アメリカは真珠湾攻撃前夜の状態にある |
「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから!
▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜

▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜
「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」

▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜
「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」

▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜
カレンダー
連絡先&リンク
ブログ著者の紹介
著者経歴 Twitter アカウント アメリカ通信 FB スタンダード・ジャーナル2 ==関係者リンク== オンザボード 芙蓉書房 Mackinder Forum Exploring Geopolitics RUSI IISS 戦略研究学会 クラウゼヴィッツ学会 国際地政学研究所 国際戦略コラム 軍事板常見問題 ==メディア== BBC FT INT The Times AP News Defense News Salon.com the Huffington Post China Post Today's Zaman The Times of India Moscow Time Daily Beast ==その他== Conversations With History The Atlantic Foreign Policy TAC New Republic National Interest カテゴリ
検索
ブログパーツ
ライフログ
ブログ著者の本
↓地政学おススメ本↓
原著!
特別参加
最新の記事
タグ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
2021年 12月 23日
今日の渋谷は快晴で実に寒くなっております。 さて、ニューヨーク・タイムズ紙は日本のネットでは「米国の左翼の牙城」といったステレオタイプで解説されることが多いですが、コラムニストの中にはバランスをとるために保守派がおりまして、そのうちの一人のブレット・スティーブンスです。 彼は「保守派」と言ってもどちらかといえば「ネオコン」(neoconservative)なのですが、真珠湾攻撃から80周年と現在の国際政治の緊張状態をつなげるようなコラムを書いており、アメリカの一つの世界観のようなものがよく表現されておりましたので今回はその試訳を。 ==== By ブレット・スティーブンス 21-12/7 80年という節目の年に、真珠湾攻撃への世間の関心が薄いのは実に残念なことだ。私たちは、日本から攻撃される前の時代と不気味なほど似たような時代を生きている。さらに、将来同じような大惨事を予期したり回避したりするのに役立つ、奇襲への対処能力を失いつつあるのだ。 1つ目の類似点は、米国が3つの領域で攻撃的な領土計画を持つ手ごわい敵に直面しているということだ。前回は ヨーロッパではドイツ、アジアでは日本、そして地中海とアフリカではイタリアという敵だった。今回は バイデン政権に反抗してウクライナに侵攻する可能性のあるロシア、台湾を占領したり必要とあらば戦争で米国を倒すための軍備を着々と備えつつある中国、そしてレバノン、シリア、イラクの一部、ガザ、イエメンを顧客国や冊封国に変え、核保有国に近づいているイランという存在だ。 2つ目の類似点は、いずれの場合も、争いの中心には単なる領土問題ではなく、イデオロギー闘争があるということだ。ロシア、中国、イランは「リベラルな国際秩序」という概念を根本的に否定している。彼らは政治的な理想としての民主主義や人権を否定している。彼らは西洋社会において、個人の自由が道徳的退廃と集団的犠牲の能力の低下につながっているとみなしている。彼らは非自由主義的権威主義(ウィンストン・チャーチルの言葉を借りれば「倒錯した科学の光によって、より邪悪になり、おそらくより長引く」もの)が、過去の遺物ではなく未来の姿であると考えているのである。 3つ目の類似点は、彼らが直接攻撃しようとしている対象の力が比較的弱いということだ。たとえば台湾は軍事予算の増額を計画しているが、現在の国防費は国内総生産のわずか2%である。ウクライナは、独立以来30年にわたる腐敗と無能は言うに及ばず、ロシアの支援を受けた分離主義者との長年にわたる低強度の紛争によって疲弊している。イランは「アラブの春」後の混乱とアメリカの中東からの撤退に乗じて、ハマス、ヒズボラ、フーシ派といった代理勢力を武装化・強化した。 4つ目の類似点は、1930年代のイギリス、フランス、アメリカと同じように、現在のアメリカが優柔不断で傷ついた内向的な大国であり、脅威を受けている国々の安全を保証する存在であり続けたいかどうかの確信を持てていないという点だ。1935年、イタリアがアビシニア(その後のエチオピア)に侵攻する直前、イギリスの週刊誌『パンチ』は、独裁者の侵略に直面した西洋の弱い対応を風刺詩で嘲笑した。 