戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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駐英北朝鮮大使のお言葉

今日のイギリス南部は快晴の一日でありまして、上空高く秋の雲が見えました。気温もけっこう上がり、昼間はまだまだ半袖の人ばかりです。

さて、昨日行って来た駐英北朝鮮大使の講演が日本でも二本ほど記事になっておりましたので、まずはこれをはりつけておきます。

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駐英北朝鮮大使「原則が守られれば非核化積極努力」
2009年9月29日(火)13:40

【ロンドン28日聯合ニュース】北朝鮮の慈成男(チャ・ソンナム)駐英大使は28日、こう着状態にある北朝鮮核交渉に関連し「自主権が尊重され平等原則が守られるのであれば、朝鮮半島非核化に向け積極的に努力する」との立場を示した。英国王立統合防衛安全保障研究所(RUSI)主催の講演会で述べたもの。

 慈大使は、北朝鮮核問題の解決には、まず米国が対北朝鮮敵対政策を撤回し、北朝鮮への核脅威が根本から取り除かれなければならないと主張した。にらみ合いが続けば真の非核化は実現できないとした上で、「今後、自主権が尊重され、平等原則が守られる状況下で、朝鮮半島はもちろん北東アジアと世界の非核化に向け積極的に努力する」と強調した。

 また慈大使は、北朝鮮以外の6カ国協議当事国が核を保有するか米国の「核の傘」の下に置かれている状況で、北朝鮮が核兵器を開発したことは、抑制力を持つためのものであり、日本や韓国を攻撃するためだと明らかにしたことはないと述べた。米国が核兵器で北朝鮮を脅かすことは問題視されず、北朝鮮が核抑制力を持つことは世界平和を脅かすというのは偽善だと強調。特に「休戦中だが戦争状態にあるなかで、どちらか一方だけに先に兵器を手放し対話を行うよう求めるのは話にならない。朝鮮半島非核化は北朝鮮だけでなく韓国にも当てはまる」と主張した。

 6カ国協議脱退の背景については「6カ国協議が北朝鮮に反対する舞台として悪用されていると判断したもので、朝鮮半島非核化自体を拒んだわけではない」と語気を強めた。

 国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に対しては、世界的に2054回の核実験が行われ、その99.9%は5常任理事国が進めたものだと指摘しながら「北朝鮮の核実験に対してのみ制裁を決議したのは話にならない」と非難した。米朝対話については「進行過程について話せる地位ではない」とし、言及を避けた。

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北朝鮮は朝鮮半島の非核化に努める=北朝鮮の駐英大使
2009年9月29日(火)10:48

[ロンドン 28日 ロイター] 北朝鮮のJa Song Nam駐英大使は28日、ロンドンのシンクタンク、王立統合防衛安全保障研究所(RUSI)で講演し、北朝鮮の国家主権が尊重され、かつ核の脅威にさらされないならば、北朝鮮は核兵器開発をやめる可能性があると述べた

 ただ同大使は、国際社会は北朝鮮に対しダブル・スタンダードを適用していると非難し、こうした状態が続く限り真の平和と安全は実現できないとクギを刺した。

 国連安全保障理事会は、北朝鮮が今年5月25日に核実験を強行したことを受け、同国に対する制裁を強化した。また、同国の核開発問題を話し合う6カ国協議は、北朝鮮のボイコットにより約1年前からこう着状態に陥っている。ただ、来週予定される中国の温家宝・首相の訪朝で事態の打開が図られるとの期待も出ている。

 こうしたなか同大使は、北朝鮮が6カ国協議をボイコットしているのは、朝鮮半島の非核化に反対しているためではないと言明。「6カ国協議が平等と公平性に基づいていないため、北朝鮮は同協議から離脱した」と述べた。

 その上で「北朝鮮の国家主権が尊重され、北朝鮮に対する核の脅威が解消されれば、北朝鮮から核兵器はなくなる」とし、「北朝鮮政府は、公平性と平等に基づき、朝鮮半島の非核化に努める」と述べた。

 同大使は、北朝鮮と国境を接する中国、ロシア、韓国は、いずれも核保有国であるか、保有国の核の傘の下に入っていると指摘。北朝鮮の核問題が生じたのは、米国が核兵器で北朝鮮を脅威にさらし、北朝鮮に敵対的な政策をとっていることが理由だと述べた。

 その上で、核保有国が過去に約2000回の核実験を実施したにもかかわらず、「特定の国」による核実験の実施が問題とされることはダブル・スタンダードの適用だと批判し、「こうした状態が続く場合、真の平和と安全の実現はかなわないと考える」と述べた。

 北朝鮮は2003年に核兵器不拡散条約(NPT)から脱退している。

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これを踏まえた上で、とりあえず私の感想などを少し。

まずこの両方の記事で説明されていないのは、この講演会のテーマです。

テーマはずばり「北朝鮮の核政策について」というもので、全体の参加者はおよそ70人ほど。日本からは私を含め、大使館やメディア(TBSと毎日)から5〜6人ほど来てきてました。

