戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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今日の横浜北部は雨がよく降りました。梅雨に戻りましたね。

さて、ニカラグア運河については日本でもささやかに報道されておりますが、それについて面白い記事がありましたので要約を。

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ニカラグア運河は大プロジェクト、それとも大ペテン?
by アンドレス・オッペンハイマー

●ニカラグア政府が中国の企業と結んだ400億ドル(ほぼ4兆円)の運河建設の契約は、パナマ運河と競うラテンアメリカでここ百年で最も重要な建設計画になるか、それともこの地域の歴史で最大の詐欺になるかのどちらかだ。

●そしてこれが後者になると考えられる理由は多い。

●ところが最大の問題はなぜ評判のよいアメリカのコンサルタント会社(マッキンゼー、マクラーティーアソシエイツ、そして反汚職で有名なロナルド・マクリーン・アバロアを含む)がこれほどまでに怪しげなプロジェクトに参加しているのかという点だ。

●ニカラグアのポピュリスト的な大統領であるダニエル・オルテガは、今月はじめに41歳の中国のビジネスマンであるワン・ジンと契約を結んでおり、これは非公開入札によって行われ、しかもワンの会社は運河を建設した経験があるのかどうかさえ知られていないのだ。

●ワンはオルテガの27歳の息子であるラウレアノ・オルテガのお目付役としか知られておらず、これによってオルテガ家もこの取引にからんでいると疑われている。

●ニカラグアの報道によれば、ラウレアノはニカラグア政府の投資推進部門である「プロ・ニカラグア」で働いているという。

●この合意はオルテガがコントロールしているニカラグア議会をたった48時間の議論で通過しており、ワンのもつ「香港ニカラグア運河開発投資会社」(HKND)に50年間の運河建設許可を与えており、この許可はさらにオプションとして50年以上伸ばせるという。

●論者たちはこれはニカラグアの主権の記念碑的な明け渡しであり、ワンはほぼニカラグアという国家そのものを獲得したも同然だと言われている。

●ニカラグアの「コンフィデンシャル」誌の代表であるカルロス・フェルナンド・チャモロは「近年最大のスキャンダルです」と述べている。「パナマ運河の拡大の時は公共入札が行われ、それが国民投票にもかけられましたが、ここでは政府が勝手に勝者を選んでたった一日半で法律を通してしまったのです」

●駐北京のラテンアメリカ諸国の大使たちが私に教えてくれたところによれば、中国政府はこのプロジェクトにまったく関与していないということであり、中国の政府高官はなるべくそれから距離を置こうとしているという。

●それにたいしてアメリカ側の政府高官たちは、この計画についてあまりよく知らないと言っている。

●国務省のラテンアメリカ担当の高級官僚であるロベルタ・ジャコブソンは「これまで透明性がありませんでしたからわかりません」と私に教えてくれた。

●ところがHKNDのために働いているアメリカのコンサルタントたちは、ワンの経歴などを調べており、彼自身が怪しい人物だったら社の評判を汚すようなことはしないと言っている。

●ところがワンは来年にかけて運河建設の可否を調査するだけで4500万ドルを支払うとしているのだ。

●たしかに公共入札ではなかったが、HKNDの職員によれば、ニカラグアの天然資源法によって投資者に許可を与えることが許されているという。さらに彼らによれば、ニカラグアはこのプロジェクトに投資する会社を何十年間にもわたって探していたというのだ。

●ワシントンのコンサルタント会社のマクラーティーアソシエイツ社(クリントン政権の主席補佐官が率いる)のスティーブン・ドネホーは、「このプロジェクトをとる前にわれわれは彼のことを調べ上げており、彼は中国政府の手先ではないとわれわれは確信しております」と言っている。

●さらに加えて、「彼はチャンスを求めている起業家であり、自分の資金をリスクにさらしながら計画の調査をしているのです」と述べている。

●HKNDの公式報道官であるマクリーン・アバロア(ボリビアの元政治家/対汚職専門家、後に世銀で働く)が私に教えてくれたのは、ワンの狙いはプロジェクトの透明性を保つことにあるという。なぜなら調査が終われば彼は国際的な資金マーケットで資金を集めなければならないからだ。

