戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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今日の横浜北部は朝からやや雲が多めですが、なんとか晴れております。

さて、連日の日本のメディアの報道でもあるように、南シナ海の領有権をめぐって中国と米国がいよいよ本格的に軍事的に対立しそうな雰囲気が続いております。

これに関しては私も番組(http://ch.nicovideo.jp/strategy)のほうで何度も取り上げているトピックですし、これをお読みのみなさんの中には軍事面で非常に興味を持っていられるかたも多いと思います。

このような状況の中で、私が最近興味を持ってその動向をチェックしているのが、主にオーストラリアのシンクタンクを中心に、中国人民解放軍は本当に脅威なのか、それとも脅威ではないのかという議論。

この一連の議論をあえて名付けるならば「張り子の虎論争」とでもいうべきでしょうか?

その代表的なものがこのブログの記事なのですが、私が見る限り、専門家の間では「まだ張り子の虎じゃないの」という意見が(ネット上では)優勢なような気がします。

ところがここでこれをお読みのみなさんに考えてみていただきたいのは、「あなたが国家のリーダーだったらどうするか」ということ。

もちろん中国軍の実態に詳しく、本当に細かいところまですべて把握している専門家でしたら、「張り子の虎なんだから安心しろ」と言えるのかもしれません。

さらには、反中派(というか侮蔑派)の人々の中には、「中国軍なんてしょせん大したことない。たしかに数はすごいかもしれないが、こっちは質で勝てる」と主張するのも全くアリでしょう。

ところが実際にあなたがトップとして現実に戦略を練る立場だったら「どうせ張り子の虎だから・・・」とはいえなくなるのではないでしょうか?なぜなら、もし「張り子の虎」でなかった場合に背負うリスクがあまりにも大きくなるからです。

では「戦略担当者」として最も望ましい態度は何かというと、それは相手の能力を基礎として、そのスペックを額面通りに受け取って、それに対して正面から真面目に備えることです。いわゆるCapability-based Approachというものですな。

相手が「ステルス機を持っている」と言い張るのでしたら、それに対抗するための情報関連の技術を獲得するか、それ以上のスペックのステルス機を購入すべき、ということになります。

「いや、そんなオーバースペックなことして、いざ楽勝したら投資が無駄じゃないの?」

という意見もあるでしょう。

ところが「楽勝」は「多大な被害を出して辛勝」や「敗北」よりも、はるかに望ましいことです。楽勝した側にとって、困ることは何ひとつないのです。

もちろん中国軍の本当の実力を見極めることは非常に大事です。ところがいざ何か起こった場合、備えを充実させておくのに越したことはないのです。

戦略家として相手の戦力にどう備えればいいのか・・・これは歴史が始まって以来のすべての国家や組織のリーダーにとっての難問でしょうが、答えはシンプルです。

それはたとえ相手が「張り子の虎」であろうとも、相手の性能を額面通りにとらえ、そして万一の事態に備えるということです。余計な希望的観測を挟んではいけないんですな。




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by masa_the_man | 2015-10-30 11:04 | 日記 | Comments(6)
今日の横浜北部はまたしても快晴です。昼間は半袖でも行けそうな。

さて、昨夜の番組( http://www.nicovideo.jp/watch/1446011493 /https://youtu.be/R90eXEUVbD0)でも触れましたが、米海軍は現在、南シナ海の中国の人工島の近辺に軍艦を航行させる、いわゆる「航行の自由作戦」(FONOPS)を絶賛実施中であります。

ところが実際の米海軍の狙いが何なのかは、新聞やニュースを見てもよくわかりません。

そこで私がその法的な面と、アメリカ側の狙いについて簡潔にまとまった記事をベースにして、ここでわかりやすく説明してみたいと思います。

まず今回の南シナ海の領土争いで焦点になっているのは「国連海洋法条約」(UNCLOS:1982年)で定められた、いわば世界の海における領土・領海に関する国際法です。

