戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


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<   2016年 10月 ( 7 )   > この月の画像一覧

今日の横浜北部はやや寒いですが、朝から気持ちいい天気です。

さて、今週の放送(https://goo.gl/E2KY9x)で取り上げる予定の、興味深い意見記事の要約です。

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極左の奇妙なプーチンへのシンパシー
by ゲルショム・ゴレンバーグ

ジェレミー・コービンといえば、頑固で論争の的となる人物であり、最近イギリスの労働党党首として再選されたばかりだが、彼はロンドンにあるロシア大使館の前でシリアでの空爆に反対するために抗議するという考えを拒否している。コービンの側近によれば「ロシアやシリア軍の残虐行為に注目」してしまうと、「アメリカ主導の空爆がもたらした大規模な民間人犠牲者」から目をそらすことになってしまうというのだ。

これがわかりにくいとお感じになる人もいるかもしれないので、コービンが労働党の党首に選出されるまで議長を務めていたイギリスの「停戦同盟」(Stop the War coalition)について考えてみよう。

この同盟の現在の副代表であるクリス・ナインハム(Chris Nineham)はあるラジオ番組のインタビューで、ロシアの残虐行為に対して抗議することは「ヒステリアと愛国狂信主義」を増加することになり、シリアでの紛争を終わらすための唯一の方法は「西側に対して反対すること」だと答えている

これを言い換えれば「われわれが戦争反対を唱えても、それはプーチンの戦争に対する反対ではない」ということだ。西側の帝国主義者による戦争に反対、ということなのだ

この意味を考えてみよう。イギリスだけでなく世界中のロシア大使館の外で抗議するというアイディアは、労働党の議員であるアン・クライド(Ann Clwyd)が提唱したとされている。そして外相であるボリス・ジョンソン(Boris Johnson)がその提案を支持したことも本当だ。ところがジョンソンが反対したからロシアの戦争犯罪を無視することにしたというのは、共和党の何人かが反対したからトランプ候補の女性蔑視を無視するというのと似ている。

ロシアの行動と同盟国側の行動を比較するために、英ガーディアン紙は「エアーウォーズ」という監視団体と共に事実関係をチェックしている。それによると、ロシアの攻撃による民間人の死傷率はその団体の代表者によれば「同盟国と比べて8倍も多い」という。つまり同盟国側は民間人の死傷者を出さないようにしているのだが、ロシア側はわざと民間人を狙っているということなのだ。

そして予想通り、分裂した労働党の中の多くの人々は、コービンの態度に激怒している。これはコービンの古臭くて一面的な「反帝国主義」の態度が左派の恥になっている直近の例である。それに対してアメリカでは、最も目立ったプーチンのファン(トランプ)が、右派にとっての最大の恥となっているのだ。

ところがアメリカの左派の中にもコービンのような存在がいる。それが「緑の党」の党首であるジル・ステイン(Jill Stein)だ。ほんの数日前まで彼女は、自身のウェブサイトに「アメリカはシリアでのいかなる軍事介入も終わらせるべきであり、武器通商禁止を課して、シリア、ロシア、そしてイランと協力してシリア全土をその政府下の統治へと回復させるべきである」という宣言文を載せていた。言い換えれば、この「反戦」候補の立場というのは、アサド政権とその配下たちが勝利するまで戦争犯罪を続けさせよということなのだ。

私が知る限り、ステインのポジションに最初に気づいてツィートしたのはジャーナリストのパトリック・ストリックランド(Patrick Strickland )である。

短期的ではあったがこの件についてソーシャル・メディアで炎上し、スティンの言葉はウェブサイトから削除された。代わりに掲載されたのは「それはステインの考えを反映したものではない」という一文であり、「アメリカの中東への干渉」に反対するという修正された言葉であった。

おそらく物分りのいいステインは、アレッポの反政府軍が占拠している地域で民間人を意図的に狙った空爆が行われている最中にプーチンやアサドと協力することを語るのはイメージ的によくないと判断したのであろう。ところが最初に掲載した文章が彼女の真意を反映していないというのはかなり怪しい。

その理由は二つある。一つは、修正された文言もアメリカだけを批判したものだからだ。そしてもう一つは、最初の文章は彼女のサイトに掲載されていた去年の12月のモスクワでの会合についての報告と当てはまるからだ。ちなみにその会合とは、ロシア政府のプロパガンダ機関であるRTが主催した外交フォーラムのことである。

彼女はそこでロシアとシリアとの「原則に則った協力」を提唱しており、プーチンが彼女をはじめとするその場にいた外国の政治家たちと「多くの問題について」意見が一致したと述べていたことを誇らしげに書き込んでいるのだ。

このモスクワでの会議に出席していた政治家の中には、元ロンドン市長でコービンとも近い関係にあり、その数ヶ月後に「ヒトラーは権力を握った時にシオニスト運動を支援していた」という反ユダヤ発言で労働党から数ヶ月資格停止となったケン・リビングストンである。

さらにこの会議のもう一人のゲストには米国人ジャーナリストのマックス・ブルーメンタール(Max Blumenthal)がいた。彼は先週、シリアの民兵である「ホワイト・ヘルメッツ」(White Helmets)についての記事を発表したが、ここでそのメンバーが政権の空爆後の瓦礫から救い出された話を書いている。「ホワイト・ヘルメッツ」は去年暗殺された英国議員ジョー・コックス(Jo Cox)によってノーベル平和賞に推薦されている(ちなみにコックスの夫は今週コービンの態度を「恥ずべきものだ」と痛烈に批難している)。

このブルーメンタールの記事ではこのグループのことを、非情なアメリカがアサド政権を転覆するために使っている「ツール」として描いている

自身はイスラエルの政策により融和的なポール・シャム(Paul Scham)によれば、ブルーメンタールは前にイスラエルについての報道において「シオニズムは・・・ほぼ究極の悪」として扱っているとブルーメンタールの本(Goliath)の書評の中で書いている。ところがブルーメンタールのアラブ人への命と人権についての懸念は、アサド政権をアメリカの覇権の敵対者として描く際に消え去ってしまっているようにみえる。

オバマ大統領の対シリア政策が批判されるとすれば、それはやりすぎたからではなく、むしろ人道的な犯罪を止めずに看過していたところにあるといえる。ただしここで注意しておきたいのは、対シリア政策として何をすれば、そしてこれから何をすれば良いのかについて私は判断しかねるということだ。

米国による介入の拡大を主張する人々の中には、米軍や大統領の力を過信している者がいるように思える。米軍の力への過信はブッシュ大統領のイラク侵攻で崩れ去った。そして民主制度では不必要な戦争を戦うと国民からの軍への政治面での支持が、本当に必要とされる時に下がってしまうことになるのだ。

ところがアメリカはあまりにも長期にわたって外交に頼り切ってしまったために、プーチンとアサドに行動の自由を与えてしまった。そしてシリア全土の治安回復には血塗られた内戦が待ち受けている状態になってしまったのだ。

プーチンの極左側の応援団は、まだ冷戦時代に生きていると勘違いしており、世界は西側の帝国主義とその敵で構成されており、モスクワを自分たちの味方としてとらえている。これは非常にゆがんだ世界観だ。奇妙なことに、これは数十年前の過去の生活と、歴史観の欠如の混同によって構成されている。

ロシアの帝国主義的な目標である「オスマン帝国の領土だった場所への権力の拡大」というのは1907年に始められたのだが、イデオロギーの衣をまとってソ連時代、そして現在までも継続されている。シリアでの足場を維持するため、ロシアはその国の残りのすべてを破壊するつもりである。