●「誰もサギにお金なんか突っ込みたくないですからね」とマクリーンは述べている。

●運河計画におけるオルテガの息子の絡みについてマクリーンは、「彼の関与は政府機関としてのものであり、個人的なものではありません。彼の仕事は国家に投資を呼び込むことなのですから」と答えている。

●私の意見はこうだ。それでもこれはかなり怪しい契約だ。ラテンアメリカの中でも最も非民主的な大統領が関わっており、しかも公共入札は行われておらず、そして誰もよくわかっていない中国のビジネスマンがその契約をとっているのだ。

●もしワンが中国政府の手先ではなく、個人的な事業として行いたいのであれば、彼はダニエル・オルテガに国民投票を―ーパナマがやったように――かけて、そのプロジェクトが法律に基づくもので、経済、環境、そして社会的にも正しいものであるか判断させるべきである。

●そうでなければ、他の投資家はあらわれないだろうし、最大の勝者はニカラグアではなく、ワンのプロジェクトからすでに大金を得ているアメリカのコンサルティング会社だということになるのだ。

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ニカラグアに運河つくっても、パナマの三倍近くの長さになってしまうんですよね。それでも中国は自分でチョークポイントを握りたいんでしょうなぁ。


by masa_the_man | 2013-06-26 23:05 | ニュース | Comments(6)
今日の横浜北部は快晴でした。だいぶ日差しには力強さが感じられますね。

さて、昨日の続きを。

アメリカがパキスタンで行っているとされる無人機による主要テロリストの「首切り戦略」ですが、これが実は単なる「戦術」になってきてしまっていて「戦略的」な効果は全く上げられておらず、むしろ逆効果だという分析です。

まさに「戦略の階層」の実際例として、非常に興味深いものかと。

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オマバの秘密の「無人機戦争」のコスト
By P.J.クローリー(元米国務副長官)

●まず最初にに言っておくべきは、ブレナン氏は上院でCIA長官に承認されるということ。そして次に言っておくべきは、ほぼ一二年がたとうとしている戦争においても、いまだにアメリカ国内ではこの戦争にたいしてどう戦うべきかについて大きな意見の相違があるということだ。

●ブレナン氏は過去四年間のオバマ政権のアルカイダとの戦争、とくに多数の国で無人機を使用したことについて、強烈な弁護を展開している、

●彼は「オバマ政権にはアルカイダにたいする自衛のため、とくにアメリカにたいする切迫した脅威があって身柄の確保が不可能な場合に、このような強制力を使う法的正統性はある」と考えていることを明確に示した。

●上院の委員会は、このアルカイダとの戦争における無人機の使用については明らかに支持している様子であり、アメリカ国民もこの見解にほとんど同意している。

●ところがアメリカ以外の国における見解は違う。無人機を本当に使用してよいものなのかどうかについては疑いの目が向けられており、とくにパキスタンのような、オバマ政権の第一期で無人機の攻撃が大きく増加した国は、猛烈に批判的だ。

●ブレナン氏は一体どの国で無人機が使われているかについては議論を避けているが、パキスタンの駐米大使であるシェリー・レーマン女史ははっきりと明言している。

●ブレナン氏の公聴会の二日前に行われた記者との会話の中で、彼女は「イスラマバード政府は、アメリカが続けている無人機の使用はパキスタンの主権の侵害であり、同時に戦略的にも非生産的だと見ている」と明確にしている。

●「われわれは無人機の攻撃によって人々を過激化させるよりも、この沼から水を抜くことを選ぶべきです」とは彼女の弁。「これはテロリストを排除するよりも、むしろそうなる人々の数を潜在的に増やしてしまうのです。もし上か中間のランクに位置するターゲットを殺しても、おそらく彼らが属していたコミュニティー全体が将来のテロリストの候補に変わってしまうからです」

●彼女のコメントは去年ピュー研究所が行ったパキスタン国民への意識調査によっても裏付けられており、実に74パーセントの人々がアメリカを「敵」だと答えている。そして明らかにその原因の一つが無人機なのだ。

●ブレナン氏も、「オバマ政権は現在行われている対テロ作戦によって大衆から反感を受ける危険性があることを考慮すべきである」と言っている。

●ところがオバマ政権は、長期的な外交アプローチの一環としてパキスタンの問題に取り組むことを明言する代わりに、少なくとも短期的にはその問題がまったく存在しないかのように振る舞うことを選んだのだ。

