戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man

<   2013年 01月 ( 32 )   > この月の画像一覧

それでは続きです。

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●新しい部隊の構成は、昨秋のパネッタ国防長官のスピーチでほのめかされていた。

●彼は「われわれも任務はアメリカを守ること」であり、国防省は「この任務を遂行するために必要な政策と組織を配備することだ」と言っている。

●インタビューの中である国防省高官は、この「国家の任務」を遂行するチームは海外向けの任務を念頭においており、彼らが行ういかなる行動もアメリカ以外のネットワークへ向けられたもの(FBIのような国内向けの機関から協力要請の場合はのぞく)になると言っている。

●「この任務には、私企業や個人のネットワークに軍が侵入することは含まれません」とはその高官の言葉。彼が強調したのは軍が行動するのは本当に大きな被害が出ることが予測される場合のみであり、これは「誰かの銀行口座が他人にハイジャックされるのを防ぐような任務」ではないと付け加えている。

●今回のサイバーコマンド拡大計画は、国防費削減のタイミングと重なっていることからわかるとおり、これは軍の高官たちがサイーバー面での安全にいかに必要性を感じているかの現れだということも言えよう。

●何人かの米軍関係者はサイバーセキュリティ―部隊に人員を割く必要性を渋々ながら認めている。また、サイバーチームにたいして戦闘部隊の司令官がどこまでコントロールをできるのかについて意見の相違もある。

●たとえば「戦闘任務部隊」チームは、実際の通常兵器による戦闘が行われる際に敵の指揮系統を不能にする任務を実行することもあるだろう。

●また、中国やイランのような各地域に、チームが集中して任務に当たることも考えられる。

●このため、ある海軍の職員は「軍の予算関係者はトップの意向だということで、みんな必死に資金を絞り出そうしているんですよ」と証言している。

●ところが軍関係者の中には「サイバーコマンドがNSAとNSAの局長によって主導されているかぎり、本当にその任務を効果的に発揮できるかどうかは疑問だ」と言う人もいる。

●もちろんこの二つの機関が密接に協力して、海外のネットワークを監視してサイバー攻撃や破壊的なウィルスを開発しているのを見つけていくという面では効果的な部分もあるだろう。

●ところがNSAはあまりにもサイバーコマンドと密接な関係を持ちすぎているために(司令部はすぐ隣に位置しているし、最近までNSAのメールアドレスをもっていた職員もいるほど)、逆に軍のほうが独自の戦略ドクトリンをつくりあげることができるのか疑問に感じている職員もいる

●ここでの懸念は、NSAの考えのほうが支配的になるという点だ。なぜなら敵を妨害するよりも監視を容易にするツールの開発のほうが優先されることになるからだ。

●さらに説得力のある議論として挙げられるのは、サイバーコマンドが本当に「軍事組織」になるためには、この関係を断たなくてはならなくなる、というものだ。

●ところが元諜報系の職員によれば、実際はNSAが軍の職員を使ってほとんどの仕事をさせて、自局のサイバー作戦を肩代わりさせているというのだ。「これこそが軍側の狙いだ。NSAに派遣されている才能のある人材をサイバー攻撃に使いたいんですよ」

●二〇一四年の夏までサイバーコマンドの司令官を務めるよう要請されているアレクサンダー将軍は、自分が思い描いていたいくつかのビジョンを実現しつつある。

●彼はサイバーコマンドが独自の予算を獲得できるようにして、現在の特殊部隊のように、独自に人材を確保して部隊をコントロールできるようにしたがっていた。彼はまだその権限は手に入れていないが、それでも軍の高官たちは部隊の拡大には合意している。

●また彼は軍の高官たちから、サイバーコマンドを現在の「戦略コマンド」の下から独立させて独自の司令部として活動することについても支持を得ている

●ところがこうなると米議会から承認を得る必要が出てくるわけで、これが実現するのはまだ先の話であろう。

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以上
by masa_the_man | 2013-01-30 00:00 | 日記 | Comments(0)
今日の横浜北部はまたもや快晴でした。昼になるとだいぶ暖かさを感じますね。

明日から出張で大分に行くことになっております。人生初の大分は楽しみです。

さて、今日も記事の要約を。

米国防省(ペンタゴン)がサイバー部隊を現在の規模の五倍に増やすという記事です。これを書いた記者は日系人か旦那が日系人?

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ペンタゴンがサイバーセキュリティー部隊を拡大

By エレン・ナカシマ

●ペンタゴンは次の数年間でサイバーセキュリティー部隊を大規模に拡大していく計画を承認した。

●これはアメリカ国内の重要なコンピューターシステムを防衛するために、現在の部隊の規模を五倍以上にして、海外の敵に攻撃的な作戦を行う、というものだ。

●国防総省のサイバーコマンドのトップによって要求されたこの提案は、いままで専守防衛的だったインターネットの時代の戦闘部隊の組織的な役割を変化させようとする一連の動きの一つだ。

●サイバーコマンドは現在約900人の隊員によって構成されているが、これが軍と民間人を合わせた4900人にまで拡大すると見られている。

●もちろんこの拡大計画の詳細は明らかにされていないのだが、匿名の関係者によれば、この計画はペンタゴンの高官によって昨年暮れにサイバー空間における脅威が高まっているという認識があったことから決定されたという。

