戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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<   2014年 07月 ( 8 )   > この月の画像一覧

今日の横浜北部は朝からすっかり晴れております。そして気温はやや抑えめ。夏の終わりまでこれくらいだとありがたいですね。

さて、昨日の生放送でも触れた、イギリスの「帝国主義の償い」のネタを要約しました。

著者はなんとアメリカの外交問題評議会(CFR)で中東専門家として活躍している人物なのですが、名前からもわかるように、中東系の移民の家族に生まれたイギリス人です。

===

大英帝国が問題を残した。われわれはこれを解決するのを恐れてはならない
by エド・フセイン

●私はサッチャー時代のイギリスで、自国の偉大さを感じながら育った。10年前にはシリアとサウジ・アラビアで3年間過ごしたが、アラブ人たちはイギリス人を非常に尊敬してくれていた。彼らはわれわれの君主制と言語(英語)を尊重してくれていた。

●その後に、私は世界最大の民主制国家であるインドを訪れたが、ここではイギリスが植民地にしていたにもかかわらず、彼らはイギリス人のことを「文明化されて思慮深く、マナーのよい人間だ」と見なしていた。

●4年前に私はアメリカに移ったが、そこでははじめて私の母国が、誇りと恥の対象となったのである。

●誇りを持ったのは、私自身が、多民族国家イギリスそのものを体現した存在だったからであり、私の国を代表して、アメリカのトップレベルの人々とつきあい、米政府や軍の高官たちにアドバイスし、中東情勢を分析・説明して、アメリカの対外政策の選択肢を示すことができたからだ。

●また、私が母国を誇りに思ったのは、ジョン・ロックのようなイギリスの思想家が、アメリカの多元主義の誕生に影響を与えたことや、イギリスの議会制がアメリカの連邦議会制度として花開いたこと、そして世界で最も強力な国家であるアメリカが、イギリスを尊敬・尊重してくれたからだ。

●しかもこれはイギリスが軍事力ではなく、国家間のシンクタンクとして情報を集めて共有し、世界の紛争におけるアメリカの外交面でのトップのチームの一員であるからだ。

●アメリカの偉大さは「何かをしなければ」という衝動や、その解決法を、政府の関与のあるなしにかかわらず探ろうとするところだ。

●その反対に、私がイギリス(そしてヨーロッパ全体)のことを恥ずかしいと思うのは、われわれが段々と臆病・怠惰になってきていることだ。イギリス国内で見られつつあるのは、イラクやシリア、パレスチナ、ナイジェリア、そしてパキスタンなどを始めとする世界の問題が、われわれとは無関係なものだという態度で認知されつつあるという点だ。

●たとえばわれわれは「イスラエルとパレスチナの問題はアメリカに肩代わりしてもらえばいい」と暗黙の了解として思っている。いいかえれば、われわれは目立たないようにしながら、ローンの残金を払いつつ、温暖なところで祝日を楽しみたいだけなのだ。

●ところが問題は、われわれはスイスではない、ということだ。

●イギリスは特別な国であり、マグナ・カルタから大英帝国のように、言葉と法律、そして鉄道やゲーム(クリケット、ホッケー、フットボール)、そして衣服や文化に至るまで、それが生み出してきたものが達成してきたことを、世界中から尊敬の眼差しで見られているからだ。

●帝国は、前の世代に急速に終焉に向かったのだが、これこそがイラクやパレスチナ、ナイジェリア、そしてパキスタンを始めとする国々で、いまだに殺戮が続けられている原因の一つである。

●たとえばイラクというのは、1932年にイギリスが「イラク王国」として建国する以前は存在しなかった概念であり、われわれが統治する都合のために勝手にまとめあげられたものである。

●パレスチナは広域の「レバント」という地方の一部であり、オスマントルコの統治下でシリアとレバンも含んだ概念であった。パレスチナのイギリス統治は1948年に終わったが、これは聖地のユダヤ人とイスラム教徒たちの総意を得たものではなかったために、彼らの戦いは現在でも続いている。

●ナイジェリアのボコ・ハラムの問題も、北部のイスラム教徒が南部のキリスト教徒に不満を持っており、彼らは互いに歴史的に一つの国家を共有した経験を持っていないのだが、これはイギリスが1914年に北部と南部を統一しまい、しかも1960年に一つの国家として独立させてしまったことに原因がある。

●インドではパキスタンという無理のある概念の国ができる際に、百万人以上が死んでいる。それまではインド内のヒンズー教徒とイスラム教徒は静かに共存できていたにもかかわらず、イギリスは分割統治の手法をジンナーとネルーに使い、これによってわれわれは暴発寸前のインドから脱出することになったのだ。

●われわれの世代は、前の世代のように拙速になってはいけないし、われわれの政治家は怠惰になってはいけない。また、企業は緊張を避けようとして臆病になってはいけない。われわれは、自分たちの子孫に、さらに問題が山積みになって、しかもわれわれの安全を直接脅かしてくるような世界を残してはいけないのだ。

イギリスには「歴史的な過ちを正すべき」という道徳的義務がある。好むと好まざるとにかかわらず、すでにわれわれは世界の紛争の多くを(つくりあげたとは言えないにしても)間違った形で処理してきた状況を引き継いでしまっているのだ。

アメリカとのパートナーシップの下、われわれはキプリングが述べた(現在は政治的に使えない用語だが)「白人の責務」を背負わなければならないのだ。

●もちろん「戦争疲れ」があるし、「解決不可能の問題にこれ以上かかわるのは懲り懲りだ」という感覚もよくわかる。十年近く続いているイラク・アフガニスタンでの戦いの後には、まさにこのような状況が色濃くなっているからだ。

●1940年代に生きていたイギリス人たちが、300年間続いた帝国や、ボーア戦争、両大戦、そして帝国内のほとんどの地域で反乱や抵抗を経験してきた後に一体どのような感覚を持っていたを考えてみてほしい。私は彼らが拙速に物事を進めたかった理由が理解できる。

