戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man

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今日の横浜北部は朝から快晴です。年末年始はよく晴れそうですね。この時期にこんなに良い天気なのは北半球の大都市では東京だけかと。

ここ数日間はブログ更新をさぼっておりました。靖国参拝という大きなニュースがあったのですが、いかんせんいきなり色々なところから締め切りを迫られることになりまして、年末年始は仕事詰めになりそうです。

さて、その安部首相の靖国参拝問題ですが、NYタイムズ紙の社説が興味深かったので要約です。

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日本の危険なナショナリズム
By NYタイムズ論説委員

●日本の安部首相は、政権担当開始から一年経った先週の木曜日に靖国神社を参拝した。ここは日本の戦争で死んだ人々を祀っており、第二次大戦の戦犯も含まれているために議論を呼んでいる神道の神社である。

●中国と韓国はすぐさまこの行動にたいして批判を行っており、アメリカも同じことを実行した。安倍首相の参拝はすでに悪化している中国・韓国との関係をさらに悪化させるはずだ。中韓は靖国神社のことを、大帝国日本による侵略と植民地主義の戦争の象徴として見ている。

●アメリカの駐日大使館は、アメリカが「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」という声明を発表している。

●ここでの疑問は、なぜ安部首相がこの時期に靖国参拝を行ったのかということだ。日本の首相はここ七年間において靖国参拝は行っていないのだが、これは政府トップにおいてこの神社が中国と韓国を象徴的に不快感を起こす場所であり、参拝はこの二国との関係悪化につながることを認識していることを示している。

●日本との中韓との関係は2000年代半ばの頃よりも悪化している。中国と韓国のリーダーたちは安部首相が2012年に政権についてから(第一次政権は2006〜2007年)会談を拒否しており、この理由の一つが、東シナ海の領海争いと、第二次大戦中に日本の兵士によって性的奴隷となることを強要された韓国の従軍慰安婦の問題である。

逆説的ではあるが、安倍首相が「靖国参拝はいいアイディアだ」と考えるのを可能にしたのは、中国と韓国がこれらの問題で日本に圧力をかけたからである

●ここ一年間における日本が実効支配している島々にたいする中国の敵対的な動きのおかげで、日本の国民は中国の軍事的な脅威の存在を確信した。この問題のおかげで、安部首相は中国からのすべてのシグナルを無視し、日本の軍隊を「領土防衛に厳しく限定したものから、世界中のどこでも戦争を行えるように転換させる」という目標を追求することができるようになったのである。靖国参拝は、そのアジェンダのうちの一つである。

●日本が慰安婦問題でしぶしぶした態度をとっていることにたいして韓国が継続的に厳しい批判と、朴槿恵大統領が安部首相とこの問題についての会談を拒否していることは、日本国民の間でも韓国にたいする不信感を植え付けることになり、意識調査によれば、ほぼ半数の人々が韓国を軍事的脅威であると見ているという。

●選挙民の間のこのような視点は、実質的に安倍首相にたいして、中韓への反発などを考慮せずに行動するライセンスを与えていることになる。

●読売、朝日、毎日という三大新聞は、安部首相が政権をとってから社説で首相の靖国参拝に反対の立場を表明している。さらに安部首相やナショナリストの支持者たちにとって重要なのは、アキヒト天皇とその前の昭和天皇も靖国参拝は控えているという事実だ。

●安部首相の最終的な目標は、日本の平和憲法を書き換えることだ。この憲法は、戦後の占領期にアメリカによって書かれたものであり、戦争を行う権利を制限したものだ。ここでもアキヒト天皇は認めていないのだが、彼には憲法下で政治力がない。

●安部首相が靖国参拝を行う数日前に、アキヒト天皇は80歳の誕生日のコメントの中で、「平和と民主制度の貴重な価値」を守るために戦後の憲法を書いた人にたいして「深い理解」を表明している。

●よって、もし問題が歴史にあるとすれば、中韓のリーダーたちは東京に自分たちの(アキヒト天皇を含む)仲間を見つけるはずであり、彼らは安部首相と会ってこれらの問題を解決するよう迫るべきだ。彼らが会談を拒否しつづけることによって、安倍首相は逆にやりたいことをやれるようになるからだ。

日本の軍事的冒険は、アメリカの支持があった時だけに可能なものだ。そしてアメリカ自身は、安倍氏のアジェンダが東アジアの地域にとって望ましいものではないことを明確に示すべきだ。アジアにとって必要なことは明らかに国家間の信頼なのであり、彼の行動はその信頼を損なうものだ。

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これについては再びメルマガのほうでコメントを。


by masa_the_man | 2013-12-30 17:38 | 日記 | Comments(4)
今日の横浜北部は曇りがちでして、一時的に小雨も降りました。

目黒で友人とランチをする予定だったのですが、彼がいきなり来る途中に安部首相の靖国神社参拝の様子を見たいということで見てきたらしいのですが、警備が厳しくて、けっこう遠目にしか見られなかったとか。

それにしても報道ヘリが8機くらい飛んでいて、九段下上空はかなりの騒ぎだったようです。

個人的には日本の報道機関は、中韓の反応よりも、アメリカ側の反応をもっと大きく取り上げるべきだと思いました。日本にたいする政治的影響という意味ではそちらの反応のほうが重要だと思うんですが。

さて、数日前にTwitter上でつぶやいた、日本人が留学する際に必要なことについて、もう一度復唱することにします。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、私は20代前半から15年近く留学生活を送っておりまして、おかげで90年代後半から2000年代前半の日本の状況というものが全く肌で実感できていないほど向こうに定着していたわけですから、そこで見てきた「日本人が留学する際に必要なこと」についていくつか書いてみたいと思います。

まず第一ですが、これはリアリスト的に考えるとごく当然のように、「お金」です。マネーです。留学資金です。これがないと、まず話になりません。

これが大前提だとして、次に「留学」という意味で必要になってくるのは、なんといっても現地の言葉(英語圏だったら英語)の「単語力」です。

もちろん現地の人間が何を言っているのかを理解するという意味でヒアリングの力が試されるというのはある程度は当たっているのですが、現地のテレビなどを見ていたり、買い物などをしていれば、一定期間をすぎれば自然の慣れてくるもの。

ちなみに英語は日本語と違って、しゃべり言葉で別の音域というか、別の周波数が多用されているために、それに慣れるまで時間がかかるという話をどこかで聞いたことがあります。

それよりも何よりも、とにかく重要なのは単語を覚えること。なぜならボキャブラリーを豊富にしておけば、たとえば文法などがまったくわからなくても、意味を知っている単語が多いだけで、たとえば相手に単語を並べるだけで話が通じたりします。

