戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man

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今日の横浜北部は朝から快晴です。気温もだいぶ春らしい感じですが、今夜はまた一気に冷え込むみたいですね。

さて、先日のダボス会議のエントリーの補足的な形ですが、ユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマーが、ダボス会議のインタビューで中国の対日戦略を分析しておりましたので、その重要部分だけ抜き出して要約を。

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イアン・ブレマーによる日中関係の説明
by ジョー・ウェイゼンタール

Q 中国と日本の緊張はどれくらい深刻なものなんですか?

(ブレマー):いや、実際かなり深刻です。日本政府がもちろん経済面を重視しているのは明らかです。安倍首相が(ダボス会議)に来ましたが、彼は素晴らしいスピーチをしましたよね。参加者も日本経済に関しては楽観的でした。

ただし参加者たちがスピーチの中でかなり気にしていたのは、日中関係の部分でした。これはまあわかりますよね。彼は中国のことを侵略的で軍国主義的だと批判しているわけですから。

安倍首相は日中関係を一九一四年のドイツとイギリスの関係にたとえてましたが、これは経済関係が良かったのに安全保障面での緊張が高まっていたような状況でした。われわれはその後に何が起こったのか(=第一次世界大戦)知ってますよね。

私は安倍首相が、直接的に戦争が起こる予期しているわけではないと思います。しかし彼が言っていたのは、中国が許しがたいマナーで行動しており、日本はそれを看過できないということです。

安倍首相の狙いは、日本を再軍備化するために憲法を変えることにあることは間違いないでしょう。彼は日本に憲法を採用させた五〇年前と現在の状況はもう当てはまらないと考えています。そして実際にこの状況は、潜在的に東アジアを不安定化させています。

中国側は(ダボス会議に)あまり多くの代表を送り込んできていませんが、まあわかりますよね。だって彼らは中国でダボスのようなことを夏に開催してますから。彼がここに来ると批判されますが、自国で開催する時は議論もコントロールできますし。

しかしここには何人かの中国政府高官も来てますし、日中関係には極めてタカ派な意見を持っていることは確実です。私が参加した世界の安全保障に関する会議では、ある中国政府高官が「東アジアにはトラブルメイカーが二人いる。安倍晋三と金正恩だ」と発言してました。

そして彼は自国政府を批判することができる立場の人間ではないわけですから、彼がこのようなことを言うということは、それが中国政府の見解に沿ったものであると見て間違いないでしょうね。

Q,中国の戦略は?

(ブレマー):彼らの戦略は、日米間にくさびを打ち込むことです。彼らはアメリカにたいして「日本こそが問題だ」と見せつけたいわけです。つまり日本を、現在のイランとの交渉における中東でのイスラエルのような存在に思わせたいということですね。

最近の中国は、アメリカにたいして微笑外交を展開しています。彼らはアメリカが中国にサインさせようと長年狙ってきた相互投資協定に合意しましたし、バイデン副大統領が最近中国を訪問した時には、多角的な貿易・サービス協定も合意しました。バイデン氏は習近平氏と2時間も会談してますが、これは前例のないことです。

よって、中国がアメリカとの関係強化に真剣に動いているのはあきらかです。そしてこうする理由はことの他多いのです。米国経済は復調しつつありますが、中国はここにもチャンスがあると見ています。なぜなら米政権内にいた対中タカ派が次々とオバマ政権から離れているからです。

ヒラリー(クリントン)は去りましたし、カート・キャンベルもいなくなりました。この地域に注目していたガイトナー(前財務省長官)も、トーマス・ドニロン(国家安全保障担当補佐官)も去りました。

よって、彼らはアメリカの現在の中国との関係を主導しているのが実質的にバイデン副大統領である点を知っており、ここににチャンスを見出して、日本との対決のルールを変えようとしているのです。

Q,オバマ政権はどのように対処すると思いますか?