●ところが我々の将来の世代の人間たちは、現在の世代の臆病さや怠惰に関しては理解してくれないだろう。

●労働党のエド・ミルバンドが去年8月にシリアのアサド政権の軍事施設に空爆をしかけようとしていたアメリカに反対し、保守党のキャメロン首相に対してアメリカの行動を支持しないようにする決議案を議会で通したことは、私にとって非常に恥ずかしいことであった

●これについてパディー・アッシュダウンは「私は50年間この国に議員として奉仕してきたつもりだが、これほどまでに落ち込んで恥を感じたことはない」という言葉でこの時の雰囲気をうまく表現している。

●この決議案のおかげで、オバマ大統領は連邦議会で空爆の議決を求めることを諦め、アメリカが将来の紛争でイギリスに頼る度合いを弱めることになったのだ。

●もちろん私は、ネオコン的な軍事的解決法によって、政治的な透明性をもった文明的な社会や文化を持たない人々に対して民主制を拡大するような方法を提唱しているわけではない。「アラブの春」が教えてくれたのは、革命より漸進的な発展のほうがましだということだったからだ。

アメリカ側に求められているのは、イギリス人の頭脳と洞察力、ニュアンス、戦略的な計画力と独特な知識である。もしこれをやめてしまえば、アメリカ人はわれわれのことをイタリア、スペイン、もしくはオーストリアのような目で見るようになるだろう

●世界政治におけるわれわれの強さの源泉は、親戚であるアメリカとの距離感の近さにある。われわれはこれを労働党の左傾化によって失うことはできない。キャメロン首相が本気でヨーロッパから手を引きたいのであれば、イギリスはアメリカとの貿易と外交関係をさらに深化しなければならない。

●われわれの最も偉大な首相である、チャーチル、サッチャー、そしブレアの3人は、それぞれ別々のモデルを提供している。それは、1)アメリカを呼ぶ、2)アメリカを導く、3)アメリカを補佐する、というものだ。

●ところがここで「アメリカから離れる」という4つ目のモデルを追及することになると、イギリスはほぼ一夜にして3級国家に成り下がってしまうだろう。われわれはこのような事態に陥ることを防がなければならないのだ。

====

この記事の肝は、イギリスが過去に犯した歴史の罪を償うために、アメリカと共に世界に積極的に介入しろというところでしょうか。

しかも自分はネオコンではないといいつつ、実際はネオコン的な問題の解決法を提唱しているところがパラドックスしてて興味深い。

また、アメリカとの近さを保つことで他のヨーロッパの国々(イタリア、スペイン、オーストリア)とは違うという点を強調しているところは、逆にイギリスの優越感を示していますね。

それにしてもイギリスの「業の深さ」というものを感じざるを得えないわけで。

今夜も生放送します。ご期待ください。



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by masa_the_man | 2014-07-30 11:53 | 日記 | Comments(5)

補給艦を削減するな

今日の横浜北部は昨日に比べればほんの少しだけ暑くないですね。それにしても真夏です。

さて、次に出す本の追い込みが続く中で、久々の更新は、米海軍の国防費削減に関する話題です。

記事はもちろんアメリカのシーパワー関連の分野で最近積極的な発言を続けている米海軍大学のジェームス・ホームズ教授。

これは純粋に自分のシーパワー用語に慣れるための勉強のために訳したものですので、お読みになった方の中でより正確な定訳や用語などをご存知の方は、ぜひ私にコメント欄で教えてください。

===

アメリカは海軍のロジスティクスの優位を明け渡した
by ジェームス・ホームズ

●もしアメリカが中国との戦略的紛争において危険な場所から逃れたいと思うのなら――北京政府の西太平洋を支配できるという空想を打ち砕きたいと思うのなら――、米海軍の最速・最大の高速戦闘支援艦を退役させるのはまずい。

●これを実行してしまうと、アメリカが北米から離れた地域で長期間にわたって戦うことを本気で考えていないというシグナルを潜在的な競争相手に送ってしまうことになる。

●ところがワシントンの予算削減の推進者たちは、米海軍のリーダーたちにこの競争面での優位を諦めるように迫っている。そして彼らは中国が長年軽視してきた自らの戦闘支援艦をようやく整え始めようとしている時に削減しようとしているのだ。

●ディフェンス・ニュースのクリス・キャヴァス氏は、米海軍の高官たちはサプライ級のT-AOEを退役――もしくは現役と退役の中間の状態――にすることを考えているという。

●高速戦闘支援艦というのは巨大で高速の船だ。これは実質的には移動可能な倉庫であり、燃料、弾薬、そして海での任務に必要となるさまざまな物資を届けることができる。

●彼らは新しく就航したアメリカ級強襲揚陸艦と同じくらいの大きさだ。低速で小型の補給艦だと、その規模の小ささのため、米海軍の最速の原子力型の艦船には追いつけないことになる。

●サプライ級の前の型であるサクラメント級は、一九九一年の湾岸戦争の時にアイオワ級の戦艦二隻に同時に補給を行うことができたのだ。このような事実から、その艦船のサイズが想像できるだろう。

●もちろんこれはそれほど魅力的に見える能力とはいえない。しかしこれはかけがえのないものだ。現在進められている洋上補給システム――UNREP、つまり寄港せずに補給する能力――というのは第二次大戦以来米海軍の優位の中核をなすもので、これによって行動範囲の制限がなくなるのだ。

●このような能力の揃っていなかった時代にマハンが述べていたのは、前進基地のない戦艦は「陸の鳥」のようであり、巣から遠くへ飛べないということであった。このたとえは、ロジスティクスの分遣隊を自ら持たない洋上部隊にも当てはまる。

●洋上補給群は、平時には便利な存在であり、戦時のとくに友好国の港が近くにない場合には決して欠かせないものとなる。補給艦がなければ機動部隊は配置場所から抜けて倉庫を探しにいかなければならない。