余談ですが、「あなたが言っていることはわかりません、もう一度繰り返していただけませんか?」ということを相手に伝えたい場合に、世界共通でどこでも一発で通じるのは、

「ハァ?!」

と言うこと。これで相手がどんな言葉をしゃべろうが、その人は間違いなくもう一度丁寧に教えてくれること請け合い。

話を戻しますと、大学受験の時に覚えた単語であろうと何だろうと、私が見かけた日本人の留学生で伸びている人たちというのは、おしなべてこの「単語」を多く身につけていた人ばかり。

実はこの単語を豊富に知っていることの重要性というのは、いわゆる天才教育のほうでも定説らしく、赤ちゃんの頃から徹底的に単語の数を増やすように訓練された人は、感情表現も豊かになるし、その後の知性の伸びが全然違うらしいのです。

そういわれてみれば、たしかにある分野の学問を極めるというのは、いいかえればその分野の「単語」、つまり「専門用語」についての知識を増やすことと直結しておりますし、主な学問ではいまだにその学問の名前に使われている用語の定義について議論が続いていることもしばしば。

日本ではあまりこのあたりは意識されておりませんが、使う語彙が豊富であるということは、英語圏ではどうも社会の階層を上がっていく際に必須とされているようで、私は以前あるオーディオブックで「ビジネスで成功するために必要な500ワード」というものを何度か聞いたことがあります。

この一例ですが、「溝」(gap)という言葉を使う代わりに、「亀裂」(fissuer)という言葉を使えば、相手にインテリジェントに聞こえる、というものがありました。

たしかにこのような洗練された言葉や単語を使うことができる人というのは、世界のどの国でも尊敬されます。しかもそれが留学先の国で、しかも学問をやるということになると、そもそもの地頭を構成している単語の知識量を問われてくるのは、当然といえば当然のこと。

ということで、これから留学する人は、ぜひその留学先の言語の単語だけは必死に覚えるということをやっておくと、あとで楽になります。


by masa_the_man | 2013-12-26 23:24 | 日記 | Comments(5)
今日の横浜北部は久しぶりに朝から快晴でした。それにしても本格的な冬を実感するようになりましたね。

さて、中国の「新しい大国関係」という最近出てきた概念ですが、人民日報の英語版に解説記事らしきものが出てきましたので、その要約を。

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「新しい大国関係」の構築のために中国がすべき4つの課題
by人民日報社説

米中、中露関係というのは、中国が「新しい大国関係」を構築する上でカギとなる二つの国だ。

●エジプトやレバノン、それにチュニジアで中国大使を務めたアン・フイホウ氏は、先週の月曜日に北京で開催された2013年度の「中国と世界フォーラム」の席上で、中国がこれから行っていく4つの主要なカギを提案した。

1,国内の安定と総合的な国力の増強

2,アメリカとのポジティブな戦略交流と、健全な二国間関係

3,互いの核心的利益を侵害せず、互いの戦略の境界線を踏み越えないこと

4,国際社会における戦略的支援の拡大

●アン氏は、ロシアとの外交関係の強化や、ヨーロッパ連合との協調的発展戦略、それにそれ以外の発展途上国との協力関係の深化などの必要性を表明した。

●中国は大国として台頭しており、アメリカとの二国間関係が極度に注目されるテーマになってきている。アン氏は、中国が提案した「新しい大国関係」という概念は、中国がアメリカとの紛争に突入することを意味するわけではないし、覇権に挑戦するということでもないと考えているという。

●中国は相互的な敬意、つまり平等な関係と相互利益を期待しており、これこそが、互いの平和と発展への偽りのない願いを表しているという。

●われわれの働きかけは、必ずしもアメリカの対中政策の変更を意味するわけではないが、少なくとも新しい大国関係が提案されたという事実は残る。

●アン氏は現在の状況がここ数十年間の米中関係とは決定的に異なる点が3つあるという。

●第一が、国際的な状況が変化して、米中が平和的に発展できる時代に入ったということ。第二が、米中の利害、やりとり、そしてそれらの一体化が進んだということ。

●第三が、中国は核兵器だけでなくそれ以外の先端軍事技術を持った部隊を持つようになり、海外の国からの攻撃にも対処できるようになったということだ。

●アン氏が強調したのは、「台頭する大国の既存の大国との間の、新たな紛争は避けるべきだ」という点だ。彼は戦略的な相互信頼に焦点を当てることで、互いの思い違いを防ぐことができると提案していた。

●危機制御および紛争管理は暴発を防ぐことになるかもしれない。さらに重要なのは、敵対国が中国を軍事的な手段で制限しようとする場合に、そのコストが利益を上回ることを明確に理解させるということなのだ。

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これについてはメルマガのほうでコメントを。


by masa_the_man | 2013-12-25 23:44 | 日記 | Comments(0)
今日の横浜北部は朝から曇りの厳しい寒さ。

さて、最近読んだ本の中に面白いエピソードが書いてありまして、そこから気づいたことを一つ。

私はチェスや将棋はやらないのですが、戦略を学んでいる人間なので、それをプレーする人間たちがどのような考えをもっているのかについては非常に興味あります。

この分野の著作としては、たとえば日本で有名なところでは羽生さんの一連の本がありますが、私がとくに感銘を受けたのはガルリ・カスパロフというチェスの元世界チャンピオンの書いたもの

ところが今回のネタは、このカスパロフの話というよりも、彼が主導した、ある変則的なチェスの世界大会の話。

ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、カスパロフといえばロシア(ソ連)出身の名チェスプレイヤーで、若くして世界チャンピオンになり、その座を10年以上守ったことで有名。

しかしテクノロジーと関連して面白いのは、なんといっても彼が90年代後半に行った、IBMが開発した「ディープ・ブルー」というチェスのソフトとの対決で(ギリギリ?)負けたとされたこと。

これはコンピュータが人類の頭脳を越えた「事件」として有名になりましたが、本当に面白いのはその数年後に行われたチェスの世界大会の話。

このチェスの世界大会は2005年に「フリースタイル」という形式で行われたのですが、奇抜なことに、一つのプレイヤー(というかチーム)は、パソコンと人間をどのように組み合わせてもOKという、プロレスでいうところの「バトルロイヤル状態」(?)で対決するというもの。

そうなるとあらゆる組み合わせがOKなわけですから、さまざまなチームがさまざまな組み合わせで戦えるのですが、大きくわけると、①世界チャンピオンを含む「人間だけ」のチームと、②「コンピューター」だけのチーム、そして③「人間とコンピューター」を組み合わせたチーム、の三タイプにわけられました。