(ブレマー)これまでの中国の戦略はかなり成功してますね。東シナ海上空に防空識別圏を宣言した時も、日本側の対応は自国の航空会社にたいして「遵守するな、そして中国当局にはフライトプランを知らせるな」というものでしたが、アメリカ側はわざと日本側と一緒に対応せずに、ホワイトハウスの支持を得た国務省はアメリカの航空会社にたいして「われわれは認知しないけど中国当局にはフライトプランを教えたほうがいいね」というものでした。

そして中国側は、日本の対応について好戦的だと非難したわけですが、アメリカの対応については建設的なものであると賞賛したわけです。

安倍首相が先月に靖国神社を訪問した時も、アメリカ国民からの反応はネガティブなものでした。中国の姿勢というのは実際かなり好戦的なものですが、それでも効果は出ているのです。

私の見解によれば、現在起こっているのは、中国政府が、対外政策で問題を起こしたくない米政府にたいして「日本は軍国主義的で、米政府にとって対外政策での問題を起こすような存在ですよ」と印象づけるようなことを日本側に言わせようと働きかけを行っているというものです。

シリアやリビア、エジプトの例などを考えてみてください。オバマ政権というのはリスクを怖がっていて、戦術的に動いているだけです。この政権は、他の大国との関係を維持するために極めてバランスのとれた動きをしているだけなのです。

中国がこれほどまで成功を収めたわけですから、とくに現在のようにワシントン内に大きな日本担当者がいないことを考えれば、今後はかなり大胆に動くこともできるようになるわけです、

問題は、日中関係が経済的に非常に大きい存在だという点です。日本は中国に2万3千社を持っておりますし、1千万人の中国人を雇っているのです、ところが日本企業は現在中国から離れつつあります。対外直接投資(FDI)の額は下がってますし、それが東南アジアなど他の地域に向かっているのです。もし日中間の経済関係が劣化しているとすれば、それがかえって大きな紛争につながる可能性もでてきます。それでも私は戦争が起こるとは思って思ってませんが

私は、日中間の戦争はかなり起こりづらいものだと考えています。いいかえれば、両国とも互いに戦争をしようとは思っていないということです。しかし毎日戦闘機が中国側の「侵犯」にたいしてスクランブルをかけていれば、そこで計算違いが起こる可能性は高まるわけです。

この2国の現在のような関係の悪さの上に、計算違いが起こったとすれば、いざ軍事衝突になったら互いに相手の最悪の意図を想定するようになってしまうかもしれません。

ここで知っておかなければならないのは、この2国はトップ同士が外交面で交流を行っていないということです。

アメリカは日中両国の関係を改善するような役割を、現在は果たしておりません。日中間では歴史も共有できていません。日本には中国の視点から世界を見ようとする人もおりませんし、それは中国側も同様です。彼らは互いに憎しみ合っているわけですから。

最近のピュー研究所の調査によれば、中国人で日本にたいしてよい印象があると答えた人の割合はたった6%で、日本人の場合は5%です。これはどれだけ事態が深刻かを物語っていますよね。

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日本であまり報道されていないのは、バイデン訪問の際に中国がアメリカと貿易関係で大きな取引をしたという点ですね。

その一方でNYタイムスの記者は国外追放になったりしているわけですから・・・・

ということでこれについてはメルマガでまた解説を。


by masa_the_man | 2014-01-31 09:37 | 日記 | Comments(5)
今日の肥前は午前中晴れたのですが、昼すぎから小雨が降りました。気温はけっこう暖かかったような。

講演で九州まで来ているのですが、運良く名護屋城址を見学することができました。秀吉が朝鮮出兵した時の城跡なんですが、ここに陣取っていた武将たちがオールスターキャストでした。

さて、ダボス会議での安倍首相の「1914年前発言」が物議を醸しだしてから数日たったわけですが、色々とこの会議で面白い発言をしている中国政府の高官らしき人の内容が出てきましたので、その紹介を。

この記事の中でダボス会議に参加したブロジット記者は、あるクローズドのディナーの席で興味深い光景を目にしたと言っております。

もちろん会議は「チャタムハウス・ルール」が適用されておりますので、その発言者は誰なのかは書けないということですが、その発言内容は書けるということなのでそれを書く、とのことです。

そのディナーの席にゲストとして呼ばれているのは「ある中国政府高官」とのこと。

そして会場全員を凍りつかせるある事件が起こったわけですが、それは会場の参加者にマイクを回し、自分の聞きたい質問を、そのゲストにたいして端的に質問することができるコーナーの最中のこと。