去年のその会議のもう一人の講演者の一人が、トランプ候補の選挙戦の代理人となったマイケル・フリン(Michael Flynn)元将軍である。これこそが皮肉の極地である。なぜなら極左の人間たちが、トランプと彼のプーチンの独裁的な政権の信奉者たちと一緒に舞台に並んだからだ。つまり極端主義者たちは「使えるアホ」として集合したということだ。

===

なかなか手厳しいですね。

ひとつここで注意しておいていただきたいのは、これがアメリカの「リベラル」の立場から書かれたものであるということです。そして日本の場合とは違って、彼らリベラルたちは「人道のためならある程度武力行使は賛成」という立場にあるということです。

これがさらに極端化すると、イラク戦争を主導したネオコンになるわけですが・・・

それにしても、この記事で指摘されているような政治構造というのは、実際のところ、世界中のどの国でも見られるものですよね。

これについて詳しくは火曜夜の放送で。
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(金曜日のスタジオ内の様子)


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奥山真司のアメリカ通信LIVE

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by masa_the_man | 2016-10-24 13:14 | 日記 | Comments(2)
今日の横浜は朝から爽やかでしたが昼間は少し曇りました。

さて、先日の放送(https://youtu.be/dt7BJ3nb-8k)でも紹介した記事の要約です。こういう意外性のある記事は好きです。

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国民投票はなぜそれほど「民主的」ではないのか
By アマンダ・タウブ&マックス・フィッシャー

世界中の有権者は、この1年で大変な経験してきた。彼らはコロンビアの和平交渉を拒否し、EUから英国を離脱させ、民主制を後退させるタイの憲法を支持し、ハンガリーでは必要票数のないまま政府の難民拒否の法案を可決させたからだ。

これらはすべて「国民投票」(national referendum)によって決せられたものだ。有権者はこれを通じて政府の計画をひっくり返したが、これらは自らの権利を弱め、政治危機を発生させることになり、ある一つのことを達成した。それは、多くの政治学者が、なぜ国民投票を「やっかいで危険なもの」だと考えているのかをまざまざと見せた、ということだ。

ダブリンのトリニティ・カレッジの政治学者マイケル・マーシュ(Michael Marsh)は、「シンプルな答えとして、国民投票は絶対的に危険なものだ。私はアイルランドで行われた国民投票を何度も経験しているが、それらはほとんど無意味なものから、危険なものまである」と答えている。

もちろん国民投票に一票を投じた有権者たちは、民主制度の最も純粋な形のものを実行した人々として描かれることが多いが、研究によれば、民主制を悪化させることのほうが多いという。有権者というのは移り気であり、明らかに有益な決断を覆すだけでなく、コロンビアの例でもわかるように、天候のような予測不能な要素に左右されることもあるからだ。

有権者たちは、基本的にあまり情報のない状態で投票するものであり、その判断を、政治的なメッセージを頼りに行わざるを得ない。そうなると、その権力は投票者ではなく、政治エリートたちの手中にあることになる。

ロンドン大学政治経済学院(LSE)のアレクサンドラ・シロン(Alexandra Cirone)によれば、「これはリスキーな手段なのだが、政治家はそれでも自分たちが勝てると思い込んでいるので使いつづけるのだ」と述べている。

ところがそれでも勝てないことは多く、問題を解決するのではなく新たな問題を作り出してしまうものだ。たしかにこれについての研究結果を見ていくと、多くの専門家たちが国民投票をなぜ信じていないのかがよくわかる

▼難問への「ショートカット」?

有権者はあらゆる国民投票でひとつの問題に直面する。それは難しい政策の選択を、シンプルは「イエス」か「ノー」の判断にまとめて考えなければならず、しかも決定の結果はあまりにも複雑で、専門家でもそれを理解するのに数年かかるほどだからだ。

有権者たちはこの問題を、政治学者のアーサー・ルピア(Arthur Lupia)とマシュー・マキュビンズ(Mathew D. McCubbins)が「ショートカット」(short cuts)と名付けたものによって解決する。つまり有権者たちは、有能そうな人物や、親しみのあるナラティブに当てはまる選択をする、ということだ。

政府が国民投票を進める場合、トロント大学の名誉教授である政治学者のローレンス・レドゥック(Lawrence LeDuc)の研究によれば、国民はその国の首相や与党の好き嫌いで投票を決めるのであり、国民投票で問われる国民的な問題の選択とは関係なくなることが多いという。たとえばコロンビアでは、2014年にサントス大統領に投票した選挙区のほとんどは、今回の和平提案にも投票している。

また有権者は、既存のイデオロギー的な思想の枠組みの中で複雑な問題を考えようとするものだ。このようなメカニズムはほぼすべての国民投票で作用しており、しかもその問題の深刻度が増せばますほど、この傾向は高くなる。

▼「わかりやすい話」の強制

もちろん政治家やその他の実力者たちは、国民投票の問題をシンプルでわかりやすい話にして語ることが多い。

結果として、その投票は実際の政策の問題ではなく、抽象的な価値観や、有権者にとってどちらの側のストーリーが魅力的なものに映るか、という競争になってしまうのだ。

イギリスではEU離脱(ブレグジット)についての議論では、両陣営ともEUの参加国としての立場を細かく議論せず、どちらの価値を強調した選択にするかという枠組みで問題が語られることになった。「残留派」側はEUの参加国として残ることが経済の安定性につながると論じたのであり、「離脱派」は移民問題という点を強調したのだ。

そしてこの両陣営の狙いは当たった。残留に投票した側の人々は経済面での懸念を表明したが、移民問題は問わなかった。離脱派は移民問題の懸念を表明したが経済についてはそれほどであったのだ。

コロンビアでもサントス大統領は国民投票を「和平のための投票だ」と表現したが、反対派は最大の反乱グループであるFARCが国民からそもそも受け入れられる存在なのかどうかを問うものだとしたのだ。そして両陣営とも、その講和締結が本当に価値のあるものかどうかという問題には十分に踏み込まなかったのである。

タイでは軍主導の政府が8月に国民投票を行い、軍の権力を確立して民主制を弱める新しい憲法を認めさせている。ところがタイ軍は憲法が成立した後に選挙を実行すると約束しており、これは実質的に「非民主的」な憲法を「選挙推進のもの」として売り込んだということだ。そしてこれも議会を通過している。

▼権力者のツールとしての民主制 


国民投票というのは、リーダー側がすでにやると決心したことを、「国民の手に選択肢を渡したもの」として描き出して「国民からの信任」というスタンプを押すために行われることが多い

ところがシロネ氏によれば「国民によって決断されたかどうかはそれほど関係ない。政治家が国民に問うことによって有利になるかどうかのほうが重要だ」という。

たとえば7月まで英首相をつとめていたキャメロン氏は、自分の決断であるEU残留の意見が通るはずであり、これによって離脱派のライバルたちを黙らせることができると予測していた。

タイ軍も憲法草案についての報道を制限しつつ、民主制への脅威という反論が出ないようにしていた。国民参加という装いをまとっていたが、実際に軍はその参加を制限することになったのである。

ハンガリーのオルバン首相も、EUからの難民受け入れ要求について問う国民投票を自ら企画したといわれており、これは自らの決断がEUからの反発を受けることを予期しており、ついでに自分の権力の立場を固めておくという、いわば先制的な措置であったといわれている。

いずれにせよこれらのケースでは、選挙が自身の立場を強化するためのツールとして使われたのである。

▼ハイリスク・ハイリターンな和平投票

「国民からの信任」というのは、下手をしたら国内での激しい議論から政治不安、さらには武力衝突までつながるようなものを決着するという意味で、良い結果を生むこともある。ところがそこで決定されることの意味が重大であればあるほど、そのリスクも高まるのだ。