私たちはあなた方に戦ってほしいとは思っていない しかし、もし本気なのであれば、 我々はおそらく共同覚書を発表して、 あなた方への軽い不支持を示唆する これを、現在採用されている、あるいは検討されている、敵国を罰するためのいくつかのアイデアと比較してみてほしい。中国に対しては、アメリカは北京で開催される冬季オリンピックに選手を派遣するが、外交官は派遣しない予定だ。ロシアに対しては、バイデン政権は「ロシアのオリガルヒがVISAやMastercardのクレジットカードを使えないようにする」ことを検討している、とNYタイムズ紙は報じている。イランに対しては、イランの核開発プログラムに関する外交が失敗した場合に「他の手段」を使う用意があると警告している。もしこの警告ががアメリカが20年近く使ってきた外交慣用句でなかったとすれば、実に不吉な響きを持つものだ。 5つ目の類似点は、軍事バランスがますます欧米に不利な状態にシフトしていることである。米国は、第二次世界大戦前に英国が最大の海軍を、フランスが巨大な陸軍を持っていたように、今でも世界で最も強力かつ技術的に洗練された軍隊を持っているかもしれない。しかし、台湾をめぐる戦争でアメリカが中国に対して決定的な力を発揮することは難しいだろう。中国は、核兵器の増強によって米国本土を危険にさらしながら、台湾を素早く獲得しようとするだろう。米国防総省はまた、膨大な数の「そこそこ」なプラットフォームに戦力を分散させるのではなく、空母のような高価で脆弱な少数のプラットフォームに火力を集中させるという過ちを犯している。 言い換えれば、米軍はある意味で「巨大な真珠湾」と化しているのだ。つまり、堂々たる大きさだが実用性に乏しい戦艦の列が、安全だと思われていた港に自己満足的に停泊しているという状態だ。 このような歴史的なアナロジー(類推)は穴だらけだと突っ込みたい読者はたくさんいるだろう。たしかにプーチンは革命的な独裁者かもしれないが、ヒトラーではない。中国は70年以上にわたって台湾との統一を模索してきたが、それでも「大東亜共栄圏」を求めるとは限らない。また、イランの政権は悪意を持っているにせよ、せいぜい「二流」の大国でしかない。 それでもこのような「似ていない点」が私たちに有利に働くわけではない。フランクリン・ルーズベルトやウィンストン・チャーチルは、党派を超えて国民の信頼を得ることができる偉大なリーダーであった。だがジョー・バイデンやボリス・ジョンソンはそうではない。真珠湾攻撃の後、アメリカ人はルーズベルトの言葉を借りれば、「絶対的な勝利のために勝ち抜く」ことを決意している。 では現在のわれわれはそのような状態にあるだろうか?西側諸国は、ひどい不測の事態に奇跡的に対応できることを証明し、「西側諸国は軟弱である」と不用意に想像していた敵に対して壊滅的な代償を課した。だが今の私たちは、そのような存在であり続けているだろうか?それとも真珠湾攻撃のように、私たちはそのような過去をすっかり忘れてしまったのだろうか? ==== 歴史のアナロジーを使って「現在は真珠湾攻撃前夜だ、準備せよ」という煽りにも近い意見ですが、保守派のグローバリストの感情的な部分を真珠湾攻撃にからめてうまく表現した簡潔で優れたコラムだと思います。 ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-12-23 12:20
| 戦略学の論文
2021年 12月 18日
今日の恵比寿は朝は大雨でしたが午後から晴れたり曇ったりしました。 さて、前回のエントリーと同じくグレイの追悼集から気になった部分を試訳します。今回は私と同じく博論をお世話になったカイラスによる特殊部隊に関する理論へのグレイの貢献についてです。 ==== ジェームズ・D・カイラス 米国アラバマ州モンゴメリー、マックスウェル空軍基地、高度航空宇宙研究学校 ▼はじめに コリン・グレイは、戦略、地政学、抑止力、ミサイル防衛、戦略的文化など、本号で取り上げるより重要なテーマに学業面で貢献し、成果を上げていたにもかかわらず、本号に特殊作戦に関する記事を2本掲載するのは奇妙に思えるかもしれない。グレイの記憶に残るのは、これらのテーマへの貢献と、戦略研究という学問分野への貢献であろうが、グレイはその素晴らしいキャリアの中で、このテーマに非常に関心を持ち、いくつかの著作を残している。 本稿では、特殊作戦という「分野」への貢献ほど、知的にも個人的にもグレイの人となりをよく表しているテーマはないと主張する。特殊作戦が研究の一分野であることを読者が受け入れるかどうかはここでは重要ではない。グレイがこの分野に非常に興味を持ち、彼の並外れたキャリアの中で様々な時期にこの分野について書いていたことは事実である。この短い回顧録を構成するために、この記事では、彼の特殊作戦研究への貢献を「開拓者」として「巡礼者」として、そして最終的には「プラグマティスト」という3つの観点から焦点を当てている。 ▼パイオニア グレイは特殊作戦研究の先駆者として、特殊作戦に関する委託研究を指揮し、3つの章、1つの論文、1つのモノグラフを執筆した。ここ数年、彼は本を書こうと思っていたが、一度も書かなかった。彼の最後の著作である『戦略の理論』(Theory of Strategy)の中で特殊作戦論を発表しているくらいだ。特殊作戦そのものがそうであるように、行動や出力だけではその効果は判断できない。彼が特殊作戦というテーマに与えた影響は、いくつかの理由から依然として大きい。 