このテーマに沿った話だけに集中させるため、講演会が始まる前に「北朝鮮の核政策だけの話に限って質問を受け付けます」と司会者(日本滞在経験あり)がクギを刺す一幕がありました。

内容は上記の記事の通りで、格別私が付け加えることもないのですが、いくつかこの大使が講演の中で繰り替えし強調していたことがあります。それは、

1、アメリカが北朝鮮を脅している!
2、90年代にこっちからの朝鮮半島非核化の要求をアメリカはずっと無視してきた。
3、北朝鮮は核を持ちたくないが、周りがみんな持っているから抑止のために持つ!
5、64年の中国の核実験によって、アメリカは日本に核の傘を与えることを決意した
6、北朝鮮の国家主権が一番大事、このために我々は経済までも犠牲にしてきた。
7、自国の運命は自国で決めるのだ
8、朝鮮半島の周辺で軍事演習をやるのは本当にやめてほしい。周辺に軍艦を徘徊させるな!
9、アメリカは「国連」と「アメリカ」を使い分けるな。
10、アメリカの核の傘の下にある日本と韓国は、我々が核武装しようとも自分たちで核武装はしない。
11、アメリカは大国なら大国らしく寛容にふるまえ。北朝鮮のような国でも対等に扱え。

などでした。

質疑応答ではアメリカの元国務省の人が何度も質問していたのが印象的でしたが、私の個人的な印象として、アメリカ側の無関心と北朝鮮側の必死さがまったくすれ違っている感覚がありました。

ちなみにこの大使のスピーチ(通訳を通して朝鮮語で行った)はかなりデスパレートな感じでした。生き残りがかかっている危機感のある国の人間は、どうしてもこういう風になりがちなんでしょうか。

関係ないかも知れませんが、この大使はシャツがピンクにネクタイが黄緑というものすごいモダンなセンス(?)の持ち主のようで、会場に入って来たときにはちょっと面食らいました(笑

顔は通訳の人も同じく「十両」〜「前頭」レベルでした。こんなこと書いたら怒られそうですが(苦笑)でも顔って本当に大事です。
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by masa_the_man | 2009-09-30 05:39 | ニュース | Comments(16)
今日のイギリス南部は午前中はかなり曇ってて寒かったのですが、午後からスッキリ晴れてゴージャスな夕焼けが見えました。

今日は久々にロンドンに出かけまして、シンクタンクで北朝鮮の駐英大使の話を聞いてきました。

たった一時間のプログラムだったので、この人が20分ほどしゃべってあとは質疑応答という形だったのですが、とりあえず詳しい話はチャタムハウスルール無視で明日のエントリーで書くつもりです(笑

さて、今日はまたアフガニスタンの戦略に関するネタを一つ。

「オバマコン」であるアンドリュー・ベイセヴィッチについては本ブログでも何度か取り上げておりますが、この人がアフガニスタン戦争におけるアメリカの戦略について鋭い分析を書いていたので、またポイントフォームで紹介します。

