戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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浅田真央の戦略の失敗

今日の横浜北部は朝からよく晴れております。朝方は気温も低かったのですが、昼前にはすっかり春の予感に。

さて、スポーツに関するネタとして、日本人にはない視点で書かれたものを発見しましたので、参考までにその記事の要約を。

著者は、以前からキム・ヨナ選手を絶賛しているバイアスのかかったスポーツジャーナリストみたいで、この記事では浅田選手に関してけっこう厳しいことを書いております。

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浅田真央の頑固さがメダルのチャンスを台無しにした
BYジャック・ギャラガー

●人生の中では、時として自分自身が自分にとっての「最悪の敵」になることがある。アドバイスを受け入れず、聞きたくないことを聞かないようにして、現実を無視する時が、まさにそのような場合だ。

●嫌いなことや恐怖、それに望まないことに直面して、このようなパターンの陥ってしまうと、人は大抵大きな失望に直面することになる。

●そしてこの典型的な例が、2度世界チャンピオンに輝いた、ソチオリンピックにおける浅田真央選手である。

●浅田選手が自身のトレードマークであるトリプルアクセル(3回転半)を成功させようと長年苦労していたことは明らかであったが、そのために戦略を変えるのを拒み、結局はフリーの演技のあとに6位で終わることになってしまった

●もちろんこうなる必然性はどこにもなかった。しかし、浅田選手の頑固さが、ジャンプそのものを成功させるよりも大きな障害となってしまったのだ。

●彼女は生まれながらの才能や美貌に恵まれており、これはフィギュアスケートをする人間にとっては夢のような組み合わせである。

●ただ、もし浅田選手が本気で今回のオリンピックで金メダルを取ろうと望んでいたのならば、彼女は数年前の時点で方針を変えるべきであった

●本コラムでは、浅田選手は海外に拠点を移してトップの外国人コーチと協力してその目標を追求すべきであった、と考えている。もし彼女がブライアン・オルサ―やニコライ・モロゾフ、もしくはフランク・キャロルのような人物にコーチしてもらっていたら、ソチで再びメダルを獲得できる可能性が高かったはずだ

●ところが彼女はそうせず、結局は願いを叶えられないまま、帰国するはめになってしまったのだ。

●国際的なメディアでは、浅田選手を「金メダルの本命」と見る向きが多かったが、彼らに驚くほど注目されていなかったのは、ここ一年ほど彼女がトリプルアクセルを成功させられずに、スランプに陥っていたという点だ。

●この事実が無視されていた理由は、彼らが選手の過去の業績ばかりを見ていて、現在の状況を考慮していないからだ。

●シングルの競技の前に私が話をしたある著者は、浅田選手のスランプをよく理解しており、あまり良い結果を出せないだろうとあきらめていた。「彼女はスケート界に多大な貢献をしたのにね・・・」とその著者は落胆した声で答えていた。

●浅田選手はトリプルアクセルを、団体戦の演技だけでなく、ショートプログラムのほうでも失敗している。フリーの演技での成功は、多くの人々をようやく安心させてくれたが、それも「時すでに遅し」であった。

●先週の月曜日の記者会見で、浅田選手は「私にとってトリプルアクセルは全く重圧にはなっているとは考えてません・・・それは逆にクリアすべき目標を明確にしてくれますし、これは私のトレードマークです。もちろんトリプルアクセルがすべてではありません。これ以外のジャンプでもプログラムに入っています」と答えている。

●この彼女の発言における最大の問題は、両方のプログラムの冒頭でトリプルアクセルを決められないと、そのあとに続く演技に心理的な悪影響を及ぼしてしまうという点だ。そして実際に、2度のジャンプでの失敗は悪影響を与えてしまった。

● 女子フィギュアのSPの演技のあとにメディア専用のバスに乗って宿舎に帰る時に、私は同乗していたスケートの審判の一人に話を聞いてみた。この審判は頭を振りながら「真央はわざわざトリプルアクセルをする必要なんかなかったのにね」と答えてくれた。

●そしてその演技を見ていた多くの人は、この審判と全く同じことを考えていたはずだ。

●悲しむべきなのは、浅田選手がこの問題に直面することを拒絶したことが、彼女自身だけでなく、彼女の多くのファンたちまで、大いに落胆させてしまったという点だ。

●彼女はSPで16位になり、メダル獲得のチャンスは失ってしまった。一巻の終わりである。私は演技が終わった瞬間に「日本の全国民が寝ずにテレビで観戦しているのに・・・」と感じた。

●もちろん彼女はフリーで素晴らしい演技をしたため、それが彼女にとって「救い」であった考える人もいるだろう。ただしこの分析は甘い

●プレッシャーの全くかからない状況でパフォーマンスするというのは挑戦とはいえない。そもそも演技への期待は低いため、それを素晴らしく見せるのは容易なのだ。

●浅田選手が団体と個人のSPでミスしたのは「不運だった」と本気で考えている人はいるのだろうか?もしそうだと考えているのであれば、それは完全に「現実を見ていない」ということになる。

●これは私の確信であるが、もし浅田選手がオルサー、モロゾフ、もしくはキャロルのようなコーチをつけていれば、彼らはその失敗の直後に浅田選手のパフォーマンスに判断を下し、彼女と長い会談を行ったはずだ。

●おそらく彼らは彼女にたいして、「もうトリプルアクセルを安全な形でこなせないんだから、われわれは演技の構成を変えるべきよ。何か新しいことをやって別の方向性を見出すしかないわ。金メダルへ最も近い道はこれよ」と言ったはずだ。

●ところが問題に直面したくない人間というのは、それを無視するものだ。そしてこれは問題をさらに悪化させることになる。

●危機に直面した人間というのは、大抵の場合「なぜこんなことが起こったんだ?」と自問することになり、実は以前から十分に気づいていた事実を無視してしまっている、というケースは多い。

●浅田選手の場合、この問題ははるか以前から目の前に見えていたのであり、彼女はそれを直視するのを拒んでいたのだ。

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なかなか厳しいですね。

スポーツは専門外なので私はなんともいえないわけですが、それでも個人的には原著者がいくつか分析を間違えているなぁと感じるところが

ただし私は、この記事の中にも参考にすべき点がいくつかあると思っております。

その一つが、これが現在メディアにあふれている「真央ちゃんよかったね!」というストーリー性を重視したような報道ではなく、あくまでもオリンピックにおける女子フィギュアというものを「メダルを獲得するための競技」として冷酷にとらえ、そこでの結果にこだわった戦術や戦略の分析をしているという点です。