しかしここで問題になるのは、

<アメリカ> 条約を批准していないが、その慣習は守っている

のに対して、

<中国> 批准しているが、その慣習を守っていない

という点です。お互い守っているようで守っていない宙ぶらりんの状態で、法的な面では互いにツッコミがかませるという微妙な状態です。

さらに問題なのが、アメリカと中国は、その領海などの分野に関して、大きく異なる見解を持っていることです。

たとえば島から伸びる「領海」(12カイリ以内)と「排他的経済水域」(EEZ:200カイリ以内)の領有権に関して、

<アメリカ> 
・領海とEEZ、どちらも無許可で無害通航(平和的な通過)が可能
・EEZでは、軍事的(海底探査や軍事演習など)なオペレーションまでOK

として、かなりオープンなのに対して、

<中国>
・領海内を通過するには無害通航で、さらに実行支配国には許可が必要
・EEZの中では無害通航で、オペレーションは禁止

というかなり条件の厳しいものになっております。なんというか、陸の領土の延長のような感覚なんですね。

ちなみに番組ではアクシデント的に妙な絵になってしまったのはこの説明の部分なんですが(苦笑)、まあ見逃してください。

また、国連海洋法条約では領海やEEZの基点になるものとして3つの海の地形を挙げておりまして、それらを説明すると、

低潮高地(Low-tide elevations)
・暗礁のこと。満潮になると海に隠れる。領海もEEZも主張できない。
・例外として、実効支配者は安全航行のために500メートルの安全水域を設定可能。

岩(Rocks)
・満潮時でも海に沈まない。人間が継続して住めない。
・領海はOKだが、EEZは主張できない。

島(Islands)
・満潮時でも海に沈まない。人間が継続して住めるし経済活動も可能。
・陸と同じで、領海もEEZも両方とも主張できる。

というものです。

さて、今回の南シナ海に軍艦を送り込む中で、これらを踏まえてアメリカにとっての選択肢にはどのようなものがあるかというと、冒頭の記事の著者たちは3つの選択肢があると申しております。

それらを中国に対するメッセージ性の弱い方から強いほうに並べてみると、以下のようになります。

A:岩や人工島周辺の12カイリ内を、無許可で無害通航

B:低潮高地周辺の12カイリ内で、軍事的なオペレーションを実施。

C:岩や人工島周辺の12カイリ内で、軍事的なオペレーションを実施

繰り返しますが、これによって発せられるメッセージ性の強さは、A<B<C。そして今回米海軍がやったのは、現在報道でわかっている部分では「A」ということになりますね。

ちなみに冒頭の解説記事の著者は「B」のオプションが最も望ましいと申しておりました。

もちろん米海軍は、今後もAだけでなく、BやCを行っていく可能性がありますし、またそれを追尾してくる中国海軍などと衝突したりする可能性も否定できません。

世界の30%の船が通過し、日本人の生活もかかっている南シナ海では、アメリカと中国という世界の2大大国の間で、このような劇的な安全保障ドラマが展開されております。

事態が劇的に変わる可能性もありますので、やはりわれわれは今後もこの海域の事態は注視していかなければならないでしょう。



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by masa_the_man | 2015-10-28 16:19 | 日記 | Comments(1)

ルトワック特集

今日の横浜北部はなんとか晴れました。朝晩はかなり涼しくなりましたが、昼間はまだ半袖ですかね。

さて、すでに番組でもお話した通り、先日私はエドワード・ルトワックという人物に、2日間にわたって伊豆の温泉で泊まり込みインタビューをしてきました。

知らない人もいらっしゃると思いますので、参考までにルトワック氏がどういう人物かといいますと、アメリカをはじめとする世界で活躍する軍事・戦略コンサルタントです。

国家の幹部教育から戦争指導、それに立てこもり事件解決の現場指揮まで、実に幅広く活躍している元軍人で、いわゆる「戦略家」という称号にふさわしいことをやっております。

学術的な面でも戦略研究では有名な人物であり、主著である『エドワード・ルトワックの戦略論』で提示された戦略の「逆説的論理」(paradoxical logic)というのは、西洋の近代戦略論に時間やタイミングの概念を持ち込んだという意味で革命的であるという評価を受けております。

私がこの人と知り合ったきっかけは、彼の『自滅する中国』を翻訳してからなのですが、今回のインタビューは、この本のいわば「アップデート版」を日本で先行して刊行したいという本人の希望から実現したもの。