しかしこの人の提案している戦略がいまいち不透明なんですよね。これじゃアメリカ人は納得しないと思いますが・・・・。

===

Let's Beat the Extremists Like We Beat the Soviets

By Andrew J. Bacevich
Sunday, September 27, 2009

●二〇〇一年十月七日に始まった対アフガニスタン戦争はそろそろ八年目を迎え、アメリカにとって最も長い戦争になりつつあるが、終わる気配はなし。

●最新のマクリスタル将軍の分析だとこの戦争はあと5年から10年は続く見込みだ。

●最もタカ派の人は「戦い続ける」か「また9・11を招いてしまうか」だと言っている。

●しかしそれ以外にも方法がある。アメリカはまた「冷戦」を行えばいいのだ。

●ラムズフェルドは戦争開始直後に、「我々の生き方を変えるか、それとも彼ら(イスラム世界のテロリストたち)の生き方を変えるかの、二つに一つしかない」と言った。

●ところがイラクでもアフガニスタンでも「彼らの生き方を変える」というのはかなり困難を極め、高くつき、問題を多く発生させた。

●90年代に発展したハイテクによるアメリカの戦い方はほぼ効果が無かったといえる。

●「彼らの生き方を変える」というのは「不可能な任務」(ミッション・インポッシブル)であり、この長期戦は国の財布と軍を破壊する負け戦となったのだ。

●戦争の成り行きを変えるためには何が本当に問題なのかを見極める必要がある。

●これは「テロリズム」でもないし「アフガニスタン」でもない。

●本当に問題なのは「神」と「政治」の関係なのだ。

●この二つを完全に区別したがるのがリベラルな西側の先進国なのだが、この二つが密接な関係を持つとするのがイスラム世界なのだ。

●この視点はマクリスタルの報告には完全に欠けている。

●根本的な問題としてあるのは、つまり「近代」とは何かという問いかけなのだ。パワーでは何も解決できない。

●これを踏まえて考えると、アメリカがとるべき戦略はイスラム世界から余計な被害を被らないようにすることだ。

●これは具体的には三つの原則によって成り立っている。それは「首切り」、「封じ込め」、そして「競争」だ。

●これによって恒久的な平和が保てるわけではないが、少なくとも今のような終わりのない戦い方よりはましだ。

●イスラム世界のテロリストのリーダーというのはそれほど力がないから、目立つ奴らをつぶしておけば大丈夫。

●こうすれば西側に歯向かってくる時間をかせげるし、脅威は完全に消滅はしないがとりあえず管理できるレベルまでは落ちる。

●「封じ込め」は冷戦時代に経験済みだからできるはずだ。兵器よりも国境の管理や情報機関の充実が大切。

●もちろん冷戦時代も現地に武力介入はしたし、今後も必要とあれば介入すべきだ。

●「競争」とは科学・テクノロジー面、そして物質面などで優位を保つということだ。

●西側にとって大事なのは、自分たちが目指す理想を実現できるようにつとめることにある。

●つまり結果として「我々の生き方」を修正するということであり、我々の様々な問題を解決する生き方を見せることによってイスラム側も変化させるということである。

●我々が戦っている戦争を「熱い」ものから「冷たい」ものに変えればいいのだ。

=====

ということなんですが、これはリアリストたちのいう「オフショア・バランシング」という大戦略に沿った意見ですね。

この分析で個人的に注目したのは、例の「戦略の階層」の一番上のレベルである「宇宙観:死生観、宗教観、哲学、魂」のレベルの話をしているところです。

『戦略の格言』の中では、格言20で論じられていることがバッチリこれに当てはまるかと。

結局のところ、西側諸国とイスラム世界の間には最も根本的な「宇宙観」のレベルでの違いがあるためにアフガニスタンやイラクでの戦争がなかなか終わらない、ということを言っているわけです。これはするどい。

しかしそこから出てくる解決法として「首切り」、「封じ込め」、「競争」というのはどうもねぇ(笑

そういえば最近のアフガニスタンに関する戦略でひとつ対立軸が出てきました。

「対暴動/対ゲリラ活動」counterinsurgency
   vs
「対テロ活動」counterterrorism

というものです。マクリスタル将軍は間違いなく前者であります。
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(二日前の近所の様子)
by masa_the_man | 2009-09-29 05:30 | ニュース | Comments(29)

空中給油機の地政学

今日のイギリス南部は午後から完全な快晴で、日差しの強い爽快な秋の日曜日でした。

イランがけっこうまずいことになってますねぇ。

こちらの報道を見ているかぎりではイスラエルがいつ攻撃しても許される、みたいなすごい雰囲気になってきました(苦笑

さて、久しぶりに地政学している話題を。

アメリカの軍需産業ネタが好きな人にとっては次期の空中給油機の導入をめぐって大騒ぎしていることはすでにご存知かと思われますが、これが非常に「地政学的」であることを示した優秀な記事がありましたので紹介します。

かなり以前にこのブログで少し書いたと思うのですが、前ブッシュ政権は軍需産業で言えば「ロッキードマーチン政権」でありまして、トップクラスの官僚たちがことごとくこの企業の社外取締役を務めていた人物でした。

ところが今回は民主党のオバマ政権に変わったために、これから「ボーイング政権」になりそうなのです。

そういえばロッキード社製のF-22の量産が却下されたのはオバマ政権になってからですね。

この話題を象徴するようなビジネスウィーク誌の記事の要約をポイントフォームにしましたのでまず参照してみて下さい。

====

●米空軍は9月25日に、新たに購入する179機の空中給油機に必要なスペックを公開した。

●購入予算はなんと350億ドル(!)

●これの受注を争っていて有利に立っているのはエアバスとノースロップ・グラマンの合弁企業

●しかし問題なのはこれが政治問題化していることであり、どうやらライバルであるボーイング社と政治的な圧力によって折衷することになりそうなこと。

●空軍が完全に平等な入札を行使することができなければ、大きな問題となって一機も給油機を購入できなくなる恐れさえあるという。

●これは去年の時点で一度入札に勝っているエアバス連合側にとっては大打撃。

●ボーイング側の支援者たちは、この空軍の入札決定のプロセスが不透明だったとして政治問題化させ、政府に入札のやり直しを命じさせたという経緯がある。

●去年決定した入札ではたった37の必要条件しかなかったが、今回は空軍ががんばって373個の条件に増やした。

●これを考慮すると、やはり今回の入札もエアバス側にますます有利と言われている。

●空軍が最初求めていたのは①長距離飛行能力、②燃料の積載能力、の二つだった。

●これだとA330を使ったエアバス側が断然有利。

●シカゴの工場でつくられているボーイング側のKC-767はダメ。

●今回の入札では「6000フィートの距離で離着陸可能」という新しい条件がついたため、少し大きめなボーイングの777型をベースにしたモデルも条件を満たせなくなる。

●さらに来年の七月に契約者が決まったあとから18ヶ月以内に試作機を出せというのは、KC-777がまだ企画段階であるボーイング側にとってかなり無理な話。

●ところがこのようなことも、最終的には政治的に決まってしまうというのが専門家たちの見方。

●去年の決定は共和党が政権を握っていた時に行われたものであり、これによって建造の仕事は共和党の地盤が強いサウスカロライナ州とアラバマ州のような場所に行っていたはず。