その理由は次のようにまとめられる。まず、作品を発表するタイミングが絶妙であったこと。このタイミングは、国家安全保障や政策の分野で、特殊作戦をどのように適用するのがベストかという大きな「流れ」と一致していた。第二に、最も重要なことだが、この分野の著者の中で、作戦担当者とその行動、すなわち「任務、人員、そして自分」に焦点を当てて、これほど論理的かつ効果的に推論し、またこれほどうまくまとめ上げている人はほとんどいないという点だ。 彼の作品の多くがそうであるように、特殊作戦の分野への進出は、契約した研究から始まった。グレイが米国公共政策研究所で率いた研究活動は、1991年に国防副次官から委託されたものだった。その最終成果は「特殊作戦、何が成功し、なぜ成功したのか?」(Special Operations, What Succeeds and Why? The Lessons of Experience, Phase I)である。スティーブ・ランバキスはグレイと緊密に協力してこの研究に取り組み、その内容と結果を本号の別冊記事に見事にまとめている。この記事の目的は、冷戦終結後、国防総省が概念的に迷走していた時期にこの研究が行われたことであり、特にジョージ・H・W・ブッシュ大統領が「新世界秩序」と呼んだものの中で特殊作戦が果たすべき役割についての研究であった。 この研究は残念ながらまだ未発表であるが、いくつかの理由で先駆的なものだった。このような研究は史上初というわけではなかったがーーより具体的な研究は1980年代初頭の米国特殊作戦司令部の創設に先立って行われていたーーその分析の明確さ、歴史的なケーススタディの範囲と幅広さ、そして参照している膨大な文献の点で、その重要性は高かった。このテーマを研究したグレイの他の大学院生や博士号課程の人々と同様に、このNIPPの研究は、その鋭い分析と簡潔さ、そして最近の研究とは異なる「読みやすさ」という点で、私の研究者生活の出発点となった。 グレイの特殊作戦に関する先駆的な研究は、1996年に出版された『戦略の探求』(Explorations in Strategy)の中の3つの短い章にあり、このテーマに関する彼の最も優れた作品と言っても過言ではない。この本の中の2つの章は、特殊作戦の性質と戦略的有用性について書かれており、実に長い影を落としている。グレイはわずか16ページの中で、一見自明のことのようだが、ほとんど検討されていない4つの「任務のカテゴリー」を特定し、その本質を見抜いている。 ・特殊作戦部隊にしかできない任務 ・特殊部隊が得意とする任務 ・特殊作戦部隊が苦手とする任務 ・特殊作戦部隊がまったくできない任務 これらの課題は、質問形式で提起されると、特殊作戦についての理解の核心に迫るものだ。とりわけオペレーター個人や、特殊作戦コミュニティ全体が繰り返し悩まされる「特殊作戦の特別な点やユニークな点は何か?」という問いかけだ。特殊作戦の相対化された性質や、通常部隊の活動と比較したときの特殊性を考えると、これらのカテゴリーやそこから生じる疑問は、能力のランドスケープ、つまりクラウゼヴィッツの言葉を借りれば「戦争の文法」が進化して変化し続ける中で、ヒューリスティック(経験則的)な価値を持ち続けるのである。 グレイは、『戦略の探求』のこの2つの章でさらに哲学的な探求を終え、次の章では彼の研究のもう一つの特徴である歴史的な探求を行っている。そのシンポジウムで多くの人が証言したように、彼は歴史を経験的、実用的に捉え、深く分析すべき過去の経験の源としていた。グレイがこのような実証的な証拠を用いたことは、特殊作戦コミュニティの現代的な、作戦を中心とした任務を重視する一方で、多くのアメリカ人が文化的に歴史に無関心であったり、無知であったりすることを考えると重要であった。そして実際に、NIPPの調査では歴史を見事に統合・凝縮し、それ元に「一般的なポイント」の土台としている。その結果、特殊作戦の戦略的有用性について、2つのマスターと7つの主張(力の経済性、選択肢の拡大、革新、士気、能力の紹介、安心感、敵の屈辱、エスカレーションの制御、未来の形成)が生まれた。彼のこの分析の力は、どれだけ頻繁に引用されているか、また、いまだに否定されたり置き換えられたりしていない、という事実からもうかがえる。 『戦略の探求』の各章に続いて、グレイは1999年に「パラメーターズ』(Parameters)誌に「絶望的な冒険をする一握りの英雄たち」というさらにこの分野に資するような記事を書いている。グレイはこの問いかけに的確な分析と文章で答え、特殊作戦に関する著作にありがちな、ミッションや人格に焦点を当てた回りくどい議論を切り抜け、問題の分析上の核心を明らかにした。彼は戦略的効果を生み出すために特殊作戦を成功させるための11の相互依存的な条件として、政策要求、政治、実現可能な目標、戦略、心の柔軟性、代替案の不在、敵の脆弱性、技術的支援、戦術的能力、評判、歴史、という要素を挙げて分析を行った。 これらのグレイの研究は、理論的にも戦略的にも、特殊作戦というテーマについての学説の標準的な「入口」となっている。私自身を含め、このテーマに関する本格的な学術論文は、すべてグレイの先駆的な著作を参考にしているが、それに取って代わるものではない。 ▼巡礼 グレイの特殊作戦との接触を「巡礼」の一形態として分類することは、個人的にも、スタイル的にも、知的にも、さまざまなレベルで有効だといえる。