戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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<   2016年 01月 ( 9 )   > この月の画像一覧

今日の横浜北部はあいかわらず快晴で寒いです。

さて、日本の大学では現在期末試験の真っ最中かもしれませんが、ちょっと前の記事で、私が『米国世界戦略の核心』という本(絶賛絶版中)を訳したこともあるハーバード大学のスティーブン・ウォルト教授が、卒業する学生たちに向けて「復習」的な意味を込めて書いたブログ記事が面白かったので、その要約です。

その内容は「国際政治学を5分でマスター」というぶっ飛んだものですが、そのエッセンスの部分はけっこううまくまとめられておりますので、興味あるかたはぜひご参考まで。

===

大学の国際関係論の学科を5分でマスターする方法
by スティーブン・ウォルト

●ここニューイングランド地方は晩春を迎えたが、これはつまり米国内の全国の大学やカレッジで卒業シーズンを迎えたことを意味する。

●もちろん卒業に向けて忙しい学生やホッとしている学生もいるかもしれないが、私は彼らの多くが密かに後悔しているのではないかと心配している。その明らかな理由は、彼らの多くが、国際関係論のコースをとって十分勉強したとは思えないからだ。

●もちろんコンピューター・サイエンスや生物学、経済学、応用数学、そして機械工学などはよい学科だと思うし、歴史や英文学、それに社会学などはとても魅力的なものだ。

●ところがそれらの分野のうちで、私もその魅力のとりこになった、世界情勢やグローバル化、対外政策のような、クールなことを教えてくれ学科は他にあるだろうか?

●ただし心配ご無用だ。私がその解決法をお教えしよう。

●数十年前のことだが、NBC系の土曜の夜のコメディー番組「サタデーナイト・ライブ」のプロデユーサーをつとめたグイド・サルドゥッチ(ドン・ノヴェッロとしても知られるが)は、「5分間大学」というという概念を創りだしている。

●それは極めてシンプルなもので、たった5分間で卒業の5年後にも覚えているようなことをすべて教える、というものだ。一例を上げると、「経済学;需要と供給」というものであり、「神学:神はあなたのことを愛している」などなど。

●これらを踏まえて、もしあなたが金融を専攻して面白いコースは何もなかったと感じているのであれば、このブログで国際関係論専攻の「5分間大学」を提示してみたいと思う。これは、国際政治の興味深い世界について知るべきすべてのことを、たった5つの基本概念で教えるものだ

●しかもよほど読むスピードが遅い人でなければ、これを全部読むのに5分もかからないはずである。

その1:アナーキー(無政府状態)

●国際政治が国内政治と異なるのは「中央権威が欠如している状態にある」ということなのだが、これはリアリストだけが認めているものではない。

●国際的な場には警察が見回りを行っているわけではないし、どちらが悪いかどうかを裁定を下すような裁判官はいないし、国が訴訟を起こせるような裁判所もなく、トラブルが起こったとしても誰かに110番をかけることもできないのだ(これについてはウクライナ、レバノン、ルワンダの各政府に聞いてみるがよい)。

●国家が互いから身を守るための中央権威が存在しないということは、主要国が自分自身で身の安全を守らなければならないということになり、今後もトラブルの発生に警戒しつづけなければならないことを意味する。

●このような状況が存在すると言っても、それは国家間の協力や、ごくたまに行われる小規模な利他的な行為が存在しないというわけではない。それでも国家にとって最優先すべきことは安全保障であり、国際政治全般において恐怖が長い影を落としているということを意味するのだ。

●もちろんアナーキーは「国家が思い描いていること」(by アレクサンダー・ウェント)なのかもしれないが、彼らの想定していることのほとんどが実際に問題を発生させているのである。

その2:バランスオブパワー(勢力均衡)

●これには私の提唱した「脅しの均衡理論」(balance of threats)も含まれることを付け加えておきたいところだ。すぐ上で説明したような「アナーキー」のおかげで、国家というものは、誰が強力で、誰が台頭・衰退しているのか、そして永遠に劣位に置かれてしまうのを避けるにはどうしたらいいかを考えるのだ。

●バランス・オブ・パワーは、国家がどのように潜在的な同盟国を見つけ、戦争が起こりそうなのかどうかについて、実にさまざまなことを教えてくれる。

●バランス・オブ・パワーの大きな変化というのは、概して危険なものであり、台頭する大国が現状維持に挑戦したり、衰退しつつある国家が予防戦争を仕掛けたり、もしくは単にそのシフトによって誰が現在最も力を持っているのかわからなくするために計算違いを発生させやすくするからだ。

●もちろんこの概念の正確な定義については長年にわたって議論されてきたのだが、バランス・オブ・パワーを念頭におかずに国際関係論を理解しようとするのは、まるでバットを使わずに野球をプレーしたり、バックビートなしでブルースを演奏するようなものなのだ。

その3:比較優位(または貿易の利益)

●国際経済のコースをとったことがない人は、「比較優位」という基本的な考え方を理解する必要があるだろう。これはリベラル派全般の土台となる、自由貿易の理論の考え方だ。

●このアイディアはシンプルだ。国家は他国より相対的に優位にあるアイテムに特化して生産し、それを他国の生産した相対的に優位にあるものと交換するほうが良い、というものだ。たとえばある国がすべてのモノの生産に優れていたとしても(全てにおける絶対優位)、他国は自国の相対的な効率がなるべく高いモノを生産すればやっていける、ということになる。

●このロジックは反証不可能なものであったが、それが広く認められるまでに数世紀かかっている。このような重商主義の(部分的)拒否や、より自由な貿易の推奨は、現代のグローバル化の根幹を成すものであり、なぜ世界は200年前よりも豊かになっているのかを説明するカギとなる理由となっており、この基本的な現実を把握できなければ、国際的な商業活動の驚くべき広がりを理解することは不可能になってしまう。

その4:認識間違いと計算間違い

●私の頭の良い友人の一人がよく言っているのは、国際政治のほとんどの現象は3つの言葉に集約されてくるということだ。それは「恐怖」(fear)「貪欲」(greed)「愚かさ」(stupidity)である。

●本稿ではすでに最初の2つについてカバーしているが(アナーキーとバランス・オブ・パワーは恐怖、自由貿易は貪欲が抑えられた形のもの)、3つ目の「愚かさ」もそれらと同じくらい重要なものである。

●なぜなら国家のリーダーたち(もしくはその国家全体)が互いに勘違いすることがよくあるということや、非常に愚かなことを行うということをが理解できなければ、国際政治や対外政策を本当に理解できないからだ。

●ある国が脅威を感じて決定的な動きを行うと、他国はそれを「危険な野望を持っているから抑えこまないといけない」と誤って思い込んでしまうことがある。

●もちろんそれとは反対のことが起こることもある。たとえば実際はかなり侵略的な側が、他国に対して「敵の狙いは限定的なものだな」と信じこませることに成功することもあるからだ。

●さらに、国家自身が自国の過去を美化して伝え(自分たちは悪いことをしたことはなく、他国が常に侵略的であるなど)、他国が同じ歴史について別の見方をしていることに気づいて驚くこともあるのだ。