1998年に締結された北アイルランドの「ベルファスト合意」の後に、北アイルランドとアイルランド共和国で二つの国民投票が行われた。これによって両国に生きる人々は自分たちの意見が尊重されたと感じたと共に、まだ戦い続けたいと考える人々を脇にどけることができたのであり、これによって紛争の再発を難しくすることができたのである。

国民投票が通常の選挙と異なるのはまさにここにある。それが成功するのは、国民全体が「投票は大衆の意志を代弁している」と感じたときだけであるという点だ。しかもその効果が高まるのは投票率が高く、どちらか一方が一方的な勝利を収めた場合であり、1998年の北アイルランドで起こったのはまさにこれだったのだ。

ところがコロンビアの場合、投票率は有権者のたった38%だったのであり、しかもその票もほぼ完全に割れていて、たった数千人の気まぐれでも結果を劇的に変えるものであった。もし国民投票で可決されたとしても、その講和には大衆による正統性のお墨付きがついたとはいえなかっただろう。

不思議なことに、コロンビアとイギリスの場合も、一方の勝利のために50%以上の過半数の得票を必要としなかったのだ。低い得票率で、しかもコロンビアの例のように結果が接近していると、政治面での議論が苛烈になるリスクも出てくる。

リーダーたちは大衆の意志を明確に示したとはいえないその結果を、受け入れるか、もしくはその結果を拒絶して政治面での反発か、体制面での危機のリスクを背負うかの選択に迫られるのだ。

▼ロシアンルーレット

国民投票というのは、争点となっているものとは無関係のところや、誰もコントロールできない要因で動かされることもあるために、極めて移り気なものである。

意識調査の結果というのは有権者たちが投票直前にならないと態度を決めないことが多いために、読み違いを起こしやすい。彼らはおのずと意見を変えやすいからだ。トリニティ・カレッジのマーシュ教授は「その投票から一週間もすれば国民はそこでの議論の可否を忘れてしまうものであるし、なぜイエスかノーに投票したかのか、その理由も忘れてしまう」と述べている。

そのため彼は「国民投票は信頼できないものだと感じますよ」と付け加えている。

政治から生じるノイズも国民の意志を捻じ曲げることにつながる。ある党の支持率の上下や党内の権力争いが外に漏れてくること、そしてメディアの関連問題についての報じ方など、それらすべてが影響を及ぼすことになる。

また、投票者たちは天候のようなランダムな要素にも左右される。コロンビアでは投票日の直前にハリケーンが通過しており、いくつかの地区では住民が避難しており、それが投票率そのものに影響を与えた可能性もあるのだ。

ハーヴァード大学の経済学の教授でイギリスのEU離脱投票の件について書いたケネス・ロゴフ(Kenneth Rogoff)は、「どこかの瞬間で過半数をとったことによってものごとが決定されたということが必然的に民主的であるという考え方は、そもそも民主制という言葉の概念を捻じ曲げたものだ」と書いている。

こんなのは民主制じゃなく、共和政体に対するロシアン・ルーレットでしかありません」と彼は付け加えている。

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たしかにキャメロンの無謀なギャンブル体制を見ていると、国民投票の危険性がわかりますね。

クラウゼヴィッツは戦争の「三位一体」の一つに「チャンス」(偶然性)を挙げてますが、そこに頼ろうとする政治家たちの本来持つべき「理性」も、政治(戦争)の混沌の中に発生する「情熱」に負けてしまう、ということでしょうか。

日本も憲法改正で国民投票を、という話が少し出たことがありましたが、これは一つの教訓例として参考になりますね。

以下は放送時の様子です。ご参考まで。

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(南の島:その2)


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by masa_the_man | 2016-10-19 18:03 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部は朝から曇っておりましたがギリギリ降らなかったですね。

さて、先週の放送(https://youtu.be/cF5g8VLIjDQ)でも触れた「国境」の話題について、保守派のビクター・デイビス=ハンソンの意見記事を要約したものを。

===

なぜ国境は重要で「ボーダレスワールド」は幻想なのか
by ビクター・デイビス=ハンソン

「国境」がここまでニュースの話題として取り上げられるのは史上初めてではないか。

中東から欧州に殺到するイスラム系難民やテロリズムの台頭のおかげで、欧州内の移動自由の権利を認める、いわゆる「シェンゲン協定体制」に対して反発が巻き起こっている

欧州の人々は人種差別主義者ではないが、中東からの移民の受け入れについては、それが合法的に入国して、しかも欧州の価値観や態度を共有を約束することができる人々(この点については不寛容であるとして何十年も前に破棄しているが)については受け入れる、という方向に行き着いているように見える。

欧州の人々は自分たちの国境が、北アフリカや中東での文化や社会を断絶している役割を果たしていたことをいまさらながら再確認しているのだ。

アメリカでもこれと同じような危機が発生している。オバマ大統領が反対にもかかわらず不法移民に対して大統領権限で恩赦を与えているからだ。メキシコや中南米からの不法移民に対する米国民の反発は、トランプ候補の台頭(これは国境に壁をつくると公約したことでも予測できた)を許すことになったのだが、これはドイツに難民が流入したことによってメルケル首相に対する反発が発生したのと同じことだ。

欧州と北米で人々の怒りを盛り上げているのは、エリートたちが推し進めている「ボーダレス・ワールド」である。エリート内では「ボーダーレス」が現代のポリティカリー・コレクトネス的な立場を占めるようになっており、その他の似たようなアイディアと共に、われわれの使う言葉を規定しつつある。

最近よく使われる言葉に「不法異邦人」(illegal alien)というものがあるが、これは「非合法移民」(unlawful immigrant)という曖昧な言葉から「証明書を持たない移民」(undocumented immigrant)という名前から、単なる「移民」(immigrant)や、完全に中立な「移住者」(migrant)というものに移り変わってきている。こうなると、この人物が入国してきているのか出国しつつあるのかわからなくなるのだ。

今日の国境開放への動きというのは経済・政治的な要因(米本土や欧州の人間が避けるような低賃金の仕事を請け負う労働者の必要性や、破綻国家を逃れようとするもの)だけによるものではなく、西側の学界が数十年間にわたって「国境言説」(borders discourse)というトレンディーな分野の知的扇動によってつくりあげたものでもある。

この「ポスト国境主義」とでも呼べる分野では、国境は単なる人工的な構成物となり、それは権力にある者によって外の世界、つまり貧乏で非西洋的で「排除すべき存在」を意図的に切り離すための手法でしかないということになるのだ。

あるヨーロッパの学者によれば、「国境が引かれるところで権力が行使される」というのだが、この観点からいえば、国境が引かれていないところには権力が行使されないということになる。これはまるで、ドイツになだれ込む中東移民たちには、その数の多くても西側の不満を抱えた政治による巧妙なごまかしによって権力を持てないといわんばかりだ。

ところが「ボーダレスワールド」の夢は、それほど新しいものではない。プルタルコスは自身の随筆集の中で、ソクラテスがアテナイの人間ではなく「世界市民である」と考えていたと主張している。欧州では共産主義の普遍的な「労働者の団結」という考え方は「国境のない世界」というアイディアを土台にしたものであったし、「万国の労働者よ、団結せよ」とマルクスとエンゲルスは強く勧めている。この考えに従うと、戦争が発生するのは国家が持つ国境という時代遅れのものをめぐっての不要な争いのためだということになる