その結果、優勝したのはどこかというと、③のチーム。

しかもこのチームは、なんと世界チャンピオンが全くからんでおらず、アマチュアでパソコンを使うのがうまい、たった2人のニューハンプシャー州のアメリカ人

彼らは2005年当時の家庭用のPC2台(デルとHP)の中に、これまたそこらで売っている5つの普通のチェスプログラム(Fritz, Shredder, Junior, Chess Tiger)を使って勝負しております。

しかも予選ではハイドラ(Hydra)という当時世界最強と呼ばれていたチェス・ソフトを負かせており(ハイドラはこの数日後に世界第七位の人間に勝っている)、決勝は14年間世界タイトル保持者であるドブレフ(と2600人以上のオンライン上の専門家たちのアドバイス)に圧勝しているのです。

彼らの勝因ですが、のちに判明したのは、この二人が、どのプレイヤーたちよりもパソコンを効率よく使うのが非常にうまかったという点(このゲームは制限時間が60分しかない)。

しかも特徴的だったのは、たとえばパソコンのソフトやデータベース上のアドバイスでは「あまり良い手ではない」と判断されても、敵のプレイヤーを心理的にうろたえさせることができる手だと思った場合は、それを迷うことなく使ったという点。

この驚きの結果を見て主催者の一人であるカスパロフがコメントしたのは、「コンピューターの戦術レベルでの正確無比な計算能力と、人間の戦略レベルでの指揮が合致したら世界最強だ」というもの。

つまり、これは「人間対コンピューター」という、まさにカスパロフ自身が経験した対立構造ではなく、これからは「人間とコンピューター」が最強になるということなんですが、面白いのはこれが、

●戦略=人間が担当するアート(芸術、術)

●戦術=コンピューターが担当するサイエンス(科学)

という形の、いわば「戦略の階層」における役割分担がますます求められてくる、という示唆が含まれている点です。

ようするにいままでのチェスの強さの発展として見えてきたのは、

1,チェスの世界チャンピオン
3,パソコンのチェス用ソフト(ディープ・ブルー)
2,チェスの世界チャンピオン(とパソコンのソフトの組み合わせ)
3,パソコン操作のうまい、そこそこのアマチュア

という4つの段階。

ちょっと飛躍してしまうかもしれませんが、ここから見えてくるのは、今後の教育ではある程度のテクノロジーの操作のうまさに加えて、潜在的にますますアート的な抽象度の高いところの重要性が高まる、ということではないでしょうか。


by masa_the_man | 2013-12-23 23:43 | 日記 | Comments(3)
今日の横浜北部はようやく晴れました。それにしても昨日の夜は寒かったですね。

さて、日中衝突シナリオについて、なんと日本の週刊誌の内容を紹介している面白い記事がありましたのでその要約を。

著者は東京在住のフリーのジャーナリストです。

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来るべき日中戦争のいくつかのシナリオ
By トッド・クロウウェル

●最近の中国の東シナ海広域(尖閣上空を含む)における防空識別圏(ADIZ)の設置宣言は、日本のアームチェア戦略家やサスペンス作家、それに退役した将軍や国防専門家たちや知識人たちにとってはかき入れ時であろう。

●中国の宣言の後に日本の7大週刊誌のうちの5紙が、尖閣をめぐる日中軍事衝突が起こった際のいくつかのシナリオについて記事を書いている。おそらく2014年にはこのシナリオについて書かれた本が何冊か出版されるのは確実であろう。

●たとえば「戦争はつまらん」(War is Boring)というブログでは、東シナ海上でのハイテク空中戦が行われるというシナリオが論じられており、ここではアメリカのF-22と日本とF-15が中国の戦闘機と戦うことになっている。この際に何機かの日本の戦闘機は撃ち落とされ、アメリカの戦闘機も一機だけ落ち、中国側はさらに多くの数が撃墜されるという。第一回戦は日米側が勝利に終わるらしい。

●「週刊現代」では習近平主席が、ADIZを通過して帰国する日本の民間航空機を撃墜することを命令し、実際に落とした後から戦争がはじまるというシナリオが出されている。

●「サンデー毎日」では「日中戦争は来年1月に始まる」という見出しの記事を掲載している。ここでは中国経済の崩壊によって、北京上層部が国内のトラブルから目をそらす目的で、日本との戦争に踏み切るということが書かれている。

●本格的な軍事専門家たちは両国(もしくは三カ国)の戦力の違いについて喧伝している。彼らの意見を全体的にいえば、中国は想定される戦場においてどちらかといえば近い位置にある航空基地などを数多く持っている点で優位であり、日本側は中国の戦闘機や艦船よりは質的な面で上回っている、ということになる。

●日本の航空自衛隊は現時点で那覇に20機のF-15によって構成される一個飛行隊しか持っておらず、ほぼ毎日行われている尖閣上空へのスクランブルによって航空機とパイロットには負担がかかっていると言われている。来年には飛行隊がもう一個が加わることによって強化されることになっている。

●もちろん日本側も他の地域から航空面で支援を受けることができるが、それでも想定される戦場近くに基地が少ないことによって制限を受けるのだ

●当然ながら、この弱点はもしアメリカが紛争に巻き込まれた場合には、一隻かそれ以上のアメリカの空母(70機搭載)によって簡単に補えることになる。

●そして確実にアメリカも巻き込まれることになるだろう。ワシントン政府の立場は、尖閣の帰属について中立でありながら、同時に日米安保ではアメリカが日本の国防の義務があると主張している時点で、かなり矛盾したものになっている。

●もちろんアメリカが核武装した中国と、誰も聞いたことのない無人島をめぐって、あからさまな戦闘を行うことを考えるのは無理があるが、それでも日本は過去60年間にわたってその期待を前提としてきたのであり、そのために米軍に基地を提供してきたのだ。彼らがアメリカに義務を果たすように強く要求してきても無理はない。

これらの戦争のシナリオのほとんどは、たしかに「フィクション」や「たんなる思いつき」かもしれないが、それでもこれらを想定させるだけの実際の事件は、ここ一年間で豊富に起こっている

●たとえば中国の漁船や公船は日本が主張している尖閣周辺の領海に定期的に侵入してきている。これまでのところ、これらの侵入の際に中国側が使ってきたのは準・軍艦(巡視船)だけであり、日本側も海保の船で応対していて、双方とも軍艦は使っていないのだが、それでも中国側の日本の領空への侵入は日本の航空自衛隊の戦闘機によって対処されているのだ。