これを読むと、逆に日本人に特有の「戦略文化」というものが浮き彫りになってくるような気がするのは私だけでしょうか。


by masa_the_man | 2014-02-26 11:55 | 日記

米軍予算の削減

今日の横浜北部はよく晴れました。気温もやや上がってきたような。明日から本格的に暖かくなると聞いていますが・・・

さて、すでに日本のメディアでも取り上げられている、米軍予算の削減についての記事の要約です。

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米国防省、第二次大戦前の規模にまで軍備縮小を計画
Byトム・シャンカー&ヘレン・クーパー

●ヘーゲル国防長官は第二次大戦前のレベルにまで米軍を縮小する計画だ。そして新しい予算では米空軍のある攻撃機の部隊全部が消滅し、2001年のテロ事件以降としてははじめて積極的に軍備縮小を進めている。

●月曜日に公開された提案書では、政府の緊縮財政の現実や、二つのコストのかかる地上戦を終わらせることを誓った大統領の意向が反映されている。

●その結果、米軍はどの国の敵でも倒すことはできるが、それでも外国で長期にわたって占領を継続するには小さすぎることになる

●この提案書の初期の段階の草稿を見た関係者が認めるのは、予算削減によって2正面で大規模な戦争を同時に戦うことは難しくなり、もしその段階で命令されたら長期戦となって犠牲者も多くなるという。

●また、彼らは小規模になった米軍のおかげで、将来の敵が冒険主義的になる危険も指摘している。

●ある国防省関係者によれば「軍というのは備えあってものだが、大規模な陸上戦がなくなってしまえば大規模な陸上部隊もいらなくなってしまう」という。

●この予算は政治的な議論を呼ぶことは必至だ。たとえば飛行大隊を退役させようという動きに敏感な連邦議員たちは、さっそくこの提案の進行を阻止しようとしており、州兵協会というロビー団体は、議会に予算削減を阻止するよう働きかけるためのパンフレットを準備している。

●州知事もこの政治に口を出してくることが確実であり、国防産業の幹部や軍港を持つ選挙区選出の議員たちも、艦船の建造を遅らせるようないかなる動きにも反対することが予測される。

●そのような状況でも、国防省関係者によれば、米軍は世界最高の能力を維持するだけの予算は得られるだろうし、ヘーゲル長官の提案は統合参謀本部の了承を得ることになると述べている。

●彼らによれば、人員削減で浮いた額の資金は、現役の人員の訓練や装備の充実のために回されるはずだという。

●「ヘーゲル予算」によって明らかになるのは、米軍が特殊部隊やサイバー関連の予算については守るということであり、海外に派遣されている部隊の中で陸上部隊を伴わないものには優先的に予算がつけられるというものだ。

●そして少なくとも1年間は、空母を現在の11隻体制のまま維持するという。

●関係者によれば、全体的にいってヘーゲル予算はオバマ大統領の意向を取り入れたものであるという。つまり米国の領土と海外の権益を守り、侵略的な動きを抑止し、もし戦争になれば決定的に勝利する、というものだ。

●「それでも米軍の規模は大きいままですよ。でもさらに身軽で、高い能力を持ち、近代化され、しかも練度を上げたものになるでしょう」とはその関係者。

●ヘーゲル氏の計画は、陸軍と州兵、そして予備役などの、陸上部隊にたいする影響が最も高いといわれている。

●とくにイラクやアフガニスタンで激しい戦闘を行っている米陸軍は、911事件後のピークである57万から49万まで縮小することを計画しており、将来的には44万から45万の間に落ち着きそうだ。この数は1940年以降では最少である。

●長年にわたって、国防省は2つ戦争を(たとえばヨーロッパとアジアで)同時に戦えるだけの規模が必要だ(とくに冷戦中に)と論じてきたが、最近の一連の文書では、一正面で決定的に勝利し、もう一正面では動員準備ができるまでもたせ、最終的に勝てればよいという議論がされている。

●実戦投入までには訓練に時間もコストかかる州兵や予備役は、あまり大きな削減には直面しないとされている。しかし州兵のほうは陸軍と、アパッチ攻撃ヘリとブラックホークヘリコプターを交換するという。州兵には災害派遣などで輸送ヘリのほうが必要だからだというのがその理由だ。

●ヘーゲル予算は去年12月にオバマ大統領が議会と合意した超党派の予算強制削減案に沿ったものだ。この案では2015年度の国防予算の上限が4960億ドルに設定されている。その後の法案で2016年にさらなる削減が発動すると、将来的にはさらなる削減が必要になってくる。

●今回の予算ははじめてヘーゲル氏が長官になってから本格的に関わったものだ。まだ長官になってから1年ほどだが、その間はまだ前期から受け継いだ問題に対処していただけであった。

●今回の提案は復員兵たちの団体や防衛産業関係者、それに自分の選挙区の基地の閉鎖を避けたい下院議員たちの反対にあうことは確実だ。

●関係者によれば、最初のステップとして、まずヘーゲル氏は高官レベルの給与レベルを1年間据え置きする。一般兵士は1%の給与増額だ。そして2015年以降では同じように据え置きになるという。

●2015年度の予算では兵士にたいする無税の住宅手当の拡大を抑えることになり、軍の施設の購買部への14億ドルにのぼる直接補助金が減額され、兵士が購入する物品の価格は上がることが見込まれている。

●また、退役兵や現役の家族などの健康保険の掛け金の増額が予定されている。しかしヘーゲル予算では、現在兵役についている人々が退役したあとの年金などは変化しないという。

●ヘーゲル予算では空軍のA-10攻撃機の全機廃棄が予定されている。A-10は西ヨーロッパで侵攻が起こった場合にソ連の戦車を攻撃するためのものとして作られたが、この能力は今日はもう無駄であると見なされている。

●ただしF-35の開発費はカットされていない

●他にも廃棄されるのはU-2偵察機であり、これが無人機のグローバルホークにとってかわることになる。

●海軍は2隻の駆逐艦と2隻の潜水艦を毎年購入することができるが、11隻の巡洋艦は、近代化の過程で待機状態におかれることになる。

●空母を1隻退役させることも考慮されたが、海軍はとりあえず当面は11隻体制を維持することになった。ジョージ・ワシントンはこれからドックに入って数年間にわたって改修されることになり、厳しい予算内ではこのまま退役ということもありえるという。

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実は目に見える形での削減というのはないみたいですね。それでも同盟国にたいする負担を上げるという方向は変わらないわけで。


by masa_the_man | 2014-02-25 20:14 | 日記 | Comments(3)
今日の横浜北部は朝方は曇っておりましたが、昼過ぎから晴れました。明日からようやく暖かくなるそうですが。

さて、今日は久しぶりに私が最近考えていることを少し。

私がここ数年イチオシ状態で推している戦略についての概念が「戦略の階層」であることは、本ブログを長年ご覧の皆様でしたらすでに耳タコ状態かと思います。

この「戦略の階層」ですが、おかげさまでここ数年の間に地方の経営者の方々の前で発表する機会に恵まれているわけですが、ここでたまに聞かれるのは、

日本人、もしくは日本という国家が持つべき世界観や政策はどのようなものか?

