戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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今日の東京は降ったりやんだりのお天気でした。

さて、本日はオフ会でしたが、前回に増して興味深い、盛りだくさんの内容でした。

予定変更で発表者は三人になりまして、

●鉄道の地政学(チョークポイント)
●福島原発の最新状況と日米の原子力面での結びつき
●東アジアの安全保障情勢

という3つのテーマを識者にお話いただきました。本当に勉強になりました。

ということで、次回も盛りだくさんの内容で8月21日(日)に開催予定です。もうすぐ告知しますのでよろしくお願いします。
by masa_the_man | 2011-07-31 22:52 | 日記 | Comments(3)
ノルウェーのテロ事件を受けて、この意見記事の要約を再録します。

ぜひじっくりとお読み下さい。

====

多文化主義はどのように失敗したのか

by ケナン・マリク

●今年の7月7日でロンドンでの52人が死んだ連続テロ事件から六年がすぎた。

●アメリカの9・11事件とロンドンでの7・7事件は基本的に同じインパクトを両国の国民に与えたが、ひとつだけ違うのは、7・7事件のほうがイギリスの市民権を持つ人間たちによる犯行だったということだ。

●イギリス当局側は、この「自国民の犯行」に頭を悩ませており、その原因として、以前は過激なイスラム僧侶やモスクの影響を指摘していたが、最近は政府の多文化主義政策の失敗を指摘する分析が多くなっている

●ヨーロッパでは多文化主義の問題に関して政府要人からも批判的な声が上がり始めており、スウェーデンやオランダでも反移民政策を訴える政党が議席を伸ばしている。

●英首相のキャメロンや独首相のメルケルが、この政策の失敗についてスピーチで言及したことは記憶に新しい。

●しかしこの問題の本質は「多文化主義」ではなく、「移民」(とくにイスラム教徒)にある。オランダとスウェーデンの極右党の議席拡大はこれが原因だとされている。

●この問題の難しさは、あまり公共の場で議論されない二つの点にある。

●一つは、「多文化主義」というのが大量の移民によって構成された「社会」のことを示していることであり、もう一つがこのような多様性を管理する政府の「政策」のことを示しているからだ。

●この二つの意味を区別できないと、政府の政策の失敗そのものを、マイノリティーたちの責任に押し付けてしまうことになってしまう。

●実際のところ、大量の移民は西ヨーロッパ諸国にとってはありがたいものであり、これによって経済は恩恵を受け、ダイナミックかつコスモポリタンな社会の形成に役立ってきた。

ところがこれを管理する政策は大失敗だった。この失敗をよくあらわしているのが、イギリスとドイツの例である。

●まずイギリスだが、30年前のインド系移民などに対する差別はひどかった。色々と暴力沙汰やデモなどが起こったために、この反動として70年代から政府が本腰を入れて政策を打ち出しはじめた。

●たとえばイギリス政府がとったのは、人種ごと(イスラム教徒、シーク教徒、ヒンズー教徒、アフリカ系、カリブ系など)に枠組みを決めて、このグループごとに権力や資金を分け与えるという政策である。

●この政策では、マイノリティーたちの個人ごとではなく、そのコミュニティのリーダーたち発言力を与えることになったのだが、問題はそのようなリーダーたちが、各コミュニティの中で最も保守的な考えをもつ人々であったという点だ。

●しかもこのリーダーたちは、そのコミュニティーたちからはほとんど支持されない意見を持っている場合が多い。しかしイギリス政府の高官たちは、面倒だからと言って、無責任なことにこのような「リーダーたち」を公式な立場にある人間として扱い続けた

●首相たちはイスラム教徒一人ひとりを「イギリス国民」として扱うのではなく、そのリーダーたちにとの対話を優先したために、この保守的なリーダーたちが権力を握ってしまったのだ。