個人的なレベルでの「巡礼」とは、彼自身が個人的に大きな親近感を抱いていたアメリカに最初に定住したヨーロッパ人のことを意味している。彼はアメリカが歴史的記憶喪失などの欠点を抱えていることは認識していたが、それでもアメリカを尊敬し愛していたのだ。次の「巡礼」は、文体的にはアリタレーション(子音の繰り返し)として機能している。しかし最も重要なことは「巡礼」が研究対象としての特殊作戦における重要な側面を捉えていることである。 グレイは特定の場所、つまり「戦略」という目的に向かう知的旅行者という意味での「巡礼者」であった。彼にとってこの道は決して一本道ではなく、彼の興味は多岐にわたるため、特殊作戦を含むいくつかの脇道に寄り道していた。彼の最も立派な資質の一つは、その時々の知的テーマに対するエネルギーと熱意であり、特に博士課程の学生たちの研究テーマに触発されたり、それと一致した場合には、かつてのテーマを再訪することもあった。 グレイが特殊作戦に関する論文を発表しなくなってから16年が経過したが、その間も彼は特殊作戦に関する講義や議論は続けていた。彼の巡礼は続き、特殊作戦に関する彼の進化した考えや観察を一冊のモノグラフにまとめた。彼は自分の持続的な関心について次のように述べている。「何年も前に筆者は、特殊作戦の理論になるかもしれないものに取り組み始めたが、当時(1990年代初頭)は公式な関心がなく、個人的な優先事項が重なったため、筆者はこの課題をそれ以上追求することはなかった」 このモノグラフは、2015年に米国特殊作戦司令部(USSOCOM)の教育部門である「統合特殊作戦大学」(JSOU)の要請を受けて出版された。「戦略効果のための戦術的な作戦:通貨換算の課題」( Tactical Operations for Strategic Effect: The Challenge of Currency Conversion)と題されたこの作品は、クラウゼヴィッツの「現金」と「商業」の比喩のひとつに由来する、グレイの他の多くの作品に見られる共通の一般的な理論的テーマを使って論じられている。 このモノグラフは、グレイが考えていた大きな獲物に近づくための「隠れ馬」であった。それは特殊作戦に関するより実質的な理論書であり、「そうでなければおそらく気づかれない可能性について理解の扉を開くためのもの」であった。彼の議論の特徴は、特殊作戦に関するたった50ページの論文の中で、一部の学者が400ページ近くかけて語るよりも、より辛辣かつ意味深いことを語っていることだ。そのためのキーワードは、何よりもまず、「概念の明確さ」にあった。 このような明確さの必要性は切迫していた。グレイの警告は9.11事件以降の10年間において時宜を得たものとなったのだが、その理由はいくつかある。世間では、映画、テレビ番組、ビデオゲーム、書籍などの形で、特殊作戦への憧れが熱を帯びていた。さらに、政治指導者たちは、確実な危機対応の手段として、また国家安全保障上のリスクを管理する方法として、ますます特殊作戦部隊に依存するようになった。多くの国民、そして多くの政治指導者たちは、特殊作戦の神秘性に惹かれ、特殊作戦で達成できることやそれを実施する人々を神話化した。 だがグレイは、以下の2つの恒常的な問題に悩まされていた。1つ目は、戦術と戦略の関係を区別することだった。特殊工作員を含め、最善の計画と実行による戦術的行動が戦略的な成果を保証するものではないことは、アフガニスタンとイラクでの数十年にわたる活動を経た欧米の経験から痛いほど明らかだ。特殊作戦を実行する者は、この戦略の中核となる真実を認識し、思い起こす必要があった。 2つ目は、1つ目と密接に関連しているが、特殊作戦の概念的な理解や、そこから派生したアイデアの応用が乏しく、ほとんど進んでいないことである。このモノグラフの中の最も強力な提言として、彼は以下のように述べている。 (USSOCOM)は、現在、無秩序に支配されている混乱の多くを取り除くために、数が明らかに少ない一流の戦略理論家たちの支援を求めている。SOFのプランナーとオペレーターは、自分たちが何をしているのか、そしてさらに緊急に、なぜそれをしているのかについての理解を深める必要がある。問題を過小評価する恐れがあるため、筆者は、USSOCOMの制度的要求のうち最も緊急性の高いものは、残念ながらその組織の力では満たすことができないと主張せざるを得ない。具体的には(米国特殊作戦部隊は)米軍の発展に必要な効果を達成するための戦略的センスを持った、おそらく数人しかいない人々による指示とリーダーシップを持続的に必要としている。 彼の提案はいささか耳を貸さなかったか、もっと寛大に言えば、進行中の作戦に明け暮れる組織内の人々に見過ごされていたことを、彼は特殊作戦に関する最後の出版物の中で指摘している。この著作は、2016年8月にタンパの統合特殊作戦大学で開催された、特殊作戦理論に関する会議をもとにした論文集の序文である。グレイは特殊作戦に関する「戦略的センス」の欠如が続いていること、特に行動と政治的効果を結びつける理論のミッシングリンクを指摘している。 戦術的な卓越性が戦略的に不十分であるという彼の指摘は、USSOCOMが議会に義務付けられた「文化と倫理の包括的レビュー」への報告書の中で痛感されていたものであり、政治的な方面からの特殊作戦への強い要求と、任務の重視と「行動への偏り」が、作戦要員たちの数々の不安な事件や行動の要因であると指摘されている。 