●安倍政権は中国やその他の国々から、異様なほどタカ派的だと見られている。今年度に国会は(アメリカに見習った)NSC創設の法案を通過させており、アメリカ側の秘密漏洩の憂慮に対処するために「特定秘密保護法案」を通過させている。

●その他の今年の目立った動きとしては、以下のようなものがある。

―今年の一月には中国のフリゲート艦が日本の護衛艦を「ロックオン」している。護衛艦は回避行動をとった。

―海上自衛隊は最大規模の護衛艦「いずも」を進水させた。日本側はこれを「ヘリ護衛艦」としているが、世界はこれを「軽空母」と呼ぶはずだ。

―日本の1000名ほどの自衛官たちが米国の海兵隊のキャンプで「ドーンブリッツ」という演習に参加している。これは沖縄の島々の離島奪還を想定した訓練であった。

―演習の一環として日本は最近宮古海峡のそばにある宮古島に対艦ミサイルを配備した。この海峡はかなり広く、中国海軍が太平洋広域で演習するために時々通過する。

―防衛省は、中国の無人機が尖閣付近上空を飛んでいたと報じられた後に、領空侵犯をしてくる中国の無人機を撃ち落とす研究をし始めたと言われている。その際には「無人機は警告射撃に応じることはできないためだ」という理屈づけがなされている。

●いうまでもなく、来年以降にさらに状況が深刻になるのは確実であろう。

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まあ日本側の週刊誌の中には正直「煽り記事」みたいなものもありますから、深刻に受け取るのはどうかと思いますが・・・。


by masa_the_man | 2013-12-21 23:47 | 日記 | Comments(1)

戦略は「ウソ」である

今日の横浜北部は冷たい雨が降り続いております。昼前に一瞬晴れたので傘を持たずに出たら濡れました。

さて、明日のことですが、都内某所の小さな勉強会向けにしゃべることをメモ代わりに。

戦略というものを研究しはじめて、もう十年近くたつわけですが、とくに最近実感しているのが、「戦略には必ずウソが絡む」という紛れもない事実。

これについてはすでに数々の講演会や、「戦略の階層」というロングセラーのCDの中で詳しく論じているので、興味のあるかたはそちらを参考にしていただきたいのですが、とにかくこんなことを書くと「お前はウソの学問で博士になったのか」とツッコまれてしまうのは確実でしょう。

ところが戦略研究の歴史というものを振り返ってみると、多分にそういうところがあるのは否定できない事実なのです。

そしてその最大の理由は、戦略というのは予測できない「未来」のことを考えて、しかもそれを実行するためのものだから、というところに集約されてきます。

これは昨日のエントリーにも関わりますが、戦略というのは「実践のためのもの」であり、とくに私が学んだ国家戦略の分野では、分析も大事ですが、それをどう使って効果を生み出すか、というところが肝心になってきます。

つまりよい分析をできたとしても、それはあくまでも過去のことであり、これから「未来をどうしていこうか」という実践段階のことになると、それがどんな人のものであっても、学問的には話が突然怪しくなってきてしまうわけです。

なにぶん未来のことですから、そこには「当てずっぽう」というか、「多分こうなるからこうしよう」という要素が多分にからんできまして、すでに起こった確実な歴史ではなく、これから起こる未来の形成の話なので、どうしてもウソ的な要素が入り込んでしまうのです。

戦略論の歴史でいくと、この典型的なのが「核戦略」の分野。

冷戦初期に大量にあらわれたこの分野の理論家の主な人物を挙げてみますと、たとえばヘンリー・キッシンジャーは歴史家、トマス・シェリングは経済学者、アルバート・ウォールステッターは数学者、ハーマン・カーンは物理学、そしてアレキサンダー・ジョージは政治学者であるなど、とにかくその出自がバラバラ。

そしてなぜこのようなバラバラの分野の人々によって議論されたのかというと、その主な理由は、

人類は核戦争を戦った経験がないから

に尽きます。たしかに通常兵器による戦争でしたら、当時の直近では第二次大戦や朝鮮戦争などを戦ったプロの軍人たちはたくさんおりますし、すでにその分野の研究は「軍事史」という形で豊富に残されております。

ところが核戦争というのは軍人でも戦った経験のある人はいないため、それを補う形で民間のさまざまな学者たちが競ってその理論を、いわば「フィクション」的に色々と考えたわけです。

そういえば『失敗の本質』という名著の編著者の一人である野中郁次郎氏が、ある学会の講演会で、「あの本を書いている時に感じたのは、周りは歴史家たちばかりで、自分はフィクション的なことをやっている人間だということ」と言っていたのは印象的でした。

つまり戦略というのは、あくまでも実践的なもの(未来に働きかけるもの)であるために、そのすべてが実行される時点で「絶対にこうなる」と言いきれない、フィクション的というか、いわば「ウソ」の話であるということになるわけです。

いや、逆にフィクション&ウソの話であるということを堂々と認めてしまうほうがいいのでは、というのが最近の私の立場です。

ただしこのようなフィクション&ウソの話は、戦略の話だけでなく、すべからく人間が未来にたいして行う創造的な営みのすべてについて当てはまることなのではないでしょうか?

われわれの人生だって先のことは全くわかりません。一寸先は闇です。

だからこそ、自分・他人にたいして「良いフィクションやウソを活用しよう」と考えるほうが、もしかしたら精神的にも健康的なのかもしれません。

なんといっても、戦略は「アート」なわけですから。


by masa_the_man | 2013-12-20 18:47 | 日記 | Comments(2)
今日の横浜南部は昼過ぎから冷たい雨が降っております。結局雪にはなりませんでした。

さて、本日はいわゆる「死亡欄」の記事の要約を。このニセ預言者については私も何度か記事を読んだことがあったので気になっていたところです。

それにしても騙された人にとってはなんとも迷惑な話です。

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「世界の終焉」を根気強く予測したハロルド・キャンピング、92歳で亡くなる
Byロバート・マクファーデン

●ハロルド・キャンピングはキリスト教系のラジオ局の起業家で、人々の驚きと恍惚、それに連邦通信委員会(FCC)にたいする抗議を巻き起こし、何度も世界の終わりを予測し続けた――とくに彼は2011年に2度も世界の終わりを予測してはずした――ことで人々の嘲笑を買った、聖書の予言者である。

●彼は先週日曜日に、カリフォルニア州の自宅で92歳で亡くなった。死因は転倒したことによって併発した合併症状であったと「ファミリーラジオ」ネットワークは伝えている。