●国際関係論の学者であれば、国家のリーダーというものは、いかに訓練を受けた頭の良いアドバイザーたちの群れにアドバイスされ、しかも膨大な政府機関や諜報機関に支えられていても、愚かなことをすることが多い、という事実は知っておくべきなのだ。

●もちろんその理由は、情報が不完全なものであったり、他国はブラフをかけたりウソをついたりすることもあり、官僚や政策アドバイザーたちが普通の人間の弱点(臆病な行為、保身、そして限定的な合理性など)をさらしてしまうことがあるからだ。

●これを読んでいるあなたは、今から5年後にここで説明されている細かいことをすべて忘れているかもしれないが、以下の教訓だけは絶対に忘れないでいてほしい。それは「リーダーたちというのは、大抵の場合、自分が何をしているのかわからずにリードしているものだ」ということだ。

その5:社会構成

私は社会構成主義者(コンストラクティビスト)ではないが、そんな私でも、国家や人間同士の交わりが変化する規範やアイデンティティによって影響を受けることが多く、これらの規範やアイデンティティは、人類が生まれながらにして身につけたようなものではないし、固定したものでもない、ということは認めている。

●それとは対照的に、このような規範やアイデンティティというのは、人間同士の交わりによって生まれたものであり、それらはわれわれの日常生活の行為だけでなく、われわれが何を語り、何を書き、時間の経過と共にわれわれのアイディアがどのように変化していくのかを教えているからだ。

●ナショナリズム、奴隷制の終焉、戦争法、マルクス・レーニン主義の興亡、そしてゲイの結婚に対する態度の変化をはじめとするグローバルな規模の重要な現象は、社会的な現実が物理的な世界とは違うということが認識できないと、そもそも理解できないのである。

●そしてそれは、人間の行為や発言、そしてその考えによって作られたり再構築されたりするものなのだ。

●もちろんわれわれは、その態度や規範、アイデンティティ、そして信条などがどのように発展していくのかについては予測できないのだが、このような国際社会における一つの見方を心得ていれば、それでもいままで変化することがないと思われていた現実が突然変化するのに驚かされることはなくなるのだ。

〜〜〜

●これで「5分間大学」の国際関係論の学科の講義は終了である。もちろん学科全体にはこれよりもはるかに多くのことが含まれているのは当然なのだが、時間がないのでこれでおしまいだ。

●もしあなたがこの5つの概念をよく理解できていたら、国際関係論専攻の学生たち(その学問に進んだ人を除く)が卒業してから5年後に覚えていることのほとんどを知ったことになる。

●もちろん私は、これらの5つの概念だけでこの分野のすべてを理解できると言いたいわけではない。たとえば本物の専門家になるためには、抑止と強制、制度機関、選択効果、民主的平和論、国際金融、さらにその他の多くのカギとなるアイディアについて、十分知らなければならないからだ。

●さらには国際政治の歴史を活用できるほどの知識も役立つものであるし、特定の政策分野についての詳細な専門知識も必要かもしれない。しかもこのレベルの知識を身に付けるためには、大学院レベルの訓練が必要となるため、今回のようなたった5分間では物足りない。

●とにかくあなた(もしくはあなたの子供)が今年卒業するのであれば、私は心からお祝いしたいと思う。そしてもしあなたが国際関係論で学位を取得し、しかもこの分野をさらに研究して行こうと言うのであれば、心配はしないでほしい。

●なぜなら私の世代の人間たちは、あなたたちが取り組むべきいくつものやっかいな問題を残してきたし、あなたたちがわれわれの世代ほどひどい仕事をするとは思えないからだ。

===

非常に参考になります。学生に読ませたいですね。テストの後に配布しようかと。

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by masa_the_man | 2016-01-28 13:29 | 日記 | Comments(0)
今日の横浜北部は朝から快晴です。しかし寒いです。

さて、久しぶりのブログ更新は、昨晩の放送(https://youtu.be/ZIxPsLHGZ3s)でも触れた、テクノロジーの進化と経済成長の停滞についての興味深い記事の要約です。

たしかにここ50年間とそれ以前の50年間のテクノロジーによる社会変化の大きさは桁違いのものがありますね。言われてみて納得。

===

アメリカの「最良の日」は過去のもの?
by エデュアルド・ポーター

16-1/19 NY Times

●「奥様は魔女」をはじめとする60年代半ばに流行していた人気テレビ番組を見てわかるのが、当時の中流階級の家庭というのは今日の中流階級と同じように、洗濯機やエアコン、電話に車を持っているということだ。

●もちろんネットやビデオゲームの類はまだ発明されていなかったが、その生活様式は現在と劇的に違うわけではない。ほとんどの家庭にはテレビやラジオがあったし、何百万人もの人々がダウンタウンで働いて郊外に住んでおり、その間は高速道路でつながっていた。アメリカの平均寿命は70歳であり、これは今日よりも8年ほど短いだけだ。

●ところがそこから50年ほど遡ってみると興味深いことがわかる。都市部に住んでいたのは人口の半分以下だったし、フォードのT型は生産されはじめていたが、アメリカ人は舗装されていない砂利道を馬車で移動していたのだ。

●冷蔵庫やテレビなどはあるわけがない。ほとんどの家には電気がきていなかったからだ。そして平均寿命はたった53歳だった。

●現代のアメリカ人は、どうも「歴史上ないほど劇的に変化している時代に生きている」と思いがちだが、このような比較、つまり20世紀半ばに経験した変化と、現在の変化の状況を比べてみると、その変化はそれほど劇的ではないことがわかるし、将来の経済的展望についても様々な疑問が湧いてくる。

●この比較から、次の50年にはどのような変化が起こるだろうか?テクノロジーの変化は遅くなったのだろうか?

●「アメリカの最良の日はすでに過去のものである」という考えは、シリコンバレーのハイテク企業のオフィスから発せられるテクノロジー楽観主義とは大きく異なるものだ。そしてこれは現在の政治面における不安感にも直結しており、国民的な議論にも入ってくるものだ。

●ノースウェスタン大学の経済学者ロバート・ゴードン(Robert Gordon)氏は、ここ数年間の自身の慎重な議論を記した論文をまとめた新著『アメリカの成長の興亡』(The Rise and Fall of American Growth)という大著を出版した。

●ゴードン教授はこの本の中で南北戦争以降のアメリカの生活水準の移り変わりをいきいきと描いたのだが、結果として、アメリカが今後直面するであろう意気消沈する予測を行っている。

●この本のまえがきの中で、ゴードン氏は「今日の若者の生活水準は、その親達の世代が19世紀後半から経験してきたように劇的に上がるとは思えない」と語っている。イノベーションはこれまでの40年間とほぼ同じようなペースでゆっくりと進むはずだと予測しているのだ。

●たしかにインターネットの進化にもかかわらず、現代の全般的な生産性(これはイノベーションの生産性への貢献を表すものだが)は、それ以前の50年間のたった3分の1のペースでしか上昇していないのだ。

●さらに厳しいのは、ベビーブーマーたちが退職し、女性の労働力の供給量が横ばいになるにつれて、労働人口が減り続けることが予測されていることだ。

●そして20世紀に劇的に生産力を拡大する原動力となった教育の向上にも、それほどの期待はできないのである。また、所得のさらなる集中化が意味しているのは、その生産性がどのようなものなろうとも、人口全体としてはその果実をうまく共有できないということだ。

