戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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<   2011年 08月 ( 8 )   > この月の画像一覧

今日の甲州は雲は多めでしたがなんとか晴れました。それにしても朝夕は落ち着いた秋を感じますね。

さて、久しぶりの書き込みですが、すでに裏のほうでは述べたことをまとめてここで。

実は先週末に九州まで出張しまして、博多の周辺で講演をして参りました。そこでのエピソードを一つ。

というのは、問題なのは講演そのものではなくて、むしろ講演の前に博多駅で見かけたある風景でした。

私にとって博多駅というのは高校生の修学旅行以来だったのですが、いやはや思ったよりも大都会で驚きました。

そして講演会場に向かうために博多駅の新幹線口から降りてきた時のこと、ここである中年のオタクっぽいお兄さんに遭遇。

彼もどうやら博多は初めてだったらしく、周囲にギリギリ聞こえるような声で、

「うあー、人が多くて混雑しててムカつくねー、ここは」

と発言したのです(もしかすると、私に聞こえるように言っていた??)

これを聞いて、私はたしかに博多駅の人の多さに同意すると同時に、彼の嫌味な言い方に一つ気づいたことがあったのです。

それは、私が戦略学というものを勉強し始めてから常々気になっていた、

「分析される対象」と「分析する人」

という微妙な二者の関係。

どういうことかというと、このオタクの兄さんは「混雑していた博多駅」という分析対象に対して「ムカつく」という判断を下したわけですが、最大の問題は、この「博多駅の混雑」という現象に、この「ムカつく」という判断を下した本人も参加している、という点。

これを別のいじわるな言い方でいえば、

あんたがいるから博多駅が混んでいるだよ!

というツッコミもできるかと(笑

いや、私がここで本当に重要だなぁと思ったのは、一般の人だけではなく、評論家や研究者というのは、往々にしてこのオタクの兄さんのように、

「分析される対象」(博多駅)と「分析する人」(自分)

ということを、全く別物としてわけて考えることが多い、ということです。

ところが問題なのは、このように分析・評価していることで、その分析者だって分析される対象(の持つ現象(混雑した博多駅)に含まれてしまうことを忘れてしまう、ということです。

これって特に政治評論から政策提言を行おうとする人間にとっては致命的な問題でありまして、まさに「ミイラ取りがミイラ」になりかねない危険なことなのです。

なぜなら、どのようなことでも、人間は意見や見解などを表明した瞬間に、「完全な中立」で「客観的」であるようなことはありえないからです。

ところが人間というのはどうやら「客観的で完全に中立」という立場があると勘違いしてしまいがちで、とくに日本人の中にはこのような「自分は本当に客観的に見ている!」と思い込んでしまっているように見受けられるコメントをする人がけっこういるような。

つまり、この博多駅のオタクのお兄さんみたいに「混んでいる」という現象と、「その混雑の一因となっている自分」が頭の中でつながっていない、ということですね。

ふとした瞬間に聞いたことから色々と考えてしまいますが、この問題は個人的にこれからもけっこう考えなければならないのかと感じた次第なので、ここでちょっと簡単にメモ代わりに書いておきました。

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(千秋公園の蓮の花)
by masa_the_man | 2011-08-30 22:59 | 日記 | Comments(11)
今日の東京は曇ったり晴れたりの不思議な天候でした。意外に暑かったですね。

クラウゼヴィッツ学会の発表をなんとか終えて山梨に戻ってきましたが、こちらはかなり雨が降っております。

さて、久しぶりに文献紹介を。地政学関連です。

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Global Communications Since 1844: Geopolitics and Technology
by Peter J. Hugill

どちらかといえば、政治地理学のほうに近いアプローチ(というかウォーラステイン式)からの、通信テクノロジーの発展史です。

やや古い本ですが、この著者のヒューギルという人はなかなか目の付け所が鋭い人で、通信テクノロジーの発展の歴史に(批判)地政学的な解釈を加えて、覇権論や経済学とからませながら興味深い分析を展開しております。

その視点はやや左翼的ながらも、具体的な事例(とくに軍事安全保障絡み)を詳細に扱っているという点ではかなり勉強になる優れものの本です。

興味がある方は、彼の最近の本を見ていただいても刺激を受けるかと。
by masa_the_man | 2011-08-25 01:10 | おススメの本 | Comments(0)
お知らせです。本日24日(水)都内で研究発表しますので、そのご案内を。