●彼らによれば、この脅威の認識の変化というのは、昨年夏のサウジアラビアの国営石油会社の三万台以上のコンピューターのデータがウィルスによってすべて消去された事件のように、いくつのも破壊的な攻撃が連続して発生したことによるという。

●この計画ではサイバーコマンドの下に、以下の三種類の部隊をつくることが提案されているという。

1「国家任務部隊」:これはアメリカの国家や経済面での安全保障上で決定的に重要であるとみなされている電源網や発電所、それにその他のインフラ関連施設などを守る任務を持つ。

2「戦闘任務部隊」:海外に展開している司令官たちの攻撃的な作戦を遂行するための計画を助ける任務をもつ。

3「サイバー防御部隊」:これは米国防省のもつコンピューターネットワークを守る任務をもつ。

●このコマンドは、すでに設立された三年前からこれらの任務をわずかながらこなしていたのだが、それでも今まではむしろ政策や法的な枠組みへの必要性や軍のネットワークの防御のほうが主な任務であった。

●現在の、そして過去の国防省の職員たちは、この計画によって任務はさらに達成されやすくなると述べている。

●「悪意を持ったアクターは存在しますし、テクノロジーの進化もあるため、私の見解では、敵が将来のある時点でアメリカに大規模なサイバー攻撃を仕掛けるのは確実だということです」とはウィリアム・リンの意見。

●彼は国防副長官をつとめ、ペンタゴンのサイバーセキュリティー戦略の作成に関わった経験をもつ。

●「唯一の問題は、われわれが敵の先制攻撃のインパクトをかわすための今回のような不可欠なステップを踏みだすのか、それともその攻撃が行われた後の委員会の報告書を読むはめになるのかのどちらかです」とは彼の言葉。

●各軍のトップの間では今回の計画について全般的な合意は形成されているのだが、問題は陸軍、海軍、海兵隊、そして空軍の間で、それほど多くのサイバーセキュリティー用の人材を確保して訓練できるのかどうかだ。

●さらにはもう一つの根本的な問題があり、これはサイバーコマンドが拡大すれば深刻になるのは確実だ。

●それはコマンドが、インテリジェンス系のほとんどのサポートしている巨大な電子諜報機関の「国家安全保障局」(NSA)とどのような連携を行って活動していくのかという点だ。

●ちなみに現在のサイバーコマンドのキース・アレクサンダー将軍は、アメリカの最先端をいくサイバー作戦の専門家を雇っているNSAの局長でもある。

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この続きは明日未明にアップします。
by masa_the_man | 2013-01-29 17:57 | 日記 | Comments(2)
<2月3日:オフ会開催>

寒さも厳しさを増す新年の週末の午後に、本ブログをご覧の知的関心の高いみなさんと一緒に、美味しい食事とお酒を片手に大いに語り合いませんか?

今回もご参加いただく方々に「ミニ・レクチャー」をお願いするつもりです。現在のところ、

①某SEによる「新聞データ集積ソフトの活用法

②本ブログ主による「今年の研究テーマ」について

という2つの興味深いテーマの発表が決定しております。お気軽に奮ってご参加下さい。

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■【日時】2013年2月3日(日)13:00~17:00(途中参加/退場可)

■【会場】東京都港区のマンションの一室(靴を脱いで上がります/禁煙)

■【集合場所と時間】参加確定の方に限り、後ほどメールでお知らせします。

■【参加費】一般男性:2500円 女性および学生:1500円 (現地で現金払い)

■【服装規定】スマートカジュアル
(ジーンズ・短パン・Tシャツ・スニーカーなどの「普段着」は禁止。ノーネクタイ可)


★★★必ず持参していただくもの★★★

本オフ会/懇親会はポトラックパーティー(持ち寄り形式のパーティー)です。
各自、「飲み物」と「食べ物」で合計2品を御用意下さいますようお願いします。


▼例として、

・ビール360ml缶×6本+寿司やたこ焼きなどお食事・お惣菜
・ワイン1本+チーズ・生ハムなどのおつまみやスナック菓子

など、自分が飲んだり食べたりしたいという基準で選択していただければと思います。

▼会場近辺には店が少ないので、事前に経由地・駅等でご準備下さるようお願いします。

▼なるべく内履き用のスリッパをご持参下さい。


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■【申し込み方法】■


以下の項目をご記入の上

seikousenryaku@gmail.com

宛てにメールにてお申込み下さい。記入していただくのは、

・メールタイトル:【2月3日オフ会参加希望】

・【氏名】
・【メールアドレス】
・【年齢】(サバ読み歓迎)
・【ご連絡先:電話番号】
・【ご職業】

などです。よろしくお願いします。

※当日の会場では本ブログ著者の本や新刊本『世界を変えたいなら一度武器を捨ててしまおう「戦略の階層」CDなどの特価販売なども行っております。

※私邸のマンションの一室を借りて行いますので、くれぐれも禁煙等のマナー遵守をお願いします。

※当日の緊急の連絡先については、お申し込みが確定された方々にだけ後ほどお知らせします。

初めての方も、ぜひお気軽にご参加下さい。みなさまのご応募をお待ちしております。

追伸:次回は3月10日に開催予定です。
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by masa_the_man | 2013-01-28 19:21 | ためになる情報 | Comments(2)
今日の横浜北部はまたもや快晴でした。しかし寒さは相変わらず。

