戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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今朝の横浜北部は雲が多めですがなんとか日が出ております。

さて、今日の記事もちょっとコアなもの。アメリカの「ユダヤ人問題」についての意見記事の要約です。

この辺については、なぜミアシャイマーが『イスラエルロビーとアメリカの対外政策』という本を書けたのかという事情にもつながってくる、非常に興味深いところです。

簡単にいえば、アメリカのユダヤ人も一枚岩じゃない、ということでしょうか。「ユダヤ人陰謀説」などありますが、この辺をもう少し理解しないといけないかと。

それと大きな違いは、やはり「世代」ですね。

著者はニューリパブリックの若手の元編集長で、テレビの討論などではけっこうレギュラー出演していた人です。下の記事のネタになったのは、最近彼が出版した以下のもの。

The Crisis of Zionism
by Peter Beinart
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===

アメリカの分裂したユダヤ人
by ピーター・ベイナート

●私の『シオニズムの危機』という本が出版された当日に、私はメリーランド大学で講演を行っていた。

●その講演の後の質疑応答の時間に、ある厳しい表情をしたユダヤ人の老人が私に質問してきた。

●その質問の内容は「ヨルダン川西岸地区はパレスチナ人によってそのほとんどが統治されていて、しかもイスラエル政府とは平和的に暮らす意思を持っていないにもかかわらず、なぜイスラエルがヨルダン川西岸地区を占領していることを批判できるのか」というものだった。

●それにたいする私の答えは、「たしかにパレスチナ人側にも責任があるが、イスラエル政府がヨルダン川西岸地区を含む地域にユダヤ人の移住を認めて助成金を出しているという事実そのものが、パレスチナ側の過激派たちを刺激している」というものだった。

●これを聞いたその老人は不服の意見を表して立ち上がり、その後に座って私を睨みつけていた。

●その次に質問したのは学生で、彼は私の講演を興味深く聞いたが、ユダヤ系アメリカ人として宗教組織と国家の分離を認めている立場から、そもそもなぜユダヤ人のための国家が必要なのか理解できない、と言ったのだ。

●私はその老人と学生に向かって、「ご両人は互いに話し合ったほうがいいですよ」と提案した。

●私自身は、世代的にこの二人のちょうど中間に位置している。つまり、私はその若い学生と同じように数度に渡る恐ろしい「中東戦争」をこの目で見て覚えているわけではないし、イスラエルが支配する前のヨルダン川西岸地区を知っているわけでもない。

●だがその老人と同じように、私は世界からユダヤ人たちがイスラエルに避難するために集まっていた様子をこの目で目撃しているのだ。

●私が覚えている最も古いイスラエルの風景は、ソ連の収容所から出てきたばかりのアナトリー・シャランスキ―が、ベングリオン空港に降り立った瞬間のイメージだ。

●よって、私の本で「ユダヤ人には自分たちの命と文化を守るための国家が必要だ、しかし同時に、イスラエル政府のヨルダン川西岸地区の占拠状態は、国家の根本と矛盾しているので心配だ」と論じているのは全く不思議なことではないのだ。

●ところがアメリカのユダヤ人コミュニティーの中には、このような主張を行う私のことを「左翼だ」と決めつける人々がいる。

●私はこの意見に反対だ。私は自分自身のことをアメリカのユダヤ人の中で減少しつつある「中道派」だと認識している。

●なぜなら私はイスラエルという国家の存続を応援しつつも、現在の政府のやり方に非常に大きな不満を持っているからだ。

●たとえば私のような立場に対する批判者は、まさに講演の時の老人のように、宗教や性別や民族によって差別されないという憲法を持っているのに、40年間もパレスチナ人にろくな権利を与えないで支配している点に矛盾を感じない人々なのだ。

●ところがアメリカの若いユダヤ人の中には、段々と「ユダヤ人国家」というアイディアそのものに疑問を感じはじめている集団が増えてきている。

●アメリカのある調査によれば、アメリカの65歳以上のユダヤ人たちの80%以上が「ユダヤ人国家」というアイディアに賛成であるのにたいし、35歳以下だとその割合が50%ちょっとに落ちてしまうのだ。