●無数に報じられているにもかかわらず、米政府はパキスタンで無人機で作戦が実行されていることを認めていない。このようなアプローチをいつまでつづけられるかは誰にもわからない。

●パキスタン政府によれば、過去においては米国と密接に協力して無人機を使ったかどうかはわからないが、現在はそのようなことは一切ないという

●レーマン大使は、パキスタンが表では無人機の使用を批判しつつも、裏では米軍と協力していたことは全くない、としている。

●これはオバマ政権にとっても本当の難問を示している。当然だが、無人機による攻撃がアルカイダからの戦略的脅威を実質的に排除する上で大きな役割を果たしたのはまちがいない

●しかし高ランクの敵にたいする戦略的な行動として始められたものが、単なる戦術的なものに変形してきてしまったのだ。

●無人機は、次第にアメリカ本土に対する攻撃を企んでいるアルカイダの工作員ではなく、アフガニスタンで米軍を攻撃するランクの低いタリバンの人員を狙うようになってきている。

●おそらくワシントンは、2014年に米軍がアフガニスタンからの撤退を完了するまでアルカイダの「聖域」である部族地域にたいして圧力をかけ続けたいのであろう。

●しかしそのコストはどれだけかかるのだろうか?

●オバマ政権の最初の時点では、パキスタンにおける過激派を抑える長期的な解決法として、非軍人政府を強化することが狙われていた。ところが現在は無人機の使用のおかげで、アメリカが何十億ドルもかけて支援してきたことが無駄になっている。

●アメリカとパキスタンの関係は安定化しているが、互いの信頼感の欠如は深いままだ。

●パキスタン議会は、無人機の存在が決定的なものであり、ワシントン政府が無視を決め込んでいて、これがパキスタンとの長期的な関係を危機に陥れている、と明確にしている。

●レーマン大使は「無人機の攻撃があると、パキスタンでは少なくとも40以上のTVのチャンネルで報じられますよ。この攻撃はアメリカの力そのものや、アメリカがその力を海外で使うやり方について、非常にネガティブなイメージをパキスタンの人々に与えているのです」と述べている。

●無人機はアメリカの戦略にとってカギとなる要素かもしれないが、レーマン大使が明確にしているように、それは「われわれの作戦書にはないものですし、無人機攻撃を使う時間は終わっているのです」と述べている。

●ところがブレナン氏の公聴会での証言から言えば、アメリカが彼女のアドバイスを聞いて従うというつもりは当分なさそうだ。

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無人機というのは、アメリカにとってはチープに、しかも自国の兵隊の血を流すことなく敵の中心を叩けるということで、とっても便利なものなのですが、逆に非常に大きい恨みを残しているという意味ではイメージ的にかなりマズいですね。

無人機攻撃は戦略学などでいうところの「首切り戦略」に該当するのかもしれませんが、どちらかといえば最近の米軍のやり方だと「殲滅戦」の考え方にも近いような。

これは将来の歴史にどのように書かれるのか、とっても気になるところです。
by masa_the_man | 2013-02-11 21:52 | ニュース | Comments(0)

地政学とシェール革命

今日の横浜北部は曇っております。

さて、久々に記事の要約を。話題のシェール革命と、それが地政学に与える影響というもの。

このシェール革命についてはカプランもStratforなどに書いておりますが、とりあえず下のものもけっこう面白いかと。

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地政学とシェール革命
by アラン・リレイ

●シェール革命は西側諸国にとって有利に働くはずであるし、二一世紀前半ではアメリカのパワーをさらに強化することにつながる

●ところがメディアを通じて議論されているのは、フラッキングとよばれる採掘法の環境への影響や、天然ガスの市場価格への影響だ。

●この二つの議論は、シェール革命の本当のすごさを政治家たちにわからなくさせてしまう効果をもっている。

●実はこの本当のインパクトは、原油市場から発生するものだ。

●シェールガスは交通手段に使う炭化燃料の供給量を大幅に増加させる手段を与えるものであり、これは(中国の経済成長も原因となる)増加しつつある石油の需要をカットする役割を果たすのだ。

●ここでは二つの要因が働いている。一つはシェールガスの採掘技術(水平掘削と水圧を使用する)は、原油とガスの両方に使えるということだ。ノースダコタ州ではすでに一日あたり五〇万バレルの原油がこれによって産出されている。