何人かによれば、この終わりなき戦争を防止する方法は、国際的な統治のために国境を廃止することとなる。HGウェルズの『来るべき世界の物語』(The Shape of Things to Come)は国際的な識者たちが世界政府をつくることによって国境が最終的に消滅する世界を描き出している。

このようなフィクションは現実世界でも一時的な流行をつくりだしているのだが、国境という存在をなくそうとする動きは(ウェルズが生きていた当時の国際連盟がその一例だが)常に失敗している。

それでも左派は「ボーダレスワールド」の願いを持ち続けており、それは倫理的に優れたものであり、人工的に押し付けられた「違い」に対する勝利であると考え続けているのだ。

ところが真実は違う。なぜなら、国家の定めた国境というのは「違い」をつくるのではなく、そもそもあった「違い」が反映されたものだからだ。エリートたちの国境を消滅させようとする試みは、無駄であると同時に破壊的である

国境――そしてその維持、もしくは変化させるための戦い――というのは、農耕文明の始まりと同じくらいの長い歴史を持っている。古代ギリシアの戦争は、雑草の茂った土地をめぐって争われた。係争地となる高台の農園は耕作にはあまり向かなかったが、都市国家にとって文化の発生と終わりを決定するという意味で極めて高い象徴的な価値をもっていた。

歴史の中で、戦争を引き起こしたきっかけというのは伝統的にそのような国境地帯であった。アルゴスとスパルタの境や、ローマ帝国の国境としてのライン河とドナウ河、もしくはドイツとフランスの権力争いの象徴となったアルザス・ロレーヌ地方である。

これらをめぐる紛争は、少なくともその当初は隣国を侵略して占領するための目標であったわけではない。国境とは、明確な区分けを尊重する異なる社会同士の「相互表現」だったのであり、経済面での必要性や軍事安全保障といった面だけでなく、隣国の干渉や脅しに屈することなく独自の活動が行えるよう確保するための手段でもあったのだ。

ボーダーレスを崇める普遍的な教義を主張する人々の多くは、卑しい偽善から逃れることはできない。2011年にオープンボーダーの提唱者であるアントニオ・ヴィラライゴサは、市長公邸の周囲に壁をつくった最初のロス市長となった。

公邸周辺に住む人々はこの案に反対したが、その理由として、そのようなバリケードの必要性がないことや、1.2メートル以上の壁を宅地に造ってはならないとする市の条例に違反すること、逆に安全に疑問を投げかけることや、新しい壁は公邸の権力の象徴となったことなどを挙げている。

エリートたちは壁を造ることによって外界を切り離すことができるかもしれないが、その政策はその外で活動する資金や影響力をもたない非エリートたちに大きな影響を与えることになる。

壁によって生まれるこの二つの集団――ペギー・ヌーナンはこれを「守られた人々」と「守られていない人々」と呼んだが――は、ジェブ・ブッシュの選挙戦で誇張されることになった。フロリダ州知事を務めたブッシュ候補がメキシコからの不法移住を「(アメリカに対する)愛から出た行動」と呼んだが、この発言によって彼は自ら選挙戦にトドメを刺すことになった。

どうやらブッシュは、彼のアイディアが自分自身と家族に対してどのような影響が出るのかを選べるだけの富を持っていたということらしいのだが、アメリカの南西部に住んでいる人々にとって、このようなことはほぼ不可能だ。

より大きな視点からいえば、国境を軽視する人々というのは、なぜ数百万人もの人々がそもそも国境を越えて、非常に大きなリスクを背負いながら、使いやすい言葉や祖国を捨てようとするのかという問題を見ようとしていない。その答えは明白だ。1960年代の中国・香港間、現在の北朝鮮と韓国の間のように、移住というのは大抵は一方通行であり、非西洋から西洋、もしくは西側への支持という形で現れるのだ。

彼らは国境を越えるために歩き、登り、泳ぎ、そして飛ぶのである。そしてこれは、国境が人間の経験に対して異なるアプローチをとる社会をそれぞれ区別するものであり、一方がもう一方よりも成功していると見られていることの証拠となっている。西洋の社会というのは、国民の総意や宗教への寛容性、司法の独立、自由市場資本主義、そして私有財産の保護などを最も推進しやすい統治体制をもっており、これによって彼らの祖国にはほとんど存在しない経済的繁栄や身の安全を個人に提供しているのだ。

結果として、移民たちは西側諸国に向かうのであり、とりわけその理由は西洋文明が人種ではなく文化で定義されるものであり、その作法を共有したいと考える異人種は受け入れる唯一の存在なのだ。

西洋社会に生きる同化していない多くのイスラム系の人々は、西洋の法体系を無視して過激主義に生きることができると考えている。今日、パキスタンからロンドンに降り立った人は、祖国で実践していたイスラム教の戒律にしたがおうとするはずだ。

ところがこれには二つの暗黙の前提がある。一つは彼がパキスタンのイスラム教の戒律の元に帰りたいとは思わないことであり、もう一つはもし同じような文化を新しい土地に持ち込んだとしても、最終的には最初に祖国を逃れたのと同じ理由でその土地から逃れることになる可能性が高いということだ。

同様に、「証明書を持たないラテン系」の若者がドナルド・トランプの演説会を邪魔しようとする際も、彼らはよくメキシコの旗を振ったり、「アメリカを再びメキシコにしよう」(Make America Mexico Again)というスローガンを書いたプラカードを見せたりしている。

ところがこの感情的なパラドックスについては注意すべきだ。国外追放される可能性に怒りを感じている市民権をもたない彼らは、自分たちが最も生きたくない国の旗を何の考えもなく振っているのであり、同時に自分たちが断固として居残りたい国の旗を無視しているのだ。

国境というのは、隣家との間にあるフェンスと同じように、それぞれの国を分けるものであり、一方にあるものと、もう一方にあるものを「境界化」するための手段なのである。

国境は生得的な人間の欲望としてある獲得欲や所有欲、それに物理空間への欲求を強めるものであり、これは国境が明確に確定して分離されているものとして見なされ、そのように理解されないと不可能なのだ。

壁やフェンス、もしくは警備パトロールなどによって明確に引かれた国境線や、その管理というのは、人間の本性の中心に響いてくるのであるため、それをすぐに取り去ることはできない。それはローマやスコットランドの啓蒙主義に至るまでの裁判官たちが「モエム・エト・トゥーム」、つまり「私のものとあなたのもの」と呼んだものなのだ。

たしかに友人の間ではフェンスのない国境は友好関係を強化するものだ。ところが友好的ではない人間たちの間では、国境が強化されれば平和を維持することにつながるのだ。

====

デイビス=ハンソンといえば、「西洋式の戦争方法」を提唱したことで戦略研究では「戦略文化」の議論でだいぶ引用された古典学者ですが、この意見記事は米国の古い保守派の意見を代弁しているといえるでしょう。

議論としては「西洋バンザイ」という側面があるためにけっこう雑なところがありますが、フクヤマは「住みたいと思う国に移住することで移民たちは優れた国に足で投票している」と言ったことと通じるところがあります。

以下は放送時の様子です。ご参考まで。

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(南の島)

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奥山真司のアメリカ通信LIVE

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by masa_the_man | 2016-10-16 00:28 | Comments(3)
今日の横浜北部は朝から晴れました。そろそろ涼しすぎるくらいですね。

さて、昨日の放送(https://youtu.be/aWaIX4TwdmU)でも触れた、ローマの「難民危機」の話を扱った記事の要約です。

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ローマ帝国を死滅させた難民危機からわれわれは何を学べるのか
By エリック・シグリアノ