●紛争地帯から離れるということは、その海域の支配を諦めるということであり、もしくは水兵や海兵隊たちを海上から火砲や航空支援なしに戦闘地域の沿岸に取り残すということだ。結果は火を見るよりも明らかであろう。

●東條大将は処刑される前に、大日本帝国軍の凋落を決定づけた三つの要因のうちの一つとして、米海軍の洋上補給群の存在を挙げている。これは敗北した敵からの高い評価である。

●戦闘ロジスティクスというのは、戦略の重要性を支配する作戦的なテクニックである。マハンはシーパワーの三本柱として、海上輸送と海軍の輸送、そして前方基地を挙げている。洋上補給艦はそのマハンの三本柱の一つではなく、二つを構成しているのだ。つまり物資を運ぶだけでなく、基地を補完するものなのだ。

●つまり補給艦を加えると米海軍の機動部隊の戦闘力と警備行動の期間を上げることになるのだが、その反対にそれを少なくするとアメリカのシーパワーの柱の二つを減らすことになる。

●これと同じことは、基地によらずに洋上補給や修理などを可能にする、駆逐艦母艦や潜水母艦にも言える。米海軍にはたった二隻の潜水母艦しかない。

●サプライ級高速戦闘支援艦を削減するかどうかという話題は国防費に関する議論で過去にも何度か浮上したが、ここ数年のものは奇妙な展開になっている。政府や議会は、海軍部隊の戦闘継続能力の必要性が上がっているのに、海軍への費用を減らそうとして感覚が鈍ってしまっているからだ。

●リーダーたちはまるでウォルター・リップマンが第二次大戦直前に述べたような「とほうもない軽率さ」と呼ばれたような状況を再現しているように見える。つまり太平洋へのコミットメントを上げると言っておきながら、同海域で展開するための手段をけちっているようなものだからだ。

●「ジャスト・イン・タイム」のカンバン方式の哲学は、現在の産業だけでなく軍や議会にまで浸透してきてしまったようだ。つまりコストを抑えるために在庫などを極力減らして、お客さんからの要請があったときに細かく対応して部品などをつくるというのだ。これはたしかにビジネスの世界では目指すべき姿であろう。

●ところが軍事の世界では平時に需要が低くても、戦時にはそれが飛躍的に高まるのだ。

●では賢い敵が洋上補給艦を狙ってきた場合はどうなるだろうか?もし私が中国やイランのA2(接近拒否)部隊を指揮させてくれるなら、私は迷わずこれを実行する。つまり、戦闘部隊を狙うのは難しいから、補給艦や空母、巡洋艦、そして駆逐艦たちを破壊したり沈めたりすることによって、作戦行動をできないように飢えさせてしまえばよいのだ。

●そうなると米海軍はその場を離れるし、断続的に現場に姿を見せるのが精一杯なのだ。守る側のA2部隊は時間と選択肢を得ることになるし、勝利することもできるのだ。

●よって、補給艦が足りなくなるよりは多すぎのほうがよいということだ。ワイリー提督が指摘しているように、議会は予算の作成過程を通じて、常に戦略的な決定をしているのだ。

●そして今回のケースでは、アジアのリムランドで作戦を行うために必要な手段に制限を加えてしまうことにより、たとえば日米同盟の保持やホルムズ海峡のオープンな状態を維持すること、もしくは公海で法の支配を支えるような「些細なこと」が不可能になってしまうのである。

●平時の航行に最適化された「ジャスト・イン・タイム」艦隊は、戦時に大きな困難にぶつかることになる。

===

「戦略にはドルマークがついている」とはブロディの有名な言葉ですが、やはりこのような大戦略レベルに関わることという、最後はマネーの話に集約されてきますね・・・

明日の夜も生放送します。ご期待ください。



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by masa_the_man | 2014-07-28 13:05 | 日記 | Comments(5)

呪いの政治学

今日の横浜北部は梅雨明けということで暑かったわりにはあまり日が照りませんでした。

久々の更新ですが、次の本の追い込みと番組の準備などに追われておりまして、なかなかブログのほうに時間をかけることができておりません。今週はなるべく毎日更新したいと考えているのですがどうなるやら。

さて、昨晩の番組のほうでも触れた、黒魔術(?)についての話題です。

ちなみに番組を見逃した方は、タイムシフト予約でもご覧になれますのでぜひ。

===

彼らは相手の最悪の事態を祈っている。これは悪いことなのだろうか?
by エリザベス・マクアリスター

●ポルトガルのサッカーのスター選手であるクリスチアーノ・ロナウドは膝の腱炎に悩まされているが、これによってギリシャとの試合に出ることができなかった。そしてガーナの土着の聖職者であるナナ・クワク・ボンサムは、彼のケガの原因は自分のおかげだと宣言している。

●ボンサムはガーナのラジオで、ワールドカップでガーナとポルトガルが対戦する際に、ポルトガルのトップ選手であるロナウドが試合に出られないよう四ヶ月にわたって祈っていたと言ったという。さらに「彼らはケガの原因を特定できないでしょう。なぜならそれはスピリチャルなものだからです」と彼は述べていた。

宗教では、誰か特定の人間をやっつけるために祈るというのは、反則ではないだろうか?