●ハーバード大学の研究所が発表した資料では、二〇二〇年までにアメリカで一日に六〇〇万バレルの産出が可能だと予測されている。

●二〇一一年の時点でアメリカは一日一一〇〇万バレルを輸入しているため、海底油田などの可能性も含めば、二〇二〇年までにアメリカは石油を海外に依存しなくてもよくなるということだ。

●ところがエネルギー独立推進派の人々が見逃している点が一つある。

●この革命では、中国、アルゼンチン、ウクライナなどの場所で原油の生産が高まることにより、世界の石油価格が下がることになるという点だ。

●二つ目の要因は、天然ガスを交通機関の燃料として使えるようになるという可能性だ。

●もちろん専門家の中には、現実的にはこれを非現実的だと見る向きもあるのだが、アメリカやヨーロッパのように天然ガスのインフラが整っている国々では、これを行う点で優位に立っている。

●なぜならガスの価格が下がって一般にも普及するようになれば、一般家庭に分配してガレージで天然ガス車の充填ができるのも可能になるからだ。

●シェールオイルと天然ガスの開発のインセンティブはとくに大きい。ところがアメリカは天然ガスの価格の低下や、それによる化学物質や鉄鋼のようなエネルギーを使う産業を再輸入する事態に直面するのは初めてのことなのだ。

●シェール革命の次のインパクトは、原油価格の低下につながることによっても感じられることになる。

●さらに大きくいえば、シェール革命はアメリカが外国と対峙する際に使える様々な選択肢を与えてくれる。ヨーロッパにとっても大方ポジティブなものだ。

●はじめにアメリカ向けに輸出された多種多様な液化天然ガスの供給は、最後はヨーロッパのマーケットに売られてきている。

●二〇二〇年までに液化天然ガスの形のシェールガスは、ヨーロッパにかなりの量が流れ込むと予測されており、さらにはヨーロッパ域内での採掘も始まる可能性がある。

●また、ヨーロッパはこの革命の第二ステージとして、原油価格が減少の圧力にさらされるために、それが得になると言えよう。

●また、EUにとってはアメリカが原油を自給自足できそうなところに懸念がある。危険なのは、アメリカが中東の湾岸地域から石油の流れを確保しようという直接的な動機を失うからだ。

●少なくともこれが示しているのは、ワシントンがヨーロッパにエネルギーの安全保障にたいしてさらなる投資を行うように求めてくることになる、といことだ。

●EU側のオプションとしては、天然ガスの燃料への使用を開発することによって、エネルギーの安全をヘッジすることだ。そうなると産油国は価格下落に直面して状況が厳しくなる。

●中国にとってもシェールガス開発のインセンティブは大きい。アメリカのエネルギー省の調査によれば、中国の保有量はアメリカのそれよりも多いのだ。

●北京政府が交通機関用にシェールガスを開発する地政戦略的な理由は、米海軍が太平洋と中国の石油タンカーの通るほとんどの海域をコントロールしているからだ。中国が天然ガスを交通機関用に使えるようになれば、アメリカの海上封鎖を無効化することができるのだ。

●それにたいして、ロシアとサウジの将来は厳しい。シェール関連や天然ガスのインフラは今後増えるだろうし、マーケットの価格下落を避けるのは難しいからだ。

●地政学的に、シェール革命はアメリカの立場を強め、中国のエネルギー依存を減らし、財政問題に直面しているグローバル経済を活性化させ、ロシアとサウジアラビアの立場を落とす可能性がある。

●西側諸国と中国にとってシェール革命は素晴らしい可能性を秘めており、これを推し進めるべきであろう。

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原油の供給も同じテクノロジーのおかげで増えるから価格も下がると。ロシアとサウジにとっては最悪の事態、ということですな。

天然ガスで車を走らせるというのはどうなんでしょうか。
by masa_the_man | 2012-12-28 12:00 | ニュース | Comments(7)

中国の空母

すでにご存知かと思われますが資料代わりにここへ


by masa_the_man | 2012-11-26 20:30 | ニュース | Comments(6)
今日の横浜北部は、朝から曇っておりましたが、いまは晴れて来ました。

さて、久々に安全保障関連の記事の要約を。書いたのはイギリス人の若手研究者ですが、なかなか鋭い分析をしております。

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最高の国防は「対話」にあり
By ウォルター・ラドウィグ