EU離脱を決めた英国からカレーの難民キャンプ、さらにはドナルド・トランプの想像上の国境の壁まで、難民や移民の流入に対する不安は最高潮に達している

オバマ政権は先日2017年度に前年と比べて30%多い11万人の難民受け入れ計画があると発表して共和党から非難されたが、それでもカーター・レーガン時代にソ連圏やキューバから受け入れた数よりもはるかに少ないのだ。

政治家たちは「前例のない」移民の圧力について口ごもったり扇動したりしているが、実際は同じようなことが1640年前の欧州、つまりローマ帝国のトラブルだらけの国境付近で起こっている

376年のローマ帝国は、今日の状態を奇妙に予見したような自傷的な体験をしており、これをきっかけにしてローマ帝国の崩壊につながる出来事が次々と起こっている。もちろん研究によれば、その最大の原因は野蛮人たちの連続的な侵入である。ところが歴史家であるアミアナス・マルセリヌス(Ammianus Marcellinus)をはじめとする歴史研究によれば、ローマの崩壊はまさに「難民危機」から始まったというのだ。

もちろんローマ人は、難民やそのほかの移民たちの受け入れに関して「ズブの素人」であったわけではない。ローマ帝国は、現在のわれわれの共和国たちが台頭するまでは、世界最長の多民族・多文化社会だったわけであり、最も多様性をもっていて、しかも成功した存在であった。

ーマは700年間にわたって、移民を同化したり多民族の地を占領したりすることによって発展していた。それによって、人口の少ない領土に暮らす人々は労働力を提供し、農民は帝国の都市と軍隊に食糧を提供し、とりわけ戦争を戦うための兵士まで提供したのである。「普遍的な万能薬」であるローマ市民への道は、すべての人々に開かれていた。最終的に皇帝マルクス・アウレリウス・セウェルス・アントニヌス(カラカラ帝)はすべての非奴隷に市民権を与えている(アントニヌス勅令)。

ところがローマの同化政策は、今日では「ISの戦士」に喩えられるフン族の戦士たちが、東からヨーロッパを席捲した時に破綻している。フン族はゴート族のいくつかの部族の土地を占領し、その他の部族を、西や南の帝国の国境まで追い詰めた。

その結果、男女・子供合わせて約20万もの人々がドナウ河の反対側に集まって亡命と保護を求めてきた。イタリアの西ローマ帝国とは反対に、コンスタンティノープルを支配していた東ローマ皇帝のウァレンス(Valens)は、ゴート族の主な部族の一つ(テルヴィンギ族)を、きわめて良い条件で受け入れることにした。

ローマが野蛮人を受け入れる場合、大抵はそれらをいくつかの小規模なグループにわけて同化を図り、反逆する勢力となるような大きな集団をつくらせないようにしていた。ところが皇帝と彼の軍のほとんどは、ライバルであったペルシャの帝国との戦いで不在であった。

ウァレンスは部族の分断を監視するための十分な兵力を残しておらず、さらにはゴート族の兵士を自らの軍に積極的に徴用しようとしていたため、テルヴィンギ族に対して好みの場所にまとまって居住するように許可したのである。これを喜んだテルヴィンギ族の酋長であるフリティゲルンは、自らをキリスト教に改宗すると提案している。

ところがこの計画は頓挫した。ローマご自慢の兵站能力も、買収されやすい高官たちや、圧倒的な数を誇る腹をすかせた難民たちを支えることができなかったからだ。彼らの傲慢さや無能さは、ラムズフェルド/ウォルフォウィッツ/ブレマー式のイラク占領の台本になっていたといってもいいくらいだ。

ローマの駐留軍はテルヴィンギ族の群れをキャンプに押し込み、これが彼らの死の収容所となった。汚職にまみれた高官たちは送られてきた食糧を中抜きしてしまい、同時にこのゴート族たちがキャンプの外に食糧を買いに行くのを拒否した。

腹をすかせた難民たちは、子供一人を奴隷に売る代わりに犬肉一頭分を購入したという記録が残っている。現地のローマ軍の指揮官たちはゴート族の酋長たちをいじめたり脅したりしており、ある時には彼らの従者を殺害したりしている。

苦境に追い込まれ怒りを押さえられなくなったテルヴィンギ族は、ついに反乱を起こし、ローマ軍が没収できなかった武器や、その場で造った棍棒などを使って、その国境部隊を圧倒している。ローマが入国を拒否した別のゴート族であるグルツンギ(東ゴート族)も、いまやドナウ河から侵入し、すでにローマの中にいた奴隷、鉱夫、囚人、そしてゴート族の兵士たちは、それに呼応する形で反乱をはじめた

ウァレンス皇帝は反乱を鎮圧するためにレヴァント地方から軍を戻し、最終的には自らもその軍を率いることになった。彼は、西ローマ帝国の皇帝にも助けを求めている。

結果として、ドナウ河への侵入から二年後に、ゴート族は現在のトルコのエディルネ県にあたるハドリアノポリスでローマ帝国軍と相まみえることになった。この時に酋長のフルティゲルンは、領土を明け渡すかわりに講和を訴えたが、ウァレンス皇帝は拒否して戦闘となった。

そしてこの戦い(ハドリアノポリスの戦い)ではゴート族側が圧倒的な勝利をおさめ、ローマ軍のほとんどや、ウァレンス皇帝自身までが殺害されている。ゴート族はローマ帝国の内部で自治権を確立し、410年にはローマ略奪を行っている。

今日行われている議論では、左右両派とも、この歴史の教訓からそれぞれ確信を得ることができるだろう。たとえば移民を嫌う人々は「国境を開放してしまえばどうなるかわかるだろう」と言うはずだ。それに対して「移民は国力になるし、難民受け入れは義務である」と考える人々は、それと反対の結論に至るはずだ。

とにかくローマはゴート族を排除できなかったのであり、侵入を拒否された部族たちも最終的にはドナウ河を渡ってきた。ローマの崩壊は、難民の適応や同化をせずに孤立させて虐待すれば、一体何が起こるのかを、まざまざと見せているのだ。

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典型的な「歴史のアナロジー」ですね。ローマ帝国の教訓がどこまで当てはまるかは状況が違いすぎて微妙ですが、直面するジレンマは似たところがある、ということでしょうか。

問題は著者も指摘するように、この歴史の教訓を政治的に両陣営が使えてしまう、ということですね。

こういうところにまだそれほど悩む必要がない日本は、やはり地理的に恵まれていると言えます。

以下は昨夜の放送の様子です。ご参考まで。




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(一昨日の都内の風景)

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奥山真司のアメリカ通信LIVE

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by masa_the_man | 2016-10-12 11:21 | 日記 | Comments(0)
今日の横浜北部は午前中大雨で、午後はなんとか晴れました。ようやく涼しくなってきましたね。

さて、数日前の放送(https://youtu.be/2LjFyA3jkWY)でも触れましたが、米陸軍が新しいコンセプトを発表しまして、そこから示唆されている内容が我が国の実力組織にも影響がありそうということで記事を要約しました。

個人的には90年代から2000年代に流行ったRMAに関する議論のアップデート版だと示唆されているところが印象的です。

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米陸軍の「マルチドメインバトル」:ジャミング、ハッキング、長距離ミサイル

By シドニー・フリードバーグ

毎年開かれる最大の国防カンファレンスの数日前のことだが、陸軍のトップの計画担当者の一人が、陸軍の従来からの活躍の場である陸から、空、海、宇宙、そしてサイバーへとその役割を拡大することを目指す、新たな計画を発表した。