というもの。

これについては私も正直なところ、あまり明確な答えというものを持っていなかったわけでして、もしかすると日本人は概して世界観が「弱い」(無いというのはありえない)のでは?という疑念を持っていたこともあります。

ところが数ヶ月前に、ある本を横浜の某地下街にある本屋で立ち読みしておりまして、その疑惑に答えを与えるひとつのヒントになるものを見つけたかな、という感覚を得たものがありました。

そのヒントは、ある大手印刷会社を取材したジャーナリストの記していた言葉にありました。

このジャーナリスト、日本のさまざまな老舗企業を取材してきたらしいのですが、彼にとってとりわけ印象的だったのは、ある大手印刷会社。

この会社は単なる印刷業者ではなく、広告代理店的な仕事やエレクトロニクス分野、インテリア、ファッション、建設、それにシンクタンク的な分野まで実に幅広くこなしているというもの。

つまり「超」のつくほどの多角経営企業だったというのです。

彼が取材してわかったのは、印刷業というのがきわめて「受け身」産業であり、とにかく相手の注文に徹底的に応えるという、いわば女性的(?)に任務をこなしてきたわけであり、客のニーズの必死に応えているうちに分野を拡大させてきたとのこと。

しかも面白いのは、このように徹底的に受け身に徹することによって、それが逆にアクティブな企業としての体質につながったわけであり、このジャーナリスト、どうも日本の優秀な企業の特徴は、その受け身のしたたかさというか柔軟性にあるのではないかということに気づいたというのです。

このようなやり方というのは、逆にいえば「日本の企業には(外国の企業や国家のような)明確な政策や世界観がない」という風にも映ることがありますし、実際そういう部分があるのは私も認めます。

ところがここで問題なのは、このような「徹底的に受け身に徹する」というのも、実は立派な世界観であったり、政策ではないか、というもの。

「主体的・積極的に行け、受け身はよくない」というのは確かにある面では正しいのですが、どうも日本人の体質に合うのはこの逆で、ひたすら受け身に徹するというのも一つの方策なのではないかということを最近つくづく感じているわけです。

ただしここで決定的に致命的になってくるのが、そのためにどこまで柔軟性を保っていくことができるのか、という点です。

これがなくなってしまえば、「受け身であること」には何のメリットもなくなってしまうわけですから。


by masa_the_man | 2014-02-24 18:40 | 日記 | Comments(9)
今日の横浜北部はよく晴れておりまして、気温が低い割には快適にすごせております。

長崎方面への出張などがありまして、ここ数日は落ち着かない日々をすごしておりましたが、ようやく今日から本格的にブログに復帰です。

さて、今日は気になるTPP交渉に関するものを。一週間近く前の記事ですが、米国内のTPPの反対勢力について触れているという意味では面白いかと。

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アジアとの貿易交渉は「中間選挙」という壮大な生涯に直面する
By マーク・ランドラ―&ジョナサン・ウェイズマン

●オバマ大統領の貿易交渉は、今年後半に行われる中間選挙のおかげで難題に直面することになりそうだ。

●これはバイデン副大統領が、「民主党の下院議員たちは、オバマ大統領にアジアとヨーロッパで現在進行中の貿易交渉を締結させないだろう」と明言したことにもあらわれている。バイデン氏のコメントは、12の国々と世界最大規模の貿易圏を作るためのTPPの実現性に疑問を投げかけたものだ。

●TPPは、オバマ氏のアジア重視の戦略転換の中核をなすものであり、ホワイトハウスはこれを去年のうちに締結するつもりであった。

●ところが最近マサチューセッツ州のケンブリッジで行われた民主党下院幹部たちとの会談の席で、バイデン副大統領は、議会における自由貿易協定のいわゆる「早期一括交渉」(fast-track authority)についての立法は現在は考えていないと述べたという。

●この立法は、オバマ大統領にとっては日本やシンガポールのような他のアジア・太平洋の国々との交渉を進める点において必須のものであると見られている。

●TPPは、広範囲な分野の製品やサービスにかかる関税を下げ、規制緩和することを狙ったものだ。そしてこれは、アメリカの輸出と輸入の40%に影響を与えると見られている。オバマ大統領にとっては、この貿易協定は対アジア政策における経済面においての重要な役割を果たすことになるはずだった。

●ところが民主党の議員たちは、今年末の中間選挙で厳しい立場におかれている。そのため、バイデン副大統領はこの政策に反対する勢力(労働団体など)が示している懸念についても敏感にならざるをえず、太平洋地域でアメリカと大規模に貿易を行っている国々にたいして厳しい立場をとっている。

●たとえば彼は、民主党の議員たちにたいして、「俺は日本にたいしてアメリカの車がたった1%のシェアしかない状態ではTPP交渉を続けられないと警告してきたぜ!」と述べている。

多くの民主党議員たちはTPP交渉に反対しており、労働団体や環境保全団体、それに消費者団体なども同調している。なぜなら彼らは自由貿易圏が実現すると、製造業での雇用が失われて環境破壊につながると懸念しているからだ。

●それでもホワイトハウスの関係者たちは、オバマ氏はまだ貿易交渉の締結を諦めていないと主張している。

●たとえばヨーロッパと交渉中のTTIPも早期一括交渉権によって影響を受けるのであり、しかもここだけは共和党と大統領が合意できている分野なのだ。

●バイデン氏は、TPPを締結することによって中国の経済力に対抗することができるようになり、これはその周辺国にとっても重要だと述べている。

●その会合では、バイデン氏の説明の後に、ある民主党議員が「地政学的な優先順位について説明していただきありがとうございます」と言ったという。

●ところがバイデン氏はその後に「それでも地元の選挙区の事情も考慮する必要がありますよね」と述べたという。たしかに民主党のトップたちも、まだオバマ大統領に早期一括交渉権を与えるとは言っていない

●経済学者たちは、アメリカ経済が復調にあり、国際貿易システムがまだオープンな状態にあるため、TPPなどが締結されなくても国際貿易は全体として増加する可能性が高いと言っている。