●実は反則とはいえない。ネガティブな祈りというのは、実はけっこう頻繁に行われている。そして誰かを貶めるために祈るというのは――これは「呪いを込めた祈り」と呼ばれる――発展途上国の部族的な宗教だけに限定されているものではない。

●たとえばアメリカの福音書派の人々は、他人に災難が振りかかるようにするために、かなり目立ったお祈りキャンペーンに参加したりしている。

●たとえばここ五年間の中でも、アメリカ人に対して「オバマのために祈れ:詩篇109・8」というキャンペーンが展開された例がある。このスローガンが書かれた車のバンパー用シールやTシャツを見たひとは、詩篇109・8がネガティブな祈りであることに気づかないかもしれない。

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●ところがそこに書かれているのは「その日を少なくし、その財産(リーダーシップ)をほかの人にとらせ」というものなのだ。そしてその次に続く言葉(109・9)は、「その子らをみなしごにし、その妻をやもめにしてください」という怖いものだ。

●このキャンペーンを誰が最初に始めたのかは誰も知らないが、このスキャンダルは2012年にカンザス州の下院議長であるマイク・オニールのメディアに漏れたEメールから始まったものだ。

●オニール氏は、(旧約聖書の)詩篇のこの引用部分を同州の仲間の下院議員たちに送り、「とうとう私は、われわれのリーダーについての聖書の言葉を引用することができます。この箇所を見てください。まさに言葉の通りです。全員で頭を垂れて祈りましょう」と書いている。

●オバマ大統領の護衛をするシークレットサービスたちはこの「お祈りキャンペーン」に伴う脅しに気付いたが、米国民が実際に暴力を推進したという直接的な証拠が存在しないため、ACLU(リベラル派団体)やADL(反差別団体)のような団体たちも、このキャンペーン「オバマのために祈れ:詩篇109・8」は政治的なスピーチであるために法律的には問題ないとしている

●ところがこのような結論は、非宗教的なロジックによるものだ。たとえばACLUやADLは、祈りが本当に害を及ぼすものではないと想定している。

ところが多くの福音書派の人々の間では、ネガティブな形の祈りは「有効な兵器」であると考えられている。だからこそ彼らは「スピリチャルな戦い」という言葉を使い、経験のある「祈りの闘士」たちにそれを任せるほうが良いと考えるのだ。

●信者たちは、常に「悪」である「敵」の力を「呪い倒す」ための、仲介者として行動しているのだ。

●そして「戦うための祈り」の物理的な対象には、メタンフェタミンの工場や、堕胎を行う医院、ストリップ・クラブ、その他の「スピリチャル的な悪」の場所である。そしてそのような場所が閉鎖されたり警察にガサ入れされたりすると、その「闘士」たちは自分たちの手柄を誇ることになるのだ。

●また、ネガティブな祈りは、ハイチの多くの人々の世界観の中では「効果のある」ものであり、私がリサーチを行ったハイチでは、「侵略的な祈り」と呼ばれるものが、福音書派の人々やブードゥー教の人々の間で「効く」と思われているのだ。

ハイチの多くの人々は、病気や失業、盗みの被害、事故、そして死などの出来事を、スピリチャルな面での攻撃による結果だととらえている

●ところが、このようなネガティブな戦術の手柄を誇って公言するような土着の聖職者たちを探すのは難しい。大多数の聖職者たちは、「スピリチャル面での知らない攻撃相手からの想像された攻撃に対抗するために防御的な活動をしている」と答えるものだからだ。

●そういう意味で、ロナウドを標的にして成功したとするナナ・クワク・ボンサムのような例は珍しい。西側のメディアは彼のことを、伝統的な聖職者だがメディアやテクノロジーにも大きな理解を示していて、自分の宗教を現代のグローバル化した時代の現代の若い世代にも訴えかけることができると考えている人物だと紹介している。

●もちろんこのガーナの聖職者の主張を、単なるメディアの注目を集めるためのものであり、祈りが効いたのも、実は単なる偶然だとして片付けるのは簡単だ。

●ところが多くのアメリカ人は、ポジティブな祈りや、ポジティブな考えのパワーを信じているのではないだろうか?そして勝負が行われるということは、そこにはそれぞれポジティブとネガティブの願いがかなったということにならないだろうか?

●どうやらスポーツの世界と宗教界はこの原則を理解しているように思える。

●たとえばスペインの新聞が最近報じたところによると、アルゼンチン出身のローマ法王は、ワールドカップでアルゼンチン側に祈ることはないと誓ったという。

===

いいですねぇ、こういう国際政治の「野蛮な面」を正直に書いている記事というのは(笑

アメリカのような合理性だけで政府のシステムを作っているような国家が政治運動ではいまだに「呪いキャンペーン」のようなことをやっているわけで、つくづく「合理性」だけでは人間が説明できないことを感じざるをえません。

それにしても自分の失脚をここまで必死に祈られているオバマさんも大変です。



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by masa_the_man | 2014-07-24 06:00 | 日記 | Comments(4)
今日の横浜北部は午後に入ってから曇りました。連日の蒸し暑さは少しだけやわらいだ気が。

さて、久々にネオコンのケーガンが面白いことを書いていたのでその記事の要約です。

彼はブルッキングス研究所に移って、いよいよ民主党政権にもアドバイスをしようということなんでしょうか。

ただし「前科」があるので、あまり説得力はないようにも感じますが・・・

===

アメリカに必要なのは、戦力を使うべきかどうかではなく、いつ使えばいいかという議論だ
By ロバート・ケーガン

●イラク戦争というのは、何人かの知識人たちが示しているように、ここ数十年間のアメリカにとって最悪の戦略の失敗であったのだろうか?簡単にいえば、答えは「ノー」である

むしろ失敗したのは、2001年の9月11日のアメリカ本土に対するアルカイダとオサマ・ビン・ラディンの攻撃を防げなかった人々のほうだ。この攻撃によって3000人近いアメリカ人が死んでいる。

●そしてさらに時間をさかのぼれば、ヨーロッパではヒトラー、アジアでは日本を阻止できなかった失敗が大きく、このスケールはイラクやベトナムの失敗をはるかに越えるものだ。

●ところがここで問題になってくるのは、あまりにも早く軍事力使ってやりすぎてしまう間違いと、遅くなってから使って手遅れになってしまうという間違いだ。また、最初の失敗が次の失敗につながるのも当然と言えよう。

●911を生き残った人々の教訓は、「脅威を前にしての消極的な態度は危険だ」ということだ。そしてこの教訓は、2003年のイラク侵攻の前に武力行使を容認した、大多数の米国の連邦議員たちに共有されていた。