アメリカの国防費が削減に向かっている中で、陸軍は優先する新たな投資対象として、無人機の撃墜やネットワークのハッキング、通信のジャミング、そして海での艦船撃沈までを狙うというのだ。

ところがこのような陸軍の野心的なコンセプトは、軍種間の競合関係を激化させるのではなく、むしろ他軍種や国防長官局からも歓迎されている様子だ

たとえばこの巨大な陸軍協会のカンファレンスで火曜日に開催される「マルチ・ドメイン・バトル」(Multi-Domain Battle)についてのパネリストには、TRADOCのディヴィッド・パーキンス(David Perkins)のような将軍のほかに、「第三の相殺戦略」(Third Offset Strategy)という近代化案を主導してきた国防副長官のボブ・ワーク(Bob Work)、中継ビデオで参加する太平洋軍の司令官であるハリー・ハリス(Harry Harris)提督、海軍副官のジェナイン・デヴィッドソン(Janine Davidson)。海兵隊司令官のロバート・ネラー(Robert Neller)、米空軍参謀総長のディヴィッド・ゴールドフェイン(David Goldfein)、そしてオーストラリア陸軍の近代化担当の(Gus McLachlan)少将である。

米陸軍は当初「クロス・ドメイン・オペレーションズ」(cross-domain operations)と呼んだコンセプトを、パーキンス将軍が率いた2014年の 「陸軍作戦コンセプト」の中で提唱している。

HRマクマスター(H.R. McMaster)中将といえば、パーキンス将軍の下で陸軍の「未来学者」として活躍している、因習打破を目指す知識人系の軍人だが、彼によれば、「マルチドメイン・バトル」というコンセプトは「副長官と彼の優先事項が反映されたもの」だという。

▼反・接近阻止

ワーク氏の「相殺戦略」やパネリストたち全員を突き動かす最大の脅威は、やはり中国とロシアの台頭だ。マクマスターが強調するのは、この「ライバル国」たちは、攻撃性と戦力をさらに増しており、軍の近代化を図りながら、クリミアや南シナ海で領土・領海を奪い取っているというのだ。

統合参謀本部議長のジョー・ダンフォード(Joe Dunford)海兵隊大将は、ロシアを「われわれにとって最大の潜在的脅威」と呼んでおり、新たな戦略的アプローチの必要性を訴えている。しかもそれは、人工的な実効支配を分割するような地理的な線に縛られてはならないし、われわれの敵が尊重しない、戦争と平和という線引きも越えるべきだというのだ。

ロシア、中国、さらにはそれよりも小さなイランのような国々でさえ、いわゆる「接近阻止・領域拒否」(Anti- Access/Area Denial: A2AD)の能力の獲得に投資している。

このような長距離ミサイルやセンサーなどによって精緻化されたネットワークは、潜水艦、要撃機、機雷をはじめとする兵力を加えることによって、数百マイル以内に入ってくるアメリカの艦船や航空機を察知して破壊することを狙ったものだ。A2ADの「危険領域」は、すでにバルト三国やポーランド、そして台湾のような、米国の同盟国たちの領土内まで拡大している。

マクマスター中将は今日の午後、記者団に対して「われわれはいくつかの決定的な領域で劣位に立たされている。すべての領域は1991年以来初めてみたことのないレベルで争われることになっている」とコメントしている。ちなみに彼は今年の四月に「米陸軍は将来的に射程や火砲の面で敵に負ける」とまで言っている。

「これはつまり、米陸軍は他軍種の能力に頼れないということだ」とマクマスター中将は述べている。アフガニスタンとイラクにおける米陸軍兵士と海兵隊員は、強力なターゲットの攻撃だけでなく、敵の通信の傍受や道端の爆弾の爆破信号の妨害、それに負傷者の救助などにエアパワーを必要としており、当然だがこれは敵の航空機を空域から排除しておくことが大前提となっているのだ。

もし敵のA2AD能力によってアメリカの航空機がその領域から排除されるということになると、それが紛争の最初の段階であったとしても、戦場の地上部隊は自律的に動かなければならないことになる。

逆にいえば、新たな脅威の登場は、アフガニスタンやイランで米空軍や海軍が地上の陸軍を助けているように、他軍種も自分の領域で陸軍の助けを活用できる、ということにもなる。マクマスター中将は「陸軍がパワーを陸上から拡大することによって、A2ADの諸問題を解決する際の根本的な役割を果たすことができるということになる」と述べている。

A2ADにはアメリカの兵力を排除しておくことに狙いがあるわけだが、もし米陸軍の部隊が戦闘開始の前から友好国の領土に派遣されていれば、ドアを少しだけ開けておくことができる。マクマスター中将は「もし先に到着していれば、そこは拒否される空間ではなく、すでに始めから係争地になっているということだ」と述べている。

米陸軍が戦えるのは地上だけではない。防御的ではあるが、パトリオットやTHAADの砲兵部隊は、敵のエアパワーから味方への航空基地や軍港の破壊を阻止するという意味で、決定的な戦力となっている。

攻撃的な面からいえば、米陸軍の地対地ミサイル(ATACMS)や、将来の長距離精密火力ミサイル(LRPF)は、陸上にある敵のミサイル発射機やレーダー、それに指揮所などを攻撃できるのだ。

これに海上への対艦攻撃能力を加えたところを想像してみてほしい。マクマスターは特定しなかったが、対艦巡航ミサイルや対艦用のエクスカリバー、もしくは極超音速発射体(HVP)などが加わることになるとほのめかしている。さらにはA2ADシステムの異なる部門を統合する敵の司令ネットワークに対して、ハッキングして妨害を行うサイバー・電子戦能力もある。

マクマスター中将は、「将来の砲兵部隊には、地対地、地対空、そして対艦能力が統合されることになるだろう」と述べている。ちなみに米陸軍用語では「砲兵」には大砲とミサイルの両方が含まれる。よって、将来はどのタイプの対艦兵器が使われるのかは不明だ。

米陸軍は戦闘部隊の中の砲兵司令部を強化しており、複数の領域における複雑な集中砲火をよりうまく調整しようとしている。

▼陸軍の近代化

米陸軍は、短期的には新たな対空システム、とりわけ対無人航空機システムの充実によって、自衛的な防御を強化することを狙っている。ロシア軍はウクライナで砲兵の目標選定のために安い無人機を使っており、莫大な効果を挙げている。ところが米陸軍は敵の無人機の指示系統を妨害できるような電子戦部隊を破棄してしまっており、短射程防空部隊(SHORAD)もほとんど解散してしまっており、その代わりにパトリオットやTHAADのような高価なミサイル防衛システムに投資している。

マクマスター中将によれば「米陸軍は現在、低くてスローなターゲットを狙うために既存のレーダーを改変中であり、空中の無人機を撃ち落とすための新たなジャミング用機器と高出力レーザーを開発中である。これは軍関係者や開発者たちの間で過去に例のない速度で行われており、その成果も現れている」という。

この改変には新たなテクノロジーを必要としない部分もあり、既存の機器を別の使い方をするだけでよいものもある。たとえばイラクやアフガニスタンでは、米陸軍は僻地の一体を強力な電波で覆うということもやっている。これによって、相手に米側の通信を傍受されないようにすることができるというのだ。

これらの領域以外にも、米陸軍は引き続き陸上システムに投資しており、それには軽戦闘車から精密誘導手榴弾、それに手のひらサイズの無人機までが含まれる。

マクマスター中将によれば、現在の「マルチドメイン・バトル」への動きは、90年代から2000年代の「トランスフォーメーション」とはかなり異なるものであるという。当時は「軍事における革命」(RMA)がもてはやされており、そこでは長距離、ハイテク、そして無血の戦いという夢が追究されていたからだ。ところが今日は、近接戦闘(close combat)が復活しているというのだ。