そのゲストは会場の参加者から日中間の尖閣諸島の問題について聞かれたそうですが、それに答えているときには、軍事衝突はもう避けられないという態度であり、むしろそれを心配している様子はなかったとのこと。

つまり超タカ派的な態度をみせていたらしいのです。

彼によれば、その衝突が起きる理由は、尖閣に価値があるというよりは、むしろ中国と日本が互いへの憎しみが高まっているからだとか。

この高官は、尖閣問題を靖国参拝に結びつけており、靖国はそれを嫌う国々からは「戦犯の栄誉をたたえている」と見られるからだと言明。彼自身は「安倍首相は犯罪者をたたえている」と言い、この安部首相の参拝の決定を「狂ってる」と言ったそうで。

次に中国側の事情を話しており、彼によれば、日本はアメリカとは講和したが、中国とは実質的に第二次大戦の本格的な講和をやっていないと説明。

しかし彼自身は、もし中国が尖閣の領有権を取り返すために日本に軍事的な攻撃をしかけたら、アメリカが日本を支援することになることを知っているし、そもそも中国はアメリカを挑発したくない、と認めております。

ただしここで驚きなのは、彼が「多くの中国人は、中国が尖閣に侵攻することによって地域で軍事的な優位を見せつけ、このシンボル的な島を確保することができると信じている」と発言したこと。

つまり彼は実質的に「国境紛争を勃発させずに限定的な作戦で島を取り返すことができる」と言ったわけですが、この攻撃そのものがシンボル的に大きな意味を持つということであり、日本と中国、それに世界にたいして、誰が強いのか見せつけることになる、と言ったそうなのです。

しかも彼は「日米に軍事的な対処をさせて、これが大戦争につながるというのも、実はそれほど悪いものではない」と断言しており、これによって会場の空気は凍りついたとか。

その凍りついた空気の中で、あるビジネスマンがこの高官に質問。

「これって完全に狂ってると思いませんか?これって戦争を始めるってことですよ、尖閣なんてほとんど価値もないのに、そのために世界戦争を起こすってことですか?」

と聞くと、その高官は、

「もちろんわかってます。でも尖閣の価値というのはシンボル的なものであり、そのシンボルそのものが極めて重要なのです

と答えたそうな。

それに関して会場からまた質問が出ると、彼は今度は先ほどの発言からは少し立場を変えて、

「私はわざざとセンセーショナルな言い方をしましたが、個人的には日本と戦争をしたいとは考えていません」と発言。

それでもまた彼の態度からは、日本との戦争は望ましいという姿勢が見られたとか。

このやりとりを見ていた記者の結論としては、頭の良さそうな中国の政府高官が、大規模戦争につなげずに尖閣に侵攻して紛争を終わらせるということを正当化した、ということであり、これが会場を凍りつかせた、ということ。

安部首相の「1914年発言」も大事ですが、むしろこの高官の過激な発言は、日本でももっと紹介されてもいいのでは。


by masa_the_man | 2014-01-28 19:03 | 日記 | Comments(10)
今日の肥前はよく晴れましたが気温は低めでした。

さて、すでにTwitterのほうでも触れましたが、NYタイムズが沖縄の辺野古への基地移設問題に関して不思議な主張を展開しております。その要約を。

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沖縄の解決法はさらに厳しいものに
by NYタイムズ論説委員

●日米両政府は、沖縄における米軍基地の問題についてようやく解決をはかることができたと考えているのかもしれない。

●しかしいつもと同じ障害が現れてきた。その同意の結果からいつも重荷を受けることになる沖縄の人々である。

●12月27日に米国防省と日本政府は、米海兵隊の基地を都市部にある宜野湾市から、人口のほとんどいない北部の小さな漁村の名護市へ移設することを決めている。彼らは沖縄県知事がサンゴ礁のある海岸を埋め立てるための建築許可を与えたと述べていた。

●ところが1月19日に再選された市長によって、名護市の住民は強烈に移設反対を表明していた。稲嶺市長は基地建設反対のためならいかなることもすると言明している。沖縄人はこの建設が静かな村to
手付かずの海岸に、騒音や公害、犯罪、そして環境破壊をもたらすと指摘している。

●とくにその海岸はマナティーの親戚できわめて貴重な、沖縄のジュゴンの住処である、

●沖縄の住民の反対は、ただ単に「私の裏庭にはお断り」という態度以上のものがある。小野寺防衛大臣は名護市長の再選は国家の政策には関係のないことであると断言し、建設計画は予定通り進めることを宣言している。