●実は「シオニズム」(ユダヤ人国家建設運動)というのはアメリカのユダヤ人コミュニティーでは全員が賛成していたわけではなく、イスラエルが建国される前、さらには1967年以前までは、アメリカのユダヤ人たちのかなりの数の人々は、ユダヤ人国家というアイディアそのものに疑問をもっていたのだ。

●私がおそれるのは、このままの状態が続けば、数年以内に以前のような分裂状態が、アメリカのユダヤ人の中でも復活するのではないか、ということだ。

●つまりヨルダン川西岸地区の占領がつづけば、アメリカのユダヤ人たちは民主的でない「ユダヤ人国家」か、パレスチナ人たちを取りこんでユダヤ人の特徴を失った完全に民主的な国家のどちらかを選ばなければならなくなる、ということだ。

●こうなると、アメリカのユダヤ人の年配者たちは前者、そして多くの若者たちは後者を選ぶようになってしまい、世代の分裂が起こってしまうことになる。

●イスラエルを民主的なユダヤ人国家にしようとする戦いと、アメリカのユダヤ人の中でシオニズムのコンセンサスを維持するための戦いは、同じコインの表裏である。

●この本が出版されてから、私はアメリカのユダヤ人コミュニティーの中で、過激で集団を分断させるような働きをしている人間だと非難されることが多くなった。ところがこのような非難は私を非常にがっかりさせるものだ。

●私はこのメリーランド大学での質問を何度もされたおかげで、パレスチナ国家の建設といういわゆる「二国解決法」が失敗したらユダヤ人の間に本物の分裂がやってくることをますます確信するようになったのだ。

====

アメリカとイスラエルの政治が直結している、という前提で書かれている点が独特かと。
by masa_the_man | 2012-04-20 09:21 | 日記 | Comments(0)
今日の横浜北部は少し日が出たのですが、夕方からけっこう冷え込みました。

ブログ更新です。今回は新刊本である

『なぜリーダーはウソをつくのか』

の具体的な内容について解説した文をアップしました。これだけでかなりの要約になっていると思うので、時間がない人はここを読むだけでもOK?!

ということで今週のメルマガの「なぜリーダーはウソをつくのか(その2)」をぜひお読み下さい!
by masa_the_man | 2012-04-19 23:32 | 日記 | Comments(2)

見本到着

by masa_the_man | 2012-04-19 21:44 | 日記 | Comments(0)
今日の横浜北部は昼まで日が照ってましたが、午後からやはり曇ってきました。しかし上着が不要になりましたねぇ。

さて、久しぶりに「アメリカ衰退論」についての議論を。

この著者は最近話題の『帝国の亡霊』という本を書いた、アフリカ系(二世)のイギリスの現役の国会議員という珍しい立場の人です。

その本は以下の通りです。

Ghosts of Empire: Britain's Legacies in the Modern World
by Kwasi Kwarteng

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おそらくこの話題の本の中の議論をもとにした記事でしょうが、論より証拠、まずはこの意見記事を読んでみて下さい。

===

大英帝国の終焉とアメリカ帝国の終わり

●「アラブの春」やイランの核武装への動き、それにシリアで続く内戦などの最近の出来事が示しているのは、アメリカの「世界の警察官」としての役割が(終わったわけではないが)弱まっている、ということだ。

●その証拠に、オバマ大統領自身は去年のスピーチで「アメリカは、世界の抑圧が行われている場所の全てに介入できるというわけではない」と認めている。

●私に言わせれば、現在のアメリカの立場はイギリスが1945年に直面していた状況とそっくりだ。

●過剰債務がありながら、国民保険のような社会システムを確立しようと躍起になっているため、帝国を維持することができなくなっていた点だ。

●一世代前に世界の海を支配していたイギリスはこの時にはすでに疲弊しており、帝国を維持しようという気も失せていたのだが、現在のアメリカもまさにそのような自信を失っているのだ。

●アメリカ人は常に自分たちのグローバル覇権については、あまりハッキリした考えは持っていなかったのである。

●現在のアメリカの撤退への動きは、伝統的な孤立主義の考え方が動機になっているのではなく、むしろ現実的な必要に迫られてのものだ。

●第二次大戦後のイギリスのように、アメリカも自身の「帝国」(そもそもやる気もなかったのにかかわらず)を維持するだけの金融面での力を持っていないのであり、

●赤字と借金は、他のいかなるイデオロギーよりも「帝国の夢」を覚めさせるのに効果的だったのだ。

●私の両親はイギリスの国力が衰退していた時期にアフリカの黄金海岸(現在はガーナ)で育ち、しかも私は現在イギリスの国会議員の一員であるので、この帝国の衰退という現象については一言いえる資格があると言えるだろう。