グレイの巡礼には、タンパで開催されたJSOUの理論会議に出席して発表することは含まれていなかった。あいにく健康上の理由からそのようなことはかなわなかったのだ。運が良ければ、特殊作戦に関する新たな知見や、現在の用語でいうところの「データ」を得ることができたはずだ。だが彼は、巡礼の目的地である「特殊作戦の一つの、もしくは決定的な”理論”を生み出す」ところまでは到達できなかった。 ▼プラグマティスト グレイの作品が特殊作戦の分野で影響力を持ち続けているのは、その先駆性や探究心だけでなく、実に多くの理由がある。それは、哲学的で時代を超越した探究心を持ち、世間の注目と知的流行という2つの力に対抗していること、アイデアと幅広い歴史的経験を巧みに合成して、特殊作戦の有用性と有効性の概念的本質を戦略的に抽出していること、そして読者である特殊作戦のコミュニティを常に念頭に置き、アイデアを明確かつ簡潔に提示し、わかりやすく整理していることである。 グレイの分析的な傾向を反映して、これらの資質は「プラグマティズム」(実用主義)と要約できるだろう。このプラグマティズムは、理論や戦略に対する彼の考え方を反映したものである。言い換えれば、特殊作戦に関する文章は、戦略に関するものと同様に、そのテーマの功利主義的な性質を反映したものでなければならないということである。 このプラグマティズムは、彼の特殊作戦に関する著作に十二分に表れている。その一方で、グレイは敬愛していたカール・フォン・クラウゼヴィッツのアプローチを反映した、より記述的で哲学的な探究に知的好奇心を惹かれるようになっていた。だがグレイはより処方箋的で職業的な表現の価値も理解していた。自分の考えを実践する人には、要約や教訓、そしてもっと広く言えば、複雑なテーマに対する実証主義的なアプローチが最適であることを彼は示した。グレイの考えでは、特殊作戦の通貨を戦略的効果に変換することを含め、戦略に関するあらゆる問題は、数多くの障害に直面する信じられないほど困難なものであるが、理論と歴史的知識に精通し、自らの経験に基づけば、最終的には克服できるものである。 彼の著作は、彼の表現力もさることながら、特殊作戦コミュニティの人材の性質を反映して、今後も魅力的なものになるだろう。特殊作戦員は極めて実用的であり、「混沌の達人」であることに加えて、戦術的、作戦的に問題を解決することに長けている。特に、国防総省とUSSOCOMがいまだに理解しようとしている現在と将来の大国間競争における特殊作戦員の価値、有用性、そしておそらく最も重要なことは、その限界と役割について対話が行われる場合には、である。言い換えれば、グレイの著作は、概念的、戦略的、政治的に困難な領域で特殊作戦部隊の隊員たちを照らし、教育し続けるだろう。とりわけ概念的にも戦略的にも不確実な状況に置かれている特殊作戦・政策コミュニティにとっては、具体的な価値を持つことになる。 ▼結論 博士課程の学生(私もその一人だった)たちの間で、グレイはいくつかの非公式なニックネームを持っていました。"the Master "とか "the Great Man "なとである。特殊作戦研究へのグレイの貢献についての短い議論を終えるにあたって、逸話によって彼を追悼したり、学者として、教育者として、戦略家としての私の成長と進化に彼が与えた貢献に敬意を表したりしたくなる。しかしこのような逸話や賛辞は彼にはふさわしくない。むしろグレイは、戦略家や批判的思考者の重要な質問である「なぜ」という質問への答えを期待していただけでなく、それを要求していたのである。ではグレイはなぜ特殊作戦の研究に力を注いだのだろうか。皮肉屋なら「金になるから」と結論づけるかもしれないが、それではグレイが特殊作戦について繰り返し書いてきたことや、持続的な関心を持っていることの説明にはならない。この記事では、2つの可能性のある、そしておそらく彼自身も認めるであろう、相互に関連した理由を考えてみたいと思う。 グレイの著作全体を見渡してみると、特殊作戦は彼の「戦略と人間の関係」に関する考えの核心に訴えるものであったことがわかる。さらに具体的に言えば、戦略が困難で複雑で摩擦に満ちているのは、まさにそれが人間の行う行為であり、危険やそれに対する個人や集団の反応、その他の環境要因に満ちているからである。特殊作戦はオペレーター中心のものであり、リスクと摩擦を軽減し、異例の解決策を考案し、その過程で不可能と思われることを達成するために「人間」という存在に重きを置いている。特殊作戦とその極めて人間的な存在による働きは、グレイが生きている間に見られた戦争の性格の変化、すなわち技術的な複雑さ、破壊性、戦争の影響範囲の増大、冷徹な分析と機械論的な戦争観へと急速に陥る可能性のある評価の変化を考えると、一層魅力的なものであった。つまり特殊作戦ほど、この事実を表現し続けているものはない。 戦略や戦争という広い現象の中での手法としての知的な魅力に加えて、グレイは感情的なレベルでも、特殊作戦に魅力を感じていた。個人的には、特殊作戦はロマンチックな部分に魅力を感じていた。彼はある種の目的を崇高で正しいものと考えていたが、歴史小説、特にリチャード・シャープという人物を描いたバーナード・コーンウェルのシリーズを、小説と映画の両方で貪欲に消費していた。 また、本だけでなく「歴史的なミニチュア」を集め、友人にプレゼントすることにも情熱を傾けていた。グレイと同じように、多くの人が特殊作戦に魅了され、その英雄的な資質に惹かれている。