●これらを踏まえてゴードン教授は、19世紀後半から毎年2%の割合で増えてきた人口の下から99%の人々の収入は、次の数十年においてはその成長率がほぼゼロになってしまうと論じている。もちろんゴードン教授のこのような予測が完全に正しいとはいえない。

●たしかに経済学者というのは、人口と教育、それに収入格差などがネガティブに働くと経済成長率が落ちることについては認めている。ところがここ数十年間の生産性の低下は、破壊的な金融危機のような、一時的な要因によって影響を受けていることは明らかなのだ。

●実際のところ経済学者たちは、どのような形でテクノロジーのブレイクスルーが起こるのかについて信頼性のある理論を持っていない

●経済史の専門家で、同じくノースウェスタン大学で教えるジョエル・モキール(Joel Mokyr)教授は、これから大きなブレイクスルーが起こる可能性が高いと主張している。

●科学はガリレオが天体を新たに理解しようとして望遠鏡を使用した時から、テクノロジーの進化に便乗している。この「新しい科学」が、結果的にテクノロジーのイノベーションを促したのである。

●モキール教授によれば、ゴードン教授が説明できていないのは、IT革命やその他の近年の発展が革命的なツールやテクニックを生み出したことであるという。それらには遺伝子組み換えや急速なビッグデータの解析などが含まれる。これが医療や素材関連の分野であらたなイノベーションを起こすチャンスを広げたというのだ。

●モキール教授によれば、科学の探求に有用となるツールの進化のスピードは急速になってきており、今日と比べて30年後や40年後のテクノロジーの世界はどのようになるのか想像もできないほどであると述べている。

●それでもゴードン教授の議論は、簡単に拒否できないものだ。もちろん彼はテクノロジーの進化がほぼ止まるような事態を予測しているわけではないのであり、むしろ1920年代から70年代まで発生したようなイノベーションや経済発展はたった一度しか起こらないと議論しているのだ。

●そして今後の進化は過去40年間や、1920年代よりも前の時代のような、ゆっくりとしたものになるだろうというのである。ゴードン教授自身も「もちろんイノベーションは起こるが、それほど劇的にはならない」と述べている。

●1990年代から2000年代の爆発的な生産性の向上が薄れる中、経済学者の中で、ゆっくりとした進化を予測しているのは彼だけではない。

●サンフランシスコ連銀のジョン・フェルナルドとスタンフォード大学のチャールズ・ジョーンズは、最近発表した連名記事の中で、「将来は過去に比べて、教育の達成と先進国の研究開発の勢い、それに人口などの分野における成長がすべて鈍化する可能性が高い」と記している。

●テクノロジー進化の鈍化についてのゴードン教授の見解については、前連銀総裁で現在はブルッキングスに務めるベン・バーナンキ氏の発言からもうかがい知ることができる。彼によれば、長期金利はかなりの期間にわたって減少しつつあるというのだ。

●これは中国やその他の国による、米国債の爆買いによる貯蓄額の増加に対する反応であるともいえるが、同時にそれは、投資家たちが意識・無意識にかかわらずゴードン教授の立場に同意していると言えるのだ。

●「マーケットに投資している人々は資本投資における利率が15年、30年前に比べて落ちていると言っている。したがって、ゴードン氏の予測はマーケットの現実をいくらか反映している」とバーナンキ氏は説明している。

●他のデータも似たような方向性を示している。たとえば新しい企業の数によって測られる「ビジネス・ダイナミズム」という指数は衰退しつつあるように見える。設立5年以内の企業の雇用数のシェアは、1982年の19%から2011年の11%に下がっているからだ。

●もちろん批判的な見解には一理ある。トーマス・マルサス以来、現代のような悲観的な将来予測も、数年後に経済が活発になればそれが間違っていると否定されてきたからだ。

●シカゴにあるイリノイ大学の経済学史専門家であるディアドレ・マクロスキー(Deirdre N. McCloskey)教授は、フランスの経済学者のトマ・ピケティの大ベストセラー『21世紀の資本』について書いた論評の中で、「人々は世界が地獄に向かっていると聞きたがる傾向があるのですが、私はこれについて全く理解できない。悲観主義は、現代の経済世界についての頼りにならない指標でありつづけているからだ」と書いている。

●ところがその反対の楽観主義も、やはり認知バイアスを持ちやすい。しかもこれはただ単に、われわれの楽観的な起業家たちの所得が、国のGDPよりも急成長しているというだけではない。宇宙旅行やアップルウォッチ、それにグーグル・グラスのような新しいイノベーションの多くは、そのような楽観主義の人間たちのために向けてつくられているからだ。

●「リッチでテクノロジーの最前線であるシリコンバレーにいれば、状況は段々と改善しているというのは正しいだろう」とハーバード大学のローレンス・カッツは述べている。

●ただし問題は、それと同じことが「その他」であるわれわれについて常に当てはまるわけではないということだ。

====

いやあ、考えさせられる記事です。

私は戦略学でいうところの「軍事における革命」(RMA)の議論からこのテーマに注目していたのですが、この記事は最終的に経済成長というところに話をもっていきましたね。

戦争の手段と経済活動の手段というのはリンクしているため、今後の「かせぐ手段」がそのまま「戦いの手段」にどうつながってくるのか注目したいです。
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(過去の最先端テクノロジー)
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by masa_the_man | 2016-01-27 12:00 | 日記 | Comments(1)
お知らせです。

ご好評いただいていた拙訳『南シナ海』が、このたび講談社の「プラスアルファ文庫」となって文庫化されて発売されることになりました。

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文庫化されたことで非常にお求めやすい価格になっております。もちろん内容はそのまま、そして新たに解説を少し書き加えました。

単行本では手の届かなかった方はぜひ!
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(日経に掲載された広告)

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by masa_the_man | 2016-01-18 00:00 | おススメの本 | Comments(0)
さて、非常にたくさんの方からご応募いただいた3月発売予定の軍事戦略本のタイトルの候補ですが、先ほどで募集を締め切りました。

当選者については、発売日が近くなりましたがに本ブログか放送(http://ch.nicovideo.jp/strategy2)のほうで発表する予定です。正確な発表日時が決まりましたらまた追ってお知らせします。