●ガーナ建国は1957年であり、これはスエズ危機の翌年のことなのだ。

●第二次大戦は大英帝国の終焉であったと解釈されているように、将来の歴史家たちは、2008年の金融危機がアメリカ帝国の終焉の始まりだと見るようになるかもしれない。

●しかも米軍の撤退(とくに中東からのもの)は、世界全体を不安定かつ不確実にする可能性があるのだ。

●もちろんアメリカは「歴史の終わり」という矛盾したタイトルの記事が書かれた1989年当時より、その国力がはるかに小さくなっている。

●アメリカはそもそもそれほど帝国に熱心でなかったと見られていた。たしかに日本やイギリスやドイツ(そして最近にはサウジアラビア)には基地をもっているが、それでも海外の土地を直接的かつ永続的に統治しようとはしておらず、むしろそれは「ソフト帝国主義」と呼べるようなものだった。

●冷戦期を通じてアメリカは自国のことを歴史上に見られなかった「自由世界のリーダー」という道徳面での大胆な意識を持っており、直接的な統治ではなく、同盟国に軍事力をたより、社会・経済面で支援をするようなことを行っていた。

●アメリカがイラクやアフガニスタンやリビアのように、軍事的に他国を直接統治したのはここ10年間だけだ。

●もちろん「世界の警察官」というのは「帝国」でなければ務まらないものだが、アメリカ国民自身はこれをあまり認めようとはしていない。アメリカ人の心の中には、「自分たちはイギリスのような帝国ではない」という嫌悪感があるのだ。

●ところがネオコンたちはアメリカに「イギリスのような帝国主義を実行しろ!」と言い続けてきたのである。

●たしかに建国以来のアメリカの対外政策にあるのは、「複雑な国際政治に関わり合いたくない」という意識だ。

●アメリカの歴史の中で最もよく引用される警句は、ジョージ・ワシントン初代大統領の「外国でのやっかいに巻き込まれるな」というものだ。実際のワシントンの退任演説にはこの言葉はまったく出てこないのだが、それでも彼の後輩たちはこの警句に注意を払っていた。

●たとえばウィルソン大統領は民族自決を訴え、ヴェトナム戦争はアメリカ国民に自分たちの国力には限界があることを教えたのだ。

●ところが今日のネオコンたちは、国民に非常に魅力的に聞こえる主張をくり返している。「歴史の終わり」というメッセージはリベラルな資本主義と民主制の圧倒的な存在をたたえた23年前のものなのだが、そこから時代はオバマ大統領によるアメリカの能力の限界を認める弱々しい宣言までつながっているのだ。

●アメリカの帝国主義者的な行動に終止符を打ったのは金融危機と負債であり、たとえ経済がこれから復活したとしても再び2003年のイラク侵攻のような行動をするとは思えない。

●大英帝国の歴史からわかるのは、いかなる形の帝国主義も間違ったものである、ということだ。

●第一に、帝国には莫大なコストがかかる。しかも中国やその他の新興国の勃興は、アメリカが彼らと比べて相対的に国力を落としているということを意味するのだ。

●そしてアメリカの国力はたしかに1945年や1989年の頃と比べれば低い。この事実だけで、アメリカはこれから多極的な行動しかできなくなることがわかるのだ。

●第二に、イギリスが思い知らされたように、帝国の維持のためには多くの計算やあまりにも多くの知識(と経験も)が必要とされるのだ。

●アメリカはこのような教訓を、イラクとアフガニスタンで得たはずである。

====

ハーヴァード大学教授のファーガソンとはちょっと違った角度からアメリカの帝国(の終わり)を論じているという意味で非常に興味深いかと。

ただし当時のイギリスと現在のアメリカがどこまで比較できるのかについては少々議論の余地はありますが・・・。
by masa_the_man | 2012-04-18 21:57 | 日記 | Comments(1)
今日の横浜北部は昼まで暑かったのですが、午後から雷雨とにわか雨で気温も下がりました。