さて、久々に記事の要約を。

原著者はあのジョセフ・“ソフトパワー”・ナイです。

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中国を「封じ込め」するのはやめておけ
by ジョセフ・ナイ

●最近の英エコノミストの記事では、東シナ海の領土紛争に触れつつ、東アジアの情勢は日中戦争が起こる方向に向かいつつあると書かれていた。

●これはかなり大げさな分析だが、これを受けてアメリカの専門家の中にも「中国を封じ込めるべきだ」と言う人があらわれてきた

●私は最近中国を訪れたが、その時に驚かされたのは、多くの中国の政府高官が「アメリカはすでに中国にたいする封じ込めを行っている」と信じ込んでいたことだ。

●その根拠はオバマ大統領のアジアへの「軸足」(ピボット)の移動という宣言にあるという。

●中国のある大学教授は「アジアへの軸足移動というのはアホな選択だ。そもそもアメリカは中国を怒らせるだけで、実際に中国を封じ込めることなどできない」と公式に発言している。

●たしかに「封じ込め」というのは過去のものであり、アメリカはこれを採用すべきではない。これは冷戦時代の初期にソ連の拡大に対抗して行われたものであり、その時には政治的だけでなく、経済的な関係も断絶することが含まれていた

●それを一番始めに主張したジョージ・ケナンの思惑とは裏腹に、これは拡大解釈されて「ドミノ効果」のような形でベトナム戦争の拡大へとつながっていってしまったのはご存知の通り。

●ところが中国はソ連の時のように世界覇権を狙ってはいないし、現在の米中関係はソ連の時とは違って、経済的結びつきや人的交流が盛んだ。

●私がクリントン政権で東アジア戦略を作成していた1994年に、われわれは「封じ込め」を二つの理由から採用しなかった

●一つ目は、中国を敵として扱ってしまったら、将来本当に敵になってしまうからだ。

●二つ目は、友人として扱えば、より友好的な将来が築けるからだ。

●それを受けて、われわれは「統合してヘッジする」という戦略をつくった。これはレーガン大統領の有名な「信頼せよ、しかし確認せよ」という言葉に似ている。

●そしてアメリカは、中国を世界貿易機関(WTO)の加盟を支援したし、製品を輸入して人も受け入れた。

●ところが1996年の日米安保改定で再確認されたのは、これが戦後の東アジアの安定した秩序の基盤であるということだ。

●さらにクリントン大統領は、中国の台頭に対抗するためにインドとの関係改善を推進した。

●この戦略はアメリカの両党にも支持されているものだ。ブッシュ大統領は引き続きインドとの関係改善を行ったし、同時に中国とも経済的な関係を深めている。

●オバマ政権のアジアにたいする「リバランシング」には、海軍力を太平洋に移動させる意味もあるが、同時に貿易関係、人権、そして外交面での働きかけをしていくことも含まれている。

●オバマ政権の安全保障アドバイザーであるドニロン氏は、去年の11月に「米中関係には協力と競争の両方の要素がある」と述べている。

●アジアは一枚岩ではないし、その内部の力関係がわれわれの戦略のカギを握るべきである。日本、インド、ベトナムなどは中国に支配されたいとは思っていないために、この地域におけるアメリカのプレゼンスを歓迎している。

●中国がうまく「ソフトパワー」を発展させて仲間を増やせないかぎり、彼らの軍事や経済の「ハードパワー」は近隣諸国を恐れさせ、まとまってバランシングを行おうとさせてしまうだけだ。

アメリカの軍事・経済面でのプレゼンスは、アジアのバランス・オブ・パワーを維持するのに役立つし、これは中国に協力へと向かわさせるものになる。

●2008年のリーマンショックは、中国のリーダーの中に「アメリカはこれから没落していくのだ」と勘違いさせ、これによって彼らはチャンスが来たと思ってしまい、これが日本や韓国、それにベトナムやフィリピンとの関係悪化につながったのだ。

●この判断は「中国を封じ込めることができるのは中国だけ」という勘違いを生み出してしまう。

●ところがアメリカのアジアにたいする「リバランシング」は攻撃的なものとしてはいけない。われわれはケナンの警告に耳をかたむけ、過剰な軍事化をやめて、中国に「包囲された!」と勘違いさせないようにすべきなのだ。

●それに世界の二大経済国は、気候変動や病気の世界的な流行の阻止、それにサイバーテロや核不拡散などの分野で協力して得る事が多いのだ。

●中国が中東のエネルギーにますます依存することは確実なので、われわれは船の自由な航行を保障する海洋規則などについても議論しなければならないし、彼らを太平洋における軍事演習に参加させることも検討すべきだ。

●また、アメリカは中国の国内のエネルギー事情の改善のためにシェールガスの開発などでも協力できるし、日中に2008年に締結された共同海底油田開発計画を復活させるよう促すべきだ。