●もちろん米軍が地域の安定に果たしている役割の重要性を考えると、何らかの解決法は絶対に必要だ。しかし日米両政府は沖縄の人々の憂慮も配慮すべきだ。

●安部首相は名護市民に500億円にものぼる公共投資を約束することで不満を取り除こうとしているのだが、それでも沖縄の人々を納得させるまでいたっていない。たとえばすでに却下された、海兵隊を嘉手納に移すアイディアも再考すべきであろう。

●いずれにせよ、安倍首相とオバマ大統領は、ここにはプレイヤーが三者いるということを認識すべきだ。この三者目が沖縄であり、これは日本の一部ではあるが、数百年間にわたって独自の王国を持ってきたという独自の歴史をもっているのだ。

●ここはアメリカ軍に侵攻されて占領された日本における唯一の場所であり、米軍は1945年に入ってきてからこの島を一度も離れていない。

●沖縄は日本の土地の1%以下の広さしかないが、本土の人々は日本に駐留している五万人もの米軍兵士の半分以上を沖縄に駐留させているのだ。

●日米共通の戦略上の懸念から守るための基地移設計画は、沖縄の市民に不公平な形で負担させることは許されないのだ。

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どこぞの新聞が書きそうなことそのまま、という感じですね(笑


by masa_the_man | 2014-01-27 23:40 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部は昼間はかなり気温がゆるみましたが、やはり朝晩は冷え込みます。

さて、安部首相のダボス会議で波紋を読んだ「日中を第一次世界大戦前夜にしてはいけない」発言ですが、それと関連したFTのラックマンの同様のアナロジーの記事を再び掲載します。

ぜひ参考にしてください。

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一九一四年の影が太平洋におちる
by ギデオン・ラックマン

●第一次大戦を描いた白黒映画のようなシーンというのははるか昔のことのように思える。ところが「現在の大国は一九一四年の時の戦争に突入することはありえない」とは断言できない。

中国と日米間で高まる緊張は、ほぼ一〇〇年前に発生した、このおそるべき大災害と似通った点をもっているからだ。

●もっとも明らかな潜在的発火点は、日中間で未解決の、尖閣諸島の領有権をめぐる問題である。

●ここ数ヶ月間で、この二国の航空機と船はこの諸島の近くでシャドーボクシングを行っている。これを警戒したアメリカは、去年の十月末に北京と東京にたいして、四人の米外交の重鎮を送り込んでいる。

●そのメンバーには、ブッシュ政権で安全保障会議を主宰したスティーブン・ハドレーと、ヒラリー・クリントンの国務省のナンバー2であったジェームス・スタインバーグが含まれている。

●この超党派の米国特使たちが明確にしたのは、「中国の尖閣への攻撃はアメリカが担保している日本への安全保障への挑戦として行動せざるを得なくなるかもしれない」ということだった。

●一九一四年の時と同様に明確な危険として挙げられるのは、小規模な事件が同盟のコミットメントを引き起こして広範囲な戦争に拡大する可能性があるという点だ。

●アメリカ側の特使たちはこのリスクについて十分すぎるほどよくわかっていた。

●この四人のメンバーのうちの一人であったハーバード大学のジョセフ・ナイはこういっている。

●「われわれの中で、一九一四年の例を引き合いに出して議論した。誰も戦争を望んでいないのはわかっているが、それでもわれわれは日中双方にたいしてコミュニケーションの失敗やアクシデントについて注意するよう促した。抑止というのは、合理的なアクターたちの間では大抵の場合には効くものだ。ところが一九一四年の時の主なプレイヤーたちも、実は全員が合理的なアクターたちだったことを忘れてはならない」

●キューバ危機についての古典的な研究(『決定の本質』)を書いた、ナイ教授のハーバード大学の同僚であるグラハム・アリソンも、計算違いによる戦争の危険性があると考えている。