●世界に何百万人もの信者がいるといわれているキャンピング氏は、カリフォルニア州のオークランドに本拠地を置く、宗派を問わないキリスト教系の牧師で、「ファミリーラジオ」ネットワークの中心的な人物であった。このネットワークは全米の多数の放送局から発信しており、海外では30以上の国々で放送していた。

●50年間にわたって彼はこのネットワークの看板番組である「オープン・フォーラム」のカリスマ的なホストを務めた。この番組は平日の昼間に90分間放送され、視聴者からの質疑応答の時間もあり、色々な批評や議論、それにアドバイスが聞けるものであった。

●彼自身は生涯をかけた聖書の研究者でもあり、彼自身は数占いに凝っていて、聖書の中に世界の終わりの日にちが記されていると信じるようになった。

●彼は2011年5月21日に世界が終わると予測したが、それをはずしたあとに日程を10月21日にずらした。ところがこれもはずれてしまったため、後に自身の予測がはずれたことや、世界がすぐに終わる証拠はどこにもないことを素直に認めている。

●批判者たちは彼のことを「ペテン師」や「精神異常者」、「異教徒」や、それ以上のひどい名前で呼んでいた。ところが彼の信者たちにとっては聖書の中に出てくる預言者の復活であり、キリストの復活を呼びかけ、審判の日や、その後に5ヶ月間世界中で続くの混乱の後に、キリストを信じる者と信じないものが地震や火事、そして洪水などの大変動で振り分けられることを預言していた人間だったのだ。

●いずれにせよ、彼は神からのメッセージを伝えようと固い決意を持っていたことは間違いない。彼は1970年代から世界の終わりを何度も予測しているが、当時はほとんど注目を集めなかった。最初に注目を集めたのは1988年5月21日であり、のちに『1994年?』という500ページもの大著の中で、この年の9月に世界が終わると予測している。

●もちろん主流派のキリスト教団体や一般の批評家からは酷評されていたが、キャンピング氏は自分の計算の過ちを認めた後、2008年後半に次の「世界の終わり」の日が2011年5月21日であると予測している。

●この予測は複雑な計算式によるもので、ノアが生き残った大洪水が終わった瞬間(紀元前4990年)から7000年周期のものをベースとしており、しかも新約聖書と旧約聖書の一年の差を差し引いて考えているという。

●キャンピング氏は細身で深い彫りの顔と、よく響くバリトンの声の持ち主でラジオの視聴者に語りかけていた。自分の予測した「最後の日」を視聴者によって支えられるネットワークで2年以上熱心に語りかけ、全米に5000枚もの看板(以下の写真)を掲げ、無数の本やパンフレット(75ヶ国語)を配っている。これらすべての経費を捻出するために、彼は視聴者たちからの数十億ドルのカンパの資金でまかなっている。
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●結婚を早めた人や懺悔を告白した人、クレジットカードを使いまくった人、最後のパーティーを開催した人、仕事をやめた人、それにすべての持ち物をあげてしてまった人などが一体何人になるのか誰も知らない。

●しかしその反応はかなり広い範囲で見られたのであり、いくつかのケースではその結末が悲劇的なものもあり、とくに生き残ってしまった後の惨状を恐れた人々は悲惨であった。

●たとえばカリフォルニア州のパームデールでは、「世界の終わりの日」の後の悲惨な状況を恐れた母親が、11歳と14歳になる娘をカッターナイフで刺し、自分の喉も切ったという事件があったが、この三人は一命を取り留めている。台湾の男性は最近起こった地震と津波を審判の日が迫っているものと感じてビルから飛び降り自殺をしている。カリフォルニアのある男は、泳げないのに神に会うために湖を向こう岸まで泳ぎきろうとして溺れ死んでいる。

●ところが当の5月21日に何も起こらなかったため、落胆した信者たちは驚きと失望を隠せなかった。その多くがファミリーラジオネットワークに電話をかけてきて、キャンピング氏のことを「ニセ預言者だ」と非難したのだ。彼のオークランドにあるラジオ局は破壊され、彼や彼の家族、それにラジオ局の職員たちには脅迫声明が出された。

●キャンピング氏は自分の予言が当たらなかったことについて「非常に驚いた」と述べている。数日間一人で何を間違えたのか考えた後に彼が至った結論は、「神は5月21日に審判の日を静かに終えた」というものだった。そして彼は予言の日を新しく5ヶ月後の10月21日に設定しなおしたのだ。

●この新しい予測はあまり大々的に告知されず、看板もパンフレットもつくられなかった。キャンピング氏はその必要はないとしていたのだが、その理由として「すでに救済のプロセスは終わったから」だと言っていた。

●FCCは米国中から、パニックを起こし、視聴者から寄付で何億ドルも集めて騙したファミリーラジオの放送権の取り消しを求める苦情を受け取ることになった。ところがFCCが宗教関連の問題には介入することはほとんどないし、その時も行動を起こす気配はなかった。

●5月21日の大騒動の数週間後にキャンピング氏は軽い発作を起こし、ラジオ番組も降板してしまった。彼は9月に番組に復帰したが、地震や「最後の日」についてはほとんど語ろうとしていない。彼は視聴者にたいして「私はこれらのことを研究し直した結果、今後何か大規模な出来事が起こるようには思えなくなってきました。地球最後の日はとても静かにやってくるはずです」と語っている。

●そして10月21日も何も起こらなかった。

●その5ヶ月後の2012年3月に、彼は自分のホームページに書いた信者への文章で、予測を間違えたことを謝罪しただけでなく、世界の終わりの日を示すような新しい手がかりがもうないことを認め、「次の新しい予測を考えることに興味を失った」と書いている。

●ところが彼はこの混乱の中にも、ひとつだけ有益だったことがあると書いている。それは「私が間違った罪深き予測をしたことで、いままで見向きもしなかった多くの人々が、神について関心を抱いたことである」ということだ。

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私も以前から色々な国際政治に関する予測などを読んできましたが、実感しているのが、「基本的に未来予測は当たらない」という当たり前の事実です。

いや、もちろんシンプルで短期的なものを(ビッグデータなどを使って)コンスタントに当てたり、誰も予期しなかったことをたまに当てる人もいるにはいるのですが・・・・国際政治の現象に関してはほぼ不可能かと。

ヨギ・ベラは「予測は難しい。とくに将来に関しては」という言葉を残しておりますが、これはまさに名言。


by masa_the_man | 2013-12-19 23:58 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部は朝から曇ってとても冷え込んでおりました。先ほどから小雨も降ってまして、いよいよ初雪かという感じです。