●他にも、もし中国が条件を満たせば、彼らにTPPに参加することを認めると明言すべきであろう。

●「封じ込め」というのは中国の台頭に対処するツールとしては間違っている。

●パワーというのは一方が望む結果を手に入れるための能力のことだが、アメリカのパワーは相手に何かを押し付けようとする場合よりも、むしろその相手と協力した時に大きく発揮されることを忘れてはならない。

===

TPPに参加させてもいいと発言しているのは注目ですね。

この辺の経緯については私の翻訳であるレイン本の中に詳しく書いてあることは言うまでもありません。

そういえば彼の古典的名著であるコヘインとの共著が日本でようやく発売されましたね。

以上
by masa_the_man | 2013-01-27 19:21 | 日記 | Comments(7)
今日の横浜北部は寒いですがよく晴れました。

さて、今日もメモ代わりに資料を貼付け。

最初は今回のアルジェリアの事件に関してウラン関係のネタが気になったので、世界のウラン産出国の国のランキングとその割合を。

一位:カザフスタン(三〇%)
二位:カナダ(二〇%)
三位:オーストラリア(一六%)
四位:ナミビア(八%)
五位:ロシア(七%)
六位:ニジェール(六%)
七位:ウズベキスタン(五%)
八位:アメリカ(三%)
九位:ウクライナ(二%)
一〇位:中国(二%)
一一位:インド(一%)
一二位:南アフリカ(一%)
一三位:チェコ(一%)
一四位:ブラジル(一%)
一五位:マラウイ(一%以下)

次にシェールガスの「技術的回収可能資源量」と、天然ガスの「原資埋蔵量」
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元ネタは私が現在翻訳中の資源に関する本です。タイトルの発表については今しばらくお待ち下さい。あと一章で完成しますので・・・
by masa_the_man | 2013-01-26 21:59 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部はよく晴れましたが、風が吹いててけっこう寒かったですね。

さて、数日前のエントリーで紹介した安倍首相の「安全保障ダイアモンド」ですが、国内メディアではサンケイと東京新聞、そしてなぜかアサヒ芸能(!)が報じていたらしいので、とりあえずここでは東京新聞の記事の中にあった識者の意見をメモ代わりにまとめておきます。

以下は新聞記事からの抜き書き。

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●立命館大学の宮家邦彦客員教授:「日本は米国、インド、豪州と民主主義の価値観を共有している。中国に尻込みしない民主主義国家をつなぎ、太平洋での自己主張が強まった中国に対し、現状の海洋秩序を守らせようとしている。(自由と繁栄の弧との違いは)戦略の切り口が海か、陸かの違いだ。自由と繁栄の弧が唱えられた当時は、日本がテロ対策をめぐり、イラクやアフガニスタンを支援し、ユーラシア大陸の東西を結ぶ価値観外交に重点が置かれていた。今は中国の海洋進出が大きな問題で、海を意識した構想を立てなければならなくなった」

●東京財団の渡部恒雄上席研究員は「民主主義の価値観を共有しない、と言われることは中国からすればいやなこと。首相は、ダイヤモンド構想の方針を示して中国に圧力を加え、自由主義国が海洋秩序を維持する枠組みに加わらざるを得なくさせる作戦だろう。そうすると、中国は尖閣諸島をめぐる行動も制限されるようになる」

●双日総合研究所の吉崎達彦副所長:「海洋国家である日本の価値感に裏打ちされたものの見方。セキュリティー・ダイヤモンドという言葉も斬新だし、コンセプトで闘うとの発想は今までの日本にはなかった。首相の発言としてはやや軽い印象があるが、政治家・安倍晋三個人の発言なら非常に面白い・・・日本も世論戦でカウンターパンチを出せるんだと、中国に意識させることができる

佐藤優・元外務省主任分析官は「ロシアは静観するだろう。しかし、(中国を牽制する意味で)腹の底では歓迎するはずだ」との見通しを示した。

●岐阜女子大南アジア研究センター、福永正明センター長補佐:「『日印の関係が、日米関係を超えるわけがない』というのがインドの一般的な考え方。インドからすれば、日米を基軸としたものよりも東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係や自由を中心とした別の枠組みを考えていくだろう。日米同盟の強化や対中政策のためにインドを犠牲にしようとしているのでは、と考えている識者もいる」

●慶応大学の渡辺靖教授:「構想自体は悪くないアイデア、だが日中関係は今、非常に危険な領域に入っている。構想は、『中国にとって脅威になる。拡張路線を進めなければならない』との口実を与えかねず、逆効果になる可能性がある。並行して中国政府の中枢にパイプをつくるなど地道な努力の積み重ねによって、関係改善を図るべきだ。いざという時に落としどころを見つけるのは政治家同士のコミュニケーションなのに、それができていない」

●外交評論家の孫崎亨氏:「インドの中国との貿易量は日本の何倍にも当たり、国の重要度は中国の方がはるかに上。現実的に考えれば、できるとは思えない。日米は価値が共通だとか、中国と連携できるわけがないと主張するが、それは米国の軍産複合体が使うロジック。米国は自国のカネを使わずに、日本などに負担させたいだけのことだ」