ご参考までに、ご応募いただいたタイトルを以下に記しておきます。

====

・「エアシーバトルの攻防~アメリカ軍事戦略のマントラ~」

・対中軍事戦略 エアシーバトル編

・「アメリカの変遷するアジア戦略:これまでの戦い方ではもう通用しない」

・「アメリカが模索するアジア戦略:空軍力と海軍力に加わる新たな戦力」

・「アメリカの新アジア戦略:エアシーバトルを超えて」

・反中国包囲網を超えてー空と海の米国地政学

・もうひとつの中国包囲構想:エアシーバトルを越える米軍事戦略

・「旧世界」を包囲せよーアメリカの対中戦略論

・ 偽装海戦で孫子の国を騙せ!エア・シーバトル

・アジアの海と空を征した先に:米軍事戦略がエアシーバトルを超えるとき

・「ふたつの空とひとつの空」、

・「ふたつの海とひとつの海」をひとつの空間へ

’「空海の彼方に:注、仏教の本ではありません」

・「アメリカの逆転対中戦略」 ━アジアの平和はアメリカにしか守れない

・孔明もびっくり! 戦略学で中国に勝つ方法

・ エアシーバトル 奥山画伯の一目で解る徹底解説イラスト付き

・「進化する対アジア戦略:空と海を超えるアメリカの深謀」

・新世代のエアシーバトル:肥大化する新大国への米軍の対抗策

・「米国の新アジア戦略:新たな戦い方を求めて」

・「米国のアジア複合戦略:多角的な対中安全保障を求めて」

・「復活するアメリカ~アメリカの新対中戦略~」

・「反撃するアメリカ~アメリカの新対中戦略~」

・ アメリカ軍 エアシーバトル構想の行方

・Air–Sea Battle構想 アメリカ海空軍の戦略

・Air–Sea Battle アメリカ戦略の全貌

・AIR–SEA Battle構想 (SEALDsが空気なんじゃありません)

・戦略科学のアリエール エアシーバトルならアリエールでしょ

・安心してください(エアシーバトル)

・リムランドへの挑戦~われわれはマハンを越えられるか?~

・「進化する対中戦略:空と海を超える米国」

・ 「さっさと中国をだまらせろ!」

・「空と海を超える対中戦略:米国の本心を探る」

・ 「空と海と大地と呪われし龍」

・アメリカの対中軍事戦略

・エアシーバトルと対中軍事戦略

・アメリカの対中戦争計画

・「エアシーバトルを凌駕せよ:アジアの米軍戦略の議論」

・「未来のアメリカ軍事戦略:アジアから紐解く次世代の戦闘」

・「アメリカの対中軍事戦略:エアシーバトルの次は何か」

・アメリカの大東亜

・ アジアの平和を守る戦略学

・エアシーバトル最前線

・国防の戦略学

・エアシーバトルの全て

・日本海海戦2016

・エアシーバトルで中国に勝つ

・「騒音をまき散らす海軍とパクリ技術で作られた空軍が、最新鋭兵器を保有しながら金儲けのために逡巡したリベ大統領に挑んだ結果…」

・『アメリカ対中国 ~アメリカの選択肢~』

・「ウラノスとポセイドンの大戦」

・「エアシー総活躍社会」

・『安心してください、議論してますよ』

・エアシーバトルのその先に

・エアシーバトルを越えて

・米国の対中エアーシーバトル構想

・エアシーバトル アメリカの対中戦略

・エアシーバトル アメリカの対中アジア戦略

・エアシーバトル アメリカのアジア戦略

・「アジアにおける二重の封じ込めをどう維持していくか」

・エア・シーバトル:それは一体何なのか、そして何をもたらすのか

・これからどうなる?エアシーバトル

・『龍は鷲をしのげるか--アジアにおける米軍事戦略についての議論』

・「中国封殺作戦」

・「龍殺し」 アメリカによる対中軍事作戦

・「海の騎士道:レッツ・バトル」

・「広域安全保障レッド・バロン構想」

・「海と空とこれからの戦争 ~新時代のアメリカ太平洋戦線~」

・「空海の戦い:中国へ渡れ」

・「エアSEALDs」

・『対中国戦略における油断と巻き返し~アジアにおけるアメリカの戦術のこれから~』

・アメリカの現代対中戦略

・アメリカの現代軍事戦略:アジアにおいて中国をどう打ち破るか?

・アメリカの対中軍事戦略:相反する2つのアプローチ

・太平洋冷戦の世紀

・奪われる世界の命運と日本人の未来

・「評判ビリのアメリカが仲間と組んで、空と海でハイテク戦力を使って、中国を封じ込める話(ビリ・ヤンキー)」

・脅威は秒速でやってくる

・空の支配者  

・空の支配へ 

・アジアの空 

・空の王者 支配の攻防

・米軍の対中戦略 ー海と空を越えてー

・海軍、空軍、そしてその先へ ー米軍のアジア戦略ー

・「気が重い対中戦略 どないしょ」

・サイレント・ウォー

・『アジアの未来を決める空の戦略』

・中国を意識し始めたアメリカのアジア戦略

・「エアシーバトルとは何か?:中国の野望を阻止するアメリカの戦略」

・「孫子の子孫とエアシーで仕合えー」

・海と空の覇権~中国の挑戦

・海と空の安全保障:上段下段の読み合いに俺たちが負けるわけがない

====

以上です。

こうやってみると、今回は意外に(失礼)マジメ系が多いというか。カギ付きのコメントが多かったのも特徴的でした。

もし「オレの候補が抜けている!」という方は、下のコメント欄までお願いします。

大変多くのご応募をありがとうございました!


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by masa_the_man | 2016-01-17 00:02 | 日記 | Comments(4)
今日の横浜北部は晴れました。真冬ですが昼間は意外とすごしやすいというか。

さて、先日のエントリーの続きです。あくまでも参考文献として。

===

▼パワープレイヤーたち

このようなことは中国も行いたいはずだ。習近平氏の「中国の夢」というスローガンの中心にあるのは、中国の軍隊を、世界政治の舞台において見栄を張れるだけの勢力にしたいという意志の現れなのだ。

●大規模な艦船が演習を行ったり、遠隔地の港に入港する際に、海軍は相手国に影響を与えたり強制することに使える。

●中国ほどの規模や歴史、そして経済的な影響力を持つ国がそのような力を持とうとするのは不思議ではない。また、中国が(アメリカのような)潜在的な敵に対して近くの沿岸を自由に航行させることを阻止したいと考えるのも当然であろう。

●「法を基礎とした国際秩序の維持」や「航行の自由」をアメリカに依存している国々にとって、中国のシーパワーの台頭が問題なのは、その態度と地理的な事情にある。

●まずインド洋、南シナ海、そして東シナ海というのは、世界経済にとって致命的な交通ルートであり、世界の取引量の多い10大貨物港のうちの8つの港が、この地域に位置している。世界中で運搬される石油の量の三分の二はインド洋を通過して太平洋に向かい、マラッカ海峡を毎日1,500万バレル(15億リットル)の石油が通過しているのだ。

●世界の海洋貿易のほぼ30%が南シナ海を通じて行われており、そのうちの120億ドル分がアメリカへ向かっている。世界の漁獲量の10%がこの海で生み出されており、書いていには石油や天然ガスが埋蔵されていると見られている。

●もちろんこの海域のほとんどは、この地域最大で最も積極的な中国が、その領有権を主張している。南シナ海における北京政府の領有権の主張には、パラセル諸島(台湾とベトナムも主張)、スプラトリー諸島(台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、そしてブルネイも)、そしてスカーボロー礁(フィリピンと台湾も)が含まれる。

●中国は南シナ海の90%以上を含む、いわゆる「九段線」での主権をあいまいな形で主張しているが、これは1949年に台湾に逃れた国民党政府から受け継いだものだ。そしてこの主張が島や岩礁だけ、もしくはそれらを含むすべての海域に適用できるのかについては適切な説明がなされたことはない。