日本クラウゼヴィッツ学会 8月度定例研究のご案内

1)日時:8月24日(水) 18:30~20:30  

2)場所:日本学士会館 310号室     
       最寄駅:地下鉄神保町駅下車3分
   (東京メトロ半蔵門線、都営三田線・新宿線)
       千代田区神田錦町3-2-28 TEL:03‐3292‐5936

3) 講師:奥山 真司氏 (英国レディング大学戦略学博士)

4) テーマ:「核時代のクラウゼヴィッツ―1949年~1991年―」

5)参加費: 会員 1,500円、非会員 2,000円 

====

内容

1、ソ連圏におけるクラウゼヴィッツの議論の使われ方

2、英米圏におけるクラウゼヴィッツの議論の使われ方

3、知識人たちの各論

などです。
by masa_the_man | 2011-08-24 00:35 | ニュース | Comments(2)

オフ会終了

今日の東京は小雨がぱらつくあいにくの天候でしたが、けっこう涼しかったような。

本日はオフ会だったのですが、ご参加いただいたみなさんには本当に感謝です。

今回の発表は、会場提供者による「人脈づくりの方法」や「ドル崩壊後の世界経済」、そして私の発表による「レインの新刊本の紹介」という三本立てだったのですが、参加者のみなさんとの質問などのやり取りが面白くて非常に勉強になりました。

さっそくですが、次回とその次の予定まで決まっておりまして、発表テーマもほぼ決定しております。

▼9月11日(日)

①エアシーバトル概論、②海底ケーブルの地政学、③ヨーロッパの覇権について

▼10月15日(土)

①一連の司法改革の裏話、②未定、③未定

お時間のある方はぜひ!
by masa_the_man | 2011-08-22 00:13 | 日記 | Comments(2)
今日の秋田は曇りながらもけっこう夏らしい一日でした。

さて、久しぶりに更新です。ちょっと前のナイの国防予算削減についての意見記事の要約を。


====

米軍予算の削減のしかた

byジョセフ・ナイ

●今後の議会と政府との話し合いがうまくいかなければ、米軍の予算を今後十年間で15億ドル自動的に削減する「トリガーメカニズム」が発動されることになるかもしれない。

●もちろん最初の削減は安全保障に影響はでないと思うが、それより多く削減することになるとかなり大きな影響が出てくるだろう。

●前のブッシュ政権では9・11事件のあとに国防予算をほぼ2倍に増やした。

●ところがアフガンとイラクでの戦争が落ち着いてきているために、われわれは1990年代のレベルまで地上部隊を減らすことができるし、F-35の購入数を減らし、それよりもはるかに安い無人機など使って、雪だるま式に増える軍人向けの健康保険の問題にも対処できるようになる。

●オバマ政権は、すでに2023年までに4000億ドルの削減を行う計画をしていた。

●しかし削減だけを考えればいいというわけではない。われわれは軍事力をいかに使うかを考えなければならないのだ。

●米軍とその同盟国は、冷戦時代とちがって、世界の軍事予算の70%を占めている。そしてアメリカはもう警察のように世界中どこでも見張らなければならないわけではないのだ。

●削減反対派たちはアメリカのパワーの弱体化や孤立主義を警戒している。ところがそこには「第三の道」があるのだ。

●たとえばアイゼンハワー大統領は、1954年にインドシナ半島へのフランスの肩代わりをするようなベトナムへの介入を控えており、これはアメリカの経済力にとって得にならないと判断したからだ。

●これと同じような戦略が使われれば、アメリカはアジアをはじめとする貧困のある場所で地上軍を含んだ軍事介入をしようとは思わなくなるだろう。

●ブッシュ政権時代の軍事介入から身を引くまでには時間がかかるかもしれないが、それでも2010年に発表された「国家安全保障戦略」で述べられたように、われわれはまず国内から自分たちの力や海外へ影響力を確認する作業をはじめなければならないのだ。

●アイゼンハワー大統領はこれに賛同しただろうし、いまでは彼が「孤立主義者」と批判する人もいない。

●対暴動(COIN)は戦術的には魅力的なものだが、アメリカはそのような遠くの地域で「国家建設」を行うまでの余力はないのだ。

●ところがこのような貧乏な国から地上部隊を撤退させるということは必ずしも日本や韓国のような国からの撤退や、パキスタンやエジプトに対する支援の終了を意味するわけではない。