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私としてはどちらかというと今回の大戦略は「悲観的なもの」という立場。逆にハッタリを効かせていかないと埋没する、という危機感の現れだと思っております。

それにしても構想はいかにも地政学的。やっぱり大戦略と地理というのは切り離せませんから。
by masa_the_man | 2013-01-25 17:37 | 日記 | Comments(7)
今日の横浜北部は、朝から曇っております。相変わらず寒いですな。来週からもっと寒くなるらしいですが。

さて、昨日のエントリーでは、進化の過程から見ると脳の構造が「古い脳」と「新しい脳」にわかれ、しかも「古い脳」はいまだに影響を与えつづけている、ということに簡単に触れましたが、今日はその続きを。

これがなぜ「地政学が死んだ」という人々の間違いを気付かせてくれるヒントになるのかというと、脳も、そして(地政学が含まれている)戦略学も、その発展の際に、実は同じように「古いもの」が残ったままになっていて、それがいまだに大きな影響を与えてつづけているからです。

たとえば戦略学で「古いもの」といえば、まさにランドパワーやシーパワーの理論であり、これに立脚しているのが地政学の理論。

これを脳の構造にたとえて考えると、地政学というのは、いわば「古い脳」の機能に注目して理論を組み立てている、と言えるわけです。

では「古い脳」の機能はどういうものかというと、自律神経のような無意識に行われている機能を統制していると言われますが、単純化していえば、人間の「情動」や「本能」を司っていると言えますね。

その反対に「新しい脳」の機能というのは、「理性」や「知性」、それに言語などの、いわば動物的というよりは人間特有の高等化された判断力を担っているとされております。

これを踏まえて考えると、単純に以下のような、

「古い脳」:情動、本能、リアリズム、地政学(ランドパワー/シーパワー)
「新しい脳」:理性、知性、リベラリズム、新しい地政学(スペースパワー/サイバーなど)

という区分けができるかと。

こういう風に考えると、先ほど述べた「地政学は“古い脳”の機能に注目して理論を組み立てている」ということがなんとなくおわかりいただけるかと。

その反対に、地政学を「時代遅れだ」と論じている人たちというのは、明らかにこの「新しい脳」の部分にだけ着目して理論を組み立てているような人々であることがわかります。

さらに問題なのは、彼らが人間の「新しい脳」が「古い脳」から発展しことや、さらには「古い脳」の影響をまだ受けていること、つまり脳は一体であるということを(意図的かどうかはわかりませんが)全く考慮しないで議論をしていることでしょうか。

これは彼らが「古い脳」の働きを認めたがっていないとも言えますし、sdiさんの言葉を借りれば、「“古い脳”を全否定する口実として“新しい脳”を使っている」とも言えます。

戦略論も脳の発展と同じように、陸からはじまってサイバーまで進化したわけですが(以下の図を参照)、古い理論を否定したい人々というのは、「古い」ランドパワーとシーパワーの理論から出来上がっている地政学のような理論は「もう現代の状況には当てはまらない!」と主張するわけです。

===“パワー”の発展の概略図===

サイバーパワー(情報域)

スペースパワー(宇宙)

エアパワー(空)

シーパワー(海)

ランドパワー(陸)

===

ところが「古い脳」が残っていて、人間の行動にいまだに大きな影響を与えていることからもわかるように、「古い」地政学は、その根本的なところでは有効性を全く失っていないわけだから困ったもの。

ようするにいくらサイバーが発展したとしても、古典的なランドパワーやシーパワーの重要性はまだ残っていて、人類が陸上に住み、そしてその産業が海運に依存しつづけている限り、地政学は決して消滅することはないんですね。

これはトフラー夫妻が「第三の波」と言ったところで、それでも「第一の波」の農業を生業として生きている人が日本にもいることを考えれば当然です。

私が翻訳したワイリーは、自身の構築した総合戦略論の「第四の原則」として、「戦争における究極の決定権はその場に立ち、銃を持っている兵士が持つ」ということを述べておりますが、これは戦略論において最も古いとされるランドパワーの重要性を強調しているわけです。

偶然かもしれませんが、『大国政治の悲劇』を書いたミアシャイマーも、ランドパワーの優越性を基礎にして、独自のパワー論による国際関係の理論を構築しております。

どちらかといえば「古い脳」の陣営に属する、リアリズム系の理論一般ににも全く同じことが言えます。

人間にリアリズムの理論が強調する「情動」や「本能」というものがある限り、いくら高度に発展した理性的な「リベラル」な社会であっても、リアリズム的な状況、リアリズムによって説明できる状況というのは、条件さえ合えばいくらでも発生してくるわけです。

世界は「新しい脳」だけで回っていると勘違いしていたリベラルなわれわれが、リアリスト的な状況を目の当たりにしてしまった例の一つが、今回のアルジェリアの事件なのかと。

最近は人間の合理性よりも、むしろ非合理的かつ「情動」的な面を強調した「行動経済学」のような分野が注目されつつあるのも、このような「新しい脳」だけに注目していたわれわれの間違いを気付かせてくれる一つのトレンドなのかもしれません。