●東シナ海においては(日本が実効支配する)尖閣諸島について日本との争いが続いており、最近では海上における沿岸警備隊の巡視船同士の牽制が日常的になってきている。

●アメリカはこれらの領有権の主張については中立の立場をとっており、「軍事力ではなく国際的な司法手段による解決」や「すべての領有権の主張は自然の地勢だけを基礎としたものにすべきだ」とだけ主張している。

●ところが中国は拡大しつつあるシーパワーを強制的に使いつつあり、侵略的なパトロールを実行したり、他の領有権の主張国の水域に侵入したり、最近に至っては、それまで暗礁であった五ヶ所に浚渫工事を行い、大規模な人工島を埋め立て計画を推進しているのだ。ちなみにこの人工島は、国連海洋法条約では12カイリの領海も主張できない。

●これらの人工島には、最新式の情報収集のための機器が設置され、すぐに軍事的に使用できる滑走路までが建設されている。

●この海域でこのような行動をしたのは中国が最初ではない。ところが中国は、過去40年間の間に他の国々がつくったほぼ20倍もの規模の人工島を、たった2年以内につくりあげてしまったのだ。

●もちろんアメリカにとって、このような基地を(軍事力で)無力化するのは簡単だ。ところが戦争に至らない状況下では、中国がその軍事力をこれまでよりもはるかに速いスピードで展開できるようになるのは間違いない。

●アメリカの国家安全保障アドバイザーであるスーザン・ライスが「国際法の許す限り、米軍はどこでも航行し、飛行し、活動する」と述べ、しかも「航行の自由」の警戒活動が再開されると宣言したのは当然のことと言える。

●アメリカ国防総省の文書によれば、中国海軍の艦船の数はアジア最大であり、300隻以上の軍艦、潜水艦、揚陸艦、そして哨戒機を保有しているという。インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、そしてベトナムの保有数を合計しても200隻ほどであり、しかもそれらの多くは中国のものと比べて老朽化しており、パワーも落ちるものばかりだ。

●巡視船の数を比較しても状況はほとんど変わらない。中国は205隻あるのに対して、上記五カ国を合わせても147隻である。この巡視船は領有権の主張に使われるが、水平線の外にはより強力な海軍の艦船が控えていることも珍しくない。

●中国との領有権問題を抱えるほぼすべての国々は、新しい艦船の購入したり建造を努力したりしているが、中国との能力の差は開きつづけている

▼今後の展望

●したがって中国は(そのつもりがあるかどうかはわからないが)、海洋の領域や資源を規制するルールと規範、航行の自由、そして紛争の平和的解決を脅かす可能性がある。アメリカはこの挑戦に応じる準備はできているのだろうか?

●「アメリカの最終的な撤退は不可避だ」と恐れている人々はほぼ確実に間違っている。たしかにその成長は急速だが、中国の(公式発表による)国防費は米海軍単独の予算よりも多いわけではないからだ。

●アメリカには10隻の原子力空母があり、そのうちの一隻は日本に母港がある。中国はソ連時代に建造された小規模の改修された空母がたった一隻あるだけであり、それ以外に2隻が建造中だという。

●アメリカの世界最新式の水上艦であるズムワルト級のステルス駆逐艦は、その3隻すべてが他の新しい艦船や航空機と共にアジア太平洋地域に配備される予定だ。中国の軍事専門家たちは、米海軍の能力に追いつくためにはあと30年かかると考えている。

●アメリカにはそれに協力してくれる他国の海軍があり、それはアジア太平洋地域だけでなく世界中にもある点で優位となっている。たとえば日本の海上自衛隊は戦力投射能力に欠けているが、世界第5位の能力を持つ海軍だと認められており、常に米海軍と演習を行っている。

●去年9月の国家安全保障関連法案の通過によって海上自衛隊は同盟国との共同任務の可能性の幅も広がっており、これは北京政府側にとっては都合の悪い状況となってきた。さらに日本は中国と領土紛争がある地域の近隣諸国と緊密な連携を取ろうとしており、フィリピンとベトナムに新しい警備船と古い護衛艦を供与するために有利な条件のローンを組んだほどだ。

●インド海軍も協力的な仲間だ。中国に対する警戒感が強まるにつれインドは西洋諸国の海軍たちがと演習を行うようになり、西側もインド海軍の能力の高さは認めている。毎年恒例の米国とのマラバール演習にはオーストラリアやシンガポールの艦船だけでなく、2015年になってはじめて日本が参加している。政権を担ってまだ日の浅いインドのモディ政権は、2027年までに海軍を200隻まで増やすことを狙っており、空母群を3個の他に原潜を調達する予定だ。

●もちろん人民解放軍海軍に追いつくことは不可能だが、インド海軍はインド洋が「中国の湖」になるのを阻止するよう決意している。インドの戦略家たちは長年にわたって、中国が民間の港湾施設のネットワークを構築し、インド政府側が自らの支配下にあるべきだと考える水域において艦船の能力を高めるための沿岸インフラ整備計画を進めていると考えている。中国がインド洋に原潜を送りこむことも多い。

●中国はその他大勢の国々と同様に、アジア太平洋地域の平和維持という面で、アメリカ海軍の覇権的な力から利益を得ている存在であり、このおかげで驚くべき経済発展が実現できたのだ。ところが現在はこの秩序に挑戦しようとしているように見える

●もちろん中国側が自国の沿岸海域におけるアメリカ海軍の活動を阻止したがっているというのは理解できるところだ。そして「新型大国関係」を望む国としては、外洋の警戒活動をアメリカに頼っている状態は、たしかに癪に障るのであろう。だがアメリカとその同盟国たちが、中国の(そして世界の)貿易の通り道である海上交通路を妨害しようとしているという考えは、戦争以外の状況を考えれば、まさに非現実的なものである。

●ところがもし台湾への侵攻などで戦争になった場合に、中国はアメリカが台湾の助けにくることを拒否したり、少なくともそれを遅らせようとするはずだ。その反対に、中国は周辺国に脅威を与える海軍を作り上げるということによって、むしろ彼らをよりアメリカの側のほうへ近づけさせてしまっている

●さらに、強力ではあるが、それでも世界第二位のシーパワーになることによって、中国が破滅的な計算違いを犯してしまう可能性も出てくる。

●たとえばドイツは20世紀初頭に、法外な額がかかる戦艦の建造競争によってイギリスの海軍力の優位に対抗しようとしたが、第一次世界大戦中にイギリスの海上封鎖の前に為すすべがなかった。日本も第二次世界大戦において、真珠湾攻撃からたった半年後にミッドウェー海戦で敗北し、傲慢さからつくりあげた大規模な艦隊の大部分を失ってしまったのだ。

●もちろん中国が国家の威信やセルフ・イメージの投影として「強力な外洋艦隊が欲しい」と考えるのはごく自然なことだ。とりわけ最終的にそれを「国際的なルールを(弱めるためではなく)守るために使うべきだ」と考えてくれれば望ましい

●ところが最大の心配は、中国自身が何をして行けばいいのかわかっていないという点であり、それを単なる愛国心の発露や外交的なジェスチャー、それに慎重な脅し以上のことに使いたいという思いに引きつけられて我慢できなくなってしまうのではないかという点にある。