●ところが現在は民主党が政権を握っているために、ボーイングの工場があって民主党の地盤があるイリノイ州、コネチカット州、ワシントン州などに仕事が作られることになる。

●民主党のマーレー上院議員(ワシントン州選出)やジョン・マーサ下院議員(ペンシルヴァニア州選出)などはさっそくボーイング側を推進するよう運動を始めており、EUがエアバス社に補助金を出したことを問題視している。

●とくに下院の防衛委員会で影響力を持つマーサは、空軍に毎年36機(以前は15機だった)を購入しなければならないようにする法案を出している。

●これによって、空軍側は購入ペースを速めるために二つの契約者に同時に発注せざるをえなくなる。

●米国防省側はいまだに契約はたった一者側にいくことを明言しているが、政治的圧力がかかったら同時契約もありうるかも知れない。

●つまりエアバス側が長距離用の給油機をつくって、ボーイング側が短距離用のものをつくる、という具合だ。

●あるアナリストは「民主党にパワーが傾いているので、ボーイング側が今後契約を全く取れないわけがない」と言っている。

●数年後にできる予定のボーイングのKC−777は、最終的には古くなったKC-10と取り替えられるはずだ。

●すべてを新型機に換えるのは最初のコストがかかるかも知れないが、それでも古くなったものをメンテナンスしながら使い続けるよりは長い目でみたらコストをさげることになる。

====

ということです。

新しい給油機の導入がいかに地理と政治と権力と絡んでいるのか、という意味でこれはかなり「地政学的」な話題である、ということがおわかりいただけたでしょうか。

民主党=ボーイング:ブルーステート:イリノイ州、コネチカット州、ワシントン州
共和党=エアバス/ノースロップ・グラマン:レッドステート:サウスカロライナ州、アラバマ州

という対立構造がみえますね。

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(KC 767)
by masa_the_man | 2009-09-28 04:51 | ニュース | Comments(4)
今日のイギリス南部は午前中雲が多かったのですが午後からはすっかり晴れました。また午後七時くらいまで外でキャッチボールできるくらい明るいです。

そろそろ時差ぼけもなんとなく解消してきた感じで、ようやくこちらに帰って来た実感もわいてきたのですが、今日はなんと近所に大型スーパーの出張所のような小さな店が出来ていることを発見しました。

この場所は近所の交差点の角にあり、いままで売れないパーティー用品を売っていた店だったのですが、いつの間にかテスコのエクスプレスになっていました。

試しに中に入ってみましたが、なかなか品揃えもよく、私がよく使うタウンセンター(イギリスの「ダウンタウン」のこと)のセインズベリーに代わって活用できそうな場所であることを確認しました。

さて、今日はまたアフガニスタンネタで。

オバマ大統領は国連やG-20の場でアフガニスタンに関する話題にほとんど触れなかったようですが、イギリスでは連日この話題で持ち切りでありまして、実にさまざまな分析が出て来ております。

もちろんイギリスは19世紀のいわゆる「グレートゲーム」のときにロシアとここを争った経緯がありますのでかなり知識は豊富なはずですが、最近は暴動鎮圧に関して完全にアメリカに遅れをとっているという話が出てきております。

