリカは最大で9,000億ドルの損害を被る可能性があるという。 タカ派の人たちは、中国に対する勝利がどのようなものになると想像しているのだろうか?1900年のように同盟国が北京に進軍し、冬の宮殿を略奪するのか?2003年のバグダッドのように、毛沢東の銅像を打ち倒すのだろうか?アメリカの占領軍は路上爆弾を避けつつ、山東省とその1億人の人口を占領するのだろうか? イラクとアフガンの勝利を計画していたペンタゴンには、そのようなアイディアは存在しない。ASPI をはじめとするオーストラリアのタカ派の人々にも考えはない。なのに「オーストラリアは共に戦う」というのだ。 私たちが必要としているのは、自分たちのリーダーたちに、北京とワシントン(と東京)との間で、口うるさい外交を展開する機会を与えることだ。なぜならオーストラリアは「不可避の紛争」を予言する受動的な予言者ではなく、それを避けるために不可欠となる中堅国だからだ。 それともわれわれは夢遊病者のように戦争への道を歩んでいるだろうか?オーストラリアは共に戦わなければならないし、戦うことになるだろう。なぜなら創造的な中堅国として平和を築く外交官になることはあまりにも難しく、それとは逆に「錆びついた全天候型の同盟国」であることはあまりにも簡単だからだ。 ==== 色々と詩的な表現を使っておりますが、基本的にすべての勢力に「自制」をうながして、少なくともオーストラリアは台湾有事に(無意味だから)介入するなということですね。 残念なのが、このような議論をしても著者本人には立場的にもう信頼性がないという点ですが。 (ロケ地) ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-11-22 14:27
| 戦略学の論文
2021年 11月 16日
今日の横浜北部は午後から快晴になりました。 さて、毎日続けていきましょう。今日はナショナル・インタレスト誌に掲載された、トランプ政権の元閣僚による意見記事です。 ===== 21-11/11 National Interest by ロバート・ウィルキー 欧米の思想の一部には、台頭する中国が地球上で最も支配的な国になることを運命づけられており、アメリカはそれを阻止することはできず、せめてわれわれが期待できるのは、劣等生として「衰退を管理することだけだ」という、ある種の悲観論が広まっている。 中国の習近平国家主席は、このような考え方を喜んで称賛するだろう。習近平は今年初め、中国共産党創立100周年を祝う演説の中で、共産党が「中華人民と国家の未来を変えた」と自慢しており、いまや「中国の国家的な再興は歴史的な必然となった」と述べている。 しかし、習近平がいくら胸を張っても中国は無敵ではないし、覇権を握ることが決まっているわけでもない。それどころか、中国は経済的にも人口的にも衰退の時代を迎えようとしており、習近平政権はその管理方法を知らないと言っても過言ではないだろう。 アメリカは脅威を明確に認識し、同盟国やパートナーと協調して対応することで、ソ連のように中国の崩壊を形作ることができるのである。 習近平は、自らを毛沢東や鄧小平と並ぶ革命的指導者だと考えている。そのためには、米国を世界最強の国の座から引きずり降ろさなければならないと考えているのだ。そしてそれを、昔ながらの方法で実現しようとしている。 習近平の外交政策は、古来からのやり方で太平洋の隣国から貢ぎ物を取ろうとしている。毛沢東がそうであったように、習近平もますます過激になることによって地政学的なチャンスを得ようとしている。 文化大革命では、毛沢東はインドに喧嘩を売り、ソ連に国境侵犯を仕掛け、北ベトナムに軍事的供給口を開いた。習近平は、インドに対して軍事行動を開始し、台湾、ベトナム、フィリピンを威嚇しようとし、日本を核で滅ぼすと脅し、西ヨーロッパとオーストラリアに対して、言葉と経済的な脅しをかけている。 アメリカは過去にもこのような状況に陥ったことがある。1946年2月22日、当時ソ連に駐在していた若きアメリカ人外交官ジョージ・ケナンは、国務省に秘密の電報を打った。ケナンは「モスクワは破壊、贈収賄、脅迫によって同盟国を弱体化させ、それから軍事的に完全に優位に立つことによって、アメリカを破壊しようとしている」と警告した。歴史上「長文電報」として知られるこの明晰な分析は、45年間にわたるモスクワの「封じ込め」と、最終的なアメリカの理想的な勝利の基礎となった。 今は1946年ではなく2021年だが、モスクワを北京に置き換えれば、「長文電報」は再び真実味を帯びてくる。ケナンの言葉を借りれば、中国は「わが国の外交がこれまで直面した最大の課題であることは間違いなく、おそらく今後も直面しなければならない最大の課題である」ということになる。 今日、習近平は、国内の大きな問題から目をそらすために、対外的な冒険主義と、軍事面での近代化を利用している。人口は急速に高齢化している。共産党は、中国本土の広大な地域を環境破壊している。中国はエネルギーを輸入しなければならない。