人間は、いくら理性的かつ社会的に振る舞っていたとしても、その底には情動的かつ野性的な面を含んでいるわけです。ここから目をそらしてはいけないかと。

われわれはこの人間の二面性、複雑性、原始性というものを忘れてはならないわけで、地政学の理論が死んでいないという理由も、まさにこの点から説明できるわけなのです。
by masa_the_man | 2013-01-24 05:00 | 日記 | Comments(9)
今日の横浜北部は朝から快晴です。今夜は都内で勉強会を二カ所「はしご」する予定です。

さて、アルジェリアでの事件に関連して、地政学が死んでいない理由について少し。

カナダ時代に地政学を勉強しはじめてから何度も聞いたのが「地政学は死んだ」という、ニーチェみたいな死亡宣告。

実は私の指導教官も同じような批判を受けて、何度か他の学者と論争をしているのですが、いつも「地政学は死んだ」宣言というのは説得力に欠けるなぁというのが私の正直な感想。

最近でも日本の某サイトで「エアパワーの登場で地政学の理論はすでに無意味になっているという」似たような議論がされていたようですが、これもずいぶん的外れ。

なぜこうなのかと自分でも色々と考えたことがあるんですが、最近この理由がわかってきました。

そのヒントは、戦略学におけるパワーの議論にありました。

ご存知の通り、戦略学の議論というのは、まずは陸上戦の理論(ジョミニやクラウゼヴィッツなど)から始まりまして、次にマハンやコーベットがシーパワー(海軍力)の理論を形成し、そこからドゥーエやミッチェル、それにセヴァルスキ―などがエアパワー(空軍力)、ラプトンやドールマンがスペースパワー(宇宙軍力?)の理論、そしてリビッキーやアキーラ&ロンフェルトなどがサイバーパワーについての理論を提唱しており、このような形で段々と順を追って発展してきたことがよくわかります。

未来学者のトフラー夫妻などが唱えていたものも一緒でして、彼らの場合は「第一の波」(農業)、第二の波(工業)、そして第三の波(情報)という概念をつかって、産業や戦争の様相の変化について論じております。

ところがわれわれ、というか、とくに「地政学が死んだ」と考えてしまう人々が犯してしまう最大の間違いは、このような新しい戦略理論が出てくるたびに「古い理論が全く意味をなさなくなってしまった」と思い込んでしまうこと。これは大きな勘違い。

そしてこの勘違いを理解するための大きなヒントになるのが、私は人間の脳の構造だと考えております。

人間の脳というのは、大きくわけると情動や自律神経などを司る、脳幹や海馬、扁桃体などを含む「古い脳」の部分と、理性、高度な思考や言語などを司る、大脳皮質などの「新しい脳」の部分に分類できるわけです。

この辺の知識はみなさんにも一般常識としてなんとなくおわかりいただけるかと。

そしてここで私が重要だと考えるのは、爬虫類の脳ともよばれる「古い脳」がまず先にあって、そこから人類が進化するにしたがって「新しい脳」が段々とできてきたという事実。
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さらに追い打ちをかけるように重要なのは、ここで「古い脳」が残っていて、いまだに人間の行動に大きな影響を与え続けているという事実。

いいかえれば、脳というのは進化した人間の特徴をつくっている「新しい脳」の部分を備えていながらも、爬虫類時代の「古い脳」の影響から逃れられていないということなのです。

そしてはここから見えるのは「地政学が死んだ」という的外れな批判と同じ構造です。

時間がないので今日はここまで。明日はこの辺の話についてはもう少し掘り下げて考えてみたいかと。
by masa_the_man | 2013-01-23 10:13 | 日記 | Comments(6)
今日の横浜北部は朝からシトシト雨が。路面に残っている雪もこれで溶けるか。

さて、お知らせを二つ。

明日開催される二つのシンポジウム/例会をについてのご案内です。私は両方とも「はしご」する予定です(笑

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「日本のリーダーシップ―安全保障政策の転機を作る―」

皆様、新年おめでとうございます。

本年が日本にとって、また皆様にとりまして希望が膨らんで行く年となりますよう祈念申し上げます。                                      
私どもNPO国際地政学研究所は、新たな時代の地政学概念と時代精神の形成を目指して精進してまいります。変わらぬご支援ご教導をお願い申し上げます。ここに、2013年第01回IGIJワークショップをご案内申し上げ、新年のスタートを切らせて頂きます。

1 日時:2013年1月23日(水)1730開場・1800開始・2045終了

2 場所:私学会館アルカディア市ヶ谷(JR市ヶ谷から靖国方向徒歩3分左)

3 アジェンダ:「日本のリーダーシップ―安全保障政策の転機を作る―」

多数国家が巻き込まれる国際社会の騒擾、悩ましく深刻な因縁関係国のパワーポリティックス、主権や国益・国民の安全への実力行使を伴う侵害、後を絶たぬ天災・人災による生命・財産の犠牲と損壊、安全保障・危機管理を問う事案の発生を危惧し続けた「3.11東日本大震災」以降の日本でした。その間、日本においては、準備・対処・始末に関わる不備欠落が問われて参りました。別けても、国民の生命財産の安全と犠牲の局限を保障するリーダーシップの存在が「霧の中」でした。当然のことですが、国民の不安が信頼に転換することにはなりませんでした。そして世論は、新たなリーダーシップに期待して国政選挙に臨みました。