さて、昨日のエントリーの補足事項を。

鋭い方はなんとなくおわかりかもしれませんが、昨日の本は、基本的に四つの「季節」の循環が時代や歴史にも当てはまるということを主張しておりまして、各年代にも名前がそれぞれついております。

まず昨日のエントリーでは

芸術家が生まれる:1929~1946年
預言者が生まれる:1946〜1964年
遊牧民が生まれる:1964〜1984年
英雄が生まれる:1984〜2005年
芸術家が生まれる:2005〜2026年

という原著者が勝手につけた世代の名前を挙げましたが、これらに「季節」を加え、それぞれその時代を主導する世代を加えますと、それぞれ以下のように、

冬:「危機」の時代(遊牧民が主導):1929~1946年
春:「至福」の時代(英雄が主導):1946~1964年
夏:「覚醒」の時代(芸術家が主導):1964~1984年
秋:「衰退」の時代(預言者が主導):1984~2005年
冬:「危機」の時代(遊牧民が主導):2005~2026年
春:「至福」の時代(英雄が主導):2026~2057年?

ということになるそうです。

そしてそれぞれの世代が生まれてから二世代後、つまり彼らが四〇歳くらいになってから社会全体をリードするようになり、時代の雰囲気を作ったり、そこで果たすべき役割を担って行く、ということです。

では現在の時代はどのようになっているのかというと、今年は2012年ですので、すでに時代的には「危機」、つまり「冬」の時代に入っております

そしてこの時代を行きている人々の年代構成がどのようになっているかというと、以下のように、

芸術家(80才〜100才)→「戦前・戦中世代」
預言者(60才~80才)→「戦後の団塊世代」
遊牧民(40才~60才)→「団塊ジュニア世代」
英雄(20才~40才)→「平成生まれのゆとり世代」
芸術家(0~20才)→「新世紀生まれ」

で、2005年から主に40代という社会的に最も重要な年代を構成しはじめたのが、「覚醒」という「夏」の時代に生まれた「遊牧民」たちになります。

この「遊牧民」には、本ブログ著者である私自身も含まれます。

すでに述べたように、各世代にはそれぞれ特徴がありまして、「遊牧民」たちは既存の社会制度を壊して行く役割があるそうです。

しかも彼らは既存の社会のセーフティーネット(たとえば年金など)を全く信用しなくなりますし、その上の世代にとって有益だったものが、自分の世代では効果がなくなるということを自覚しております。

この「遊牧民」を代表する存在といえば、Wikiリークスのジュリアン・アサンジ、ホリエモン、そして橋下市長となります。

そしてこの「遊牧民」たちが活躍しはじめますと、社会的には「生き残り主義」や「リアリズム」、それに「冷酷主義」などが出てくると指摘されております。これは冗談ではなくて、実際に本書の291ページに書いてあります。

本ブログは「リアリズム」を提唱しておりますが、こんなところで自分のやろうとしていることの正しさ(?)が認められてしまうとは複雑な気持ちです(苦笑
by masa_the_man | 2012-04-17 23:22 | おススメの本 | Comments(7)
今日の横浜北部は午前中は晴れておりましたが、午後から雲が増えてきました。

さて、久しぶりに私自身の書評です。

いつもの本とはちょっと志向を変えまして、なんといいますか、いわゆる「歴史循環論」の本です。

The Fourth Turning: an American Prophecy
by William Strauss and Neil Howe
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内容ですが、歴史は循環するものだという観点からアメリカとイギリスの過去を振り返り、そこからおよそ20年前後で交代する「世代」ごとに区切り、それをもとにこれからの未来を予測する、というものです。

この「世代」ごとの区切りとその説明がけっこう体系化されており、歴史の例も豊富(旧約聖書の中の世代交代まである)に使って理論化しております。

具体的にいえば、人間の社会というのは「至福」→「覚醒」→「衰退」→「危機」という四つの順でサイクルをくり返しており、それぞれの時代で活躍する世代がその時代の空気を作る、というもの。