●米国務省の「日米安保は尖閣に適用できる」という声明発表と、時期を同じくして行われたレオン・パネッタ米国防省長官の北京訪問は、米中間で高まりつつある、アジアにおける軍事プレゼンスの緊張を見せつけることになった。

●この状況では、中国側はアメリカに対抗しようとしており、国防戦略が外交に絡んでくると危険な「勘違い」が生じやすくなる構造も浮き彫りになっている。

●オバマ政権のアジアにおける「軸足」の根拠となる米軍の軍事戦略は、国防省内では「エアシーバトル」として知られている。

●この戦略は、海・空軍の長距離機動投射能力を使って、潜在的な敵国が米軍を「排他地域」に侵入してくるのを阻止するために設置する機雷や潜水艦、対艦ミサイルなどの高度なテクノロジーを克服することを狙って採用されている。

●これは対イラン戦にも使えるのだが、主な狙いはアメリカの同盟国が段々と対立姿勢を見せてきている中国に警戒感を強めている、アジア・太平洋地域に採用されるものと想定されている。

●これにたいして北京政府は「中国に対する明確な挑戦の兆候だ」と解釈している。

●つい先頃の尖閣危機が起こった時、私は北京に滞在中で、様々な中国の戦略関係者と会合を行っているところだった。この会合ではっきりとわかったのは、北京は「エアシーバトル」や、それよりも大きなアジアへの「軸足」の転換を北京に対する挑発であると感じているということだ。

●ところが同時に判明したのは、人民解放軍や北京政府では、自分たちの圧力的な戦略が地域や隣国を恐れさせているものなのかを理解できている人はほとんどいない、ということだった。

●その反対に、多くの中国側の関係者たちは、「中国の立場を強力に海外へと推し進めていけば必ず他の大国から尊敬と協力を得ることができる」と信じていたのだ。

●一方でアメリカの政府関係者たちは、エアシーバトルは特定の国に向けて用意されたものではなく、あくまでも中東やアジア・太平洋地域で安全保障の維持のために必要となる軍事能力の維持のためのものであるという苦しい公式説明を行っていた。

●ところがプライベートの会話では、彼らはエアシーバトルは次の台湾海峡危機や南シナ海における紛争を念頭に置いたものであることを告白するのだ。

もちろん中国もアメリカも、相手側が敵意を持っており、自分たちは防衛のために軍事的な準備を行っていると見なしている。よって、このような状況で公式声明として出される「調和のある関係づくり」が少なくとも虚しい言葉に聞こえてしまうのは当然であると言えよう。

●ストックホルム国際平和研究所は中国が二〇一一年度に国防費として1290億ドル使ったと発表しているが、このうちのかなりの部分が「A2」(近接拒否)の能力の獲得に使われたとしている。

●その大規模な国防費にかかわらず、中国の軍事テクノロジーと軍はほとんど実戦を経験しておらず、最後に使われたのは一九七九年のベトナムへの侵攻で失敗した時だ。

●さらに重要なのは、北京政府の主な安全保障の関心は国内に向いているという事実だ。つまり人民解放軍のかなりの数が国境や治安維持のための支援に使われているのだ。

●また、人民解放軍では、それぞれの管区が独立して「軍閥」になるような事態を防ぐために、かなりの努力や資源が使われていることも指摘しておくべきであろう。

●一方でアメリカ人は、米軍が世界の国際秩序を担保して維持するポジティブな役割を果たしていると考えがちである。

●たとえばペルシャ湾地域にプレゼンスを維持することによって、石油がアジアやヨーロッパへ流れるのを見守ったり、アジアやヨーロッパで安全保障を担保することによって互いの敵対関係を緩和し、互いの経済成長に集中させるように仕向けるというものだ。

●ところが中国にとってアメリカが脅威に映るのは当然といえよう。なぜならアメリカには自分たちよりも六倍もの国防費があり、アジアでの第三、第四、第五の強さの軍事力をもつアジアの国々と同盟関係だったり戦略的パートナーになったりしているからだ。

北京の政策家たちが認識しなければならないのは、米軍がグローバルなコミットメントを行っており、そのうちのほんの一部がアジア太平洋地域に向けられているという事実だ。

●その証拠に、オバマ大統領の「軸足」発言にもかかわらず、米陸軍と海兵隊は、イラク戦争前のレベルに回復されるだけであり、しかも恒常的な派兵は考えられておらず、国防費の総額も次の十年間で4870億ドルの減額されることになるのだ。