政権、政党の公約がどのように果たされていくのでしょうか。この3年余は「マニフェスト」というキリスト教的啓示に似せた「ポピュリズム」に国民が愚弄されました。まさに新たな体制は、政策、政治の「本質」と、政府という国家機関の「役割」を問い直しながら国家の経営に臨む使命を与えられています。

近代国民国家建設を目指し大国入りを果たした明治期の富国強兵体制、国の安全保障を米国に託して敗戦復興から経済大国に成長した昭和戦後レジームは、エポックメイキングな日本のアイデンティティ形成の象徴的時代でした。それらに共通した政策は「欧米化」であります。

伝統的国家運営は、「欧米化」、「欧米先進国並み」が目標でありました。それは、地政学的に、通信・運搬手段の進歩が、地勢的距離を地政学的に短縮して、遠くの先進国「欧米に学ぶ」ことを可能にした結果でありました。それよりも、日本の時代精神が、坂本龍馬をはじめとする明治の賢人たちの地政戦略的視野と進取積極から出ていたことが幸いしていました。賢人たちは、実に素晴らしい態度で、公けに尽くす実践的勉学と探求に倦むことを知りませんでした。そこに優れたリーダーシップが創生されたのであります。

昭和の大国化も、吉田茂の流れをくむ新たな日本創成を、反対を制御しつつ行った見事な政治的リーダーシップの賜物でした。そこには「戦後レジーム形成」の戦略的価値を認めたリーダーたちの知恵が存在していました。しかし、冷戦を契機として地政学的に国際環境が変化する中で、時流を読み切れない亜流のリーダーシップが政治を党利党略の場に転嫁していきました。「戦後レジームからの脱却」、「自由と繁栄の弧」、「新たな国際システム」、「新たな戦争の本質と軍事力の役割」といった時代精神を読み解けない政界のゲームが日本の政治のアイデンティティに化したのです。

そこで日本を支えたのは、世界に冠たる「優れた官僚システム」でありました。その官僚システムの強化がどのような意味を持っているのか、多くの政治家、国民に理解されないまま恥部だけをえぐられました。単に「政治家の言うことを聴かない官僚」、「頻繁に入れ替わる愚かな大臣を腹の底で小馬鹿にする官僚」を嫌って「政治優先」としたことが何をもたらしたのでしょうか。日本のポピュリズムは常に、しかも、古代から役人に厳しいお侍さんをヒーローとして来ました。それは、講談の世界であって、真は、江戸250年の役人システムが明治官僚機構構築のベースになったわけです。そこでは公務員(役人)大削減がありました。無血のレジーム・チェンジであります。

さて、この度の選挙は何をもたらすのでしょうか。国内外に信頼される国家、国際社会において軍事力だけではない、優れた国家的知財やリーダーシップをもって国力を構成し、一目置かれる、日本が確かな国家となって行く最も大切なポイントは、国民の知的な「政治監視体制の構築」ではないでしょうか。その国民に選抜された政治家が愚かであっていいはずがありません。国民が育てた優れた政治家に託せる時代形成のためにも、本ワークショップが寄与できることを願い、新年に固めるIGIJの志としたいと思います。

このような気持ちを共有できる多数の皆様を交えて本ワークショップの輪を広げてまいりたいと願っております。皆様とのコラボレーションが一層進むよう努めて参ります。


4 プログラム:

1800-1810 趣旨説明―栁澤協二 IGIJ副理事長

1810-1930 プレゼンテーション & パネル質疑(各15分)

齋藤 勁   内閣官房副長官
鈴木 崇弘  城西国際大学教授
飯塚 恵子  読売新聞編集委員

ディスカッサント
佐藤 丙午  拓植大海外事情研究所教授
道下 徳成  政策研究大学院大学准教授
渡邊 隆   みずほ銀行顧問・元陸将

1930-1940 休憩

1940-2030 討論 パネル & フロア

2030-2035 総括―栁澤協二 IGIJ副理事長

5その他:
・勝手ながら資料・2012-10-IGIJ-WS記録・資料・飲料代として2,000円を頂戴致します。
出席のご回答:電話03-5312-5243 or email: hayashi@igij.orgまで1月23(水)1600時締切

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日本クラウゼヴィッツ学会例会

新春1月度の定例研究会は1年ぶりで登場する海洋政策研究財団研究員の関根大助氏から「コーベットの戦略」と題してお話を聞きます。

クラウゼヴィッツ理論の海洋版といわれるコーベットの考え方について、どのような切り口で読み解いて頂けるか注目しましょう。皆さん是非お集まりください。

1 1月度定例研究会のお知らせ
  1)日時:1月23日(水)18:30~20:30  
 2)場所:日本学士会館 310号室  最寄駅:地下鉄神保町駅下車3分
   (東京メトロ半蔵門線、都営三田線・新宿線)
       千代田区神田錦町3-2-28 TEL:03‐3292‐5936
3) 講師:関根大助氏 (海洋政策研究財団研究員)

4) テーマ:「コーベットの戦略」

5)参加費: 会員 1,500円、非会員 2,000円 

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以上です。
by masa_the_man | 2013-01-22 10:03 | 日記 | Comments(4)
今日の横浜北部はまだ晴れておりますが、天気予報だと今夜から雨/雪だとか。

さて、クリストファー・レインの『幻想の平和』を参考にして、またアメリカの世界観について。

例のごとく第六章の重要なエッセンスの部分だけを出血大サービスで以下に要約としてまとめておきます。

もちろんもっと詳しく知りたいかたはぜひご購入のほどを!