ではそれに対応する世代はどういう人々かというと、「英雄」→「芸術家」→「預言者」→「遊牧民」というもの。

さらには各世代の生まれた年代も当てはめられており、それぞれを具体的に言うと、

芸術家:1929~1946年
預言者:1946〜1964年
遊牧民:1964〜1984年
英雄:1984〜2005年
芸術家:2005〜2026年

となります。

おそらく本ブログを見ているのは、主に戦後生まれの「預言者」から、平成生まれの「英雄」という世代が中心でしょうか。

ところが本書によれば、この各世代が40から60代になって「社会の中心を担う時期」というが極めて重要でありまして、その時期は以下のように四つにわけられるわけです。

「危機」の時代:1929~1946年
「至福」の時代:1946~1964年
「覚醒」の時代:1964~1984年
「衰退」の時代:1984~2005年
「危機」の時代:2005~2026年

ここからわかるのは、現在は「危機」の時代でありまして、社会の中心を担うのは(本ブログ著者を含む)昭和の後半に生まれた「遊牧民」の世代。「遊牧民」とは、そのままズバリ「ノマド」のことです。

で、この「ノマド」が活躍する「危機」の時代なんですが、いままでの秩序がどんどん崩壊していき、社会もどんどんと暗くなり、大きな戦争まで起こるという暗示があります。

たしかに前回の「危機」の時代は、世界恐慌に始まって第二次大戦で終了したすさまじい時代。それまでの19世紀の秩序は完全に崩壊しました。

今回の「危機」の時代ですが、これはリーマンショックにはじまった経済危機によって暗示されております。ちなみに本書が発刊されたのは1997年(!)。

この本なんですが、前半で上記のようなサイクルの枠組みと理論が詳細に論じられた後に、アメリカの過去の三つの時代(危機、至福、覚醒、衰退)を説明しておりまして、最後の章で今後の未来を占っております。

そしてそこではなんと、アメリカの大都市でテロ攻撃が行われる、というシナリオも提示されております。もちろんこれは「911連続テロ事件」で実現しましたね。

本書に書かれていることを素直に信じれば、今後十年間はアメリカにとっても日本にとっても相当厳しい時代になり、大企業などがどんどん崩壊していき、個人がまさに遊牧民(ノマド)となって生き残っていく時代なのかなと感じます。

また、このノマド世代の中心にいる橋下大阪府知事が出てきた背景も、このような面からよく理解できるのかと。

もちろん本書のような米英の歴史を中心とした「歴史循環論」を信じるかどうかは別にして、このような国際環境・時代環境から見るという徹底的な「サードイメージ思考」というのは、われわれの思考の幅を広げてくれるという意味で必要なのでは。
by masa_the_man | 2012-04-16 15:31 | おススメの本 | Comments(2)
今日の上野はよく晴れております。

さて、テクノロジーと社会について、シンガポールの新聞の記者が面白いことを書いていたので要約します。

===

カーナビは使うな!――GPS機器はわれわれをダメにする

Byウィリアム・チョオン

●車に乗る人、ジャングルの中をハイキングをする人、そしてミサイルを正確に打ち込む軍など、GPS関連機器というのは現在の人間にとって欠かせないものになりつつある。

●たしかにGPSで動くカーナビというのは、とくに初めての土地に来た人にとって神からの贈り物というべきものであろう。行き先を入力すれば、そこまで正確に案内してくれるからだ。

●TomTomというサイトでは、映画「スターウォーズ」に出てくるヨーダの声で案内してくれるカーナビを売っているほどだ(「君は間違った道を選んだ・・・ダークサイドの方に」という声が出る)。

●ところがGPS関連機器にはまったく問題がないわけではない。

●今年(二〇一二年)の二月はじめに、アメリカの高速道路安全局は、ドライバーたちにたいして、カーナビのような機器を備えた車は運転の注意の妨げになるという警告を発表している。

●また、GPSは人間が古くから持っていた常識感覚を狂わせることがわかっている。

●たとえば二〇〇八年にある団体の旅行者たちが、何台かの車で大量に迷子になったという事件があったが、これはカーナビを信頼しすぎて舗装されていな道を進んでしまい、最終的に崖のそばで車が動かなくなってしまったというものだ。

●私も同じような経験をしたことがある。私は徴兵経験があるために方向感覚には自信があったのだが、親戚とニュージーランドを車三台で旅行中にカーナビを使ってしまい、舗装されていない道を案内されて迷子になってしまったことがある。