驚異的なヒロイズムと勇気の代名詞である "Boy's Own "の側面は、グレイの心の一部を刺激したに違いない。幸いなことにグレイはこの感情的な側面を、優れた歴史的・理論的知識と鋭い分析力で和らげ、まだほとんど存在しない分野に客観的な洞察を与えてくれたのである。 グレイの期待に応えるために十分な注意を払った上で、冒頭の私自身の誓いと文体や慣習を破って、異例のことだが、一人称で簡単な賛辞を述べさせていただく。先生には多くのことでお世話になった。その中には、理論と特殊作戦を結びつけた最初の本を生み出すことになった博士課程の研究に導いてくれたことも含まれる。本誌のこの特集に登場する人たちを含め、多くの人が、彼の知性の強さに惹かれた。それは、アドバイス、機会、時間などに対する驚くべき寛大さ、驚くべきウィットと知識の深さ、「インピッシュ」という言葉では半分しか伝えられない遊び心のあるユーモア、そして戦略のビジネスや学術的なテーマを真剣に受け止めながらも自分のことは考えないという能力だ。あなたと一緒に学んだ "私たち少数の勇者 "が、あなたが私たちに与えてくれた大きな信頼と信用に報い続けることを願うばかりだ。 === グレイはたしかにこの分野ではパイオニアでしたが、サイバーや宇宙と同じように、そもそも特殊作戦部隊には秘密なことが多いので資料を元に学術研究ができないという点が理論の構築を難しくしているという意味であまり理論を発展させられなかった、ということなのかもしれませんね。 何にせよ、この分野の理論はその珍しさもあって実に興味深いものです。 (崖の上の野良馬) ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-12-18 01:29
| 戦略学の論文
2021年 12月 10日
今日の紀尾井町は寒いですが比較的良い天気です。 さて、国際政治学の泰斗、ロバート・ジャーヴィスが亡くなったとのニュースを聞いてショックを受けているのですが、そのジャーヴィスがコリン・グレイの死にあたって専門誌に書いた文章がありましたのでさっそく訳しておきました。 ==== 彼と初めて会った年は正確には覚えていないが、1970年代の半ばか後半だったと思う。アメリカでは、ソ連の軍備増強とSALT交渉を受けて、戦略と軍備管理に関する議論が加熱しており、世間でも、政策界でも、学界でも議論されていた。後者では、コミュニティの規模が小さく、比較的少数の大学出身者がほとんどだったため、近親相姦的な会議が延々と続いていた。私たちの意見は一つにまとまっていたわけではなかったが、どちらかというとハト派が多かったように思う。 そこに、まったく異なる経歴を持ち、まったく異なる意見を持つコリンが加わった。しかし、彼がすぐに受け入れられたのは、多数派の意見に合わせるのではなく、自分の意見を明確に述べ、それを明確な論理と優れた証拠で裏付けることができたからだ。 彼が私やコミュニティの尊敬を集めたのは、対立する議論に公平かつ徹底的に取り組もうとする姿勢や、問題となっている事柄を十分に理解し、関連する事実や考察を理解していたからだ。学術的なコミュニティでは当たり前のことですが、実際にはこのような特性は一般的ではなく、高度に政治的な雰囲気の中で受け入れられたことは、決して小さな功績ではなかった。 コリンとの2回目の継続的な関わりは、私が共同編集者を務めるコーネル大学の安全保障研究シリーズに、軍備管理に関する本(『ハウス・オブ・カード』として出版されたもの)の原稿を提出したときだ。最初の原稿は良かったのだが、もっと手を加えればもっと良くなると感じた。 これは、多くの著者にとって歓迎すべきメッセージではない。特に、自分の主な主張に反対する人からのメッセージはなおさらだ。しかし、コリンはこの挑戦を受け入れるだけでなく、歓迎し、もう一度、細心の注意を払って草稿を見直した。彼は、自分の意見に賛同してくれる人を喜ばせるだけの本では不十分であると考え、反対側の主張を提示して反論し、自分の論理を述べ、さらに証拠を増やしていった。そして、最終的には私を納得させるまでに至ったのだ。これは、彼の学力の高さを示すものである。 彼との3回目の、そして最後の関わりは、1980年代の初めか半ばに彼がコロンビアに来たときだ。当時は、核戦略や米ソ関係についての議論が激化し、みんなが感情的になっていた。個人的にも、知的にも、政治的にも大きな問題があり、多くの議論は冷静さを欠いていた。というのも、聴衆である大学院生たちはリベラル派で、レーガンの政策は危険であり、我々全員が殺されるかもしれないという考えを持っていたからだ。 彼の講演が終わる頃には、彼らを自分の立場に変えたとは言えないが、彼らが考えなければならないことがたくさんあること、そして、軍事的選択肢に裏打ちされた厳しい政策を求める人々が、必ずしも愚かではなく、ましてや悪ではないことを示していたのである。 私が感嘆したのは、彼が敵意のある質問にもしっかりと対応し、反対意見を考えようとする姿勢を見せたことだ。これは演技ではなく、彼の心と性格の一面である。 二極化が進むこの時代に、彼がいなくなるのは非常に残念だ。私は彼を友人と呼べることを光栄に思っている。 ==== この最後のコロンビア大学への最後の訪問については本人から直接聞いたことがありますね。だいぶ激しい論争が繰り広げられたらしく、かなり印象に残っている様子でした。 これを書いたジャーヴィス本人も鬼籍に入られたということで、私が勉強してきた分野の巨人たちが次々と亡くなるのは時代が変わったことを感じます。 (都心ルート上空からの眺め) ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-12-10 15:47