●「ところがこの交渉に失敗してしまえば、アメリカの貿易政策は完全に暗礁に乗り上げてしまい、それはオバマ政権の残りの期間には何も動かないでしょう」とはメリーランド大学のある教授のコメント。

●バイデン氏の後にしゃべったオバマ大統領は、貿易関連のことについては一言も触れず、最低賃金の上昇や移民法の抜本的改正など、民主党員たちが全般的に同意してくれるようなことしか語っていない。

●もちろん専門家の中には、政府が貿易関連の政策を賢明に推進している点について評価する人もいる。オバマ政府は去年、国際的な経済の専門家であるマイケル・フロマン氏を、米国の貿易交渉の代表に任命したのがそのあらわれだ。

●また、大統領は来月に日本、韓国、マレーシア、フィリピンなどに主に貿易関連の問題について語るために訪問する予定だ。

●貿易関連の問題は、古くから民主党を分裂させてきたテーマであり、親ビジネス系の穏健派と労働団体を中心とする派閥との対立を煽ってきた経緯がある。

●そして11月の中間選挙で民主党支持者の主な層が投票所に足を運ばないことを考えれば、民主党は労働団体の選挙協力が必要になるということだ。

●民主党も共和党も、ともに選挙前の党内の分裂を極力避けようとしている。たとえば共和党の下院議長のジョン・ベイナー氏は「移民法の改正について言及するな」と同党のメンバーに注意されているという。

●その反対に、民主党にとってはこの早期一括交渉権の問題が、ホワイトハウスと民主党上層部を分裂させることになる対立点なのだ。

●共和党のメンバーの中にはこの2週間ほどの間にオバマ大統領にたいして早期一括交渉権の問題を進めるように公式の場でけしかけている。その理由として、この問題は共和党とホワイトハウスが雇用の創出という互いに合意できる点であることを挙げている。

●ケンタッキー州選出の共和党のリーダーの一人であるミッチ・マコンネル上院議員は、「これほど景気の悪い時にアメリカの製品を輸出できるチャンスが来るのが明らかなのだから、これを進めないほうがおかしい」と述べている。

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オバマ大統領自身の民主党はTPP交渉や締結に反対していて、その反対に共和党のほうが推進に賛成しているという「ねじれ」は面白いですね。

何度もいいますが、アメリカだってTPPでも何でも、決して「一枚岩」ではありません。

逆にいえば、その分裂を利用するのが交渉であり、それを見極めて仕掛けていくのが戦略なわけですな。


by masa_the_man | 2014-02-22 16:44 | 日記 | Comments(4)
今日の横浜北部はよく晴れて気温も上がりました。また明後日から雪が降るなんて信じられない感じですが。

さて、昨日お約束しました、ロバート・カプランの中国の戦略分析についての論考の要約を。

これはおそらく私が二年前にシンガポールで会議に出たときにBBCの記者が教えてくれたカプランの南シナ海についての新刊本の内容がかなり反映されたものと推測されます。

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なぜ中国は周辺国を挑発するのか
By ロバート・カプラン

●中国は東アジアで一体何をしようとしているのだろうか?北京の最近の新しい漁業ルールの規定宣言は、周辺国の怒りやアメリカの狼狽を引き起こしている。

●防空識別圏の一方的な宣言は、アメリカがグアムからB-52を飛ばしたことにもつながっており、これによってアメリカは実質的に日本を守ることを宣言したようなものだ。

●日米の固い決意に直面した中国は、本当に釣魚島(尖閣諸島)を守ることができるのだろうか?もしくは南シナ海のスプラトリー諸島を支配することができるのだろうか?

●中国のハッタリは実力よりも大きいいのだが、東シナ海と南シナ海では実際には弱い立場にあるとも言える。新しい防空識別圏を守るために必要となる地上の早期警戒システムはあまりにも遠い位置にあるか、まだ生産段階にあり、その点においては日本のほうがはるかに高い性能を持った機器を備えている。

●中国側の海洋面の兵站や長距離の兵站線は、スプラトリー諸島の支配と維持を難しくしているのだ。

●もちろん日本をのぞけば、中国海軍や沿岸警備隊は、その周辺国の軍隊を蹴散らすことができるだろう。しかし中国はアメリカを含むどの組み合わせの同盟国も圧倒することはできない。そして現状維持を変更しようとするいかなる行動も、結局のところはアメリカを引きこんでしまうことになるのだ。

●フィリピンは自国の周辺にアメリカの海・空軍力を拡大するように積極的に要請しており、ワシントン政府はもうすぐ日本に最新の空母を派遣する予定になっている。

●ところが、もし北京政府が実際の紛争を避けつつも、単なる「国内向けのパフォーマンス」としてアメリカとの緊張関係を高めたいと考えているとすればどうだろうか?

●これはかなり危険なやり方ではあるが、それでも中国の行動をうまく説明していると言える。実際のところ、これは中国がアジア・太平洋地域の全域で行っていることであり、たしかにニュースの見出しを飾るものではあるが、それでも紛争に至るほど激しいものではないのだ。

●中国は島々の周辺に沿岸警備隊の船を派遣しており、時おりフィリピンやベトナムの漁船にいやがらせをすることがある。ところがその役割は主に空威張りやハッタリだけであり、ほぼすべてのケースでは中国は戦略的な現実を根本的に変化させることはできていない。

●たしかに中国の圧倒的な海軍力や空軍力はまだ存在していない。そのため、アメリカはこのような中国側の行動をほぼ無視している。いいかえれば、アメリカがこの地域で海軍力の拡大を行っている明白な証拠はないのだ。

●したがって、現在われわれが目撃しているのは、主に中国が国内向けに行っている「管理された紛争」である

●これによって北京政府は「台頭する中国」という感覚を強化するための民族主義的な精神の高揚の維持を行っていることになるのであり、この感覚はとくに不景気の時には政権にとって必要となってくるものだ。

●また、海洋で空威張りをすることによって、中国は他の海洋権益を主張する周辺国との交渉を強い立場から進めることができる。そうすれば後になってから力の弱い国に対して中国側が領有権を主張する際に有利になるのであり、明らかにこれを周辺国は心配している。

●さらにいえば、海軍と沿岸警備隊がフィリピンや日本などを敵に回すことによって、中国は国内の聴衆にたいして、「この二つの国と同盟関係にあるアメリカにたいして立ち向かっている」というイメージを喧伝することができるのだ。