●同様に、1930年代の世界政治に対する消極的な態度からアメリカが学んだ教訓は、冷戦時代のアメリカの世界における積極的な(時としてはやり過ぎだったが)行動につながった。

●歴史家や専門家たちが行ってきたように、この二つのケースでは、アメリカの態度の振れ幅が大きすぎであり、ケナンのような人々が批判してきたのもこの点であった。

●そして現在の状況にも、この振れ幅の問題が当てはまる。アメリカはあまりにも消極的になりすぎたからだ。

●中には、ここ十年間の状況は特殊であったために、アメリカはより伝統的な、対外政策において軍事力をあまり活用すべきでないパターンに戻るべきだという人もいる。ところがアメリカは、歴史的にかなり頻繁に軍事力を使ってきた

●数え方にもよるが、アメリカは1898年から世界中でおよそ26回も武力介入を行ってきた。さらに小規模なもの、たとえば今回のリビアやレーガン政権のカダフィ空爆なども加えれば、その数は少なくとも6倍増えることになる。しかもこれにはアイゼンハワー大統領の小規模なものは含めていない。

●アメリカが地上部隊を派遣した大規模な介入を数えただけでも、アメリカは1898年から4年半に1回の割合で介入を繰り返している。アメリカは過去116年間に52回も世界のどこかで戦闘を行ってきたのだ。年数の割合でいえば、45%の時間を戦争していたことになる。

●特に冷戦後の介入の度合いは高まっており、その割合は3年ごとに1回になっている。いいかえればアメリカは25年のうちの19年間を戦っているということであり、その期間はベルリンの壁が崩れてから75%の期間ということになる。

●しかもこれは、政権が民主党か共和党に関係ない。リアリストと言われているブッシュパパも、四年の任期の間に三回軍事介入を命じているのだ。

●ではアメリカは「いつものやり方」に戻るべきなのか、それともそれをやめるべきなのだろうか?

●これについては軍事的に目標を達成できなかった失敗や、そもそも使用すべきではなかったケースのほうを指摘することは簡単だ。ところが実際は、実行して効果があった(ように思える)ケースの方が多い

●たとえば朝鮮戦争が終わった時に、アメリカ人の中でこれが成功であっと考えていた人は本当に少なかった。ところが韓国の今日の発展というのは、このアメリカの「忘れられた戦争」における活躍がなければ考えられないのだ。

●私の考えからすれば、アメリカが兵力の使用やその使用の脅しによってリベラルな世界秩序を守るという意志を持つことが、戦後の世界秩序が維持できた、決定的な(不可欠な)理由である。

●そしてこれは、効果的な外交においても不可欠な要素である。当時国務長官を務めていたジョージ・シュルツは、「パワーと外交は表裏一体です・・・強さの裏付けのない外交に効果がないというのは、厳しい現実なのです」と言っている。

●今日の問題は、「軍事力をいつ使用するのかしないのか」という疑問の間で、正しいバランスを見極めることだ。通常なら、「常に使え」と「決して使え」のどちらかになるだろう

●しかしわれわれが行わなければならないのは、このようなマニ教的な二元論から離れて、ストローマン(相手の引用を曲解して議論すること)や劇画的なものから、軍事力をどのように正しく使うのかという合理的な議論を行うことなのだ

===

うーん、微妙ですね。「いつも使ってきたから今後も使おう」というロジックにはちょっと無理があるでしょう。

結局彼はラムズフェルドと同じで、決して過去の戦略的な過ちを認めようとしないんでしょうなぁ




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by masa_the_man | 2014-07-17 21:00 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部は朝から晴れました。台風一過ですっかり真夏です。

というか、台風は本当に来たのかどうかが微妙でしたが・・・

久しぶりの更新ですが、とりあえず現在急ピッチで進めているある本の翻訳が本日で一章分おわりましたので、ちょっと時間ができました。

そういえばシーパワーの文献を紹介したら、「ランドパワーやエアパワーはどうよ」という要求が来ましたので、チャンスがあればそのうち紹介したいと思います。

といっても日本語の文献のほうをよくしらないので少し調べる必要がありますが・・・

さて、ちょっと遅れましたが、集団的自衛権の行使容認について、あのマイケル・グリーンらがコメントを書いていたので、その記事を簡単に要約します。

===

集団的自衛権の変更についての10個のウソ
by マイケル・グリーン&ジェフリー・ホーナン

●7月1日に日本の安倍首相は集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。もちろんこの決定に関して日本の国内・国外で批判が出たが、その反対のほとんどはその変更のニュアンスや結論を理解できていない。

●よって、ここでは集団的自衛権行使容認の反対派が信じている10個のウソをそれぞれ指摘してみたい。

1, 自衛隊の役割と任務が根本的に変わった。

●実際の変更点は、自衛隊が同盟国の軍隊が攻撃されたら助けにいくということだが、「新しい三要件」を見てみると、それでも制限はかなりある。

●基本的に専守防衛の姿勢はかわっておらず、日本の自衛隊の主な役割も米軍の後方支援や防御的なもの(BMDやASW)に限定されている。

●たしかに米軍とのさらなる一体化につながるかもしれないが、それでも現在の自衛隊の行っていることを根本的に変えるというわけではない。

2,自衛隊が外国での戦争に巻き込まれる

●まず安倍氏自身がこれを否定。批判的な人々が見逃しているのは、この変更が日本と日本人の命を守ることに焦点を当てているところ。結局は専守防衛の域を出ないものだ。

●これはつまり日本はまだ外国の土地で他国を守るために戦うということを禁じられているということであり、状況が日本の安全保障を脅かすものでなければ、いまだに憲法第九条に則ったものであるということだ。