●もちろん私はアメリカに「エアシーバトルをやめよ/A2への対抗をやめよ」と提案しているわけではない。民主制度や重要な貿易相手国とのアクセスを守り、同盟国を安心させるためには、アメリカの軍事力の投射能力は必要となってくるからだ。

●ところがこのコンセプトは、中国の戦略関係者の間には深い不信感を呼び起こすものであり、この戦略でカギになってくるのは、中国のトップのリーダーや学者、それに戦略家たち、そして次世代の若い軍のリーダーたちに広い交流関係を築くことなのだ。

●米軍が頻繁に行っている近代化についてや、中国の軍事力と行動についての率直かつ明快な説明は、両者の対話に欠かせないものであり、世界の二大経済国同士の協力関係にも必要なものだ。

●それとは反対に、軍事戦略だけの狭いフォーカスは互いの疑いを増すだけであり、コストのかかるライバル関係をエスカレートさせるだけだ。

●両国は、軍事計画というものはリスクのヘッジを狙った最悪のシナリオの想定であり、どちらかが望む結果を表明したものではないということを思い起こす必要があるのだ。

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「エアシーバトル」の話が出てきましたが、この記事の筆者が勘違いしているのは、これは「作戦」であり、「軍事戦略」ではないというところですね。

それと興味深いのは、北京も米国も、「自分が強硬的な姿勢を見せれば他国は屈服する」という意識を持っていることが伝えられていることでしょうか。

これはつまり、大国というのもの他国が自分の力を恐れて「バンドワゴニング」するというバイアスを持っているということを図らずも表明してしまったということです。

問題なのは、この「バンドワゴニング」というものは歴史上あまり発生していないということですね。つまり豊富な軍事力をそなえた大国というのは、「他国がバンドワゴニングする」と勘違いする傾向、いわば「バンドワゴニング思い込みバイアス」(?)を持ちやすいということです。


「中国の地政学と大戦略の失敗」CD

by masa_the_man | 2012-10-09 09:54 | ニュース | Comments(4)
今日の横浜北部は相変わらず朝から暑いですが、多少雲が出てきてくれたおかげでここ数日よりも過ごしやすい気が。

さて、ちょっと前のものですが、またテクノロジー関係について興味深い記事がありましたので、その要約を。

内容は「シリコンバレーでハードウエア開発がブームになっている」ということでして、これは「ものづくり」が大事な日本にとっては気になるところかと。

「軍事における革命」(RMA)に関する本でトフラー夫妻は、第一次湾岸戦争(イラク戦争)を「完全に3次産業だけで行われた戦争ではなく、2次産業との組み合わせだった」と指摘しておりますが、このようなテクノロジー界における「2.5次産業化」の例を実際に実感させてくれるような良い記事です。

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シリコンバレーの「ハードウエア・ルネッサンス」
by ニック・ビルトン&ジョン・マーコフ

●近年のシリコンバレーは「シリコン」を忘れているようだった。それは.comやウェブ広告、SNS,
それにスマートフォン向けのアプリばかりをやっている感じだった。

●ところがここ最近は、ハードウエアが新しいソフトウエアとなりつつあるように見える

●このトレンドは二・三年前のフリップビデオの発売からはじまったものであり、サーモスタットの「ネスト」や携帯カメラの「ライトロ」、それにスマートフォンと交信できる腕時計の「ペブル」などの登場によって加速したものだ。

●もちろんこれらのハードウェアはシリコンバレーでは作られていないのだが、そのデザインや製作・試作、それに必要な開発資金などは、この地域の小規模なベンチャー企業によって行われているのだ。

●この変化はなぜ起こったのだろうか?それは新製品の開発・製品化までの一連のコストが下がり、スピードがアップし、それに付随していたリスクが下がったことにある。

●もちろんこれはソフトウェアの重要性が下がったという意味ではない。むしろこれは、ハードウェアがソフトウエアと密接に統合されてきたと言ったほうが正しいのだ。

●アップルが製品デザイナーに教訓として教えたのは、「電子機器は、それ専用の使い勝手をよくするソフトウエアがなければただのゴミである」ということだ。

●そして現在では、すべての製品デザイナーたちがコストの安い3Dプリンターを使ってすぐに試作品を作れるような状況になってきている。これによって海外、とくに中国にある工場で作るよりも速くできるようになったのだ。