●マハンが分析したように、「シーパワーの歴史というのは、その大部分が(といってもそれだけではないのだが)国家同士による相互競合関係、そして戦争に至ることも多い、暴力による争いという話で占められている」のだ。

●もちろんこれは必然的ではないのだが、それでもアメリカは最悪の事態に備えなければならない。

===

いかがだったでしょうか?戦略研究におけるシーパワー論の王道のような議論です。

参考までにシーパワー論の代表的な論者であるマハンとコルベットの2人の理論を簡潔に言えば、

☆マハン:海(公海)を制するものは、世界を制する(シーパワー)

☆コルベット;いや、海をとっても陸に影響を及ぼせなかったら意味なくね?(シーパワー+ランドパワー)

ということです。

冷戦後はその圧倒的な海軍力によってアメリカがマハンのテーマを克服し、その先のコルベットのテーマをどう料理しようかという段階にあったわけですが(「フロム・ザ・シー」など)、上記の記事にあるように、ロシアと中国によって、マハンのテーマが復活した、という見方ができますね。

詳しくは私が去年訳出した『現代の軍事戦略入門』の第一章の「シーパワーの理論」をぜひ。

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by masa_the_man | 2016-01-16 21:27 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部はなんとか晴れておりまして、ようやく本来の真冬の朝らしくなってきました。

さて、正月早々から中東の宗教戦争や株式市場の乱高下が始まっておりますが、今回紹介するのは去年の英エコノミスト誌に掲載された、地政学・戦略学的にも重要なシーパワーに関する記事の要約です。

授業などで使うというほぼ個人的な用途としての試訳ですが、重要なところをハイライトしておりますのでご参考まで。

===

シーパワー:海を支配するのは誰か?

15-10/17 The Economist

●アメリカは次の数日間に、世界のほとんどが注目しないところで、台頭しつつある中国海軍の力に挑戦することになる。その挑戦とは、中国が領有権が争われているスプラトリー(南沙)諸島で建設している人工島の、周囲12カイリと推定される領海内でパトロールを実施する形で実行されるのだ。

●米海軍は2012年以降、中国が領有権を主張する構造物のすぐ近くを自由に航行するという、国際法における権利を行使してこなかった。

●この「航行の自由作戦」は、中国の習近平国家主席がワシントンを訪問して、南シナ海での挑戦的な人工島建設に関するアメリカ側の懸念を払拭するのに失敗したために再開されたものだ。もちろん中国側は抗議するだろうが、現状として彼らができるのはそれくらいであろう。

●この米海軍の動きは、現在でも圧倒的な(ただし挑戦される可能性が出てきた)アメリカのシーパワーの行使である。

●「シーパワー」という概念そのものにはきわめて「19世紀」的な響きがあり、ネルソン提督や帝国の野望、そして砲艦外交を彷彿とさせるものだ。ところがシーパワーの偉大な提唱者で、1914年に死去した海軍戦略家のアルフレッド・セイヤー・マハンの著書は、今でも政治指導者や軍事アドバイザーたちに注目されて読まれている

●マハンは1890年に、「海上貿易と制海権による海の支配は、世界での支配的な影響力を意味する。なぜなら、陸地の富の産物がいかに大きくとも、海ほど必要な交換を容易にするものはないからだ」と書いている。

シーパワーは、海軍のような「ハード」なものと、貿易や海洋資源の開発を含む「ソフト」なものの両方から成り立っているのだが、この重要性は今後も高まるばかりだ。

●たしかに情報はデジタルの状態で移動するが、人々はいまだに飛行機で移動している。物理的なモノは今でも圧倒的に船で移動させられており、海洋貿易はその重量と数量で、世界貿易の90%を占めているのだ。

ところが海の航行の自由や、互いが行き来できるような状態というのは、自然に放っておいて実現するものではない。それらはほぼすべての国が自国の利益のためになると考えて同意するような「法の支配」に基づく国際政治体制によって成り立つものだからだ。

●そしてここ数十年間は、その体制を警備するための手段とその意志を持っていたのは、同盟国たちとの緊密なパートナーシップをもっていたアメリカだけだったのだ。

●世界の海洋公共財へのアクセスを維持する米国の覇権的な力が挑戦を受けたのは、第2次世界大戦以降ではたった1度だけであり、しかもそれはソ連によるほんの短期間のものであった。

●ソ連は1970年代に壮大な外洋海軍を築き上げたのだが、そのための建造コストがあまりにもかかってしまい、一部の歴史家たちは、その後20年も経たないうちにソ連の体制を崩壊させた要因の1つがこの建造コストだと分析しているほどだ。

●冷戦が終結した時、高い資金を投入して調達した艦船のほとんどは、さびついたまま北極海の軍港に放置されることになった。

●ところがそのような状態は変化しつつある。10月7日にロシアはカスピ海からシリアのターゲットに向かって、大々的に巡航ミサイルを発射している(何発かはイランに落ちたとするアメリカ側の発表は否定している)。

●プーチン大統領はこのミサイル発射のプロパガンダ的な意味をそれほど強調しておらず、「これで専門家たちはわかっただろうが、ロシアがこれらの兵器を所持しており、しかもそれが本当に存在することを初めて目の当たりにしたのだ」と述べている。

●西側の軍部の企画担当者たちはこれを受けて、「ロシアが自国の領海から低空飛行する巡航ミサイルでヨーロッパのほぼ全域を狙えることを実証した」という事実に対処しなければならなくなったのである。

●しかしそれよりもはるかに深刻な挑戦が中国から突きつけられている。創設当初はかなり質素だった中国海軍は、まずは純粋に沿岸防衛を狙っていたが、そこから「近海」において強力な艦隊へと発展してきている。ちなみにその「近海」とは、日本からフィリピンへと連なる第一列島線のことだ

●現在もその発展は続いており、しかもそれはかなり野心的なものだ。ここ10年間における中国人民解放軍海軍(PLAN)の遠洋作戦は、その頻度が増しただけでなく、技術的にも高度なものになってきている

●また、インド洋における海賊対処作戦を永続的に維持しつつ、中国は西太平洋のはるか沖合で海上演習を行っている。最近では中国海軍の5隻の艦船が、ロシアと中国の合同演習の後にアリューシャン列島付近を航行した。

▼目標としての外洋

●中国政府は去年の5月に国防白書の中で、中国海軍の「沖合水域防衛」の役割の一つとして「公海防衛」と呼ぶものを公式に加えたことを発表している。

●中国の戦略では、以前は現地のシーコントロールを第一に考えられていたが、現在は自国の経済力と外交の影響力の拡大を強調しはじめている。つまり過去の陸上兵力優位の時代は終わりを告げたのだ。

●海上兵力よりも陸上兵力を優先する従来の考え方は破棄されるべきであり、公海と外洋の管理や、海洋面での権利や権益の保護に大きな重要性が置かれるようになった。中国にとっては国家の安全保障と見合うだけの、近代式の海洋海軍の体制を作り上げることが必要になってきたのだ。