●ここ数年間に中国が東シナ海と南シナ海でどのような行動を行っているのか、そのパターンが興味深い。

●たとえば中国の一方的な行動がアメリカの注意を引いてコストが利益を上回ることになると、中国はその注意を別のところに向けるのだ。

●たとえば中国が南シナ海のフィリピン近くのスプラトリー諸島で何週間にもわたって紛争を煽るようなことをやったとしても、アメリカがその行動に気づいて海軍を動かそうとすると、軍事的な(そして国民の)注意を日本と対立している東シナ海のほうに向くように仕向けるのだ。

●もちろんこうしている間にも中国側はフィリピン周辺海域でのパトロールをやめておらず、その頻度は下げて、東シナ海の尖閣周辺のような別の海域での活動の頻度を上げるのだ。

●そうなると南シナ海での紛争のニュースは少なくなり、逆にベトナムや台湾との領海争いのレベルを上げることになる。

●中国は米海軍と米空軍が監視している太平洋では海の支配権を完全に確立することができないため、実際のところは国内向けの「イメージ操作」という意味合いが強いのだ。

●中国の軍事能力はアジアの他のどの国よりも速い速度で発展しているために、北京政府にとっては紛争を起こさずに時間稼ぎするほうが合理的であるということになる。

●そうすることによって多くの国は次第に中国に従わざるを得なくなり、周辺国のアメリカへの心理的従属状態を軽減できるのだ。

●実際のところ、もし中国のリーダーたちが国内からの圧力にさらされていなければ、彼らにとっては長期的なゲームを楽しんで大人しくしているほうが合理的である、ということになる。実際に鄧小平はこれをアドバイスして成功させてきた。

●ところが中国のリーダーたちは、どうも国内からの圧力を感じているように見える

●数年前までの経済面での奇跡はもう存在しないし、構造改革は待ったなしだ。そして鄧小平レベルでの改革が成功したとしても、社会・経済面での混乱は避けられないだろう。

●中国の新しいリーダーである習近平は、国民からの圧力を下げるレバーを必要としており、この際に簡単に使えるのが「ナショナリズム」なのだ。

●まとめると、東シナ海と南シナ海で危機を起こしている中国は、長期的な国益を犠牲にして、国内向けの短期的な利益を得ようと行動しているように見える

●結局のところ、フィリピンのような国をいじめて、日本との緊張を高めるのは、この二国のアメリカへの依存度を上げてしまうだけであり、これは中国としては避けたいところである。

●ここには一つの皮肉が見える。独裁者というのは、少なくともその定義からして、国民の総意にしばられることはない存在である。ところがこの場合や多くのケースと同様に、独裁者というのはそれが非生産的であることを知りつつも、国民からの支持を必死に得ようと努力せざるをえないのだ。

●もちろん中国の指導層や国民たちは、太平洋における中国の主権を本気で信じており、覇権的なアメリカを後ろにつけた他国の間違った主張にたいして反論しているだけだ、ということになる。

●ところがこれらの主張を実現する可能性は、やはり中国がなるべく目立たないように行動しながら軍事力を向上させ(韜光養晦)、あとで驚くほど力を見せつけるのを狙うことで高まるはずなのだ。

●アメリカは長年にわたって「もし中国が民主化されて世論が政策の形成に大きな役割を果たすようになれば中国はおとなしくなる」と考えてきた。

●ところがこれはどうも間違っているようだ。中国の指導層が国民の声を聞こうとすればするほど、政権の行動はより獰猛かつ民族主義的になる可能性が高い。したがって、東シナ海におけるこの危機は段々と弱まるかもしれないが、同じような危機は別の場所で次々と勃発するはずだ。

●長期的にみれば、中国の軍事力はその「口先」に追いつくはずであり、そうなると中国の主張にたいする周辺国の反発への意欲は下がるだろう。

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簡単にいえば、「中国の最近のアグレッシブな態度は、すべからく国内向けのジェスチャーだ」ということですね。

中国の思考がいかに内向きで自閉症的なものであるかについては私の翻訳したルトワック本でもかなり近いことが述べられておりますので、よろしければこちらもぜひ。


by masa_the_man | 2014-02-17 20:12 | 日記 | Comments(11)
今日の横浜北部は朝から快晴の気持ちい一日でした。

ここ数日は雪がひどく、うちの近所では電車の追突事故があったりしましたが、私は確定申告の事務処理のために家にこもっており、大事に至らずにすみました。

明日は申告の初日ですが、さっそく書類を提出してこようかと。

さて、中国のエネルギー問題についての記事です。この話題は、個人的にもこの本を翻訳したおかげで気になるものです。

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米中はエネルギー政策で正反対の道へ
By マイケル・フォーサイス

●オバマ大統領は先月米連邦議会で行った一般教書演説で、国内の天然ガスの生産量の増加によって「数十年以内」にアメリカはエネルギー面で独立を果たすことができると宣言している。

●ところが同じことは中国のトップである習近平国家主席の口から聞くことはできない。最近ある研究所によって発表された調査によれば中国の石油の輸入量は急激に伸びているからだ。

●もし何も対策が行われなければ、中国は2030年までには75%もの石油を輸入することになるという。そうなると中国は年間8億トンの原油を輸入する計算になり、これは中国が去年輸入した量にさらに60%を足した量になる。

●アメリカのエネルギー情報庁によれば、中国は今年中にアメリカを抜いて世界最大の輸入国になり、すでに現時点で消費する石油の半分以上を輸入しているという。

●中国のこのレポートによれば、アメリカが中東の石油への依存度を下げつつある中で中国は依存度を高めつつあるという事実は、大きな地政学的な意味を持つことになるという。


●もちろんアメリカは中東への石油権益を手放すことはないはずだが、それでも石油の確保のための中東の国内政治への介入の度合いは下がるだろうし、「その結果として国際石油市場は不安定になる」とその報告書は述べている。

●そのため、中国は中東からの石油の輸入量を下げるべきだとその報告書は勧めている。

●報告書の著者によれば、中国は予測される石油の消費量には耐え切れないとしており、そのためには今よりもさらに原子力発電や再生可能エネルギー、そして天然ガスに集中すべきであると指摘している。

●こうすることによって、2020年までに原油の消費を5億5千万トン、石炭の消費を40億トンから50億トンに抑える必要があるというのだ。現在のトレンドが続けば、大気汚染は「耐え切れないレベル」まで到達するという。

●すでに中国は環境を犠牲とした長年にわたる経済成長のおかげで被害を被っている。去年行われたある調査によれば、中国北部の人々は、熱源や電源としての石炭の使用によって南部の人々よりも平均寿命が5年も短くなっているという。