●このような戦略のことを「オフショア・バランシング」と呼ぶ人もいるが、これは単なる空軍や海軍の活動のことよりも多くのことを意味している。

●たとえば日本や韓国のような国では米軍に駐留しつづけてもらうために多大な資金を支払っているが、彼らは台頭する中国や不安定な北朝鮮のような国に直面しているために保険的な政策としてその支払いを行っているのだ。

●今世紀が過ぎていくにしたがって、アジアは伝統的な地位、つまり世界の半分以上の人口と経済力を抱えるようになるはずだ。

●そして、アメリカはアジアに居続けなければならない。なぜならマーケットや経済力というのは、ある「政治的な枠組み」に依存するもであり、この枠組はアメリカのパワーが提供するものだからだ。

●秩序には「軍事安全保障」が不可欠であるように、「酸素」というのは人間が息をする時に必要なものだ。つまりそれは、なくなり始めてからはじめてその存在に気づくものなのだ。

●だからこそ、議会の超党派議員による特別委員会は「国家建設」などという野望にとらわれないようにしながらも、今後アメリカが決定的な役割を果たしつづけることができるように、慎重に予算を考えなければならないのだ。

●また、そのような戦略は国内にも応用できるものだ。

●イギリスの歴史家であるニアル・ファーガソンは熱心な帝国主義者として知られているが、彼はイラク戦争開始当時に、アメリカは三つの国内の赤字のおかげで帝国的な役割を果たせないと言っていた。

●それは、1,兵隊の数、2,国民の支持、3、財政、の三つの赤字である。

●アメリカがイギリスの帝国と決定的に違ったのは、帝国主義にかける意志が欠けた政治文化なのだ。

●アメリカ人は普遍的な価値観を推進するのを好むのだが、単に「正義の味方」を演じることに引きずりこまれて介入を行うよりも、われわれはロナルド・レーガンが言った「丘の上の輝かしい町」になるほうがいい。

●よって、われわれが直面しているのは「手を触れてはいけない防衛予算」でも「孤立主義」でもない。

●アメリカのパワーやグローバルな役割を維持する「スマートな戦略」というのは、われわれの持っている生地に合った対外政策の「仕立て方」にかかっているのだ。

●そしてアイゼンハワー大統領は、この「仕立て方」をよく理解していたのだ。
by masa_the_man | 2011-08-16 21:36 | ニュース | Comments(4)
今日の甲州は基本的にくもり空でして、なんとなくまた真夏の暑さが戻ってきました。

さて、私が一番気になっているのは日本のみならず、世界の安全保障にも関わってくるこの話題。アメリカの経済が米の(軍事)覇権にどのような影響を与えるのか、というテーマです。

ちょっと前の記事ですが、これも面白いので要点ポイントフォームで。

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ペンタゴンの財政削減

by ゴードン・イングランド

●新しい国防長官レオン・ペネッタ氏は、国防省の予算を大幅に削減するという難問にすぐに直面することになる。

●オバマ大統領の司令を受けて、彼は12年間で4千億ドル(31兆円)、もしくは毎年330億ドル(2.5兆円)を削減しなければならないのであり、これは現在の国防省の年間予算の5パーセントにあたる額だ。

●私の今までの経験からペネッタ長官に申し上げたいのは、武器調達計画やR&D関連の計画を、急激に削除しないように、という点だ。

●同時に、同じ割合で平等にすべての軍事予算を平均的にカットするというのも、歴史の例でみると大失敗につながっていることが証明されている。

●その代わりに彼がやるべきは以下の5つのことである。

●第一は、彼は制服組ではなく、省内の背広組をカットすべきだということだ。

●たとえば海軍ではすでに2003年から水兵が6万人も減らされているが、背広組は労働組合や規制などのおかげで全然数が減っていない。ペンタゴンの背広組の70万人のうち、まずは10万人カットが適切であろう。

●第二に、政府は同盟国にもっと防衛関連の装備を売り込むことを奨励すべきだ。LCSや耐地雷車両などがいい。

●これはアメリカの国内産業を助けることにもなるし、何よりもこれによって浮かせることができる予算の額は馬鹿にならない。

●第三は、国防省が新しい調達計画を始めるのをやめて、その代わりにすでに動き出している既存の調達計画を強化して生産数を上げ、そのスピードを速めることだ。

●アメリカの新しい武器調達計画はあまりにも多くのことに手を広げすぎで、完成まで資金が続かないことがある。これで少ない数の兵器を非常に高額な値段で買うことになって失敗するのだ。