具体的には彼に私がインタビューを行い、それをまとめて来年初めに新書として出すことになったのですが、今回の合計4時間半ほどにわたる内容を、軽くポイントにまとめて簡単にご紹介したいと思います。

まずルトワック氏は、2008年以降の中国が決定的に大きな間違いを犯しており、これによって他国の反発から「反中同盟」の結成(バランシング)を引き起こした、というのが『自滅する中国』までの内容。

この間違いに気づいた習近平率いる中国が、ここ一年ほどで軌道修正を行っていることを指摘。ところがこの軌道修正は時すでに遅しで、米国とは決定的な決裂に陥ったのが最近の習近平訪米。

よって南シナ海では対立が深まり、習近平自身も国内問題の山積で窮地に陥ることになるが、ここで「逆説的論理」が発動するので日本には大きな勝機が出てくる・・・・このような内容でした。

詳しくは明日(13日)夜の特番や(http://live.nicovideo.jp/gate/lv235238655)来年に出る新書を参考にしていただきたいのですが、その視点は、既存の国際関係の視点にはない、まさに「目からウロコ」のアイディアがつまっております。

ぜひご期待ください。




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by masa_the_man | 2015-10-12 20:35 | Comments(2)
今日の横浜北部は雲が多めですが晴れております。このくらいの気温が過ごしやすくて最高ですね。

12月に出る訳書のゲラチェックで忙しい中、一作日は第一次世界大戦の権威であるヒュー・ストローンの講演、そして昨日はエドワード・ルトワックと個人面談をしてきまして、色々と知的刺激を受けてきました。

さて、久々の更新ですが、ロシアのシリア領土内で空爆を始めたことについて。

これについてすでに様々な解説記事が日本でも出ておりますが、イギリスのテレグラフ紙のウェブサイトのよくまとまった記事を発見しまして、興味深く読んだのですが、ここからわかるのは以下のような点です。

===

●ロシアは表向きシリア領内の「過激派組織IS=イスラミックステート」を攻撃していると発表。

●ところが実際に空爆の対象としているのは、アサド政権に反対する非IS系の「自由シリア軍」(FSA)を中心としたグループ。ただしその爆撃対象には、アルカイダ系の「ヌスラ戦線」を含むジャイシュ・ファタハ(征服軍)から、アメリカが訓練をほどこした「穏健派」まで含まれる。

●そしてこの勢力を支援しているのはトルコ、カタール、サウジアラビア

●結果としてロシアが狙っているのはアサド政権の延命だと思われる。好意的に解釈すれば、ロシアは反政府派のFSAを潰してアサド政権を延命させてから、結果としてISを打倒させようと思っているのかも?

●今後の焦点は、なんといっても地上軍の派遣が行われるかどうか

●アサド政権のシリア政府軍とヒズボラ、それにイランから支援を受けた兵力がシリアに続々と集結中で、反政府が側の勢力に対して攻勢をかけようとしている。

===

ここで浮かび上がってくる対立構図なんですが、宗教的にわければ意外に明確になります。それは、

反シリア体制派側=スンニ派:FSA、IS、カタール、サウジ、トルコ:アメリカ
vs
シリア政府軍=シーア派:アサド政権、ヒズボラ、イラン、イラク(マリキ政権):ロシア

もちろん現実は「ドイツ三十年戦争」の時のように、カソリック・プロテスタントが入り乱れてのバトルロイヤル状態と同じなわけですが、とりあえずシリア領内に限っていえば、

反シリア体制派(スンニ派)vs シリア政府軍(シーア派)

という構図が出てくるわけです。

ここで不都合なのは、実はアメリカは、化学兵器を使った反体制派やIS、それにアルカイダ系の勢力と近い関係にあるという事実。

国際政治はまさに平沼騏一郎首相が述べたように「複雑怪奇」ですが、宗教という一面から切ってみると、意外に勢力構造が明確に見えてくることもあるようです。

このニュースについては、次回の生放送(http://live.nicovideo.jp/gate/lv235238144)でももちろんとりあげますのでぜひご期待を。



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by masa_the_man | 2015-10-03 06:56 | 日記 | Comments(8)