実際のところ、古いタイプの地上戦は、敵が米国のエアパワーへの対抗の仕方を学んだ今、その重要性を増していると言える。

なぜなら敵が都市や森などの「複雑な地勢」に逃げ込みつつ、ジャミング機器を使って米国の長距離センサーやミサイルを盲目化させ、航空機を近づけさせないようにできるということは、マクマスター中将によれば「われわれが近接戦闘をしなければならないということであり、敵に近づいて破壊しなければならない」ということになるからだ。

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一言でいえば「A2AD環境下では陸軍はもっと自律的かつ他軍種にとっても補完的な存在になるべき」ということなのでしょうが、近接戦闘の復活という点が印象的です。

それにしても米軍は略語で示せる新概念をつくるのが得意ですね。
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(TGIFのBG)


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奥山真司のアメリカ通信LIVE

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by masa_the_man | 2016-10-09 20:44 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部は朝から雨でしたが、昼過ぎから晴れてきました。

さて、少し前の記事ですが、ロシアの兵力に関して元米陸軍士官として戦略論の世界でも有名なロバート・スケールズが興味深い論考をワシントン・ポストに寄せておりましたので、その要約を。

===

ロシアの優れた新兵器?
By ロバート・スケールズ

去年の11月のことだが、私は欧州米陸軍の司令部を訪れた時にウクライナに展開しているロシア軍の活動状況についてのブリーフィングを受けた。若い情報官が2014年7月にゼレノピリャの戦闘の詳細についてやる気なさそうに暗唱している中で、私はロシアのたった一度の砲撃によってウクライナの2個装甲大隊が数分のうちにほぼ壊滅状態に陥ったと聞いた

当然ながら、私はもしアメリカの装甲大隊が同じような砲撃を受けたらどうなるかを想像した。そこで私が気づいたのは、ウクライナの例はロシアにとって、火力を集中的に使用した戦闘で戦った場合にはどのようになるのかを示すための絶好のチャンスだったということだ。私はその瞬間に「これは冷戦以降にはじめてアメリカの戦闘機能が外国に抜かれた初めての例だ」とつぶやいていた。

この時の気づきは、アメリカの陸上戦にとって火砲の力はほぼ百年間にわたってその戦闘力の中心的な存在であったことを考えれば、衝撃的なことであった。

たとえば、ノルマンディー上陸作戦の時のアメリカの装甲部隊や歩兵に対するドイツ側の評価は低かったが、砲兵のことは恐れていた。ドイツは部隊の垣根を超えて火力を集中させることはできなかったが、アメリカ側は「同時弾着射撃」(time on target)という発明のおかげで、一つの目標に対して砲撃を同時に集中させることができるようになっており、ドイツ側にとってはこの効果は破壊的なものであった。

湾岸戦争でイラク軍が最も恐れたのは彼らが「鋼鉄の雨」と呼ぶものであった。この「雨」は砲弾やロケットに積まれる何千発もの小さな懐中電灯サイズの子弾(bomblets)によって構成されているものだ。MLRSと一緒に運用される対砲兵レーダーは、フセインご自慢の砲兵を終日つづく集中砲火で制圧し、米軍側にとっては全く脅威ではなくなったのだ。

ウクライナでの戦闘は、もしアメリカの砲兵がもしロシアと戦うことになったらどうなるかを教える決定的な例だ。ロシアの新しい火砲システムは、われわれのそれの射程を3割以上も上回っている

彼らの「鋼鉄の雨」のシステムは、新型の「サーモバリック爆薬」が詰められた「子弾」の開発によって、われわれのものよりも優れたものとなっている。これらの爆弾は、爆発の際に強烈なガスの爆風を発生させ、通常の爆薬よりもはるかに致死性が高められている。もしロシアが重装ロケット発射システムの大隊がサーモバリック製の「鋼鉄の雨」を一度集中的に使用するだけで、約1.4キロメートル四方(350エーカー)にあるものをすべて破壊できることになる。

情けないが、アメリカの「鋼鉄の雨」の弾薬、つまり砲弾や弾頭は、「ポリティカル・コレクトネス」という神に捧げる生贄として、現政権と前政権によって意図的に破壊されている。彼らは「子弾」が含まれるあらゆる兵器の使用の中止に合意したが、これは(鋼鉄の雨を持たない)他国が、その種の兵器(クラスターなど)があまりに多くの不発弾を生み出して戦場に残り、民間人にリスクを与えることになるという理由からだ。

ロシア、中国、そしてイスラエルは、本物の戦争を戦わなければならないと考え、クラスター爆弾禁止条約にはサインしていない。その結果、ロシアの重装ロケット発射システム大隊は、高爆発型の通常弾を発射するアメリカのMLRSの大隊よりも5倍以上広範囲の致死区域を発生させることができるようになってしまったのだ。

ウクライナにおけるロシアの砲兵の活躍が強く示したのは、過去20年間においてロシアはテクノロジー面においてアメリカを飛び越していったということだ。ネバダ州の基地からテロリストを撃ち殺すことができるアメリカの「戦略」無人機は、たしかにロシアのものよりもはるかに進んでいる。

ところがロシアの「戦術」無人機は、砲兵を捕捉するという意味ではわれわれのものよりもはるかに進んでいると同時に、その数もはるかに多い。たとえば2014年の「デバルツェボの戦い」の初期に、ウクライナは最大8機以上のロシアの戦術無人機が上空を飛んでいたことを報告している。

さらに加えて、ロシアがウクライナで示した電子戦技術は、米国をはるかにしのぐ世界最高のものだ。240日間にわたるドネツク空港の包囲戦ではロシアはGPSや無線、レーダー通信に対する妨害を行うことができた。彼らの電子傍受能力はあまりにも高く、ウクライナ側の通信は麻痺させられた。ウクライナ軍の指揮官は、電波通信を発するとその数秒後に処罰的な集中砲火を浴びせられることになると不満を述べていた。

これはつまり、ロシア軍が米軍よりも優れていることを意味するのだろうか?もちろん答えはノーだ。もし米軍がロシア軍と今日戦うことになれば勝利することができるだろう。米軍は極めて高い練度の50万人の兵士によって構成されているからだ。

それに対してプーチンの80万人の兵士のうちの3分の2は、1年間だけの徴兵による兵士であり、彼らの戦闘能力には疑問符がつけられている。ロシア空軍も米軍には勝ち目がない。ところがウクライナの経験からわかるのは、もし紛争が起こるとすれば、米軍側の人的コストも高くなるということだ。

過去には最も強力であった米軍の戦闘能力の低下は、われわれに注意を促しているエピソードとしてとらえられるべきだ。在欧米軍の戦闘力の低下はタイミングの悪い時期に発生している。

たとえば共和党の大統領候補であるドナルド・トランプはヨーロッパを守ることの価値について公式に疑問を呈しているし、オバマ政権はアジアの海で大規模かつハイテクな戦いをするために数百億ドルもの防衛費を費やしている。

ところが今日の戦争では、小火器、地雷、そして大砲のような退屈な兵器がわれわれの兵士を殺しているのだ。このような事実に加えて、われわれは過去においては戦場で圧倒的であった戦闘力を犠牲にしている。これによって、われわれの善意がどれほどの致命的な結果につながるのかは容易に想像できるだろう。