●第四に、ペネッタ新長官は実働の戦闘部隊と事務方の人員の不釣合いなバランスを是正すべきだ。なにしろ背広組が異様に多くて、実際に活躍する諜報部員は兵員、それに輸送部隊などの数が少ない。

●第五に、国防省は四軍の制服組のトップに、装備調達の面でもっと発言権をもたせるべきである。

●彼らは調達計画の初期の段階では色々と計画策定に参加できるのだが、後半(の数年後)になるとほとんど何も言えなくなる。そうなると、すでに計画自体が古くなっている場合もあるのだが、軍のトップたちは修正案を提案できなくなり、コストだけが上がっていることになる。

●ペネッタ氏は政府内で様々な経験をしてきたから大丈夫だと思うが、それでもこれから難問に直面するわけで、そのために一つの歴史の教訓を思い出していただきたい。

●それは第二次大戦後から朝鮮戦争までの5年間で、われわれは米軍をかなり劣化させてしまったということだ。このおかげで、朝鮮戦争への準備がまったくできていなかったのだ。

●予算の決定は重大な結果をもたらすし、これはアメリカの安全保障に直接影響を与えるものであるので、ぜひ慎重にお願いしたい。
by masa_the_man | 2011-08-05 23:11 | ニュース | Comments(1)
今日の甲州は曇りがちでして、時折小雨が降ってきました。かなり涼しいおかげで、色々と仕事がしやすい快適な一日。

さて、最近またまた考えている、人間の「判断力」について。

戦略学を突き詰めて考えていくと、「コントロール」という思想の上に、もう一つ見えてくるものがあります。それは、最適な戦略をその時々に選択していくためには、それを選ぶ側に判断力が必要になってくる、ということです。

そして学問というのは、一般的にこのような世の中のものごとを最適に判断するためにわれわれが学ばなければならないものである、ということになるわけですが、ここでの問題は、そのような「最適な判断」をするためには、何も「学問」というものが必ずしも必要ではない、ということ。

ではこのような「判断力」を教えてくれるものには一体どのようなものがあるかというと、具体的には以下のように七つ(プラス1)あるということを最近考えております。

これについては何度か本ブログでも書いてきましたが、ここであらためてリストアップしておきます。


<「判断力」の身につけ方を教える学派>

① 体験至上学派
② メンター絶対学派
③ 知識集積学派
④ 統計学派(ハード派・ソフト派)
⑤ 神託学派
⑥ 直感派
⑦ 運力向上学派

まず①の「体験至上学派」ですが、ここでは「自分が体験したことが全てだ」「だからとにかく色々な体験をしろ!」ということを教えております。

②の「メンター至上学派」であるが、これは判断力を持つといわれる特定の人物に師事し、その師(メンター)のアドバイスを逐次聞いて判断するというもの。

③の「知識集積学派」は、基本的には他人の書いた著作や古典などから知識を積み上げて、その中から得たエッセンス(智慧)を判断のためのヒントする、というもの。

④の「統計学派」であるが、これにはハード派とソフト派にわかれ、「ハード派」は、ある戦略の選択を判断する際に、かなり厳密で客観的な統計上のデータやアンケート、意識調査などの計測データを使うもの。

一方の「ソフト派」は、血液型や星座、それに占星術や風水など、とりあえずは統計学を元にしているといわれているが、それでも客観的には「科学的」とは言えないような、因果関係のはっきりしない、人智を越えた「統計学」に判断をゆだねるもの。

⑤の「神託学派」は、特殊な能力、つまり霊能力のような力を持った巫女のような人物に、神様からのお告げ(神託=オラクル)を取り次いでもらい、それを自分の判断にするというもの。

⑥の「直感派」は、最近のニューエイジ系などにみられるように、「自分の直感だけを信じて行動すれば大丈夫」という、非常に盲目的かつ楽観的な自信をつけさせるもの。①の体験派に似ているが、その根拠を自分の過去の体験ではなく、現在持っている直感や山勘を磨くところに求めているところが違う。⑤の亜流(自分に降りてきた神託を信じるから)とも言える。

⑦の「運力向上学派」も⑥の「直感派」に通じるところがあるが、それよりも自分が持つ自然な感覚(直感ではない)を磨くことを重視しており、運が上がればそれと共に正しい判断もできるようになる、という想定を持つ。

=====

以上の七つを挙げてみましたが、いずれもが単独の学派というわけではなく、現実にはこの中のいくつかを同時に行うという人がほとんどかと。

ちなみに私は現在は⑦を推しておりますが、元々は③から出発しておりますし、この傾向が強いですね。みなさんはいかがでしょうか。

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by masa_the_man | 2011-08-02 23:48 | 日記 | Comments(4)
今日の甲州は曇りがちでしたが、とくに夕方になってからかなり涼しく感じました。例年だとこの時期は暑くて死にそうなんですが、今年は冷夏?