| 戦略学の論文
2021年 12月 07日
今朝の有楽町は曇っておりまして気温も低めです。
さて、最近注目しております新刊を出したばかりのエルブリッジ・コルビーの意見です。 彼は官僚経験が長い人物ですが、アメリカの2018年の国防戦略の策定に関わる過程で当時の国防長官であるジェームズ・マティスと一緒にイギリスに行ってコリン・グレイに話を聞きに行ったときもその同行メンバーでもありましたね。 この人物が最近色々なところに本のプロモーションを兼ねて意見記事を書いているのですが、以下はイギリスの保守系の雑誌に、想定される台湾有事について書いた記事の試訳です。 === 21-11/11 The Spectator 中国が台湾を攻撃したら、アメリカはどのように反応するだろうか?圧倒的とまではいかないまでも、台湾を守るべきだという圧力は相当大きくなるだろう。アメリカは台湾防衛に関して表向きは「戦略的曖昧さ」を公言しているが、アメリカと台湾は多くの点でつながりがあるため、バイデン政権は最近、台湾に対する「確固たる」コミットメントを繰り返し強調している。 北京は自治的に運営されている台湾を明らかに従属させたいと考えている。その一方で、アメリカの信頼性は台湾を守れるかどうかにかかっている。また、台湾は軍事的にも重要である。もし台湾が陥落すれば、日本、韓国、フィリピンの防衛力を著しく低下させ、太平洋の中央部を中国軍に明け渡すことになる。 北京は、厳しい制裁や嫌がらせをしても、台湾が自由を手放すことはないことを知っている。だが同時に、迅速かつ決定的な空と海の侵攻があればそれが可能となることも知っている。中国がこの25年間、台湾を占領するための準備に資源を費やしてきた一方で、アメリカは不用意にも他のことに注意をそらしてきた。そして台湾や日本も防衛を怠ってきた。その結果、侵略された場合に島を助けることが非常に困難となったのだ。しかしまだそれが不可能となったわけではない。 台湾を防衛する上でのワシントンの目標は、中国を包括的に打ち負かすことではなく、むしろ侵略そのものを打ち負かすこと、つまり中国の目的である「台湾の従属を否定すること」にある。アメリカ、台湾、そして戦いに参加しようとするすべてのパートナーたちは、中国の艦隊や航空機に対してあらゆる障害を与えて、侵略行為そのものを阻止することに集中する必要がある。その一例が、機雷や、陸・海・空のさまざまなプラットフォームから発射される対艦・対空ミサイルなどだ。また、防御側は上陸してくる中国軍を排除したり、追い出したりする必要もある。 侵略に対する抵抗が成功した場合、中国は一つの選択肢を迫られることになる。それは、裏目に出る可能性の高い方法で戦争をエスカレートさせようとするか、それとも限定的な敗北を受け入れるかだ。 しかし、このような防御の基準を満たすのはかなり難しい。台湾、そしてアジアの他の同盟国を効果的に防衛するためには、米国は中東、アフリカ、ヨーロッパでの軍事的コミットメントを大幅に削減しなければならない。台湾をはじめとするアジアの同盟国を中国から守り、同時に他の地域でも大きなプレゼンスを発揮するには、米軍には単純に軍事力が不足しているからだ。その他の地域はたしかに重要ではあるが、アジアに比べるとその重要度は低いため、権力の真空地帯となってしまう。 これはアメリカの同盟国であるイギリスなどにとってどのような意味を持つのだろうか。当然ながら、アメリカは台湾が攻撃された場合にはイギリスが支援してくれることを期待している。しかし、極東におけるイギリスの軍事力はたかがしれている程度だ。 その強みが欧州や中東にあることを考えれば、イギリスはNATOの欧州防衛の強化に主導的に協力するのが得策であろう。 台湾をめぐる戦争の際には、イギリスはインドと協力して他の地域の中国軍に対処することができるはずだ。だがイギリスは他の西欧諸国とともに、ロシアとイランがアメリカの台湾への集中を利用するようなチャンスを得られないようにすべきである。 私たちは冷戦後の世界を離れ、新たな大国間の競争の時代にどっぷりと浸かっている。このような状況で戦争の惨禍を避けるための最善の方法は、いかにして紛争を抑止し、そしていざとなったらいかに紛争に勝利するかを慎重に検討することなのだ。 === 他の議論もあわせて考えると、彼の意見は以下の5点ほどにまとめられると思います。 1:大国間競争の時代が来た。ライバルは中国、ロシア、そしてイランである 2:アメリカは世界三大戦略地域おける「中東」と「西欧」は他に任せて「東アジア」に力を集中せよ 3:中国がいざ侵攻してきたら拒否することに注力せよ 4:勢力均衡は(アメリカの)優位がいいに決まっている 5:東アジア各国は大幅な軍備増強をせよ。日本はGDP比で2%といわず10%を目指せ。 ということになります。 とにかくそのやる気と危機感を強く感じられる意見記事でありますが、彼の本やこの意見をめぐって対中戦略について活発な議論が始まったことは個人的には実によろこばしいことだと感じております。 (日本の車窓から) ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-12-07 09:12