そのような状況の中で、今回はアメリカのほうから注目すべきレポートがでてきました。

テーマはズバリ、「なぜアフガニスタンの兵を減らしてはならないか」というもの。著者は若き防衛分析官として有名なオハンロンと、元CIAの分析官です。

この主張を展開しているロジックが興味深いのでまたポイントフォームで。

●最近のアフガニスタンに対する戦略の議論では、「目標を低くして対テロだけに集中するべきだ」という意見が増えている。

●たしかにこれは魅力的なアイディアだ。アフガニスタンにつぎ込む資金も人命も少なくなるように思えるからだ。

●しかしこのような戦略は効かない。なぜならすでにラムズフェルドがやった「軽装備でやる」というのがこれだったからで、効かないことが証明されているからだ。

●対テロだけに集中するやり方が失敗する第一の理由は、諜報活動をうまく行えないからだ。

●現地にいる人間の数が減ると、我々の協力者たちを保護することもできなくなる。

●アフガニスタン軍や警察も自立できるまでに少なくとも2012年までかかる。

●失敗する第二の理由は、現地の人間を減らすと無人機を使うことができなくなるから。

●我々が兵を減らすとアフガニスタン政府が崩壊し、特に重要な山沿いの無人機が離着陸する基地が使えなくなる。

●そうなるとパキスタンにひそむテロリストたちも追いかけることができなくなる。

●この戦争の初期にオサマ・ビンラディンを捉えきれなかったのも、山岳地帯の近くに無人機の基地がなかったから。

●失敗する第三の理由は、こうすることによって一緒に戦っている仲間や同盟国を失うことになるからだ。

●政治的な理由から、もしかするとアフガニスタンに投入する兵力を減らさなければならなくなるかも知れない。

●アルカイダは基地などを必要としていないからアフガニスタンから撤退しても大丈夫だという人もいるが、とんでもない。

●活動場所があるということはアルカイダにとって好都合だからだ。

●やはり正しいのは、オバマ大統領が今年の3月に示した、アフガニスタンの市民を守りつつ、警察と軍を強化するという政策だ。

●このやり方は時間と資源をさらにかける必要があるかもしれないが、これしか残された道はない。

ということです。

「これ以外に選択はないから辛抱せよ」という、かなり厳しい提案ですな。
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(現役のシュガーレスガム)
by masa_the_man | 2009-09-27 06:30 | 日記 | Comments(18)

イギリスの核政策

今日のイギリス南部はまた秋晴れの一日でして、昨日に比べると雲は多めでしたがさわやかな一日でした。

こちらに年末まで滞在して論文を書くつもりでしたが、とりあえず今は滞在を延ばそうかと考えております。日本に帰国せず、なるべくこっちで集中して書いてしまおうかと。

そうなるとまた修行僧のような毎日が年末年始を越えて続くわけですが、これはまあしょうがない。

今日はコースメイトの韓国海軍のオフィサーと会って話をしたわけですが、彼は七月半ばに無事にドクターになったそうで、口頭試験もたった一時間の楽勝だったとか。

外部審査官は戦略文化の研究ではイギリスでけっこう知られた人物で、論文の内容を非常に気に入られたそうです。この話を聞いて、私もがぜんやる気がでてきました(笑

さて、今日はイギリスの核政策について。

イギリスの現在の核政策は4隻のヴァンガード級の原子力潜水艦に積んでいるトライデントD5潜水艦発射弾道ミサイルに頼っているわけですが、これを新型に変えるために議論されているのはみなさんもご存知の通りだと思います。

イギリスのブラウン首相率いる労働党政権はとりあえずこの4隻で回している現在の体制から一隻減らして3隻の体制にすると言っているわけですが、なぜ1隻減らすという半端なことをするのかについて色々な分析がなされております。

たとえばこのページの最初にある動画では、タイムズ紙のベテラン防衛担当記者のマイケル・エヴァンスが「経済的な理由よりも、政治的な理由を考慮しての決断である」として

1、米ロの核兵器削減に同調して、国際的な分野での倫理面での優位を維持したい。
2、ミサイルの購入数と核弾頭の数を減らしたい。

という分析を行っております。

しかしそれと同時に、同じページの下の記事では、

1、米ロに同調することによって、特にイラン(と北朝鮮)に圧力を加える。
2、3隻でもやっていけるような次期潜水艦をデザインするため。

と書いております。

まあどっちも正しいのかも知れませんが、これについて誰かご意見ありますでしょうか?

それにしても核兵器がからんでくると、どうしても話が「政策レベル」まで話が上がってきますね。

核兵器というのは単なる兵器でもあるので、本来なら「技術レベル」だけの話で終わりそうなものですが、国家のパワーにも直結してくるので、「大戦略レベル」を越えて「政策レベル」まで大きな影響を与えてしまいます。
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(シュガーレスガムではありません)
by masa_the_man | 2009-09-26 06:26 | ニュース | Comments(18)