さて、久しぶりに本の紹介を。

といっても、戦略ものではなく、どちらかといえば「野球指導もの」でありまして、なんと高校野球の指導者について書いた「半自伝的」なものです。

「非常識 甲子園連覇監督に学ぶ 勝ち続ける強いチームのつくり方」
by 我喜屋優 田尻賢誉

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タイトルはかなり奇をてらうものでありまして、内容とはちょっとかけはなれた印象が。

そしてその内容ですが、基本的にはこの我喜屋監督が沖縄の興南高校を春夏連覇するために使った選手の育て方やトレーニングなどについて語ったものです。

私がこの本になぜ惹かれたかと言いますと、この監督が述べていることが極めて「戦略学的」であるからです。

具体的には野球を通じていかに効果的な組織や人材を作るかという観点から、監督が具体的なエピソードを交えながらその思想・哲学的なところを語るわけですが、ジョン・ボイドの「OODAループ」や孫子の「正奇」の論理、「ファースト・イメージ」の重要性、「ビジョン」や組織内での「コミュニケーション」の大切さ、それにクラウゼヴィッツの戦争論のエッセンスと似たところなど、戦略学の授業で教えられることそのものを、全く別の言葉で色々と語ってくれております。

また、この我喜屋監督の言葉を引き出してまとめている田尻氏の筆力にもなかなかのものがあります。しかしあまりにもうまくまとめ過ぎていて、ちょっと出来すぎかなぁという感じもしないでもないですが(苦笑

ということで、タイトルの「非常識」とは違って、戦略学的には非常に「常識的」とも言えるものですが、全ての戦略を包括した共通項をわかりやすい言葉で見て取ることができるという意味で貴重な本です。

横綱論的にもオススメの箇所が多数ありました。ぜひご一読を。

=====

沖縄・興南高は、なぜ甲子園で優勝どころか春夏連覇できたのか? 常識を疑い続けたことから生まれた唯一無二の指導法と”金言”を初公開!不可能を可能にした名将。我喜屋監督の人づくり、チームづくりのノウハウと卓越したリーダー論はビジネスマンも必読。

 指導法、練習法を学びに沖縄へ足を運んだ指導者が続出し、取材していたベースボールライター(田尻賢誉)にも全国から質問が殺到した連覇の秘密とは?これさえ読めば強いチームになる! スキのない勝ち続ける組織になる。

【目次】
第1章
勝負に備える 一瞬のために全力で準備せよ
第2章
人をつくる 花を支える枝、枝を支える幹、本当に支えているのは根っこ
第3章
チームをつくる ごみを拾えるようになれば、野球もうまくなる
第4章
非常識を常識にする やってみよう、できるはずと思えばできる
第5章
リーダーシップをとる まずは自分を鍛える、成長させる

【著者プロフィール】
我喜屋優(がきや・まさる)
1950年生まれ。沖縄本土復帰前の68年、夏の甲子園大会に興南高野球部主将、中堅手として出場し、ベスト4に。卒業後、大昭和製紙富士から大昭和製紙北海道へ。74年、都市対抗で優勝。89年、大昭和製紙北海道の野球部監督に。07年春、興南高監督に就任。同年夏、24年ぶりに甲子園出場。その後、09年の春の大会から春夏ともに2年続出場し、10年春夏連覇を果たす。10年7月より学校法人興南学園の理事長、11年4月より興南中学・高校の校長を兼任。

田尻賢誉(たじり・まさたか)
1975年生まれ。熊谷高、学習院大を卒業後、ラジオ日本勤務、アメリカでの日本語教師ボランティアを経て独立。スポーツジャーナリストとして高校野球、プロ野球、メジャーリーグなど幅広く取材活動を行なっているほか、中高生、指導者への講演活動も行なっている。著書に『木内語録 子供の力はこうして伸ばす』(二見書房)、『あきらめない限り、夢は続く』(講談社)、『大旗は海峡を越えた』、『公立魂~鷺宮高校野球部の挑戦~』、『高校野球 弱者の戦法』、『沖縄力』(日刊スポーツ出版社)など。
by masa_the_man | 2011-08-01 23:31 | おススメの本 | Comments(2)