さて、数日前に日本の特定秘密保護法案にたいするNYタイムズの批判的な社説が掲載されておりましたので、その要約を。

彼らの安倍政権にたいする姿勢や思想がよくわかる内容です。

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日本の危険な時代錯誤

●日本の安倍政権は今月に入って特定秘密保護法案を強制的に通過させたが、この法案は今までの日本の民主制度の理解を完全に覆すものだ。

●この法案の文言は曖昧で広い範囲にとれるものであり、これによって政府は政治的に不都合だと思うことについて秘密にすることができるようになった。政府関係者で秘密を漏らしたものは10年以内の懲役になる可能性があり、「不適切」な形で情報を入手したり、さらには自分の知らなかった機密扱いの情報を入手しまったジャーナリストも、5年以下の懲役になる可能性がある。

●この法案が適用されるのは国家安全保障に関する分野であり、スパイやテロ活動などが含まれるという。

●この法案が議会を通過する直前の11月29日に、自民党の幹事長を務める石破茂氏は、自身のブログの中で、法に則って反対デモを行っている人々のことを「テロリスト」のようなものであると書いている。このような見解は、安倍政権の表現の自由について無頓着な心の底にある考え方について、大いなる疑いを発生させることになった。

日本の世論は、この法案が報道の自由や個人の自由を侵害するものであると明らかに恐れているように見える。共同通信社の行った意識調査によれば、82%もの回答者たちが法案の廃案や改正を求めているという。

●ところが安倍氏は国民の懸念を横柄な態度で拒否する姿勢を見せている。彼は「この法案は一般国民の生活を脅かすものではない」と法案の通過後にコメントしている。自民党の年長者である中谷元氏も「政府の要件は国民のものとは異なる」という民主制を軽視する警戒すべき発言を明らかにしている

この法案は、日本を「美しい国」に変えるための安倍氏の十字軍的な任務の一端を担っている。この「美しい国」とは国民への政府の権力の拡大と個人の人権擁護の減少を狙ったものであり、愛国主義的な国民によって支えられる強い国家を目指したものだ。

●彼が公言している目標は、70年前に米軍の占領下に押し付けられた日本国憲法の改正である。去年四月に発表された自民党の改正草案では、基本的人権の尊重についての項目が削除されており、国民は国旗と国歌を尊重するべきであると付け加えられている。さらに、「国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と書かれている。

●またこの草案では、首相に国家非常事態宣言を出し、通常の国内法を一時停止にできる権限も与えている

●安倍氏の狙いは「戦後レジームからの脱却」である。日本国内の評論家たちは、彼が1945以前の状態を復活させようと企んでいると警告している。このようなビジョンは時代錯誤であると同時に危険である。

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うーむ、相変わらずの偏りっぷりですねぇ。


by masa_the_man | 2013-12-18 21:26 | 日記 | Comments(3)
今日の横浜北部はまたしてもよく晴れました。それにしても風は強く、気温は下がっておりますね。

久々に親戚の法事に出てきまして、色々と思うところがありました。それにしても法事というのは普段なかなか合わない親戚に顔をあわせるという意味で大変貴重な機会だと実感しました。

さて、移民問題というのは日本ではそれほど意識されませんが、先進国ではどこでも非常に深刻な問題となっております。その中で冷酷な物言いの面白い分析が少し前の記事でありましたので、その要約を。

この記事の著者はオックスフォード大学の教授で、「アフリカへの援助は役に立っていない」という内容の著作で以前からその業界ではすでに有名だった人物でもあります。

この意見記事もそれと似たような形のもので、リサーチから見えてきたあからさまな事実を堂々と暴くというものです。

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海外移住は母国に有害だ
By ポール・コリア―

● リベラルたちは移民たちに権利を与えるように長年活動してきた。しかしビジネス界は移民を呼び込むために、移民する権利を与えようとしてきた。しかしこの二つは異なるものだ。

●フェイスブックのマーク・ザッカーバーグはFWD.usというロビー団体を立ち上げ、この二つの運動を統一してアメリカの移民法の改正に動き始めた。彼は「アメリカには1100万人もの不公平な権利しか与えられていない人々がいる」と述べている。移民はテクノロジー企業にとっては有利に働くので、彼がこの運動にかかわるのは理解できるし、これは人道的にも高尚なことに見える

●しかし、これは誰にとって「人道的」なのだろうか?なぜなら貧困にあえぐ国からの移民にとって良いことというのは、実は彼らが出てきた国にとっては必ずしも良いこととは限らないからだ。

●他国への移住というのは貧困国には良いものかもしれないが、それでもそれは条件つきだ。ある移住の研究によれば、若い人々がアメリカのような民主制国家に高い教育を受けてから帰国すれば、たしかにその国の利益にはなる。若い彼らはクラスで得た高いスキルを持ち帰るだけでなく、そこで習った政治・社会制度も持ち帰るからだ。彼らのスキルはスキルのないその他の国民の生産性を上げるのに貢献するし、彼らの行動が民主化を進めることになる。

●たとえば貧困国からの学生について調べた1950年代からの世界中のデータが示しているのは、民主制国家に留学した学生たちは、帰国してから母国の政治の自由化を進めたことがわかっている。ラテン・アメリカ、アフリカ、そしてアジアにおける民主化は、このようなプロセスによって支えられてきた

●去年の春のワシントン・ポスト紙の論説記事の中で、ザッカーバーグは「アメリカはなぜ40%以上の理系の留学生の院生たちを退学させてしまうのだろうか?」と問いかけている。これにたいする私の答えは、「その理由がなんであれ、これこそが貧困国を助けるかなり効果的なやりかただからだ」というものだ。

●「頭脳流出」のように見えることも、時と場合によっては有益になることがある。たしかに教育を受けた人々がより豊かな国へ移住してしまうと、貧困国側にとっては直接的な損失になる。ところが教育を獲得しようとする努力は最終的に身を結ぶことを周囲に見せることにより、周囲は逆に教育を受けようとやる気になる面もあるのだ。「頭脳流出」が深刻になるのは、あまりにも多くの教育を受けた人間たちが移住してしまった場合だ

●ところが貧困国の多くでは、海外に移住する人の数が多すぎるのだ。もちろん私は移住するべきではないと言っているわけではないが、明らかにその数は少ないほうがいい、と言いたいのだ。

●教育を受けた移民たちによって最も利益を受けているのは、中国とインドである。両国には十億人以上がいるために、割合的には母国を離れる人々の数は少ないのだ。

●それとは対照的に、小さな後進国は、経済状態がよくても移住する人々の割合が多い。たとえばガーナは教育を受けたスキルの高い人材が移住してしまう割合が中国に比べて12倍も高い。さらにもし母国の経済状態が悪ければ、彼らは教育面でも損害を被ることになる。