3,朝鮮半島で緊急事態が発生した際に、自衛隊が派遣される

●韓国政府は自分たちが要請しないかぎり集団的自衛権を行使せず、自衛隊を朝鮮半島に派遣しないよう要求しているが、これは日本政府の解釈と全く同じだ。

●それより重要なのは、韓国政府が朝鮮半島での有事の際に日米同盟に対してどのようなスタンスをとるのかを明確にしていないという点だ。

4,安倍首相は日本の平和憲法の精神を骨抜きにしようとしている

●内閣法制局は国連の51条と憲法9条は矛盾しないと解釈している。いままでの内閣法制局の解釈では「最小限」の防衛に当たらないために集団的自衛権は不適切であるとされてきた。

●ところが今回変わったのは、同盟国の重要性とパートナーシップが日本自身の安全と生き残りに関わるという点や、また脅威環境やテクノロジーが変化したという点から、この「最小限」に当てはまるということことだ。

●またこの決定はいわゆる「積極的平和主義」による非軍事分野などでの貢献にも当てはまるということだ。

●安倍氏が国民に訴えたのは、有事の時に自衛隊が必要なサポートをできないために日米同盟を危機に陥れることはできないということであった。

5,閣議決定までのプロセスは透明性がなく、非民主的に決定された

●実際のところ、閣議決定までのプロセスはきわめて透明性の高いものであり、今後数ヶ月間にわたっての決定はさらに透明性のあるものになる。

●決定までの間に与党協議は2ヶ月間にわたって11回も開催され、代議士たちも参加してさまざまなシナリオが議論されている。公明党の反対のために、自民党は閣議決定の言葉を慎重に選ばなければならなかったほどだ。

●この間のプロセスは日本のメディアで逐一報じられ、国民もその議論を十分認識できたはずだ。安倍氏も特別記者会見を開いたりしている。

●しかもこれから国会で自衛隊法などの法整備のための議論が始まるのであり、結果的に法律に制限がかかることは必至だ。

6,今回の閣議決定は憲法改正や9条の排除へと進むことになる

●日本の法体制を知らないと、このような批判を行ってしまうことになる。解釈と改正はまったく違うのであり、それぞれ全く別のプロセスがある。

●しかも現在の日本の国内の状況や議員たちの構成などを考えると、憲法改正は当分ない。

7,日本の再軍備化の始まりだ

●とくに中国側からこういう批判が出されており、安倍政権を1930年代の日本のイメージとかぶらせようとしている。

●ところが70年間におよぶ民主制度と、平和活動への取り組みから考えると、集団的自衛権の行使容認の変更が他国との戦争を開始できるようにするとは考えられない。

●もちろん解釈変更によって自衛隊がアメリカやオーストラリアなどと軍事的な分野で協力できる範囲が広がるかもしれないが、それでもそのような任務には厳しい制限がかけられたままであろう。

●重要なのは、集団的自衛権の変更は兵器や部隊態勢の拡大を必要とするわけではないという点だ。

8、今回の決定で地域を不安定化させて平和をそこねる。

●これは特に中国や安倍氏に批判的な人々から出される批判だが、たしかにさらに深化した日米同盟が地域の平和を乱すと信じきっている人々からすれば、これは正しいだろう。

●ところが実際は、深化した日米同盟のほうが平和と安定に対する本物の挑戦に対して解決法を出すことになる。

●ソ連崩壊後にアジア・太平洋地域も大きな変化を経験しており、中国の台頭などによって軍事面を強化する動きが出てきている。

●とくに中国は海洋面で独断的になってきており、 南シナ海で大きく領海を主張しているだけでなく、公海でもアメリカに挑戦し、東シナ海では日本の尖閣諸島の実効支配に対抗しようとしている。

●北朝鮮はここ二十年間で核兵器や弾道ミサイルの開発に動いている。

●このような不安定な見通しの中で、閣議決定は今年後半のガイドライン改正にもつながるものであり、日米同盟の強化は将来の抑止、安定、そしてエスカレーションのコントロールにおける大きな力となる。

9,日本の世論は圧倒的に反対している

●メディアなどではそのような印象を受けるが、全般的にいえば日本国民は、自衛隊の制限を排除することや憲法解釈の変更について質問した意識調査では、あまりはっきりした態度をとっていない。

●ところが自衛隊と米軍のさらなる協力の深化という点にからめて質問すると、50%以上の人々が今回の閣議決定を支持している。

●いいかえれば、日本国民は過去との決別に不安を抱きつつも、将来への備えも望んでいるということだ。

10,アジアは反対している。

●これは不正確だ。中国は極めて批判的であり、韓国も懸念を表明している。地域をひとまとめにするのは間違い。

●ただし中国は日米同盟の強化を嫌っているのに対して、韓国は歴史問題がありながらもその重要性を認識している点で違う。

●この二カ国以外では、その反応は支援的なものから控えめなものまで様々だ。オーストラリアはあからさまに支持を表明。PKOや技術面でも日本との協力関係を模索している

●フィリピンは大統領が最近来日しているが、これも公式に支持を表明しており、シンガポールの外相も変更を支持。

●インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、ベトナム、インドなどの東南・南アジア諸国もプライベートな場では賛成を表明しているが公式にはより微妙な立場を示している。

● もちろん彼らは前世紀に日本と歴史的に色々とあった国だが、それでも日米同盟の深化や日本との協力関係の強化は歓迎している。

===

ちなみに私の集団的自衛権についての考えですが、右は法律論に逃げ、左は論理的飛躍のある感情論を掻き立てるだけ。ただし共通しているのは、そこで争われている「政策」レベルの議論が決定的に欠けていたというものです。

ただし根本的にはアメリカが戦争(アフガニスタン&イラン)に負けつつあることによって、国際システムのパワーがシフトしているという事実が、今回のすべての土台にあると私は考えておりますが。



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by masa_the_man | 2014-07-12 23:27 | 日記 | Comments(7)

シーパワーの文献

今日の横浜北部は朝からけっこう晴れてます。湿気も高くて真夏ですね。

さて、目黒に来て以来、少しシーパワー関連の情報が多く入ってきておりますので、この際についでということで、とりあえず後学の方々にメモ代わりに日本語で読めるシーパワー文献と、英語のシーパワー文献の有名なものをまとめて掲載しておきます。