●「一九一四年の時のメカニズムは非常に役立つものだ。セルビア人のテロリストが誰も名前の聞いたことのない大公を殺したことで、最終的には参戦したすべての国々を破壊させてしまった大戦争を引き起こすなんて、一体誰が想像しただろうか?私の見解では、中国の指導部はアメリカにたいして軍事的に対抗しようとするつもりはまだないはずです。しかし中国や日本の頭に血が上ったナショナリストたちはどうでしょうか?」とはアリソン氏の弁。

●このような「頭に血が上った」人々が、現場レベルにいる可能性はある。

●二〇一〇年九月には中国の船長が日本の海保の船に自分の漁船をぶつけた事件が発生したことがあるが、後になってから、当時この船長が酔っぱらっていたことが判明している。

●この時の日本政府は、かなり融和的なアプローチをとっていた。しかしアメリカは、日本の現政権の中には、中国に対決することもいとわないようなタカ派のナショナリストが溢れていることを危惧している。

●新しい首相である安倍晋三は、第二次大戦の時の閣僚(岸信介)の孫であり、日本が当時の罪滅ぼしをするための「謝罪外交」を拒否した人物だ。

●日米安保というのは日本にたいする安心の提供という意味があるのだが、それでも日本の政治家がこのおかげで不必要なリスクを取ろうとする危険があるのだ。

●何人かの歴史家は、ドイツ政府は一九一四年の時点で「より強力な敵に囲まれる前に、なるべく早めに戦争をしておかないとまずい」という結論を出していたと論じている。

●同様に、何人かの日本研究者たちは、安倍政権内のナショナリストたちが「日中間のパワーのギャップが拡大する前に、まだアメリカが太平洋で支配的な軍事力をもっている現在の時点で中国と戦っておくべきだ」という考えに傾くことを心配している。

●日本の政治における「右傾化」にたいするアメリカの懸念は、同様の傾向が中国にも見られることから倍増している。

●中国は100年前のドイツのような台頭する国家であり、既存の大国が自分たちのことを押さえ込もうという意志を持っていることを恐れている。

●現在の中国の父である鄧小平は、「能力を隠して時間を稼ぐ」という対外政策の格言を追求していたが、彼の世代の人間はすでに世代交代で去っており、新しい世代は自信をつけて自己主張が強いのだ。

●また、人民解放軍も対外政策の決定に大きな影響を与え始めている。

●第一次大戦前のドイツとの比較によって、驚くべきことが見えてくる。この時はオットー・フォン・ビスマルクの熟練したリーダーシップが、戦争が発生する前には、はるかに稚拙で不器用な政軍のリーダーシップにとってかわっていたのだ。

当時のドイツの支配層も、民衆からの民主化のプレッシャーを同じように脅威として感じており、その関心をそらすためにナショナリズムに訴えていた。もちろん中国のリーダーたちも、共産党の正統性を強化するためにナショナリズムを使用している。

●唯一の救いとでも言えるのは、中国の指導者層たちが長年にわたる大国の台頭について、熱心に研究をしており、ドイツと日本の失敗から学ぼうと強い決意を持っていることだ。

●われわれが核兵器の存在する世界に行きているという事実も、一九一四年の危機を繰り返すことはないという一つの論拠にはなる。

●もし事態が悪化しても、日米安保には解釈の余地がある。この条約の第五条は一般的にアメリカが軍事的な手段によって同盟国を守ることが約束されていると解釈されている。

●ところが実際は、日本が攻撃された時に「共通の危険に対処するよう行動する」と書かれているだけだ。

●このような曖昧さは、もし中国が「単なるアメリカのブラフだ」と言うようになれば危険だともいえるが、これは危機の際には役に立つこともあるのだ。

●一九一四年七月の時点で、当事国のリーダーたちは誰も望んでいない戦争に向かわざるを得なくなっていたことで無力さを感じていた。

●そしてこの歴史を研究することで、中国、アメリカ、そして日本の人々は、二〇一四年に同じような運命に陥ってしまうことを回避できるかもしれない。

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これにたいする反論は、ハーバード大学のウォルトによって行われておりますが、このような発言を一国の首相が行うというのはリスクが大きいかもしれませんね。

ま、通訳が意図的にやったということも推測できるかもしれませんが。


by masa_the_man | 2014-01-24 22:56 | 日記 | Comments(10)
今日の横浜北部は朝から快晴です。相変わらず寒いですが。