●またこのおかげで、製品デザイナーやエンジニアたちはテクノロジー開発をさらにスピードアップできるようになった。

●サンフランシスコにある製品開発会社「ライムラブ」の創設者の一人は「いままで三ヶ月かかっていた開発を、たった一ヶ月でできるようになりました」と説明している。

●「3Dプリンターがあれば使い捨てのような感覚で試作品ができますよ。夜に注文して翌朝受けとり、朝11時に破棄することも可能になったのです」とは彼の弁。

●コンピューター関連機器の製品開発コストの急激な低下は、一九九〇年代後半からシリコンバレーではじまっていた「ソフトウエア主導の開発」というレンドを消滅させ、新しいイノベーションの波を発生させることになったのだ。

●ベンチャー資本家のオサリバン氏は「いまから15年くらい前の世界と比べると、今の世界の変化は劇的ですね。iPhoneのような製品は部品価格を下げる役割を果たしたおかげで、われわれの生活を一変させるような革命的なデバイスを簡単に開発できるようになったのです」と述べている。

●この点を証明するために、オサリバン氏は小規模な九社のベンチャー企業の幹部を連れて中国まで行き、111日間にわたって各会社が新製品を製造できるまで指導している。

●オサリバン氏は自分のサンフランシスコにある投資会社を「ハクセルレーター」と名付け、六月にそのシステムから出てきた新製品を発表している。

●その一つが「シャカ」という会社がつくった帆船用の風速計であり、キンドラという製品は女性の排卵日を知らせるiPhone用のアクセサリーを作った。ビリボットというプロジェクトはオープンソースの低価格のロボットをつくるものだ。

●このようなシリコンバレーに見られるdot.comやウェブサービスやSNSからの撤退傾向は、実際はこの地域のルーツへの回帰とも言える。

●なぜならシリコンバレーは一九三〇年代後半に電子機器のデザインの中心地としてはじまったのであり、これはヒューレット&パッカード(HP)がディズニー映画の「ファンタジア」のために音源発信器を作った頃である。

●一九七〇年代初期にはセミコンダクターの会社が乱立したおかげで「シリコンバレー」という名前がついた。七〇年代半ばにはコンピューターを趣味とした人間たちが集まり、そこから生まれてきたのがアップルである。

今日のシリコンバレーにおけるハードウェア関連のベンチャー企業で最も成功しているものは元アップル社員ばかりであり、彼らは自分たちの手でハードとソフトを両方一緒に手がけたいと考えている人ばかりだ。ここにアップルのDNAが受け継がれている。

●iPodとiPhoneをデザインしたチームを率いたトニー・ファデルは、最近になってNestという会社を立ち上げたのだが、これは美しいデザインの家庭用スマート・サーモスタットをつくっている。

●最初の四代のiPhoneをデザインしたヒューゴ・フィエネスはエレクトリック・インプという会社を立ち上げたが、これは家庭にある日常品をインターネットにつなげようと計画している。

●そしてグーグルのAndroidを率いているアンディー・ルービンは、その前はアップルのエンジニアとして働いた後に起業を手がけていた。そしてAndroidというソフトウエアはスマートフォンにしっかりと統合されたものであるが、これは結局アップルのiPhoneのライバルとなったわけだ。

●ハードウエア企業でブルートゥース関連のスピーカーやヘッドフォンを製作している「ジャウボーン」社の社長であるホサイン・ラーマン氏は、アップルが最近のハードウエアの新興企業の考え方のスタンダードに与えた影響は大きく、「アップルのおかげでハードルが上がりました」と言っている。

●しかし彼が警告するのは、「たしかにアイディアを製品にするコストは下がりましたが、それでもサプライチェインやマーケティング、それに配送等に関してはスケールを小さくするのは難しいです」ということだ。

●だが配送などはテクノロジーによってシンプル化されている。たとえばEbayやアマゾン、それにグーグルのマーケットプレイスなどは、誰でもウェブ上に店を展開して行商するのを可能にしはじめているのだ、