●北京政府は去年の9月に沿岸部の大都市で、大気汚染の改善を狙った政策を打ち出している。この政策には、この地域における新しい石炭発電所の建設の禁止や、自動車販売の抑制が含まれている。

●ところが中国の貧しい内陸や西部の地域の地方政府は、新しい発電所に伴う雇用と投資を誘致しようと必死なのだ。

●中国で豊富に産出されている石炭は、国内のおよそ75%のエネルギー消費を占めているが、石油は20%以下だ。石炭発電所は汚染物質や温暖化ガスを大気中に撒き散らすのであり、しかも世界最大のエネルギー消費国である中国は、全世界の石炭の半分を消費しているのだ。

●中国では石炭発電所を新しく363箇所建設する計画がある。これは585ギガワットの発電量を誇ることになるという。これらが実現すれば、アメリカのすべての石炭発電所の半分以上の電力を賄うことになるという。

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いやはやなんとも。

日本での「脱原発」などは、このような隣国の急激なエネルギーの激増の前には全く意味ないように思えるのは私だけでしょうか。

アメリカが中東からどこまで手を引くのかというのは、たしかに大きな地政学的意味を含むことになりますね。

明日も中国ネタをやります。


by masa_the_man | 2014-02-16 20:23 | 日記 | Comments(7)
今日の横浜北部は朝から曇りがちですが、昼過ぎから少しだけ晴れてきました。

本日はこれから市ヶ谷の某A所で開催される勉強会で講師をしてきます。内容はもちろん地政学。

さて、久々にテクノロジーに関するものを。

移り変わりの激しいテクノロジー分野ですが、その中で無駄な投資をしないようにするための戦略を説いているものがありましたので要約します。

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次の「テクノロジーの絶滅」をどう生き残ればいいのか
By ファーハッド・マンジョー

●5年前にアメリカ最大の本の販売チェーン会社であるバーンズ・アンド・ノーブルは、アマゾンのキンドルに勝る電子ブックリーダー(Nook)を発売した。2011年には消費者専門誌でも最高の評価を得ている。

●ところがその後のNookはうまくいっていない。去年にはバーンズ・アンド・ノーブルがNookの事業部門の人間を減らしており、消滅するのは時間の問題だ。

●もしあなたがNookの持ち主であれば、あなたの持っている電子書籍の将来は危ういといえる。残念だが、あなたはまちがった競走馬に金を賭けてしまったのだ。

●このNookのような例は、最近では珍しくない。テクノロジーというのは常に消滅しているものだが、このような「絶滅」は、次の数年間でさらに頻発するはずだ

●われわれは活気がありつつも混乱しているテクノロジーのビジネスの時代を生きている。

●その典型が、MSのようにウィンドウズというソフトだけを売る状態から、アップルのようにソフトとハードを同時に売って利益を上げるというアイディアに変わってきたように、いままでのブランドやビジネスモデルが突然無効になる、という状態だ。

●現在では、あなたが使うテクノロジーから利益を引き出そうとして、5つの大きな会社(アマゾン、アップル、グーグル。フェイスブック、マイクロソフト)がしのぎを削っている。

●この5つの会社はそれぞれ異なるビジネスモデルや製品を持っているのだが、彼らに共通しているのは、「あなたを相互につながった自らの“エコシステム”に引きこもうとしている」という点だ。

●そしてここでの問題は、あなたが将来性のない“エコシステム”を購入してしまった場合だ。なぜなら十年後には、現在の五大会社のうちの少なくとも一社は潰れている可能性が高いからだ。

●よってここでわれわれが備えなければならないのは、「間違った馬に賭ける」のをどうやったら避けることができるかということだ。

●望みはある。単純な戦略に従うだけで、間違った動きを避けることができるからだ。

ここでのポイントは、一つの会社の“エコシステム”に依存しすぎないことだ。この戦略を覚えておけば、あなたはあるデバイスから次のデバイスへほとんど支障なく移ることができることになる。

●ここでのカギは「無差別性」だ。何を使うかを決断する時には卑屈な男のように、この五大会社を互いに競わせて、どれかにコミットしすぎないようにすることだ。

●これは難しく聞こえるかもしれないが、実際はそれほどでもない。以下が実際のゲームプランだ。

①アップル社のハードウェアを購入せよ

●この会社の携帯電話、タブレット、PCは、市場に出回っているものの中ではデザインが最も優れているし、完成度も高い。操作も簡単だし、最も耐久性が高い。大事に扱えば、中古の買い取り価格も高い。

●これは私がすべてのアップル製品を使って得た実感だ。アップル以外のもの(たとえばグーグルのネクサスなど)はそれなりに良いのだが、アップルを上回るもの、そして使って楽しいものには、私はまだ巡りあっていない。

●しかしアップル製品の最大の売りは、アプリの選択肢が最も多いという点だ。アップルのApp Storeは他のものと比べてもアプリの数が最多であり、最新のスタートアップ企業はアップル向けのものを試作してから、他のプラットフォーム向けにつくりかえて売り出している

②グーグルのサービスを使用せよ

●私の携帯とタブレットはアップル製だが、私が行うほぼすべてのものは、グーグル社のサーバーの検索機能を通して行われている。メールにはGメール、スケジュール管理にはグーグルカレンダー、地図はグーグルマップ、サイトを見る時にはクローム、そして写真を残しておくには(あまり使えないが)グーグルプラスを使っている。

●グーグルにデータを残しておくのが良い理由は、二つある。

●第一は、グーグルのデータ管理が優れているという点だ。ほとんどのデバイスに世界中のどこからでも24時間アクセスできているし、サーバーが落ちることもほとんどない。グーグル・マップを見てもわかるようにデータはかなり正確だし、NSAの介入を禁止しためにセキュリティ面も硬い。

●また、グーグルが私自身のことを学習して、新しく色々なことをやってくるのも楽しめる。たとえば(iPhoneの検索機能の一部である)Google Nowでは、私が次に何を求めるのかをあらかじめ予測して、たとえば交通情報の次に搭乗券を用意したりしてくれる。また、自動的に写真を修正したりもしてくれるのだ。

●いやまてよ、これってあなたのすべてをグーグルに渡しているということ?