胡錦濤の考えていること

今日のイギリス南部は朝から快晴でして、午後になっても秋晴れの空が広がっております。さすがに朝方はかなり冷えこんでますが。

さて、ウォルトがまた面白いエントリーを書いてましたのでその紹介を。

テーマはズバリ、「胡錦濤が今かんがえていること」です。

内容はいつものようにポイントフォームで。

●中国は国内的に動乱があった時でも、基本的に対外政策は過去何百年間はかわらずにリアリストであった。これは共産主義政権でも同じ。

●アメリカはこの百年ほど世界でナンバーワンだが、中国もこの経験を学んでいる。

●アメリカがナンバーワンになれたのは他の大国が勝手につぶし合いをやっていて、大戦でも一番最後に参加して漁夫の利を得たからだ。

●現在のわれわれの「和平崛起 」もこの路線だ。

●だからアメリカがあちこちに手を出して疲弊していくのは歓迎である。

●ブッシュはそういう意味でいい大統領だった。いろいろ失敗をやらかしてくれたからだ。

●その合間にわれわれは影響力を世界各地で広げることができた。

●アメリカがなぜ「人権」というものにこだわるのかわからない。そういう意味でチェイニー前副大統領は話のわかるやつだ。

●グアンタナモなどで失敗してくれたおかげ我が国は色々と言われなくて済む。ブッシュには本当に感謝している。

●マケイン、そしてペイリンが選ばれたほうがはるかによかった。オバマは私よりカリスマがある。

●オバマはすごいと思ったが、今は安心している。彼はいい勘しているが、まわりのアドバイザーがアホだ。

●アフガニスタンにどんどん増派してほしい。そうすれば我が国を封じ込めるための資源を分配できなくなるから。

●温暖化ガスでもオバマは国内的に何もできてない。これでコペンハーゲンのサミットではあまり文句も言われなくてすむ。

●アメリカの国内政治のシステムを考えたら笑ってしまう。圧力団体やうるさいコメンテーターがいて大変だからだ。カリフォルニアは破産状態だ。

●アメリカの大学も破産状態で、学力がどんどん低下しつつある。これはいい。

●我が国の経済は急激に復活しつつあり、アメリカの国家財政は借金づけになっている。

●アメリカの若い財務省長官はいい奴だ。彼は我々の助けが必要であることをしっかりわかっている。

●タイヤ輸入規制問題はたしかに非難すべきだが、これも結局はエコノミスト誌が言うようにアメリカのためにならない。

●とにかくこの状況は我々にとって好都合だ。「世界のリーダー」という称号はとりあえずアメリカに使わせておいてあげて、その間に我々は力をつければいいだけの話だ。

●ひとつだけ心配なのは、アメリカが孫子の格言にしたがって長期戦から手を引いた時だ。

ということです。

このエントリーの下のコメント欄では「ウォルトさんは中国のことを過大評価しているよ」などの指摘がありますが、まあこれは「アメリカの知識人が考えた中国のリーダーのイメージ」ということで興味深いかと。

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(先ほど撮影した近所の様子:電線や電信柱がないことに注目)
by masa_the_man | 2009-09-25 02:22 | 日記 | Comments(18)
昨日のイギリス南部は雲の多い一日でした。日本に比べると昼間の気温がかなり低めですね。

まだ時差ぼけが激しくて、夕方になると猛烈に眠くなり、朝はやけに早く目が覚めてしまいます(苦笑

イギリスメディアのニュースなんかを見ると、安全保障関連ではトライデントミサイルの更新問題とアフガニスタン関連がかなり大きな議論になってます。

さて、そんな中で東欧へのミサイル防衛計画を廃止したオバマ政権についてのブレジンスキーへの最新のインタビューがありました。地政戦略学者としての彼の見解が興味深いのでここに載せておきます。

====

How Obama Flubbed His Missile Message

by Gerald Posner

(中略)

Q: Is the Obama administration decision to end the missile-defense program the right one?

Well, let me first of all say that my view on this subject for the last two years has been that the Bush missile-shield proposal was based on a nonexistent defense technology, designed against a nonexistent threat, and designed to protect West Europeans, who weren’t asking for the protection.

Q: Does scrapping the missile program weaken our defense options in Europe vis-à-vis the Russians?

Not at all. What is left is militarily sounder. It gives the U.S. more options while still enhancing America’s ability to develop more effective defense systems
, which is what the Russians really dislike. But now they have less of an excuse to bitch about it.

Q: What about the way we informed our allies of our decision?

The way it was conveyed to the Czechs and Poles could not have been worse. It involved [laughs] waking up the Czech prime minster after midnight with a sudden phone call from President Obama. The Polish prime minister was at least allowed to sleep late. But as far as Poland was concerned, unfortunately, poor staff work did not alert the United States that today, September 17, is a particularly painful anniversary for Poland. In 1939, the Poles were still fighting the Germans when on September 17 the Russians stabbed them in the back. To the Poles, that is something very painful. And since they misconstrued—and I emphasize the word “misconstrue”—that the missile shield somehow strengthened their relationship with the U.S. when it comes to Russia, it was immediately suggestive of the notion of a sellout. It’s the wrong conclusion, but in politics, even wrong conclusions have to be anticipated.

Q: How is it possible that the State Department did not bring up the sensitivity of this day to the Poles?

Lousy staff work. Period. I don’t know who precisely to point the finger at. It was obviously not anticipated in this case.

Q: There are some pundits who believe that by abandoning the missile-defense program, we will gain the help of Russia when it comes to arm-twisting Iran over its nuclear weapons program. Anything to that?

I doubt it. The Russians have their own interests in Iran, which are far more complex than the simplistic notion that the Russians want to help us with Iran. The Russians have a complicated agenda with Iran. They also know in the back of their heads that if worse came to worse—and I am not saying they are deliberately promoting the worst—but if worse came to worse, which is an American-Iranian military collision, who would pay the highest price for that? First, America, whose success in ending the Cold War the Russians still bitterly resent. And we would also pay a high price in Iraq, Afghanistan, and massively so with regards to the price of oil. Second, who would suffer the most? The Chinese, who the Russians view as a long-range threat and of whom they are very envious, because the Chinese get much more of their oil from the Middle East than we do, and the skyrocketing price would hurt them even more than us. Third, who would then be totally dependent on the Russians? The West Europeans. And fourth, who would cash in like crazy? The Kremlin.

Q: Is the fallout as bad if Israel preemptively strikes Iran?

Absolutely. That is the way, more importantly, how the Iranians would view it. They really can’t do much to the Israelis, despite all their bluster. The only thing they can do is unify themselves, especially nationalistically, to rally against us, and the mullahs might even think
of it as a blessing.