方向感覚というのは、人間のその他の「感覚」やスキルと同じように、使わなければ弱まって行くものなのだ。

●たとえば一九九〇年代にイギリスのタクシーの運転手について行われた調査では、ロンドンの複雑な道を覚えているかれらの脳の「海馬」と呼ばれる部位が、他の人々よりも大きくなっていることが判明している。

●この調査研究を行った神経科学者は、このタクシー運転手たちがカーナビを使い始めることを心配していた。なぜなら使い始めてしまうと脳神経的に「大きな影響を与えることになる」からだ。

●もちろんだからといって、私はGPS関連機器の使用をやめるべきだと言いたいわけではない。

●しかし私はそれでも「地図を使った時間のかかる、方向感覚を鍛える作業を続けるべきだ」と言いたいのである。

●ドイツのある心理学者によれば、人間にとって方向感覚に頼ってナビゲーションするためのスキルというのは、頭を使う複雑なプロセスなのだ。そしてこれを使っていないと、われわれはその感覚を失ってしまうことになり、それを取り戻すにはかなりの時間がかかるようになる、というのだ。

●さらに重要なのは、地図を使って目的まで行くという古いやり方は、実は創造性が重視される現代の社会経済状態にとって決定的に重要となる「抽象的な考え方」(abstract thinking)を身につけるのに最適の行為なのだ。

●地図の歴史学者であるアーサー・ロビンソンによれば、地図を読んで現地まで行くという行為には「現実を縮小して分析的な空間を進む」という意味で非常に「抽象的な考え方」を獲得するのに都合が良いという。

●これらはすべて何を意味しているのだろうか?

●その答えは、われわれの脳のためには、GPS関連機器の使用をやめて、旧来の地図を使うようなやりかたを続けるべきだ、ということだ。

●あるシンガポール人がマレーシアの山でハイキングをしていた時に、地図とコンパスを持っていたのに遭難したことがある。

●その時の地元の救助隊は何も持たず、ジャングルの中の木の生え方や、コケが生えている場所を見ただけで方角を知って救助に向かったのだ。

●人間のナビゲーションスキルについて書いたある著者によれば、これはロールス・ロイスを買えるだけの財力をつけた人間は、それを買える頃になると運転手にその車のキーを預けて運転を楽しまなくなってしまうというパラドックスと一緒だとしている。

●つまり、人間の楽しみは知らない土地を注意しながら進むことにあるのに、それをすべてGPSに任せてしまうのはもったいないのでは、ということだ。

●マーク・トウェインは、自分が何度もミシシッピー川を航行している内にこの土地を知り尽くしてしまったたためにその川の魅力が半減したと記している。

●これと同じで、ある場所に行く方法を解明するテクノロジーを獲得することはたしかに便利なことではあるが、それでも自分の持っている自然な感覚を使うほうがまだマシだ、ということなのだ。

===

テクノロジーは便利にする代わりに、人間の一部の能力を失わせてしまう、ということですね。
by masa_the_man | 2012-04-15 13:48 | 日記 | Comments(5)
昨日の横浜北部は朝からけっこう本格的な雨でして、気温もやや低めでした。

北朝鮮の「人工衛星」発射失敗に関する事案でさわがしいここ数日の日本の安保環境ですが、それに関してテクノロジー問題を少し。

昨日の講演会でも触れた「そのテクノロジーはなぜ採用されたのか」というトピックなんですが、以下のように主に四つの説明の仕方がなされる、ということをひとまず列挙しておきます。

①機が熟した/熟していない学派

これはある特定のテクノロジーが採用されるためには、それ以外の基礎的な技術の発展がないと無理、という説明の仕方につながることが多いわけです。たとえば北朝鮮の場合は、ロケット関連技術がある程度のレベルまで発展してきたからテポドン2が完成した、ということになりますね。

②必要に迫られた/迫られていない学派

ある特定のテクノロジーが採用されるためには、その国や社会や組織にとって、そのテクノロジーを採用すべきだという必要に迫られたから、という説明の仕方。いわば「必要は発明(採用)の母」ということ。その逆に、なぜ採用されなかったのかの理由を説明する場合は「必要に迫られていなかったから」というものですね。北朝鮮の場合だと、周囲の安全保障環境から政治的にロケット・ミサイル技術を開発する必要に迫られていたからテポドン2を開発したという説明の仕方になります。