●いや、そういうわけではない。なぜなら他のライバル会社と比べて、グーグルはほとんどのサービスでは、自分の個人情報をダウンロードして他に移すことも可能だからだ。

③メディアはアマゾンから買え

●これはシンプルだ。ウィンドウズのラップトップで映画を購入するとしたら、将来アンドロイドのタブレットでも見たいと思うはずだ。iPadで本を買うなら、クリスマスに買うキンドルでも読みたいと思うはずだ。

●メディアが違えば、そのような互換性は期待できないが、アマゾンから購入したものであれば本や音楽や映画はデバイスが違っていても見ることができる

●ところがアップルの iBookstore の本は、アンドロイドの携帯では読めないし、今後も読めないだろう。なぜならアップルはあなたにアンドロイドの携帯を買ってほしくないからだ。

④コネクターに賭けよ

●われわれが生きているマルチ・デバイスの世界では、アマゾンのメディアストアは、私が「コネクター」と呼ぶような機能を果たしている。これは、別々のテクノロジーの隙間を埋めるような存在のことだ。

●不確実な未来に対処していくための最も重要な原則がここで明確になってくる。それは「あなたの時間と資金をコネクターに投資せよ」ということだ。

●たとえば、それは重要な文書はドロップボックスのようなクラウドサービスを使って保存しておくというものだ。こうしておけば、いかなるガジェットを使って作成した文書であっても、それを保存した瞬間に自分の持っている他のすべてのデバイスで使用可能になるからだ。

●また、誰かに名刺をもらったら、それを写真におさめてエバーノートのアプリで管理することができる。このアプリは「コネクター」のような機能を果たしてくれて、何を書こうともそれを次の新しいデバイスで見ることができるからだ。

●クラウド(雲)の充満する未来を確実に予測することができる人なんていないのだ。念には念を入れ、である。

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ガジェット関係は私の専門ではないので、これはむしろ詳しい方にコメントしていただきたいところですが、私が気になったのはこの戦略の部分。

まず第一に、ここで触れられている五大会社が、すべて「あなたを相互につながった自らの“エコシステム”に引きこもうとしている」という点です。

これは何かというと、つまり「コントロール」です。

また、この記事の著者は、賢い消費者として、逆に一つの「エコシステム」に依存しすぎないように説いております。

そうアドバイスしながら、逆にグーグルに依存しすぎているように見えるのはご愛嬌かもしれません。

ただしここで重要なのは、彼が「無差別的」と呼ぶ、いわゆる柔軟な対応を行えということを主張していることでしょうか。


by masa_the_man | 2014-02-13 13:37 | 日記 | Comments(3)
今日の横浜北部は曇りがちでして、時折小雪も混じる寒い一日でした。

さて、日本とは関係ないかもしれませんが、イギリスの右派の政治の事情もなかなか興味深いのですが、スコットランド独立に関係したニュース以外はなかなか報道されないので、この辺の事情についての記事の要約を。

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イ消滅の危機に直面するイギリスの極右政党

●ヨーロッパ議会でイギリスの極右政党の一つである「イギリス国民党」(the British National Party: BNP)が2議席獲得したのは、2009年の政治的な大事件であった。この時は不況であり、反移民感情が盛り上がってポピュリスト的な怒りがこの契機となっていた。

●ところがそれから5年後の現在、ヨーロッパの他の地域ではたしかに極右政党は伸びているが、BNPは忘れ去られようとしている。内紛だけでなく、新しい連合王国独立党(the United Kingdom Independence Party:UKIP)にも人気を奪われているからだ。

●BNPのリーダーであるニック・グリフィンはたしかに話題にはなっているが、それは彼のことを破産に追い込んだ元弁護士と係争中だからであり、BNP自身も、今週行われる英国議会の補選や、5月に行われるヨーロッパ議会のグリフィン氏の議席を守れるかどうかで厳しい現実に直面することになっている。

●BNPの凋落は、ヨーロッパの他の地域で国際的な経済危機を背景に伸びてきた極右グループとの成功と極めて大きな対称性を見せている。

●たとえばギリシャでは「黄金の夜明け」党があり、ハンガリーでは「ジョビック」党、それにフランスではルペンの娘がリーダーとなっている「フランス国民戦線」がある。

●ところがBNPの凋落は、組織の欠落や規律のなさ、それに人気のあるリーダーが不在であることなどが、極端な立場を取る政党にとってどれほど致命的なものなのかを示している。

●ノッティンガム大学のグッドウィン准教授によれば、BNPはひどい内紛や国民からの支持を失ったおかげで消滅の危機にあるという。

●2009年のヨーロッパ議会の選挙で6%以上の票を集めたBNPは、現在では世論調査でもカウントされないほど不人気になっており、ローカルな議会では1人か2人しかいないとグリフィン氏は認めている。彼は5月の選挙で議席を失う可能性を否定していない。

●彼の党が本物かどうかは、今週木曜日のマンチェスター郊外で行われる補欠選挙で試されることになる。ここが選挙区で選ばれたある議員が亡くなったために、この議席が空いたからだ。

●2010年の同じ選挙区の選挙では、BNPはUKIPより人気が高く、全体でも4位につけている。

●この選挙区のBNPの候補であるエディー・オサリバン氏は、この地域の人々が「この町のイスラム系の地域にアイデンティティを盗まれたと感じています」と答えている。この地区のある女性などは「移民たちがやってきて仕事と住む場所を奪っているのよ」と同意している。

●ところがその町の市場で魚屋を経営しているアフリカ・カリブ系の人は、BNPの名前など聞いたことがないと答えている。

●また、このイギリス北西部の町の選挙民たちは、5月にグリフィン氏のヨーロッパ議会の議席を決定することになる。彼が選挙に負けることになれば、彼自身は「少なくとも外部の人間としての立場を再び獲得することになる」と述べている。「自分の政策はヨーロッパの議員たちによって妨害された!」と言えるようになるからだ。

●BNPは2010年のイギリスの国政選挙で失敗しており、その原因の一部はイギリスが小選挙区制であり、小規模政党が議席をなかなか獲得できないからだ。

●もちろん党内の内紛もその原因の一つだ。たとえば去年には、党員の一人で2009年のヨーロッパ議会選挙に選ばれたアンドリュー・ブロンズ氏が「グリフィン氏が党を破壊した」と非難をしている。

●ブロンズ氏はのちに自分の党を立ち上げながらも議席はそのまま確保しているのだが、彼はグリフィン氏が自分のことを「害虫」であり、「ロンドンからの刺客だ」と非難したと述べている(グリフィン氏はブロンズ氏の仲間のことを非難したと述べている)。

内紛もひどいが、町で声を聞いても評判が悪い。BNPを紛争から救い出し、もっと選挙向けのものにしようとしたために、グリフィン氏は結果的に「イギリス防衛同盟」(the English Defense League)というさらに過激で活動的な組織の台頭を許してしまっている。