●こうなると、たとえばイスラム教徒の中での進歩的な動きも見逃されることになり、彼らの発言力はコミュニティーの中でもかなり少なくなってきてしまった。

●この結果、移民の二世たちは進歩的な動きや伝統的な穏健派からも離れることになり、その中のかなりの数が「過激派」の思想にアイデンティティを見つけることになった。

●ドイツでも、これと似たような動きがあった。

●戦後に入ってからのトルコからの移民は、元々は国民としてではなく、単なる短期労働力として受け入れられた経緯がある。そしてドイツ政府は、トルコ人は働いたらすぐに帰国するものだと想定していたのだ。

●ところが彼らは単なる「一時的な労働力」から「恒久的に必要な労働力」になってしまった。特に彼らの子供たちは、ドイツのほうを祖国だと見なすようになったことが大きい。

●ところがドイツ政府側は彼らをアウトサイダーとみなしつづけており、国籍(市民権)を与えるのを拒み続けた。

●ドイツの国籍(市民権)というのはやや特殊であり、住むところよりも「血」がベースとなっていて、ドイツ人の両親から生まれた子供にだけ与えられるのだ。

●結果として、ドイツ国内のトルコ系の人々は400万人いるが、その25%以下しかドイツの国籍(市民権)を得ていない。

●このような「トルコ問題」の解決策として出てきたのが、ドイツ政府の「多文化主義」である。ドイツはトルコ移民たちに国籍(市民権)を与えなかったのだが、その代わりに彼らがドイツ国内で独自の文化を維持するのを大幅に認めたのだ。

●そうなると彼らの独自のコミュニティーがドイツ国内にできあがってしまい、国政にも参加せず、かなり内向きになっていったのだ。

●そして隔離されていった移民の二世たちは、アイデンティティーを過激な原理主義に求めるようになる。去年アフガニスタンでドイツ生まれのイスラム原理主義のジハード(聖戦士)が発見されたのは、このような政策が生んだ当然の成り行きと言えるのだ。

●イギリスの例もドイツの例も、両方とも分裂的な社会を生み、ポピュリスト的かつイスラム主義的なレトリックの台頭につながったのである。

●もちろん「多文化主義」そのものが、イスラム過激派をつくりだしたわけではない。

●しかしその両国の例でもわかるように、「多文化主義」はイスラムの過激派が入り込むスペースを両国の社会の中につくったのだ。

●よって現代社会の課題は、政策としての「多文化主義」を拒否しながらも、同時に移民たちが持ち込んできた文化の多様性を受け入れることができるかどうか、という点なのだ。しかもこれに成功した国は一国もない

●フランスはたしかに移民たちに国籍(市民権)を与えているが、実際には国家レベルでイスラム教徒のブルカを禁止しており、警察も北アフリカ系の若者に対してかなり手激しい手段を使っている。

●アメリカの場合も、他の欧州の国々に比べればイスラム教徒と国家の関係は良いほうだと言えるが、それでもニューヨークでの世界貿易センタービル近くのモスク建設に対する反対が問題になったように、ヨーロッパと同じような、移民に対する「恐怖」は存在するのだ。

●もちろんこれを一挙に解決できるような方法は存在しないのだが、7・7事件で6周年を迎えた今、この方法をわれわれは必死に探る必要があるのではないだろうか。

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何度も言いますが、この分析の「前提」を冷静に考えてみましょう。彼らの色々な問題点が見えてくるはずです。


by masa_the_man | 2011-07-25 00:43 | ニュース | Comments(16)
お知らせです。

私の翻訳による新刊本が来月末に発売されることになりました!

すでに何人かの勘の鋭いかたは見通していたようですが、原著のタイトルと著者名は以下のとおりです。
b0015356_055852.jpg

The Peace of Illusions: American Grand Strategy from 1940 to the Present
by Christopher Layne

そして、その日本語版のタイトルですが、以下のように決定しました!