軍事的にその関心の中心にあるのは、やはり台湾だ。中国は自らが「反逆者」と見なす島を(必要とあらば軍事的に)取り戻すため手段の獲得を求めているだけでなく、台湾の主な保護者であるアメリカの介入を防ぐ方法を模索している。

●中国は、アメリカが台湾政府に対する脅しとして中国側が行おうとしたミサイル演習を阻止するために2個空母打撃群を台湾海峡に送り込んできた1996年の台湾海峡危機で受けた屈辱を忘れていない

●当時のアメリカの国防長官ウィリアム・ペリー(William Perry)は、中国が偉大な軍事力を持っていたとしても「西太平洋における最強の軍事力を持っているのはアメリカである」と後で誇らしげに語ったのだ。

●中国はバランスをシフトさせようとしている。地上発射型の対艦ミサイルから潜水艦、近代的な海上哨戒機から戦闘機まで、ありとあらゆる兵器に多額な投資を行い、アメリカを「第一列島線」、そして最終的には「第二列島線」の外まで追い出そうとしているように見える。

●また、中国は石油を運搬するほとんどのタンカーが通過し、チョークポイントをパトロールしてインド洋へのアクセスを確保するための能力を獲得しようとしている。中国の原油は、その内の40%がホルムズ海峡、80%がマラッカ海峡を通過している。

●したがってそこから見えてくる目標を見ていくと、以下のようなものになる。まずは経済的にも致命的に重要なシーレーンを守り、次に南シナ海と東シナ海で圧倒的なプレゼンスの維持、そして海外で拡大しつつあるプレゼンスの中で、投資や自国民が脅威を受けた場合に武力介入できるようにすることだ。

●(去年の)8月にアメリカ国防総省は新たな「アジア太平洋海洋安全保障戦略」を発表している。その中で強調されたのは3つである。それは①海の航行の自由を守り、②紛争と強制を抑止し、③国際法と基準の順守の促進することである。

●これはつまり、2012年に宣言された通り、アメリカが2020年までにアジア太平洋地域に対して少なくとも60%の海・空軍の戦力を配備することを通じて「リバランス」する計画を進めていることを確認するものであった。

●海軍長官のレイ・メイバス(Ray Mabus)は、次年度の予算として連邦議会に8%の増加、つまり1610億ドルを要求しており、現在の273隻体制から、最低でも300隻体制にしたいと考えている。共和党の議員の中には、むしろ350隻が適切な数であると主張している人もいる。

●アメリカの懸念は合理的なものであると言えるだろうか? もちろん世界レベルの海洋勢力になりつつある現在の中国は、ソ連が海軍を拡大していた当時の様子とはやや異なる。

●強力であったソ連の潜水艦部隊の主な目的は、アメリカ軍が大西洋を渡ってヨーロッパを支援しにくるのを阻止するための戦略核攻撃を行うことにあったのだが、それ以外のソ連海軍の目的は、主に大国としての立場を誇示し、同盟国を感激させて敵を抑止するための「プレゼンス」という任務を通じて、ソ連の影響力を世界に広めることにあったのだ。

===

この続きはのちほど。
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by masa_the_man | 2016-01-08 08:30 | 日記 | Comments(0)
今日の横浜北部は朝から快晴です。真冬にしてはそれほど寒くないと感じるのは私だけでしょうか?

さて、昨年末の電撃的な日韓合意ですが、この問題について追いかけているアメリカの研究者の見解について探していたらFP誌のサイトにリンド教授の簡潔なインタビューがあるのを教えてもらいましたのでその要約を。

======

日本の巧妙な「自責の念」の知恵

●第二次大戦中に日本軍によって女性や少女が性奴隷を強制された、いわゆる「慰安婦」を巡る、長年にわたる外交面での停滞に終止符を打つために交わされた日本と韓国による今週の月曜日(12月28日)の合意は、ジョン・ケリー米国務長官を含む人々に、その直後から賞賛を受けている。

●NYタイムス紙の社説では両政府がこの問題について「終わりを求めたことで賞賛されるべきである」と書いており、英ガーディアン紙もこの合意を「明らかな前進だ」と書いている。

●ところが国際政治における「謝罪」の専門家であるダートマス大学のジェニファー・リンド(Jennifer Lind)教授は、これについて微妙な感想を述べている。

●彼女が二〇〇八年に発表した『謝罪国家』という本では「歴史上の人権侵害について謝罪が最適な問題解決の方法である」とする一般常識に対して異議を唱えている。
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●では日本の謝罪についての彼女の見解はどのようなものであろうか?それはどうやら新たな歴史的な証拠の発見に基づくものというよりも、むしろ韓国を中国の台頭に対抗していくための統一戦線に引き戻すという意味合いが強いという。

●本誌はリンド教授にEメールを通じて見解をうかがった。以下はその要項である。

Q:日本の謝罪について驚かれましたか?そしてそれは正しい方向へ向かう第一歩となったのでしょうか?

A:私は今回の合意の中で「謝罪」そのものはそれほど興味深いものだとは思ってません。なぜなら日本は過去に何度も(慰安婦たちに対しても)謝罪しているからです。また、今回と同じような言葉は安倍首相の前からも(首相自身もこの夏に談話を発表しているが)何度か発せられたものです。

よって、今回の謝罪についての言葉は、このような文脈から考えれば別に驚くべきものではありません

ところが今回驚くべきなのは、二つの主要なグループが参加しているという点です。一つ目が、日本の保守派です。彼らは過去に行われた謝罪が行き過ぎていると感じていたのですが、今回に関してはその保守派が合意まで交渉を実際に行っているのです。要するに彼らも参加したということです。

もう一つのグループは、韓国政府です。よって今回はこの二つのグループが参加して合意したということは画期的であるということです。

もちろん参加していないグループとして挙げられるのは、韓国国民であり、当事者である慰安婦たちです。この両者たちのどちらかまたは双方ともが、今回の合意を最終的にぶち壊すことになるかもしれません。

Q:今回の謝罪に害があるとすれば、それはどのようなもでしょうか?

A:安倍首相と彼の保守系の支持者たちは 「慰安婦」に関連して実に様々な面から論じており、この問題に関する韓国政府側のしつこい姿勢に腹を立ててきており、怒りを感じております。よって全般的にいえば、彼らは今回の合意での謝罪については支持しないでしょう。

ところが安倍首相自身の政治的な立場は盤石です。なぜなら謝罪を嫌う保守派でさえ、今回の合意が(韓国との関係を改善するという意味で)戦略的に合理的であるということを認めざるを得ないという事実によって、さらに反対派まで相殺できるからです。

Q: あなたは謝罪が原因となって発生するナショナリスト側の反発の危険の可能性について書いたわけですが、今回の例からどのようなことが起こると予測しておりますか?

A: 謝罪に対する保守派からの反発は、謝罪が生み出してきたポジティブな効果を弱めることが多いわけですが、これは今回のケースには当てはまりません。なぜなら、合意を得たのは保守派の政府だからです。いいかえれば、反発をする勢力そのものが今回の合意の交渉担当者だったわけですね。

Q: 安倍首相は正しい判断をしたとお考えですか?