===

一言でいえば、「非人道兵器を復活させよ」ということになるかもしれませんが、ロシアに対する米軍側の警戒感の強さがよくあらわれているかと。

武器調達においてはけっこうよく聞く話ですが、実際に部隊が必要としているは、最新型の大きなプラットフォームよりも、細かい備品や装備、それに武器弾薬の充実だったりするわけで、スケールズの提案もまさにそのような事情をアピールしているともいえます。

ちなみにスケールズはランドパワーの戦略理論の人物としてこの本で有名になりました。ご参考まで。

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奥山真司のアメリカ通信LIVE

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by masa_the_man | 2016-10-08 14:50 | 日記 | Comments(0)

日韓に核武装をさせよ

今日の横浜北部はなんとか晴れております。

さて、久しぶりの更新です。昨晩の放送(https://goo.gl/W43wVv)でも紹介した、かなり挑発的な内容のナショナル・インタレスト誌に掲載された論文の要約です。

この内容に賛成する、しないは別として、まずは考えるためにじっくりと読んでいただければと思います。

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日本と韓国を核武装させよ
by ジェームス・ヴァン・デ・ヴェルデ

日本は一刻も早く核保有国になるべきだし、韓国も核開発計画を始めるべきだ

北朝鮮は収容所国家である。その政府は非合法なものだし、不安定な全体主義体制だ。そして核兵器の技術の拡散者である。世界には不幸や、南北朝鮮の人々には大量死、そして苦しみや政治不安しかもたらしていないのだ。

おろかなことに、この国家は中国のおかげで存続しており、しかも中国は北が崩壊して朝鮮半島にアメリカのプレゼンスが上がるよりは、その体制を維持するほうがマシだと考えているのだ。

ところがこのような考え方は政治的にも視野の狭いものだ。北朝鮮が崩壊すれば、韓国は北を吸収することになり、アメリカが半島に残るすべての理由を終わらせることができるからだ。米軍は平壌の政権が崩壊すれば、文字通りに韓国を離れることになり、その規模を拡大することはない。

さらにいえば、北朝鮮にアメリカはその同盟国に対する脅威となる弾道ミサイル関連の技術を与えたのは中国自身である。中国は決して北朝鮮を消極的に支えているわけではない。むしろいつものように、北朝鮮の混乱を積極的に支えているのだ。

中国はアメリカをアジアから押し出すため、そして西側の外交を崩して防御的かつ未熟なままにしておくために北朝鮮を使っている。

そして「不拡散教」の狂信者たちは、核兵器が全体主義国家のみに拡散するようにしているのである。アメリカがあらゆるレトリックを使って果敢な努力の姿勢を見せつつ何もしない合間に、北朝鮮が核兵器を開発していたのは事実だからだ。

中国と北朝鮮に対して「核拡散は得だ」という考えから解放させるにはまだ手遅れではない。日本は運搬手段を含む核兵器の開発計画を真剣に開始すべきであり、これによって「北朝鮮への支援は非生産的であり、戦略的にも浅はかだ」と中国に示す必要がある。

韓国も核兵器開発計画を始めるべきだ。

中国は日本の核保有に強烈に反対していることを踏まえて考えれば、もし日本が「北朝鮮から繰り返される不正で非常に脅威を及ぼす挑発に対処するために核開発計画を開始する意図がある」と宣言すれば、中国は平壌の全体主義体制を崩壊させて韓国に北を吸収させることが自国の利益にかなるとようやく気づくことになるかもしれない。

アメリカは中国に対して「在韓米軍は韓国を守るために駐留しているだけだ」と確約することができるし、日本は中国に対して核開発計画は完全に防御的なものであり、もし北朝鮮が崩壊して半島が完全に非核化されれば完全に中止したいと約束すべきであろう。

日本の核開発計画は、北朝鮮の核開発計画を考えれば、完全に日本の主権の範囲内のものとなる。

アメリカが日本に提供している「核の傘」は、在日米軍の存在(ただし米国の負債の増大と同盟関係の弱体化で低下中)や、当該地域の米海軍の存在(中国に挑戦を受けている)、それに米政府の強いコミットメント(これも最近では疑問を持たれている)によってその信頼性が保たれているのだ。

ところが当然ながら、もし北朝鮮が大陸間弾道ミサイルと核弾頭の開発を成功させて米国本土に到達させることができるようになれば、アメリカの欧州に対する核の傘に対して起こったことが日本や韓国にも起こることになる。北朝鮮はICBMに加えて、日韓両国に対する核攻撃と同時にアメリカを核報復によって抑止する能力を手に入れることになるかもしれない。北の弾道ミサイル開発計画はアメリカの「核の傘」の信頼性に対する脅威となる。日本と韓国は自衛のためのあらゆる権利(というか義務と国連憲章に謳われている権利)を持っているのだ。

端的にいえば、平壌の政権崩壊以外にはこの地域の問題を解決する方法や、地域の未来はない。

北朝鮮のような全体主義国家が発展したような過去の例は全く存在しない。独裁的な国家とは違って、全体主義国家というのは発展できず、内部崩壊するだけだ。望むべき最高の未来(の崩壊)とは、中国にそれを求めさせ、引き起こさせて、管理させるようなものだけだ。

日本の核開発計画は中国を挑発させることになることから、中国は「北朝鮮は、韓国にいる米軍に対するバッファーとしての存在よりも問題が多い」と結論づけるようになるだろうし、最も利益を受けるのは、毎日苦難に直面している北朝鮮の国民自身であろう。

最大の目標は東ドイツの例のように、北朝鮮を平和的に崩壊させることだ。またこれは本物の核不拡散の手段としては最適なものである。北の崩壊がなければ、われわれは全体主義体制の核武装国家、つまり核武装した北朝鮮と永遠に生きていかなければならないことになるからだ。

もし中国が朝鮮半島においてチェスや「三目並べ」を行うつもりであれば、彼らはまず中国側の国境を開放することによって北を(ハンガリーや東ドイツのように)崩壊に追い込み、それから北の政治指導層や将軍たちに一時的な保護を提供し、その後に韓国政府に対して「(米軍のプレゼンスのない)朝鮮半島の非核化」の代わりに北の経済と政治的責任を負うように求めるだろう。

韓国(と日本)はこの交渉に飛びつくはずだ。そして日本の核武装計画は終了することになる。

現時点の中国は、まだ北のばかげた振る舞いや挑発に対して耐えることができると勘違いしているようだが、その理由は「金正恩の政権が大規模紛争を起こすような脅威ではない」と想定しつつ「北朝鮮は在韓米軍を牽制する目的にかなう」と考えているためだ。

北はこのような環境の中でも生き残ることできるだろうし、世界に自分たちの政権の正統性を見せつけて、アメリカとの和平交渉と合意を求めることによって西側が仕掛けてくる政権崩壊を防ごうとしている。

われわれは北京政府に「韓国の管理下にある戦略的に中立な統一朝鮮よりも、北朝鮮のほうが戦略的に危険な存在である」と納得させるべきである。韓の核計画は、地政戦略的な状況を中国にとって明らかに不利にするものだ。

現時点での西側の政治家たちは、このような方針を打ち出すにはあまりにも臆病すぎる状態であり、「世界は核兵器を廃絶すべきだ」という狭い議論に固執している。ところがこれは結果として「ならず者国家」たちの核武装につながっているのだ。

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著者は学者や実務者としての経験も長い人物であります。

もちろん日本に核武装をさせてしまえという議論はたびたび出てきますが、ここまであからさまなものを見たのは久しぶりのような気が。

私自身のコメントについてはこちらでやっていますのでぜひ。

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by masa_the_man | 2016-10-05 13:09 | 日記 | Comments(2)