Q: How aggressive can Obama be in insisting to the Israelis that a military strike might be in America’s worst interest?

We are not exactly impotent little babies. They have to fly over our airspace in Iraq. Are we just going to sit there and watch?

Q: What if they fly over anyway?

Well, we have to be serious about denying them that right. That means a denial where you aren’t just saying it. If they fly over, you go up and confront them. They have the choice of turning back or not. No one wishes for this but it could be a Liberty in reverse. [Israeli jet fighters and torpedo boats attacked the USS Liberty in international waters, off the Sinai Peninsula, during the Six-Day War in 1967. Israel later claimed the ship was the object of friendly fire.]

Q: Did it surprise you that it took the Obama administration so long to do away with the missile-defense program? Is he setting firm lines that can’t be crossed, such as with Iran and Israel?

Well, Obama has been very impressive in refining our policy toward the world on a lot of issues, very impressive. But he has been relatively much less impressive in the follow-through.

Q: You mean his policy sounds ideal but the follow-up isn’t good?

Not as precise, clear-cut, and forthcoming as would be desirable.

Q: What would you like have seen already from this administration?

By now we should have been able to formulate a clearer posture on what we are prepared to do to promote a Palestinian-Israeli peace. Simply giving a frequent-traveler ticket to George Mitchell is not the same thing as policy. It took a long time to get going on Iran, but there is an excuse there, the Iranian domestic mess. And we are now eight months into the administration, and I would have thought by now we could have formulated a strategy that we would have considered “our” strategy for dealing with Iran and Pakistan. For example, the Carter administration, which is sometimes mocked, by now had in motion a policy of disarmament with the Russians, which the Russians didn’t like, but eventually bought; it had started a policy of normalization with the Chinese; it rammed through the Panama Canal treaty; and it was moving very, very openly toward an Israeli-Arab political peace initiative.

Q: Where did the impetus come from in the Carter administration, and why aren’t we seeing it with Obama?

There was a closer connection between desire and execution. Also the president was not as deeply embroiled, and buffeted, by a very broad, and commendable and ambitious domestic program as President Obama is. I think the Republican onslaught to the president, the wavering of some Democrats, has vastly complicated not only his choices in foreign affairs, but even limited the amount of attention he can give to them.

Q: Is there truth that the more issues he is embroiled in, the less he can act?

I don’t think it’s the number of issues; it’s how decisively a president acts. A president, in his first year, is at the peak of his popularity, and if he acts decisively, even if some oppose him, most will rally around him, out of patriotism, out of opportunism, out of loyalty, out of the crowd instinct, just a variety of human motives.

Q: Some in the Obama administration have told me that it’s only just over half a year, and we are jumping to too early conclusions about anything. Are the early months more critical than other times in an administration?

The first year is decisive. How much you can set in motion the first year sets the tone for much of the rest of the term. In part, that’s because all these things take more than one year to complete. But the point is you want to have a dynamic start that carries momentum with it.

Q: President Carter early on ran into strong opposition from American-based pro-Israeli lobbying groups that opposed the administration’s ideas for a peace initiative in the Middle East. What lesson should the Obama administration learn in formulating its own approach to an Israeli-Palestinian dialogue?

The lesson is if you are forthright in what you are seeking, you tend to mobilize support within the Jewish community. Because a majority of American Jews are liberal, and in the long run they know that peace in the Middle East is absolutely essential to Israel’s long-term survival.

Q:Are you concerned about Afghanistan?

Quite unintentionally, but potentially and tragically, we are sliding into a posture which is beginning—and I emphasize the word “beginning”—to be reminiscent of what happened to the Soviets.

Q:We have plenty of time to reverse course?

There is some time to reverse course. But time flies.

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このインタビューの要点を列記しておきます。

1、ブッシュ政権のミサイル防衛計画は多くの「幻想」の上になりたっていた。

2、ミサイル防衛計画を破棄しても問題ない。むしろアメリカに選択肢を多く与えてくれるから好都合だ。

3、アメリカがこの計画破棄を9月17日にポーランドに通達したのは完全なミスだ。国務省の役人がこの日の重要性(第二次大戦中にソ連に裏切られた)を全く考慮していなかったからだろう。しかしわざとこの日を選んだわけではない。

4、アメリカとイランが衝突したら損をするのは、①アメリカ(石油価格の上昇)、②中国(石油価格の上昇)、③西ヨーロッパ(ロシアに依存)。そして経済的に得をするのはロシア。

5、アメリカはイスラエルのイラン攻撃を許可しないだろう。イラクの制空権を握っているのはアメリカだ。

6、オバマ政権は問題提起をするが、その後の動きが少ない。

7、オバマ政権はそろそろ自分たち独自の対外政策をまとめるべきだ。

8、政権についての最初の年は本当に重要だ。その後の方向性を決めるからだ。

9、アメリカのユダヤ人は大半がリベラルだから、短期的にはイスラエルに不利に見える中東和平策も最終的には受け入れられるはずだ。

10、アフガニスタンに関してはアメリカはソ連と同じような状態に陥る「最初」の段階にある。

以上です。
by masa_the_man | 2009-09-24 14:50 | ニュース | Comments(23)