『幻想の平和:1940年から現在までのアメリカの大戦略』
by クリストファー・レイン


今回はひねらずに直球勝負の直訳の題名です。

気になるお値段ですが、毎度おなじみでちょっとお高め設定の、本体3800円(税込3990円)となる予定で、すでにAmazonでは予約ができるようです。発売は8月末頃の予定。

この本の内容を大胆に一言で言えば、

「私のリアリズムの理論から言えばアメリカ没落は決定だから、新しい大戦略である“オフショア・バランシング”を採用しなさい!」

というもので、東アジアから撤退し、日本には自立させて核武装させなさい、と大胆な提言も行っております。

日本やドイツが、アメリカから(不当に)「二重の封じ込め」を仕掛けられていることや、台湾を中国に渡せという提案、そして強烈なリベラル批判やアメリカ一極時代の終わりを論理的に述べている後半の章はなかなか読ませてくれます。

ということでゲーツ元国防長官も容認したとされるレインによる「オフショア・バランシング」論の本書は、そもそもミアシャイマーをしのぐ理論書と歴史書の性格が強いですが、その議論はなかなか圧倒的。

以下はすでに掲載した「日本語版へのまえがき」から

====

私は本書が日本語に訳されたことを本当に嬉しく思っている。なぜなら、この本の議論はなるべく多くの人々に聞いてもらう必要のあるものだからだ。

外交的に失礼となるリスクを承知であえて言わせていただければ、対外政策や安全保障政策における現在の日本は、一人のアメリカ人の目には、どうも自分だけの世界の「幻想」の中でひたすら頑張っているだけのようにしか見えないことがある。日本は目を覚まし、自分たちの将来を真剣に考え始める必要があるだろう。

(中略)

もちろん日本の対外政策のエリートたちは中国の台頭による地政学的な意味を明確に理解していた。しかしそれと同じくらい明らかだったのは、日本は中国の台頭に対処するための大戦略の作成では迷走を繰り返している、という事実だった。

日本のデフォルト的な選択肢というのは、どうやら「アメリカが守ってくれるからわれわれは心配する必要はない」というものだ。そしてたしかに次の五年間くらいはおそらくこの想定も合理的なものであり続けるだろう。ところが時が二〇二〇年に近づき、アメリカが財政危機によって戦略的に縮小することを迫られていることを考えれば、アメリカが東アジアのコミットメントから大きく撤退せざるを得なくなることは目に見えているのだ。

それに加えて、アメリカの「拡大抑止」(extended deterrence)という戦略の抱えるリスクがさらに明らかになるにしたがって、アメリカは日本から「核の傘」を撤回することになるのだ。

本書が発している日本に対するメッセージは、かなり過酷なものである。二〇三〇年代に近づくにつれて、日本は「アメリカが中国から守ってくれる」という想定の上に大戦略を立てることはできなくなる。日本は「アメリカが去った後の東アジア」という状況に対して準備を進めなければならないし、このためには自分たちの力で立ち上がり、国防の責任を背負うことが必要になってくる。

好むと好まざるにかかわらず、中国の台頭とアメリカの衰退というのは、日本(やそれ以外の東アジア・東南アジアの国々)にとっては大きな地政学的変化が到来しつつあることを意味する。この点について「幻想」がないことだけははっきりしているのだ。

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ぜひご期待下さい。
by masa_the_man | 2011-07-23 00:35 | ニュース | Comments(6)

帰国しました

今日の甲州はよく晴れて暑かったです。完全な真夏日ですね。

さて、今朝ですが、フィンランドのヘルシンキ空港経由で帰国しました。滞在中はかなり充実しておりまして、とくに最後の二日間は色々な方に会っていい刺激を受けました。

そして10日ぶりくらいに帰ってきたのですが、実はイギリスは(とくに後半の数日は)けっこう寒くて、朝などは十度台の前半になるくらい。一度など、窓を開けて寝たら危うく風邪ひきそうになりました。

帰国の飛行機の中では原稿を書くので忙しく、このブログで紹介したいネタがけっこうあるにもかかわらず、ほとんど何も更新できませんでした。あしからず。

ということで、明日からまた本格始動します。
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by masa_the_man | 2011-07-14 20:38 | 日記 | Comments(0)