また、香港の民主化運動が潰されたことに見られるように、中国の人々は国家の抑圧が強まる中で不安を募らせている。 元国防長官のロバート・ゲイツ氏は、中国の指導者たちが「自国民を死ぬほど恐れている」と指摘する。 中国は、中国から侵略された帝国主義の千年間にわたる記憶を持つ国々に囲まれている。アメリカが日本、ベトナム、インド、韓国、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、マレーシア、フィリピンなどの国々を強化することは、北京を弱体化させることにつながる。 太平洋地域では、アメリカがパートナー国の主権を強化することに重点を置かなければならない。アメリカは、空域と海上での活動を強化し、中国に自国の領海についてまず考えさせる必要がある。アメリカ海軍は依然として質的優位性を持っているが、中国は今や世界トップの造船国だ。アメリカの造船所は10カ所にも満たない。このままでは、その量の多さが海洋バランスを崩し始めるだろう。空軍や宇宙軍も同様だ。 また、パートナーが必要とする軍事力を共有したり、入手したりすることを容易にしなければならない。今日、冷戦時代の古い「ガードレール」のために、日本やオーストラリアなどの同盟国たちは、アメリカのパワーや技術を活用することが難しくなっている。 アメリカは、アジア全域でミサイル防衛と民間防衛を強化することができる。ボリス・ジョンソンの「D-10」方式を拡大して、アジアの大国たちをG7に加え、かつて西欧をインド太平洋に固定することもできる。中国を封じ込めることは、世界的な課題なのだ。 欧米の世論は北京に反発しており、新型コロナウイルスの災害はその流れを加速させた。アメリカやヨーロッパの企業は、中共との取引を少しずつ考え始めている。NATOの議題にも中国の問題が加わるようになった。 アメリカは世界の基軸通貨をコントロールしているが、バイデン政権はそれを理解していない。国際法や商法に違反している中国企業に対する一次制裁や二次制裁(イランや北朝鮮のような悪者への支援を含む)は、北京の暗黒経済に壊滅的な打撃を与えることができる。 私たちには長期戦を勝ち抜くための手段があるが、そのためには忍耐が必要であり、明日の見出しになりそうなことだけを見ているアメリカ人の嫌悪感を克服する必要がある。 また「中国は競争相手ではなく敵である」という真実をアメリカ国民に伝えることも必要だ。 ソ連を抑制した「封じ込め」戦略は、ハリー・トルーマンからジョージ・H・W・ブッシュまで続いた。中国の封じ込めにどれだけの時間がかかるかはわからないが、習近平の傲慢さと金融面での狂気は、西側が突撃して中国共産党がソ連のように忘却の道を歩むのを助ける、戦略的な隙をもたらす可能性がある。 ==== 率直に言うと「だいぶ雑な議論をしているなぁ」という印象です。 総論としては同意な部分はあるのですが、それでも「中国の指導者が自国民を死ぬほど恐れている」や「中国の人々は国家の抑圧が強まる中で不安を募らせている」と言い切ってしまうのはやや思い込みが激しいかと。 ただしこのような議論を行わないと本腰入れて対中政策を決定しないくらいアメリカの国内政治が分裂している、という見方もできますね。 次のケナンは一体誰になるのか・・・まだ明確な答えは出ていません。 ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-11-16 23:23
| 戦略学の論文
2021年 11月 15日
今日の横浜北部は快晴です。
さて、復活第二弾の試訳です。英エコノミスト誌の興味深いコラムから。 === 21-11/6 The Economist オフィスは人々を結びつける場所のはずだ。ところがこれがいまや人々に分裂をもたらす原因となっている。パンデミック後の職場復帰を「家庭と仕事の境界を再構築し、同僚と顔をあわせるチャンスになる」ととらえる人もいれば、逆に「無意味な移動と健康リスクの増大につながる」と見る人もいます。各人の考え方を決める要素はたくさんあるが、その中でも突出しているのが「年功序列」だ。 メッセージングサービスを提供するSlack社は、世界の知識労働者(ナレッジワーカー)たちを対象に、仕事の未来についての調査を定期的に行っている。10月に発表されたその最新の調査では、会社の上司たちは他の従業員に比べてオフィスに戻ることを強く望んでいることが判明した。リモートワークをしている上司たちのうち、75%が週に3日以上オフィスに行きたいと考えているのに対し、従業員たちの場合は34%にとどまっているという。 この意識の差は、いくつかの企業ですでに明白になっている。今年の初め、アップル社の従業員は、同社の最高経営責任者であるティム・クックに公開書簡を送り「社員は職場の机に戻りたがっている」という想定に異議を唱えた。その書簡には「経営陣がリモートワークやロケーション・フレキシビリティ・ワークについての考え方とアップル社の多くの従業員の生の経験との間には断絶があるように感じられる」と書かれている。