③失敗した/していない学派

ある特定のテクノロジーが採用されるためには、その国や社会や組織にとって、そのテクノロジーで大きな失敗をしないと改良されて進歩しない、というもの。逆に、同じテクノロジーがとくに改良もされずに長年使われ続けている状態を説明する場合には「まだそれで失敗していないから」という弁明がなされます。この例にしたがえば、今回の北朝鮮のテポドン2の場合は、失敗したからこそ次回にはさらなる技術革新があるのでは?ということも言えるでしょう。「失敗は成功の母」。

④組織の利便性や習慣などの「非合理」学派

ある特定のテクノロジーが採用された/されなかった場合の理由として、その国や社会や組織の「慣習」や「独裁者の好み」のような、非合理的な要素が決定的な役割を果たした、という風に説明されるパターン。今回の北朝鮮の打ち上げ失敗をこの例から考えると、「政権の硬直した組織体制が、技術革新を促進できなかったために失敗した」となります。

以上、簡単でしたがテクノロジーの採用についての説明から北朝鮮のミサイル打ち上げ失敗について簡単に応用してみました。
by masa_the_man | 2012-04-15 01:08 | 日記 | Comments(0)

なぜ国家は失敗する?

今日の横浜北部は昼過ぎから曇ってきました。陽気は完全に春ですが。

さて、また興味深い本(の書評)がありましたのでその要約を以下に。

この本なんですが、アメリカでは相当話題になってますね。ウォルツ的にいえば完全に「セカンド・イメージ」(国家/組織)による原因の説明でして、まあリベラル派の説明によるスタンダードなものです。

面白いのはその説明に豊富な歴史の例を使っていることと、政治と経済のつながりをかなり密接に分析しているところでしょうか。

この調子だと、おそらく日本でも近いうちに翻訳されて発売されそうです。

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なぜ国家は失敗する?

Byトーマス・フリードマン

●今読んでいる本がとても面白い。『なぜ国家は失敗するのか』という本だ。

●これを読めば読むほどアメリカがアフガニスタンでいかにアホなことをしているか、そしてアメリカはいかに対外援助戦略を抜本的に見直さなければならないかがよくわかる。

●ところが本書で示されている警告の中で最も重要なものは、アメリカと中国に関するものだろう。

●MITの経済学者であるデロン・アセモグルとハーヴァード大学の政治学者のジェームス・ロビンソンの共著となるこの本は、国家の違いを生み出すのが「制度」であると主張している。

●この本によれば、国家が発展するときにはその政治・経済制度が「包括的」(inclusive)であり、没落する時は「収奪的」(extractive)になるという。

●そして「収奪的」になると、その国家の権力やチャンスはたった少数の人間の手に握られてしまう、というのだ。

●著者たちによれば「少数の人々が多数の人々から富を奪うような“収奪的”な経済制度に比べて、“包括的”な経済制度は所有権を強化し、平等なチャンスを生み出し、経済発展につながる新しいテクノロジーやスキルを生み出す投資を促進する」という。

●「“包括的”な経済制度は“包括的”な政治制度を支え、支えられる」のであり、それが「権力を広く適度に分配して、所有権を守るための基盤となる法と秩序を確立し、“包括的”な市場経済を達成することができる」という。

●それとは対照的に、“収奪的”な政治制度はあまりにも少数の人間に権力を集めてしまい、それが“収奪的”な経済制度を継続させてしまうのだ。

●著者の一人であるアセモグル氏は、あるインタビューの中で、国家が発展している時というのはその国の制度が国民一人一人の潜在力を解き放ってイノヴェーションや投資、開発に向かうようにしているという。

●たしかに東欧諸国と元ソ連のグルジア/ウズベキスタン、イスラエルとアラブ諸国、クルギスタンとそれ以外のイラクなどの違いを生んでいるのはすべて「制度」なのだ。

●著者たちによれば、歴史が教えている教訓は「正しい政治体制がなければ、良い経済は生まれない」ということだ。彼らが「政治のコントロール」と「経済発展」を同時に実現しようとしている中国に悲観的な理由はここにある。