●グリフィン氏はこの組織の創設者であるスティーブン・ヤクスレィ=レノン氏のことを「女々しい野郎だ」と罵っている。

●グリフィン氏はケンブリッジ大を卒業しているが、現在はウェールズに2匹の大型犬(ロットワイラー)と住んでおり、このような政治活動に喜びを感じているようだ。

●「もちろん個人攻撃ですよ、だって彼は私のことをナチスだと呼んだんですよ。私はいまだかつてヒトラー好きのナチスだったことは一度もありません。われわれは彼のことをネオコンのシオニストの操り人形だと言ってやったんですよ」とは彼の弁。

● イギリス防衛同盟の成功は短期的なものだった。ヤクスレィ=レノン氏は去年無効なパスポートを使ってアメリカに渡航した罪でつかまっており、この組織から脱退したあげくに家のローンの詐欺の罪で18ヶ月収監されている。

●さらにBNPの主な支持層は、もう与党ではなくなってしまった労働党に戻りつつあり、移民の問題に関しては右派の立場をとりながら、生活費の問題に焦点を当てはじめている

●そしてUKIPが登場してきたのであり、この党は移民に反対してEUからの脱退を支持しつつも人種差別主義には反対する立場をとっている。党首のナイジェル・ファラージは、第二次大戦のおかげで極右には警戒感のあるイギリスで、親しみやすいイメージをつくりあげることに成功している。

●極右に反対する団体「憎しみではなく希望」(Hope Not Hate)の代表を務めるマシュー・コリンズ氏は「UKIPはBNPよりもはるかに主流派だとみられております。UKIPに属しているとパブで言っても、バカにされる心配はないほどです」と述べている。

●その反対に、グリフィン氏は嫌われ者として見られることを楽しんでいるように見える。

●彼はヨーロッパに向かってくる難民のボートを沈めることを提案したこともあり、2009年にはKKKの元リーダーであるデヴィッド・デュークのことを「非暴力的な人物だ」と呼んで非難を浴びたこともあるため、ホロコーストについて言及することを避けている。

●「もしそんな事言ったら、ドイツに引き渡されてしまうからね」とは彼の弁だ。

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BNPについては、私の留学時代にも「ひでえ奴らだよなぁ」というバカにしたコメントを友人から何度も聞いたことがありまして、実際のところ、評判はあまり良くなかったと記憶しております。

日本の状況と照らしあわせて考えてみても面白いところかと。


by masa_the_man | 2014-02-11 22:13 | 日記 | Comments(4)
今日の横浜北部は朝から晴れておりますが、大雪のために道がとんでもないことになってます。

さて、東シナ海での日中対立の陰であまり注目されていない南シナ海の領海争いについて、NYがタイムズが短いながらも社説で簡単に触れておりますので、それの要約を。

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中国との紛糾
byNYタイムズ論説委員

●フィリピンは、国連に海上の領有権の侵害について訴訟を起こすことによって、中国側の南シナ海における領有権の主張に抵抗している。国連側はハーグで3月にこの訴えを審査することに合意している。

●フィリピンのアキノ大統領は、国際社会にたいしてこの領土問題における自らの立場を「法の支配」を通じて訴えかけている。

●中国側の南シナ海ほぼ全域にわたる領有権の主張にたいして、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、そして台湾などはそれぞれ一部の領域の主権を主張している。南シナ海は漁業資源が豊富であり、潜在的には石油や天然ガスも多いと言われている。

●フィリピンのロザリオ外相によれば、フィリピンが国連に訴えたのは、中国とのあらゆる外交チャンネルを通じても問題を解決できなかったため、これが最後に残された手段であったからだというものだ。

●去年1月のフィリピンによる提訴の後、中国は準軍事的な艦船を係争海域にとどめており、フィリピン側の漁船や商船にたいして嫌がらせを行っている

●中国側は国連の裁判には応じないと主張しており、フィリピン側にたいして外交交渉による解決を要求している

●この裁判は、中国の参加なしに判決が出るものだが、これによって中国側が主張している岩礁(そのいくつかは完全に水没したもの)が領有権を主張できる根拠になるものかどうかが決定されることになる。 

●国連海洋法条約(UNCLOS)によれば、国家は岸から12海里沖まで領海を主張でき、200海里沖まで漁業と海底資源の採掘を主張できる排他的経済水域(EEZ)を設定できることになる。ただしこの裁判は、岩礁や島の主権を決めることはできないし、それを強制するメカニズムも持っていない

中国は1982年のUNCLOSの批准国であるが、いくつかの領海問題については国際的な管轄権を認めないことを選択している。それでも中国が南シナ海や東シナ海において緊張を高めているため、国際社会は中国が法の支配に従い、国連の調停採決を真剣に受け止めなければならない。

●フィリピンが始めたことは、単にフィリピンだけの問題ではなく、国際社会が支援しなければならない問題における一つの大きなステップなのだ。

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これも中国にたいして腰が引けている感じですが、リベラルとしてはフィリピン側にたいしては肩入れしておかなければならないという姿勢なんでしょうね。

フィリピン側が中国のことをナチスドイツにたとえてもあまり問題になっておりませんが、やはり「国際社会」では「中国が弱い者いじめをしている」というイメージが重要なのかと。

実はフィリピン側もかなり積極的な外交攻勢を行っておりまして、この辺の経緯にかんしては、拙訳のルトワックの『自滅する中国』に詳しく解説されております。ご興味のある方はぜひ。


by masa_the_man | 2014-02-09 10:04 | 日記 | Comments(2)
今日の横浜北部は朝から晴れておりますが、またしても厳しい寒さ。

さて、以前から気になっていた森本敏氏の「オフショア・バランス」論について一言。

森本氏と言えば、自衛隊出身ながら外務省に行って外交官になり、拓大教授を長年つとめ、なおかつ民主党野田政権では防衛大臣もつとめた「安全保障・防衛・国際政治・外交問題のスペシャリスト」であります。

私自身も彼の発言については以前から注目しておりまして、実にさまざまなことを勉強させてもらっているわけですが、私が最近とても気になっていたのが、彼が数年前から提唱している(?)「オフショア・バランス」論とでもいうべきもの。

なぜ私が気になるのかというと、おそらく「オフショア・バランシング」(offshore balancing)という、アメリカの極めて地政学的な大戦略の概念を、森本氏は勘違いして使っているのではないか、という疑惑があるからです。

といったことを、本日配信の「アメ通」↓に書きましたので、お読みいただければ幸いです。


by masa_the_man | 2014-02-07 08:40 | 日記 | Comments(2)