帰英しました

今日のイギリス南部は朝から曇りで、気温は思ったより低くありませんでした。それでも夜になったらかなり冷え込んできた様子ですが。

さて、無事に日本から帰ってきました。飛行機の中では映画を三本ほど見ていてほとんど眠れませんでした(苦笑

イギリスに帰ってきて最初に気付いたニュースは、中学校で教える女の先生(26)が、自分の教えていた生徒(15)とレズ関係にあったというもの。

裁判が行われているんですが、二人はまだ愛し合っていて(!)、裁判所は二人を会わせないようにする判決を出したみたいです。

二人がつき合っていたのは五ヶ月間らしいのですが、その間にパリまで出かけてゲイのパレードに参加してきたりしてたそうです。相変わらずこっちのニュースはセンセーショナルです(笑

とりあえず時間もないので、イギリスに帰ってきて気付いた点をいくつか。

1、日本と比べて(とくに女性に)太っている人の割合が圧倒的に多い。平均で三倍は大きい。

2、電線と電信柱がない。

3、町中のちょっと高級な感じの飲食店がかなりつぶれて閉店していた。

4、夏の終わりのせいか不況のおかげかよくわからないが、夏前に比べてなんとなく町の雰囲気が暗かった。

ということでしょうか。

地政学的に気になったのは、ロシアとグルジアがまた黒海で一触即発状態になっていることでしょうか。

それとマクリスタル将軍がまとめた報告書がワシントンポスト紙にリークされて、アフガニスタンに対してかなり悲観的な内容が知られてしまったことも印象的です。

とにかく明日からまたこのブログのタイトル通りに書いて行きます。
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(大泉町のドラゴンフライ)
by masa_the_man | 2009-09-23 05:19 | 日記 | Comments(20)
純粋な地理の分析とは区別される「地政学的分析」の最も顕著な特徴とは、静的な状況よりもパワーの中心における動的な状況を考慮する点にある・・・・テクノロジー面での変化は、とくにパワーが実践される「場」の状況を変えることになる。なぜなら通信・交通のスピードや産業界の技術の増加は、必然的に特定の国々のパワーポジションを変動させることになるからだ。つまり、地理的な事実は変化しないが、それらが対外政策に与える意味は変化するのだ。

『平和の地政学』p.40
by masa_the_man | 2009-09-20 11:03 | 日記 | Comments(29)

地政学の「変化」

昨日の甲州はだいぶ秋らしくなっておりまして、とくに夕焼け雲は完全に秋のもの。夕方以降はバイクで外走るのがためらわれたほど涼しくなっております。

そろそろ帰英準備が忙しくなっておりまして、昨日は昼すぎから荷物の整理などに追われておりました。

「ネオコンの父」として有名なアーヴィング・クリストルが死んだみたいですね。こうなると第一世代の大物はパイプスとポドーレツ(ポッドホーレツ)くらいでしょうか。

さて、時間もないので昨日のエントリーを少し整理してみようと思います。

地政学というのは色々と学問的な面で勘違いされやすいものなのですが、とくに誤解されているのは、それが「地理決定論である」という批判です。

これは「地理によって全てが決定される」という狭い見方しかできない「エセ学問」であるということですが(そして実際にそういう風に議論をしてしまう人々もいるのですが)、実はそうではありません。

その反論として、古典地政学系の学者からも「地政学はダイナミックに変化を取り入れている!」という議論はなされるわけですが、具体的にどの「変化」を取り入れているのかはあまり詳しく論じられておりません。

しかしマッキンダーはこれを「テクノロジー」という要素がそれだと指摘しており、実際にテクノロジーによって「コロンブス以前の時代」→「コロンブス時代」→「コロンブス後の時代」と世界の歴史が変化してきていることを主張しております。

これを「地政学の三位一体」(テクノロジー、地理、世界観、の関係)であらわすと、従来の地政学の「変化」では以下のような流れになっておりました。

テクノロジーに変化が起こる

地理は変わらない

しかしいままでの「地理」の意味は変わる

人々の「世界観」が変わる

国際政治の戦略的状況も変わる

ところが今回の北極海の事件がなぜ重要なのかというと、上記のような流れが根本的に変化してしてしまったからです。

どういうことかというと、

人間の使うテクノロジーが温暖化を起こす

温暖化によって地理が変化する

その地理の意味も変わる

人々の「世界観」が変わる

国際政治の戦略的状況も変わる

となるわけです。

つまりいままでほとんど変わることの無いと思われていた「地理」が本当に変化した(と思われた)ために、地政学的にも革命的な変化が起こったわけです。

そうなると、「首相や大臣は入れ替わっても、山や川は変化しない。地理は普遍的な要素である」という言葉を記したスピークマンは真剣に考え直さなければいけないかも知れませんね(笑
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by masa_the_man | 2009-09-20 01:29 | 日記 | Comments(0)