ぜひ参考になさってください。

▼日本語文献

マハン海上権力史論 by アルフレッド・T・マハン (著), 北村謙一 (翻訳)

海軍戦略家 マハン by 谷光 太郎

シーパワーの世界史 by 青木栄一

戦略論大系〈8〉コーベット by 高橋 弘道

シー・パワー―その理論と実践 by 立川京一 他

関根大助「現代シーパワーの基本概念と全体構造(前)」『波涛』第227号(2014年)

同上「現代シーパワーの基本概念と全体構造(中)」『波涛』第228号(2014年)

海洋防衛学入門 by 堀元美

海が日本の将来を決める by 村田良平

海の政治学―海はだれのものか by 曽村保信

▼英語

Some Principles of Maritime Strategy by Julian S Corbett

Seapower as Strategy: Navies and National Interests by Norman Friedman.

The Navy in the Post-Cold War World by Colin S. Gray

U.S. Naval Strategy in the 1990s by John B. Hattendorf

The Influence of Sea Power upon History 1660–1783 by A. T. Mahan

Globalization and Maritime Power by Sam J. Tangredi

Seapower: A Guide for the Twenty-first Century by Geoffrey Till

Forward ... from the Sea by United States Navy.

A Cooperative Strategy for 21st Century Seapower by United States Navy, Marine Corps and Coast Guard.

A Cooperative Strategy for 21st Century Seapower: An Assessment by Robert A. Work, and Jan van Tol.

以上です。他にありましたらどんどん付け足していきます。



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by masa_the_man | 2014-07-08 14:36 | ためになる情報 | Comments(6)
今日の横浜北部は最近としては気温が低めで曇っております。

昨日はラジオ出演と講演会の司会という二つの大きな仕事をこなしてきました。ラジオのほうは相変わらずしゃべりが慣れませんが、前回ほどは緊張せずに話せたというか。

さて、クレフェルトの講演会というか、その後に彼との雑談で聞いたよもやま話についてここにメモ代わりに書いておきます。

クレフェルトとは前回の来日の時に自己紹介をしたくらいだったのですが、今回は彼の滞在先までアテンドを務めたこともあって、かなり突っ込んだ話ができました。

まず会場前の打ち合わせの時に、彼の得意な軍隊と女性に関する話になりまして、日本の自衛隊に女性が積極的に登用されている現状を憂いて、「君たちは国家的自殺(national suicide)に突き進んでいるね」と断言

また、「女性の役割というのは戦士の家庭と子供を支えるところにある、従軍するところにはない。これはイスラム系のテロリストたちも同じことを言っている。私も彼らの言っていることは本当に合意する!」とも。

こういうハッキリした意見を言っているために、彼は色々なところで問題起こしているわけですが・・・・(苦笑

司会者という立場で少し裏方的な手伝いをしていたので、私自身はあまり講演を聞けなかったのですが、どうもこの内容はこの本をベースにしたもののように思いました。

聞いた限りでは、いつもの過激さが影を潜めていた感じでしたが・・・

ところが私が彼の滞在先である新宿のホテルまで一緒にアテンドして食事をすることになったので、これはチャンスと思い色々と質問をしてみると、出てくる出てくる、過激な意見が。

まずタクシーの中で、なぜか話がパレスチナ問題になりまして、「アラブの奴らはアホだ。彼らにはまったく戦略的な規律がない」という話を始めました。

そしておもむろに、「俺がパレスチナのトップだったらこうやる」と言って、以下の三つを実行することを明言。

1,イスラエル国内で行っているテロをすべてやめる。
2,1967年の第三次中東戦争で獲得したヨルダン川西岸およびガザ地区の入植地に住む人々(settlers)へのテロを停止する。
3,その代わりにその入植地を守っている兵士に対してのみテロ行為を行う

ということでした。

そうすると、殺された兵士の親たちの、入植地に住む人々に対する感情が悪化して、イスラエルの世論を分断できるからだということです。

「でも奴らは頭悪いからこんな統制のとれたことができなくて、小さなテロとかやっちまうんだ。だからアホなんだよ」とのこと。

まあ一般的に今のイスラエルも腰抜けになったというのが彼の意見みたいですが。

それ以外に聞いた話は以下のようにポイントフォームで。

●毎年の休暇は奥さんや息子さん(現在35歳独身)とドイツのポツダムで過ごすそうで、別荘を借りて自由に湖で泳ぐとか。今年は奥さんがケガしたみたいでまだ行けていないとのこと。

●体の障害(口唇裂)があってイスラエル軍に入隊できなかった。これは当時(60年代)のイスラエルではけっこう屈辱的な体験だったとのこと。その恨みがあって、「軍人よりも俺のほうが軍のこと知ってるぜ!」と証明したくて軍事史家になったようなもんだ、と述べていた。

●自分の子どもたちも同じような障害があったが、彼らは従軍している。今はイスラエル軍の基準も緩和されているからとのこと。

●手元にはすでに完成した原稿が三冊分あるそうで、ひとつは『戦争論』に関するもの。タイトルはMore On War。直訳すると「もっと戦争論」、もしくは「戦争論余論」。これはイエール大学出版から出したいらしが未定。

●あとの二冊は「良心」の歴史についてと、「平等」の歴史についての本。「良心」のほうは年末までに出るらしいが、とにかくもう軍事史については書くのはこれで終わりにしたいと考えているとのこと。

●戦争にはやはり普遍的なロジックがある。それをうまく論じているのは孫子とクラウゼヴィッツだけで、この二人以外には思想的な巨人はいないという。私も「ジョミニは?ボーフルは?」と次々に聞いてみたが、「全然」と釣れない返事(笑