卒業式終了

今日のイギリス南部は雲が多かったのですが、なんとか日がさす瞬間もありまして、雨の予報の割には天気がもった気がします。

さて、先ほどですが卒業式を無事終えて帰ってきました。

うちの学校は人数が多いので、卒業式も数日間にわたって行われるわけですが、私は今日の正午から始まる回の式に参加しました。ここで卒業する学生は200名ほどで、そのほとんどが政治系や経済の学部の人々。

私と同じドクターで卒業するのは五人だけで、担当の先生は違うんですが、ほぼ顔見知りの人間ばかり。これはけっこううれしかったです。

また、学士と修士の人間は以下のように、両方とも基本的に黒字に青のローブをまとうわけですが、
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その一方で博士の人間はクリムゾンのローブなのでメチャメチャ目立つのです。参考までに私の後ろ姿をちょっと公開。
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しかも帽子がみんなと違って丸いやつなので、なんだかとっても微妙な感じが。

式自体はたった40分弱だったわけですが、毎度ながらイギリスはこういう儀式だけは本当にうまいと実感した次第です。
by masa_the_man | 2011-07-08 23:28 | 日記 | Comments(39)

論文製本

今日のイギリス南部は朝から雨が降っていたのですが、先ほどからなんとなく晴れ間も見えてきました。なんとか卒業式の間だけは天気がもってくれることを祈っております。

さて、論文が製本して出来上がってきましたので、その写真だけここに掲載しておきます。

他の学校はどうだかわかりませんが、うちの学校では論文が完成したら最終的にハードカバーで2冊を製本し、その一冊ずつをそれぞれ図書館と学部に納める決まりとなっております。

もちろん2冊だけでは自分の手元に何も残らないので、余分に一冊だけ「記念品」として製本したわけですが、その実物が以下のものです。
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栞もついた、なかなかがっちりした作りで、かなり重いものになっております。

審査官たちに論文を提出した時はソフトカバーのものだったわけですが、あらためて完成品としてハードカバーで製本すると、不思議な重厚感が漂います。なんだか自分のものではないような気が。

というか、もう製本した時点で自分の手元を離れている感じがしておりますし、気持ちはすでに次の訳本の出版に行っておりますので、自分が書いたものという気が全くしません。

完全に人事です(苦笑

ということで後ほど卒業式のレポートを。
by masa_the_man | 2011-07-08 17:47 | 日記 | Comments(2)

明日卒業式

今日のイギリス南部は朝から大雨が降ったのですが、午後はなんとか少しだけ晴れました。気温は十五度前後でやや寒いくらい。

さて、こちらに来て早くも二日が過ぎましたが、いよいよ明日卒業式です。

といっても、すでに他の学部などの卒業式はすでに始まっておりまして、学校の周辺はすでに式典の雰囲気がただよっております。今日は日本から親が来まして、時間が迫ってきていることを感じます。

それでも明日卒業式だという実感はまだないのですが、それはすでに仕事が山積みで、原稿などの締切りに追われているからでしょうか。

詳しい写真などは、明日の卒業式が終わってからこちらにもアップロードします。
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(キャンパスの入り口のサイン)
by masa_the_man | 2011-07-08 07:38 | 日記 | Comments(1)

イギリスに行ってきます

今日の甲州は曇りながらもなかなか暑い一日でした。

さて、ひとつだけご連絡が。

いよいよですが、卒業式に参加するために明日からイギリスに行ってきます。

一週間ちょっと行ってくるわけですが、卒業式関連のレポートや、向こうの友人たちから仕入れた新しい情報などもここに色々と上げておくつもりです。

ということでちょっと最近サボリ気味ですが、地味に続けていきますのでよろしくお願いします。
by masa_the_man | 2011-07-04 01:23 | 日記 | Comments(2)