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●リベラル派のイデオロギー(ウィルソン主義)では、国際的に経済がオープン(門戸開放)されている状態であることが国際政治において「自然」な状態であり、これが平和と安定をもたらすものだと示唆されている。

●ところがこれは現実からはあまりにかけ離れている。なぜか。

「国際政治で経済的にオープンな状態」というのは、そもそもある覇権国が意識的に創設した場合にのみに発生するものだからだ。

●オープンな経済に必要なのは以下の四つ。

①地政学的動揺のない国際政治の状態
②安定的な政府
③貿易ルートの安全確保
④周辺地帯へのアクセス(とその地域の安定)

●経済面での拡大というのは、まず政治面での安全度に左右される(ジョン・ギャラガー&ロナルド・ロビンソン)

●アメリカが一九四〇年以降にやってきたのはまさにこれだ。アメリカは軍事力を使いながら、経済面での門戸開放にとって安心できるような、安定的な秩序をつくってきたのだ。

●その反対にいえば、アメリカが海外にもつ経済的権益というのは、これを守ろうとしてアメリカの軍事力を引き寄せる、いわば磁石のような役割を果たして来たのだ。

アメリカの政策家たちにとって、経済面での門戸開放にたいする根本的な脅威というのは「政情不安」である。

●「もしわれわれ以外の国々が戦争の混乱に陥ってしまえば、世界の貿易は完全に中断されてしまう」とはフランクリン・ローズヴェルトの言葉。冷戦時代もそれ以降も、アメリカの政策家たちのこのような考え方には変わりはない。

●「政情不安というのは、人命とマーケットを破壊するものだ」(ウィリアム・コーエン)

●米軍が東アジアやヨーロッパにいるのは、ワシントン政府がこの二つの地域で新たな覇権国の出現を阻止するためではなく、むしろ地域の政情不安(とくに経済の閉鎖状態につながるような大国同士の争いの復活)を防ぐことによって、門戸開放を維持するためなのだ。

●さらにいえば、アメリカは地政学的な動揺が溢れ出し、それがコア(中核地域)の経済に悪影響を与えるのを防ぐために、周辺地帯(もしくはその近くの地域)において軍事力を行使しなければならなくなる。

●アメリカの政策家たちは、とくに「再国家化」(re-nationalization)から生まれる悪影響を憂慮しており、この考えは彼らの「アメリカの地域安定装置としての役割は、ヨーロッパと東アジアの主要国たちが対立しあうような状況を防ぐことにある」という考え方が反映されたものだ。

●アメリカの安全保障関係者たちの間では、「再国家化」という言葉は、アメリカのカギとなる同盟国(ドイツ、EU、日本、韓国)がワシントン政府の戦略的包囲網から解放されて、自律的な対外安全保障政策をつくりはじめる可能性のことを示している。

●つまり、ヨーロッパや東アジアに駐留する米軍は、「再国家化」につながる可能性のあるヨーロッパや東アジアにおける「安全保障の真空状態」を防ぐためのものなのだ。

●これをわかりやすい言葉でいいかえれば、アメリカの政策家たちは、カギとなる地域が自国の門戸開放政策の経済的利益に影響を与えるような「多極の不安定な状態」に陥ることを恐れているのだ。

「再国家化」というのは、アメリカの戦略家たちにとって「多極状態への逆行」を意味する言葉だ。

●彼らはそもそも多極状態が国際政治を不安定化するもの――したがって経済がオープンな状態にとって有害なもの――であり、ヨーロッパや東アジアにおけるアメリカの大戦略の目標は、あくまでも「多極化に反対すること」であって、「覇権を防ぐこと」ではないと信じている

●単純に言えば、アメリカの大戦略の核心にあるのは「同盟国たちを自分の足で立たせることよりも、アメリカが彼らを守ったほうが良い」ということだ。

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いかがでしょうか。彼らの複雑かつありがた迷惑(?)な世界観の一面を表しているのかと。

ここから感じられるのは、やはり動機としての「恐怖」なんでしょうね。銃規制に関する最近の議論でも何度も出てきますが、この「外敵の恐怖」という動機はアメリカの場合にかなり強いのかと。

しかもそれがリベラルなイデオロギーと結びついているから厄介である、ということも言えそうな。

この辺はニーバーが「アメリカ史のアイロニー」でも散々指摘していることですな。
by masa_the_man | 2013-01-21 07:00 | 日記 | Comments(2)