●クラウゼヴィッツと孫子を比べると、孫子のほうが「対等な敵」を想定している点でよりゲーム的であり、戦略面での創造性には欠けると指摘していたのは印象的だった。

●クレフェルトは『ルトワックの戦略論』の原書の初版(1987年)が出る前に、出版社に請われて、アメリカのルトワックの自宅まで行き、細かく本の内容をアドバイスしたらしい。

●ここでインスピレーションを受けたのが「戦略はゲームである」というアイディアで、そのアイディアを具現化したのが数年前のウォーゲーミングについての本。構想30年とか。

●自分が今まで書いた本の中で自分を有名にした本は『戦争の変遷』だが、個人的に一番その完成度を気に入っているのは「戦争文化論」。

●今68歳。体調を崩し気味で、昨年には軽度の心臓の手術をしたし、最近はウィルス性の病気で10日間も入院した。

第一次世界大戦前のドイツの状況は、現在の中国とそっくりだということ。とくに海の地理が似ていて、いくら巨大な艦隊を造っていても、外洋に出るのに苦労しているところはそのまま適用できるという。

●教えることは好きだが、もう大学の教員にはなりたくないという。授業でやや過激な(しかし学問的に真実なこと)を言うと、最近は学生が教師を告発したりしてすぐ問題にされてしまう。2008年にエルサレム大学を退職できて本当に清々したとのこと。

●現在は次に書く本を考えていない。もう書き尽くしたから当分は書きたくない。自分のウェブサイトにはたまにコラムを書くくらいになっている。

●数年前に日本のある企業に呼ばれて講演会でしゃべったが、あの時は相手が何を求めているかをわからなかったので自分のコメントが浮いていることがよくわかった。安全保障というテーマだったのに、自分が語ったのは「生きるか死ぬか」

●クラウゼヴィッツは素晴らしいと思う。とくに戦争の本質についての議論はすごい。ただしロジスティックについて論述している箇所はまったくわかっていないと思う。「戦争論」自体もバラバラで酷い本だ。

●クリストファー・バスフォードらが私の『戦争の変遷』の中の「非三位一体戦争」の概念について批判しているが、彼らの指摘は正しいと思う。政府、軍隊、国民の三位一体は二次的なもので、やはり悟性、偶然、情動という三位一体のほうが一次的なものだ

●それでも私が言いたかったのは「クラウゼヴィッツはその時代の戦争観に縛られすぎている」ということ。シーパワーなどについてほとんど言及なし。小規模戦争について述べているのもたった一章だけだ。

●使える言語は4つ。オランダ語、ドイツ語、ヘブライ語、英語。

●日本では「補給戦」がポピュラーだと告げると、あんな昔に書いた本についてはそんなに興味がないと言っていた。日本では原著の第2版が翻訳されていないと言うと、「ああそうなのかい」という程度で、あまり関心のない様子。あまりにも多くの言語に翻訳されているので、どれがどれなのかすべて把握できていないからだとか。

●アメリカの対外政策について批判的に書いた本があるのだが、ロシア語でしか出ていない。向こうでは非常にポピュラーだが英語では出ていないから、君だけでなく、僕も読めないんだよと言っていた。

●『補給戦』や『エアパワーの時代』でもわかる通り、自分は既存の軍事史の見方に挑戦するのが好きだと言っていた。というか、むしろそれが自分の「宿命」なんだと笑っていた。

●核戦略についてはフリードマンの本ですべてが書かれてしまっているので、他の人たちは何も書けなくなっちゃったね、と言っていた。

●尊敬する戦史家としてはマイケル・ハワードを挙げていた。とくに彼のデビュー作である普仏戦争に関する本は「すごい本だよ」と絶賛。

●また日本に来るかと尋ねたら、「呼んでくれたらいつでも来るぜ」とのこと。ただし、しゃべるテーマは指図されたくないのでこちらに決めさせてくれと言っていた。その前の講演では2つのテーマを混ぜてくれと言われたので困った。2つは全く違うテーマだからだ。

●若手で優秀な研究者はピーター・シンガーだ。彼の優れた点は「多くの人に話を聞ける」という点だ。決して「単なるジャーナリスト的な人物」じゃない。いい仕事をしている。本や論文よりも、直接聞ける話のほうが重要だ。

===

などなどです。他にも思い出したらあとで加えておきます。




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by masa_the_man | 2014-07-03 15:01 | 日記 | Comments(12)
おしらせです。

現代の三大戦略思想家の一人である、マーチン・ファン・クレフェルトの講演会の開催が決定しました。

過激な正論で常に物議を醸す大学者クレフェルト氏のイスラエルの大戦略論、とくとご堪能いただければと思います。

〜〜〜

戦略研究学会 第42回定例研究会:
マーチン・ファン・クレフェルト博士講演会
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日時 平成26年7月2日(水) 午後6時30分~9時00分
会場 文京シビックセンター 4階 シルバーホール
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東京都文京区春日 1-16-21 TEL03-3812-7111
地下鉄春日駅(大江戸線・三田線)、後楽園駅(丸ノ内線・南北線)より1分、JR水道橋駅より7分

テーマ:「戦略がなければ国家は滅びる―イスラエルの生き残り戦略

講師:マーチン・ファン・クレフェルト氏(元イスラエル・ヘブライ大学歴史学部教授)
ロンドン大学経済政治学大学院で博士号を取得後、1971年からイスラエルのヘブライ大学歴史学部教授。防衛省防衛研究所及びアメリカ海軍大学を含む欧米の多くの大学や研究機関で講義や講演を行っている。軍事史及び戦略研究に関する22冊の著書及び多数の論文がある。邦訳書に『エア・パワーの時代』、『補給戦』、『戦争の変遷』、『戦争文化論』など。

参加費 会員 1,000円 非会員 1,500円(事前申込不要)

逐次通訳で行います

主催: 戦略研究学会
〒113-0033 東京都文京区本郷 3-3-13
TEL 03-3813-4466 FAX 03-3813-4615
http://www.j-sss.org/
info@j-sss.org
by masa_the_man | 2014-07-02 00:00 | ためになる情報 | Comments(2)