さて、少し前の記事ですが、NYタイムズにアジアでの潜水艦による軍拡についての社説が出ておりましたのでその要約を。日本でもこの記事は多少注目されましたね。

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アジアにおける潜水艦獲得競争
byNYタイムズ論説委員

●近年において、アジアのほとんどの国々は国防費と軍備を拡大しているが、現在では東南アジア諸国で潜水艦の獲得競争が行われており、これは彼らにそれを獲得できるだけの資金力があるからだ。

●今年の正月にはベトナムが6隻獲得する予定のロシアのキロ級の潜水艦の最初の1隻を受け取った。最後の6隻目の受け取りは2016年になると見込まれている。

●ミャンマーは2015年までに潜水艦部隊を創設することを予定しており、タイにはもうすぐ発表予定の10年に渡る潜水艦購入計画がある。タイの高官はすでにドイツと韓国で潜水艦の訓練を受けるために留学しており、この二国は潜水艦を供給することになると見られている

●インドネシア、シンガポール、そしてマレーシアはすでに潜水艦部隊を持っており、さらに購入を計画している。マレーシアはフランスとスペインの企業連合に11億ドルを支払って2007年と2009年にそれぞれ潜水艦を購入している。

●インドネシアは老朽化した2隻の潜水艦を退役させて、あらたに12隻の潜水艦部隊をつくるつもりだ。この計画は2020年までに完成することになっており、韓国、そしておそらくロシアからの購入が予定されているという。

●これらの国々の中で潜水艦部隊を持っていないのはフィリピンだけだ。

●彼らは互いにたいして武装しているわけではない。この軍備拡大はこの地域におけるパワーの分布が不透明さを増していることにたいする反応であり、この不透明さは主に南シナ海やインド洋で、中国の海軍力が拡大していることが原因となっている。

●ところが中国の海軍力の拡大は、これらの東南アジア諸国の潜水艦部隊によって止まるとは見られていない。中国はこれにたいして対潜能力を向上させることになるからだ。それぞれの軍備拡大は、この地域の疑いと緊張を高めるだけである。

●これらの国々がさらに軍備を拡大したところで、中国がその侵略的な主張を抑制するようになるのかどうかというのは全く不透明である。先端的な潜水艦部隊を含む日本の実質的な軍事力でさえ、中国の東シナ海における領土の主張を止めることができていないからだ。

●ASEAN諸国は地域のさらなる不安定化を防ぐために、中国に一国ずつ対処するのではなく、まとまって行動をする必要がある。

●この軍拡のほとんどは東南アジアの国々が豊かになりつつあるために進んでいるものだ。これらの国々の経済は21世紀の世界経済と密接な関わりを持っている。

●これらの国々と中国は軍拡が彼らの経済力の発展を促すための安全と安定を脅かすことになるということに気づくべきである。

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日本のメディアではどうしても自国の関係する東アジアの状況ばかりに目が行きがちですが、われわれのシーレーンが通っている南シナ海からインド洋にかけての状況についても注目しておかないとまずいですね。

また、今回の潜水艦の供給については韓国が積極的に絡んでいることが特徴かと。

最後は互いの軍拡によってどんどん状況が不安定化してくるという、いわゆる「安全保障のディレンマ」の話で締めておりますが、軍拡をしている当事者たちにとってはそんなことを言われても「勝手なこというな」ということで終わりというか。

この辺りの軍拡の様子や背景の政治的な事情については拙訳『自滅する中国』によくまとまっておりますのでぜひ御覧ください、と無理やり宣伝にまとめてみました(笑


by masa_the_man | 2014-01-23 09:11 | 日記 | Comments(3)
今日の横浜北部もよく晴れて寒かったです。さすが「大寒」だけありましたな。

さて、久しぶりに本の紹介というか、正確には「紹介された本の紹介」です。

日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)
by 竹村 公太郎

この本、先日行った地政学研究所での講義で参加者の方に教えてもらったもの。まだ到着したばかりなので中身まで詳しくは読み込めていないのですが、簡単にいうと、

●元国交省の官僚さんが「インフラ屋」としての誇りを胸に、日本史の常識を地理の知識を使って徹底的に洗いなおす

というもの。いわば古典地政学でいうところの三位一体のうちの一つである「物理的地理」を軸に、既存の日本史の定説にたいする新しい解釈を加えていくというものなのですが、象徴的なのは著者の以下の記述。