A: 韓国に手を差し伸べるのは日本にとって戦略的に賢明な動きです。日本は(中国から)より脅威を感じている側であり、日本は(中国からの脅威をそれほど感じていない)韓国よりも合意を必要としていたわけです。歴史問題は多大なる妥協を必要としているのですが、今回は日本側が(そして韓国側も)かなり妥協したわけですね。

Q: なぜ今回の実現までこれほどの時間がかかったのでしょうか?

A: 国際政治において謝罪が行われることは極めてまれで、基本的に国家が謝罪するということはありえません。日本はその少数の例外の一つであり、ドイツもそうでしょう。他国はこのような問題では謝罪しません。

Q: 第二次世界大戦の残虐行為は、欧米に比べてなぜアジアの政治舞台でまだ残っているのでしょうか?

A:西欧ではソ連という共通かつ深刻な脅威に対抗するために互いを必要としておりました。なので彼らは過去(そして極めて生々しい感情的な人権問題など)を忘れることに合意する必要があったわけです。日韓両政府には、互いを結びつけ合うほどの共通の脅威はありませんでした。なぜならそれぞれがアメリカによって安全保障面を担保されていたからです

Q:中国が国際的に何か謝ったことがあるでしょうか?

A:私の知る限りないですね。とりわけ中国政府は自国民に対する歴史問題があります。経済政策の失敗で数千万人が死んでおり、文革でも長期的な苦しみを与えていますよね。ところが中国共産党はこれらの歴史問題や国家の過去についての探求を検閲して禁止しているのですから。

===

これをお読みのみなさんには様々なご意見があるでしょうが、とりあえず第三者の専門家の意見ということでは貴重ですね。

このインタビュー記事についての私のコメントは、のちほどメルマガなどでぜひ。


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by masa_the_man | 2016-01-03 08:19 | 日記 | Comments(11)
今日の横須賀はよく晴れていて寒いです。真冬でこんなに晴れている関東地方の正月というのは、世界的にも非常に恵まれているのではないでしょうか。

さて、またまた孫子について書きます。

今回発売した孫子CDの特徴の一つが、西洋の戦略理論と孫子のアイディアを比較していることです。

その中に出てくる西洋側の代表的な戦略の理論家の一人が、私が訳書も出しているエドワード・ルトワックです。

この理論家は、現代の西洋の戦略理論において、戦略の「逆説的理論」(パラドキシカル・ロジック)という概念を提唱したことによって、革命を起こしたとされております。

この理論の中身を簡単に要約していいますと「競争的な環境、つまり紛争や戦争になると、戦略にはパラドックスが生じる」というもので、そこでフォーカスされているのは、戦略を行う上で自由意志を持って対抗してくる「敵」や「相手」という存在

つまり戦略を考える際に、自分のアクションももちろんですが、さらに重要になってくるのが「敵のリアクションである」ということです。

自分がAというアクションをすると、敵はBというリアクションをしてくる、そうするとAとBの相互作用が続いて、敵と自分の関係はより流動的でダイナミックなものになっていく、ということです。

何度もいいますが、われわれ日本人というのは、どうも「戦略」という言葉を聞くと、そのな中に相手や敵の存在というものが考慮されておらず、ひたすら自分のことを計画的に進められるものだ、という勝手なイメージを持ってしまいがちです。

ところが実際の戦略というのは、すべからく敵と味方の相互作用のように、まるで二人で踊るタンゴのように展開されるドラマであります。

いくら戦略としていいプランを立てても、それを相手にぶつけた瞬間から相手が変化して、そこから状況が動きはじめるからです。なんともドラマチックではありませんか。

このような戦略をダイナミックにとらえる考え方は、孫子の兵法においてすでに十分すぎるほど認識されておりました。

ちなみに、それが「道」(タオ)なのですが、ここで言う「タオ」とは、皆さんがよくご存知の、いわゆるあの老子の本の中で説かれているタオとは少し意味合いが違います。

なぜその意味合いが違うのかについては、私もCDの中で語っておりますので、詳しくはそちらを参照にしてください。

日本の孫子関連の書籍ではほとんど指摘されておりませんが、孫子は『兵法』を読む人に向かって、戦いを考える際に、自分と味方の関係性と、その流動性というものを、しっかりと意識して戦略を考えるようにアドバイスしております。

これはまさに、ルトワックの指摘したような「敵と自分のダイナミズム」そのもの。

もちろんルトワック自身は孫子をどこまで読み込んだのかについてはいま一つはっきりしない部分があるのですが、戦略についての考えそのものは、孫子のそれと驚くほど似通っております。

その理由は、どうやら彼らに共通した経験にありそうです。なぜなら両者とも、戦場という現場や歴史のケースを読み込みつつ、あらかじめ決めた「線的」な計画が通じないことを経験しており、そこに不可思議なダイナミズムがあることを実感していたらからではないでしょうか。

余談になりますが、これを受けて、今回のいわゆる「慰安婦」問題の日韓合意について一言。

日本の識者の中には、合意の話が出た時点で、「日本の外交的な大勝利だ」という分析をされた方がいらっしゃることは、本ブログをお読みのみなさんもご存知かもしれません。

とりわけ彼らの中には「今回の合意でボールは韓国側に渡されたので、あとは向こうが約束を実行できるかだ、合意は不可逆的なものであるから蒸し返されない」という議論をする方もいらっしゃいます。

ただし孫子やルトワックの「戦略のダイナミックさ」というものを知っている自分からすると、このような考えが極めて怪しいことが実感できます。

なぜなら、いくら日本側がボールを投げても、そこから相手の動きや反応というものが出てきて、事態がそこから動き出すからです。

上記のような識者たちの考え方に共通するのは、「合意ができたのだから状況は固まった」という考え方。つまり状況を静的(static)なものとして見なす想定です。

ところが外交でも戦略でも、相手は自由意志を持った存在です。反応して何をやってくるのかは相手の話であり、いくらこっちが「これでことが終わった」としても、それをいくらでも覆してくる可能性があります。

今後の日韓関係がどうなるのかは誰にもわかりませんが、少なくとも状況がこれで収まらず、単純な「日本の勝利」は全くありえないと断言できるでしょう。

何度も言いますが、戦略でも外交でも、相手は動きます。そして彼と我の関係は、ダイナミックに変化していくのです。

このような内容を、私は孫子のCDに凝縮して語っております。ぜひお聞きいただければ幸いです。
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(技術報国)

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by masa_the_man | 2016-01-02 00:01 | 日記 | Comments(0)
新年明けましておめでとうざいます。

旧年中はスローンの「現代の軍事戦略入門」やグレイの「現代の戦略」、そして孫子解説CDなどの発売でみなさんのお世話になりました。

今年度もエアシーバトル解説書、カプラン本の文庫版、クラウゼヴィッツ解説書、孫子解説書、そして地政学入門など、すでに色々と出版予定がありまして、後期からいよいよ大学の方で日本初の「戦略論」の講座を担当して講義することにもなりそうです。

国際政治は相変わらず大変動を起こしていきそうな雰囲気ですが、そのような中でも自分の軸を失わず、徹底して冷静な視点を持って行きたいとあらためて決心した次第です。

本年も引き続きよろしくお願いします。
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(伊豆の夜明け)


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by masa_the_man | 2016-01-01 00:01 | 日記 | Comments(3)