| 戦略学の論文
2021年 11月 27日
今日の横浜は快晴でしたがだいぶ寒かったですね。 さて、短めのものですが試訳です。エクセルの自動修正機能が強力すぎて科学の分野でトラブルを起こしているという話です。 ==== 21-9/14 The Economist誌 マイクロソフトのエクセルの自動補正機能の強力さは、以前から一般ユーザーを悩ませてきた。ダッシュで囲まれた数字の羅列は、引き算の指示と誤読されるし、電話番号は先頭のゼロが失われる。クレジットカードの番号は、科学的な表記法で再表現される。 遺伝学者たちは、この問題の特殊なバージョンと格闘している。例えば、「Membrane Associated Ring-ch-type finger 1」、通称「march1」と呼ばれる遺伝子は、しばしば「3月1日」という日付に再エンコードされてしまう。同様のことは、sept1が属するセプチンファミリーの遺伝子や、dec2として知られるBasic Helix-Loop-Helix Family Member e41にも起こる。 この問題は、2004年に初めて注目されたが、2016年にオーストラリアのディーキン大学のマーク・ジーマンによって広く知られるようになった。ジーマン博士は、7月にplos Computational Biology誌に「遺伝子名のエラー:学べなかった教訓」(Gene name errors : Lessons not learned)と題した論文を発表した。 2014年から2020年にかけて発表された16万6,000本のゲノム関連論文を調査した結果、エクセルを使用した論文の数は着実に増加しており、自動修正機能によるエラーに悩まされている割合は30%前後で推移していることが、共著者らによって明らかにされた。 また、他の言語の研究者からも間違いが指摘されている。例えば、ポルトガル語では、ago2(Argonaute risc Catalytic Component 2)がAgosto 2と名前を変えられてしまっている。 オランダ語では、mei1(Meiotic Double-Stranded Break Formation Protein 1)という言葉に問題が出ている。また、1年の最初の月をTammikuuと呼ぶフィンランドの遺伝学者は、tamm41(Mitochondrial Translocator Assembly And Maintenance Protein)が1月の41日としてエンコードされているのを発見した。 このような状況が続いていることは驚きだ。2020年8月、遺伝子名を標準化する委員会は、マイクルソフトというゴリアテに対するダビデを演じていると自覚し、marc、march、septで始まる遺伝子名をmtarc、marchf、septinに改名し、dec1をdelec1と再命名した。他にも問題のある遺伝子名は残っていたが、これは正しい方向への一歩であると広く認められた。 しかしジーマン博士の最新の論文は、ほとんどの研究者がそれを受け入れていないことを示唆している。 このような誤りは、危険というよりはむしろ面白いと思われることが多い。しかし、これはより深い問題を反映している。つまり、スプレッドシートでは、著者や編集者が見つけられないような隠れたエラーが、何年も発見されないままになっているということだ。 これを防ぐために、ジーマン博士は、研究者がエクセルのようなソフトウェアをやめて、科学的な用途を念頭に置いて書かれたオーダーメイドのコードを使うことを勧めている。そのようなプログラムは、誤った自動修正の影響を受けにくく、監査もしやすいからだ。 だが、今回も彼のアドバイスが聞き入れられるかどうかは不明だ。 === これは私の関係する人文系でもたまに「ワード」に関して見受けられるものですね。スペルを自動的に変えられてしまって違う意味になってしまった言葉を論文で見かけたりすることがあります。 エクセルに関する問題としては、自動修正ではありませんが、データの打ち込みのおかげで結論の間違いが指摘されているものもありましたね。 そのために上記の文ではエクセルを使わないようにしようというわけですが、どうもこれは本末転倒。道具側の事情にあわせて、人間が科学で使う名称や略称にも変更というわけですから。 あまり良い例とはいえませんが、それでも「テクノロジーは人間を変える」という一つの例かと。 ==== ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜最新作! 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは米中戦争の時代をどう生き残るのか?〜 ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ![]() ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ![]() ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ![]() ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜 #
by masa_the_man
| 2021-11-27 23:37
| カルテク
|
ファン申請 |
||