●明治以前は、食糧とエネルギーを自足できるかどうかが、その土地の発展を決した。もちろん、主要な食糧は米と薪(まき)であった。

●この米と薪に共通して必要なものは河川である。河川の沖積平野と水が米を与えてくれ、川の上流域の森林がエネルギーの薪と炭を与えてくれた。

●都市が繁栄するための食糧とエネルギーの確保、それを言い換えると、「大きな川があるかどうか」であったのだ。(p.346)

というもの。まさに徹頭徹尾「物理的地理」という観点から政治地理学を分析しているという特徴がよく出ております。

もちろんあまりにも地形という「下部構造」のみを重視しているために、逆に上の「地理観」のようなものへの言及が少なく、それによってやや強引ともいえる結論付けが見受けられるところは多々ありますが、それでもそれを余りあるほどの魅力的な説明(遷都の理由など)をいくつも展開しております。

ということで、まださらっと読んだだけでもかなり興味深い記述がいくつも発見できる面白そうな本であります。

本ブログをお読みのかたはぜひ一冊。


by masa_the_man | 2014-01-20 22:41 | おススメの本 | Comments(2)
今日の横浜北部はまたしてもよく晴れましたが、風が冷たく、しかも強かったですね。

さて、ようやく体調も回復してきた昨日のことですが、あるエネルギー関係者の集う勉強会で講演してきたのですが、その後の懇親会の時に聞いた話が面白かったので少し。

この勉強会は地方のあるエネルギー関連会社の社長さんが行っているものなのですが、そこでこの社長さんが私に教えてくれた話の中に、以下のようなものがありました。

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●現在欧州で実用化している海底パイプライン、技術的には2000メートルの海底まで敷くことも可能。

●ところが日本には3500メートルの海底にもパイプラインを施設できる船がまもなく進水する。これは日本海海底にも敷けるという意味になる。

●そうなると、たとえばサハリン2で産出しているガスのパイプラインを樺太の南端までつなげ、それを北海道まで直接海底でつなげて持ってくることも可能になる。

●ただし日本には大口の卸がないので相手の交渉の受け皿なし。東電に話を持っていっても、彼らは基本的に「小売り」業者なので何もできない。

●世界には国策を反映したエネルギーの「卸」の大手が存在するのが当たり前。ドイツだったらエーオン、イギリスだったらブリティッシュガスなど。

●日本にも戦前には日本発送電株式会社(日発)という会社があったが、戦後に解体された。この解体によって労組の働きを抑えるという、いわゆる分断統治的な意味合いもあった。

●しかしこれはまた有害でもあった。なぜなら「卸」の大手がなくなってしまったため、日本では国策を反映した大規模なプロジェクトができなくなってしまい、非効率的なところが残った。

●そうなると、たとえばウラジオからもってきたLNGは、北海道に直接入らず、東京までわざわざ持ってきてから小さな船に載せ替えて、そこからまた小樽まで送り返すということが行われるような事態になる(参考サイト)。

●また、今後はエネルギー産業の小売りのほうも統合化されていく流れだが、最大の障害は地域ごとに独占状態を敷いている地方の小売り業者たち。彼らが地元議員を使って権益確保に邁進しているために、大きなプロジェクトはなかなか動かない、

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このような話でした。

いたるところに見えたのは、「戦略の階層」でいうところの、「技術レベルでは実現可能なのに大戦略や政策レベルで不可能になっている」という形。

大きな問題に気づいていても、それにたいして音頭をとってものごとを進めていく中心的な人や機関が日本には少ないため、なかなかシステムを変えられないということに。

ただしロシアとパイプラインをわざわざつなげることに意義があるかどうかというのは別問題だと言えますが…

また、今さらながら、シュレーダーは「ハウスホーファーの夢」をパイプラインで実現させているということを実感しました。

以上、興味深いと思いましたので参考まで。


by masa_the_man | 2014-01-19 23:43 | 日記 | Comments(3)
今日の横浜北部は真冬の快晴でした。しみじみ寒いですね。

この寒さのおかげで実は体調を崩しまして、連休明けからいきなり寒気がして、喉や鼻には全くこなかったのですが、食欲が全くなくなり、なんとか体調が戻った本日までほとんど何も食べませんでした。