●たとえばハイチは教育を受けた85%もの若い人材を海外に失っており、この割合はハイチにとって有害でしかない。もちろん移住した人々は母国に送金するのだが、それも変革にはつながらず、単なる一次しのぎにしかならないのだ。

●中国とインドは海外移住する人の割合が低く、帰国する人の率も高いのだが、この両国が世界における移民とその祖国の関係についての考え方のモデルとなってきた面が大きい。

●ところが開発面での問題は、弱小国がそれに追いつけるのかどうかという点だ。中国やインドとちがって、弱小国たちはあまりにも移住者が多いのだ。彼らにはそれを止めることもできないのだが、逆に彼らを受け入れる側であるわれわれは、この問題にたいしてかなり効果的なことができる。たとえば移民政策によって、彼らの受け入れる率を決めることだ。

●さらに急速な圧力は、家族や親戚まで連れて祖国から移住したいと考える移民たちから来る。ところがこのような圧力に屈することは、必ずしも人道的であるわけではない。家族や親戚をアメリカに連れてくるということは、祖国に送金するようなインセンティブを減らしてしまうからだ。

●移住した家族たちは、たしかに救命いかだに乗ることで先進国に向かうことはできるのだが、彼らが残してきた大規模な家族たちを犠牲にした状態で出てくることにもなるのだ。

●その中でもとくに明らかなのは、難民を受け入れることによって祖国の社会の崩壊を招いてしまうことだ。高収入の民主制国家はこのような難民を受け入れる傾向が高いが、難民できたからといって、それがその国への移住になるとは限らない。なぜなら崩壊する国から逃げられるのはエリートたちであり、本当に貧困層に属している人々は、国境を越えたところにある隣国の難民キャンプより先には行けないからだ。

●崩壊後にエリートたちは帰国しなければならないのだが、すでに難民先で永住権をとってしまえば、彼らが祖国に帰る気は起こらなくなる。

●たとえば世界の最貧国の一つである南スーダンは、国民の海外移住で疲弊している国だ。この国の政府高官たちが私に教えてくれたところによると、重要な人物たちを祖国に呼び戻して働かせるために必要なのは唯一「高い給料」だけであり、それで戻ってきてくれたとしても家族を海外に置いたままにして、南スーダンで儲けた金を海外の家族に送ってしまうというのだ。

まずわれわれがやることの一つは、難民に対する政策をしっかりと構築することだ。紛争が終わった後の祖国の政府にたいして、国家再建のための人材を戻すことができるような対策をうつことだ。

●ところが移民たちは同調問題に直面する。なぜなら他の人も同じように帰国すれば、自分がやっていることの希少価値が下がるからだ。

●難民の権利には和平合意と紛争後の政府の行動の監視などが盛り込まれるべきだ。そして若くてやる気のある起業マインドをもった優秀な人間たちが経済や政治の進化の起爆剤となるのであり、彼らが意図するかしないかはともかく、社会をつくっていく存在なのだ。

●もちろん彼らのような優秀な人材を最貧国から連れてくることは先進国側にとっても魅力だ。才能を安く雇うことができるからだ。経済学者たちにとってもこれは効率の良いことになる。なぜなら金の卵たちは貧困国よりも先進国でのほうが(資本やスキルが豊富なために)生産性が上がるからだ。

●リーバータリアンたちにとっても人間の選択肢を広げてくれるという意味で魅力的に映る。官僚からのコントロールを緩和してくれるからだ。さらに過激な思想を持つ、たとえばアイン・ランドの信奉者のような人々にとっては「強いマイノリティーを弱い多数派の縛りから解放すること」と映るであろう。つまり「肩をすくめた移民」である。

●ところが左派の多くは、われわれが貧困国の金の卵を奪っていることを認めたがらないものだ。彼らは祖国の困難な状況に直面しているかわいそうな人々を助けていると信じたがるものだからだ

●われわれは悪循環を起こしている可能性を考えなくてはならない。なぜならわれわれは金の卵を祖国から引き離すことによって、その祖国の状況を悪化させているかもしれないからだ。

●人道主義者たちは個人たちを助けようとしているから、その背後にある大きな構造を見えなくなっているのかもしれない。つまりかわいそうな貧困者がいるから、貧困社会が生まれるということだ。

才能のある人間に門戸を開くことは、フェイスブック社の業績にはよいことかもしれないが、数十億人の貧困層を助けることにはならないのだ。

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これを読むと、明治の頃に留学した人々というのは、そのほとんどが祖国に帰ってきてよい働きをしたということになりますな。

日本はまだそれほど移民を受け入れているわけではないですが、このような問題は今後のグローバル化する社会では増えこそすれ減ることのない問題であるわけで。


by masa_the_man | 2013-12-16 18:15 | 日記 | Comments(6)
今日の横浜北部は、また朝から快晴、しかし冷え込みました。

さて、昨日まで4回にわたってご紹介しましたシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授のインタビュー記事は如何でしたでしょうか?ミアシャイマー教授と言えば、私がかなり以前に翻訳した『大国政治の悲劇』の著者で、世界的にもとくに強固な「リアリスト」として知られております。

前回まで、北京の環球時報(共産党直属の中国メディア)の記者を相手に北京で行われたこのインタビューの要約を掲載しましたが、この総括として、私がここにコメントや解説をつけてポイントをまとめてみました。

まず、ミアシャイマー教授は、『大国政治の悲劇』の最後の章で、自分が提唱する国際政治の理論である「攻撃的現実主義」(Offemsive Realism)というセオリーを使って、中国の台頭は絶対に「平和的」にはならないことを予測しております。この著書は出版からすでに13年近く経とうとしているわけですが、ミアシャイマー教授自身は、この考えを全く変えていないことが、今回のインタビューでもよくわかります。

それでは今回のミアシャイマー教授の回答で明確になったことを、いくつかのポイントごとに整理してみます。

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(1) 大国政治はゼロサム・ゲームである

よくリベラル派の人々は全般的に、「経済は互恵関係であるから、大国だって互いに貿易していたら衝突はしない」という考えを述べておりますし、私もこれはある程度は正しいと考えております。

ただし、図体のでかい「大国」は、その原語の「グレート・パワー」という言葉からもわかるように、小国たちよりも大きな力を持っていると同時に、それぞれ互いも恐れてもいるので、その互いの関係性を単純に<損得>で考えがちで、よって、そのために衝突もしやすくなる、ということなのです。