●アセモグルは「われわれの分析によれば、中国は“収奪的”な制度、つまり共産党政府の独裁的な権力の下で人民や資源を大量に動員するというな強引な手段で経済発展をしているが、これは長く続かない。なぜならそこには(革新と高収入に必要な)破壊的創造が生まれないからだ」と述べている。

●「継続的な経済発展にはイノベーションが必要であり、イノベーションは創造的破壊と切り離すことはできない。この破壊は旧制度を新しい経済システムにするために必要であり、しかもそれは既存の権力構造を破壊するものだ」と著者たちは書いている。

●「中国が創造的破壊によって経済体制を変えることができなければ、その発展は長続きしないはずだ」とアセモグルは主張。

●ところが中国の大学の落第生が中国の国家が運営する銀行に支えられている国営企業に対抗できるような巨大な会社を作ることができるだろうか?

●アセモグルによれば、アラブ諸国やアフガニスタンに足りなかったのは民主制度であるという9/11事件後の見方は間違ってはいないという。ところが間違っていたのは、それを簡単に輸出してそこに根付かせることができるはずだ、というわれわれの考えのほうであった。

民主的な変化というのは、どうしても草の根的な下からの運動からわき上がってこなければならないものだからだ。

●「もちろんだからといってわれわれが何もできないというわけではない」と彼は言う。

●たとえばエジプトのような国に軍事的な支援をするのではなく、その代わりに政治的に発言力を得ることができればよくなるようなところに支援をするべきだというのだ。

●私に言わせれば、エジプト、パキスタン、そしてアフガニスタンのような国にたいするわれわれの対外支援というのは、それらの国々のエリートたちに悪い行動をしないようにお願いする身代金のようなものであろう。ところがわれわれはその身代金を「エサ」にしなければならないのだ。

●アセモグルが提案しているのは、エジプトへの13億ドルにおよぶ軍事支援は一部のエリートに恩恵を与えるだけなので、それ以外の社会層の人々にも発言権をもたせるような委員会を設立し、どの機関ーー学校や病院ーーに対外支援を行って欲しいのかを発言させる、ということだ。

●つまり金を与えるのだったら、その国の草の根運動を強化するようなものにすべきだというのだ。

●支援を与える側というのは、支援することしかできないのであり、「包括的」な制度を確立しようという草の根運動があれば、それを支援すればよいのだ。

●ところがわれわれ自身がその「包括的」な制度をつくることはできないのだ。

●しかもアフガニスタンや多くのアラブ諸国では、われわれは既存の権力を支援してきたことにより、逆に彼らの草の根運動をつぶしてきたようなところがあるのだ。だからそこから何も生まれない。

●ならぜなら、数字のゼロを何倍しても、それは相変わらずゼロだからだ。

●ではアメリカの場合はどうだろう。アセモグルは現在の経済格差がアメリカの「包括的」な制度を崩壊させる方向に動いていることを危惧している。

●「問題の核心は、格差がある程度の規模になると、それが政治の状況に反映されてくることだ」

●たしかにたった一人の人物がある候補者の選挙運動の資金を一人で引き受けることができるようになってしまえば、そこから選ばれた議員が「包括的」に他の声を聞くようになるとは思えない。

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一言で言えば、国内の制度の仕組みが「包括的」か「収奪的」かで違ってくる、という分析です。

皮肉な見方をすれば「民主制万歳!」ということになるかもしれませんが、これは逆に社会の「秩序」と「自由」の間の緊張関係という昔からの議論を再び呼び起こしそうでもありますな。
by masa_the_man | 2012-04-13 16:24 | おススメの本 | Comments(3)
今日の横浜北部は朝から快晴です。気温も上がりまして、すっかり春です。

さて、今週も無事にメルマガを更新できましたのでお知らせします。

今回はあと二週間ほどで店頭に並ぶ新刊、『なぜリーダーはウソをつくのか』について私が書いた「訳者解説」の部分を一足先にみなさんにご紹介しております。

日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信
2012年04月12日 
リーダーはなぜウソをつくのか■ 

なんというか、やはり訳本を読むときには原著者のバックグラウンドを理解しておくというのは大変重要なんですよね。
by masa_the_man | 2012-04-12 11:21 | 日記 | Comments(0)