そういうわけでブログのほうも少し更新をサボっておりました。申し訳ないです。みなさんも寒いところで仕事をする時は本当に気をつけて下さい。

さて、いきなりお知らせです。すでにご存知かもしれませんが、本日発売の『2050年の日本列島大予測』といういわゆるムック本が出まして、その中で私のインタビュー記事が採用されております

テーマは題名の通りの未来予測本なのですが、私は人間の未来予測の能力を完全否定する立場なので(苦笑)、この記事ではあえてクラウゼヴィッツ的な視点と古典地政学の視点を混ぜた形で私論をいくつか述べさせていただきました。

編集者の方がけっこう優秀な方でして、かなり予習をされてきた様子がうかがい知れました。

以下はその表紙や記事の様子です。よろしければ本屋でぜひお手にとって御覧ください。

追伸:うちの近所の本屋にも置いてありました。少し大きめの書店だったらほぼ間違いなく置いてあるようです。

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by masa_the_man | 2014-01-17 20:54 | 日記 | Comments(5)
来週のクラウゼヴィッツ学会の例会のお知らせです。

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新年最初の研究会は、当学会理事で東京電機大学助教の中島浩貴先生により、「クラウゼヴィッツと「精神」――軍人教育と社会的解釈」と題してお話をして頂きます。

皆さんこぞってお集まりください。

1 1月度定例研究会のお知らせ
  1)日時:1月22日(水)18:30~20:30  
 2)場所:日本学士会館 310号室  最寄駅:地下鉄神保町駅下車3分
   (東京メトロ半蔵門線、都営三田線・新宿線)
       千代田区神田錦町3-2-28 TEL:03‐3292‐5936
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3)テーマ:「クラウゼヴィッツと「精神」――軍人教育と社会的解釈」

4)講師:中島浩貴氏 (東京電機大学理工学部助教)

5)参加費: 会員 1,500円、非会員 2,000円 
by masa_the_man | 2014-01-13 21:49 | ためになる情報 | Comments(0)
今日の横浜北部は朝から快晴でしたが、やはり朝晩はこたえます。

それにしてイギリスではこれくらいの寒さは秋口から普通でしたから、自分の身体がなまったといえるのかどうか。

さて、翻訳や学校の仕事が立てこんでおりまして、なかなかブログのほうを更新できていないのですが、今日は久々に面白い話を仕入れてきましたのでその話を簡単に。

ある有名な歴史系の先生の話です。

その先生が現在勤めているところには、中国人の日本研究者たちがけっこう多いそうで、現在の日中関係の状況に憂慮した先生が、自分のところに来ている中国人たちに、

「ここで仕事を終えて国へ帰ったお前らの先輩(の日本研究者)たちは、こんなときになぜ北京政府にアドバイスしないんだ?

と聞いたそうです。そしたら彼らのこたえは、

先輩たちはみんな中国で日本語教師やってます

とのこと。

なぜこうなるのかというと、そもそも日本に留学してこようとする日本研究者の卵たちというのは、はじめは「日本語」という語学専攻でやってきたというパターンが多いわけで、語学以外の専門分野を学ぼうとしてやってきたわけではなかったという事情があるとか。

そのような彼らは、語学だけは得意ですから、日本語で論文を書けるようになるまで上達するらしいのですが、いざ中国に帰ると、中国語で論文を書く訓練を受けていないので、日本を専門にした研究者にはなれないことになってしまいます。

ようするに彼らは「日本研究者」ではなく、とりあえず生き残るために稼ぐ「日本語教師」になってしまうパターンが多いとのこと。

しかも語学の専門家というのは、たとえば(日本の)政治の専門家たちよりも格や社会的ステータスが低く、学者として尊敬されないために、どうしても中国における日本研究者、ひいては日本側の事情を北京中央部に正確に伝えることのできる人が少ないということになってしまいます。

これは構造的な問題なのかもしれませんが、こういうところで国益を損ねているのは、いわゆる「大国の自閉症」を持つ中国側ということになるんでしょうね。

まあ中国にかぎらず、大国から非大国に学びに来て帰った人々の事情というのは、どこでも似たようなものなのかもしれませんが・・・


by masa_the_man | 2014-01-12 22:44 | 日記 | Comments(4)