もちろんこれは「大国同士は絶対にぶつかる!」というわけではありませんが、それでも一方にとっての得が、対するもう一方にとっての損になる「ゼロサム的な構造」そのものは変わらない、という前提になります。

よってミアシャイマー教授によれば、中国とアメリカはその形がどのようなものであれパワーの奪い合いに発展するのは確実である、という結論になります。

(2)中国は東アジアという地域で覇権状態をめざす

ミアシャイマー教授は、大国というのはチャンスがあれば必ず「地域覇権」を目指すものであると断言します。そして今回の中国は、それを目指せるだけの経済力を備えつつあり、それが軍事力に転換されて、結果的に周辺国の反発を受けながらも、東アジアという「地域」でナンバーワン、つまり「覇権」を目指すというのです。

もちろんこれは「中国が悪い国だから」ということではなくて、ミアシャイマー教授によれば、中国が「大国」であるために、どうしてもそうせざるを得ない、と言っているのです。そしてそれを成功させた例として、ミアシャイマー教授は19世紀のアメリカを挙げております。

つまり、大国であるアメリカも過去にやったから、同じ大国の中国がやってもおかしくないですよ、ということなのです。

(3)中国は慌てずに、時が来るまで待てばいい

まるで「敵に塩を贈る」、というわけではないでしょうが(苦笑)、ミアシャイマー教授はまだ中国の発展はピークに達しておらず、周辺国と衝突して無用な騒ぎを起こすのは得策ではない、と中国人にアドバイスしております。なぜなら時間は中国に味方しており、アメリカや周辺国の国力が中国のそれと比べて相対的に落ちてくれば、パワーをつけた中国は、後で思い通りに国際政治を動かせるようになるというのです。

ここで少し気になるのは、ミアシャイマー教授が「最近の中国と周辺国との領海をめぐるトラブルは、ほとんどが焦った周辺国が仕掛けることによって始まった」と見ているところでしょうか。

日本も含めて、実際はその逆のケースもけっこうあると思うのですが、これは単純に彼のリサーチ不足なのかと思います。

(4)安全保障の理由から、中国の周辺国は最終的にアメリカに助けを求めてくる

上の分析とやや矛盾するような気もしますが、これは中国が本当にパワフルになった後に、周辺国たちが「やっぱり中国は怖いからアメリカに頼ろう」となる、ということです。

ただし、アジアへの軸足を移すといういわゆる「ピボット」戦略は単なるサインであり、まだアメリカのアジアへのコミットメントは初期段階にあって、その重要性をアメリカのトップでもあまり気づいていないと分析しております。

それでも後に中国の台頭がいよいよ明確になってくると、アメリカも現状を無視するわけにはいかなくなる、とミアシャイマー教授は予測しております。

そしてなぜこのようになるのかといえば、その理由が次の、

(5)地理が決定的に重要

というところにかかってきます。

中国が周辺国に怖がられる最大の理由は、なんといっても「地理」。つまり、中国はアジアに位置しており、その周辺国たちの近くに存在するからこそ、怖がられるわけです。

「じゃあアメリカはどうなのよ?」ということになるわけですが、アメリカはアジアに基地は持っておりますが、それでも中国のように直接攻めてきて領土を奪う可能性がほとんどないので、いくらパワフルでも、彼らにとっては安心できる存在なわけです。

これを言い換えると、

遠くのヤクザよりも近くのチンピラ

ということですね。

(6)アメリカは、米中が尖閣で衝突するとジレンマに直面する

アメリカが尖閣をめぐる日中の領土争いには、両者の紛争を抑えるという意味で「中立の立場である」と国務省などのスポークスマンがよく言いますが、同時に日米安保もあるので、日本の側につかなければならないという義務があります。

つまり、アメリカは2つの矛盾した動機にさらされている、ということになるわけです。

もし紛争解決を優先して、いざ軍事的な衝突となったとしても、日本を手助けしなかった場合、今度は他のアジアの同盟国からのアメリカに対する「信頼性」(credibility)が揺らぐ、というのです。

要するに、ここで問われるのは、アメリカの核の傘の「信頼性」であり、ここで日本を不安にさせると、日本は核武装(!)へ突き進みたいという動機を持つことになるというのです。実際にドイツは50年代から60年代にかけて似たような状況になりましたし。

そして韓国もアメリカのこの日本への対応を見ている、ということで締めくくられております。

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以上6つのポイントにまとめてみました。

いかにも「リアリスト」らしい、非常に正直で身も蓋もない議論です。まさに「リアリスト」の「リアリスト」たる面目躍如といったところ。

このような議論は、例えば、皆さんもお馴染みの、"ソフト・パワー"のジョセフ・ナイ氏のような、リベラルのスパイスの入った学者の、歯にモノがつまったかのようなモゴモゴとした言い方と比べると、ミアシャイマー教授は、まったく遠慮容赦なく、国際政治の冷酷な視点から自身の思うところをズバズバと鋭く突いてくる点が正直で好感がもてます。特に、最後の尖閣での日中衝突におけるアメリカの動機についての分析などは、ほんとうに明快。

しかし、ここで本ブログをお読みの皆さんに注意して頂きたいのは、私が皆さんにたいして

「ミアシャイマー教授のような考え方をしろ!」

と言いたいわけではないということ。

確かに、ミアシャイマー教授のような考え方は魅力的かもしれませんが、あくまでもこれは、多くある国際政治に関する見識のうちの1つであり(もちろん私は個人的にはかなり説得力があるほうだとは思ってますが)、決してこれで全てを説明できるわけではない、ということなのです。

私が、これまで一貫して、このミアシャイマー教授の議論を何度もしつこく(笑)、繰り返しご紹介しているのは、そもそもこの議論、つまり、「リアリズム」の理論とは如何なるものなのか?ということを、まずは知ることで、われわれ日本人一人一人、そして、引いてはそのことが、日本政府が戦略的にものを考えるキッカケとなれば、と願っているからです。

私たち日本人にとって、ミアシャイマー教授の身も蓋もない議論は、かなり"刺激的"かもしれません。もちろん、その全てを信じる必要はありませんが、この「リアリズム」という"冷酷無比"なロジックが、国際政治の背後には否応なく潜んでいる・・・

本ブログをお読みの皆さんには、この点を強く意識しておいて頂きたいと感じております。


「「リアリズム」の理論とは何か?~ジョン・J・ミアシャイマー『大国政治の悲劇』から読み解く~」CD

by masa_the_man | 2013-12-15 00:00 | 日記 | Comments(1)