なぜ重役たちはこれほどまでにオフィスにこだわるのだろうか? ここで思いつくのは「冷笑的」「親切」「潜在意識」というの3つの説明だ。 第一の「冷笑的な説明」では、上司たちはオフィスが与えてくれるステータスを好むというものだ。彼らは従業員たちよりも高層階の良い部屋にいて、良いカーペットを敷いた部屋に鎮座できる。彼らの部屋への出入りは厳密に管理されている。彼らがフロアを歩き回ると社内では一大イベントとなる。ミーティングルームでは最高の椅子が用意される。 ところがZoom会議になると、彼らが発するステータスのシグナルは弱くなる。映る画面のウィンドウの大きさはみんな同じになってしまう。彼らの最大の特権といえば、自分自身の音声をミュートしないことくらいであり、それは会社の幹部のダイニングルームを利用するのと同じ権力はないのだ。 第二の「親切な説明」は、経営者たちは直接従業員と会って話をする方が自分たちが率いる組織にとって良いはずだと考えている、というものだ。 たとえばJPモルガン・チェースのCEOであるジェイミー・ダイモンは、今年の初めに「自宅で仕事をすることは、仕事に打ち込みたい人にとっても、文化的にも、アイデアを生み出すのにも効果的ではない」と述べている。ヘッジファンド、シタデルの社長であるケン・グリフィンは、若者に自宅で仕事をしないように警告しており、「リモートワークの環境では、自分のキャリアを前進させるために必要な管理職としての経験や対人関係の経験を積むことは非常に困難です」と述べている。 このような懸念には理解できる部分もある。リモートワークは「タコ壺」にはまり込んでしまうリスクがあるからだ。つまり従業員はすでに知っている同僚だけとしかつきあわなくなる。企業文化は対面で集まる方が従業員たちに吸収されやすい。 また、ネットの接続速度が遅いと深い人間関係を築くことが難しくなる。たとえば2010年に行われたある研究では、共著者間の物理的な距離が科学論文の影響力を予測するのに適していることがわかったという。つまり共著者間の距離が大きいほど、その共著論文が引用される可能性が低くなるというのだ。 リモートワークの伝道師たちでさえ、物理的な集まりの時間を設けている。Slackで未来の仕事に関する研究を行っているブライアン・エリオット氏も「デジタルファーストは直接会わないという意味ではありません」と言っている。 だが、オフィスの利点が誇張されることもある。1970年代に提唱された「アレンカーブ」とは、コミュニケーションの頻度は同僚の席が離れれば離れるほど下がるという概念だが、今でもその傾向は変わらない。どんな職場にも人が立ち寄ることのない場所があり、別の階で働いている状況ほど大きな溝はないのだ。 また、リモートワークのデメリットは、ちょっとした工夫で克服することができる。たとえばハーバード・ビジネス・スクールの3人の教授の研究によると、ロックダウン時代のインターンが「バーチャル井戸端会議」で上級管理職と一緒に過ごす機会を得た場合、そうでない人に比べてフルタイムの仕事のオファーを受ける確率がはるかに高かったという。 物理的なワークスペースには欠点があり、リモートワークには改善の余地があるにもかかわらず、なぜ会社の上司たちは従業員たちを職場に集めようとしているのだろうか? 第三の「潜在意識による説明」はこうだ。フランスのビジネススクール「インシアード」のジャンピエロ・ペトリグリエリ氏は「若い人にオフィスに行くように勧める人というのは、その環境で自分の道を切り開いた人たちのことだ」と述べる。オフィスで働くことで成功を収めてきた上司たちは、そもそもオフィスの有効性に疑問を抱くことはない、ということだ。 これはやはり問題であろう。というのも、過半数の経営者たちは従業員の意見をほとんど聞かずに職場復帰の方針を決定したと答えているからだ。従業員が家とオフィスを行き来するハイブリッドな未来が到来が待ったなしとなった今、会社の上司たちは、どちらかの環境が明らかに優れていると考えるのではなく、両方の環境を改善する必要がある。 ==== 実に示唆に富むコラムですが、個人的にはやはり「権力」という要因を考慮しないといけないと感じます。 これはまさに「男はなぜセクハラをしてしまうのか」というエントリーでもあったものと同じであり、雇用関係に権力の非対称性が続く限りはなかなか解消されないものではないでしょうか。 ただし同時に問題なのは、やはり世代の意識の違いかと。「職場で集まって成功する」という成功体験というのは、現在管理している上の世代では染み付いているものであり、企業の文化は(西洋の先端企業でも)なかなか変えられないということかも。 (与那国から南方の海上を望む) ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-11-15 14:23
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