●ハードウェア関連の起業が盛り上がりを見せるなか、ニューヨークとシリコンバレーの起業家たちはベンチャーキャピタルの投資を呼び込もうと狙っており、その動きも活発化している。

●ある起業家は「ハードウェアの開発にとって一番の障害だったのは資金です。ところが消費者側の意欲の盛り上がりと開発コストの低下のおかげでベンチャーキャピタリストたちもハードウェアの開発に財布のヒモを緩めつつあります」と言っている。

●アンドロイドを使ってゲームを製作する会社や上述したペブルなどは、最近8億円から10億円規模の資金を提供されたばかりだ。

●このようなコスト低下の象徴は、名刺サイズの超小型PCであるラズベリー・パイだ。たった25ドルであり、これは最近のものでもブレイクスルー並みのイノヴェーションであると言われてバカ売れしている。

●マーケットの分析をするケヴィン・ヤップ氏は、「人々はこれを使って新しいデザインをマーケットにより素早く送り届けることができるようになります」と言っている。

●スチュアート・ブランド氏は、ソフトウエアというのは情報と同じように「自由になりたがっているのです」と述べており、オサリバン氏は「ハードウエアはソフトウエアと同じくらい低価格になったのです」と言っている。

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つくづく実感するのが、戦略の階層のトップにある「デザイン」(世界観)と、その底辺にある「技術」が、まるで統合作戦のように結びついてきているという実態ですね。

いままでは「ハードのみ」もしくは「ソフトのみ」という形で開発が行われていたのが、いまやテクノロジーの発展によるコスト低下、そしてアップルの成功で、ソフトとハードの「統合」による開発が進んできているということでしょうか。
by masa_the_man | 2012-09-15 12:48 | ニュース | Comments(6)
今日の横浜北部は朝から晴れておりまして、おそらく暑くなるかと。まだ真夏が続いております。

さて、すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、昨日発売された「夕刊フジ」に私のインタビュー記事が掲載されました。

基本的に新しい本の紹介コーナーということなんですが、実際のインタビューはけっこう地政学の細かいところまで聞かれまして、聞かれた本人としても楽しい時間を過ごさせていただきました。

実はインタビューを受けたのは先週の金曜日で、場所は産経新聞の本社の会議室を借りて行いました。正味一時間くらい話をしたのですが、この記事を書いた方がなかなか優秀でして、この本をかなり読み込んでしっかりと概念を理解していただけでなく、私の他の本も一通り読んで基本的なところは押さえていてくれました。

掲載された写真についてはまあ賛否両論色々とあるわけですが(苦笑)もう少し話をしている時は深刻そうな顔をしたほうがいいですかね?

さっそく記事のほうは全文が夕刊フジのサイトであるZAKZAKのほうに掲載されておりますので、ご興味のあるかたはぜひご覧ください。

以下は冒頭部分だけ貼付けです。

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“ハウツー本頼み”では勝者になれない!“脱スキル奴隷”のススメ
2012.08.29

 ビジネス書のタイトルや経済誌の特集には「技」や「術」があふれている。不況の深刻化により、即効性のあるハウツーが求められているからだろう。が、戦略の専門家によれば、いくら場当たり的な対処をしても最後に笑う勝者にはなれないという。テクニックの“奴隷”にならない戦略的な生き方とは-。

 「3年後に年収○○○万円を達成する術」「TOEICで○○○点を取る技」「もうかる財布の使い方」などなど。スキル、つまり自らの武器となる技術を高めることで不況時代を乗り切ろうとする傾向が顕著だ。

 地政学・戦略学者の奥山真司氏が警告する

 「スキルに関する目標は達成すると、また一から目標を立てて新たな技術を身に付けなければならない。自分の人生に有利になるような仕組みを作ったわけではないため、環境が変化すれば、それに合わせる努力をまたしなければならない」

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以上。
by masa_the_man | 2012-08-30 09:11 | ニュース | Comments(7)
アップルとサムソンの特許裁判の行方についての最近のニュースに関連して、ちょっと前に要約した以下の記事を再掲します。かなり参考になるかと。

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「最新機器」というのは、人間の感情とむすびつきやすく、それが「宗教戦争」を起こす原因となっているという興味深い記事です。

政治学や心理学との共通項もありますし、本ブログではおなじみの「恐怖」「利益」「名誉」という三要素に関する話もあります。

これは本ブログで何度も強調している通り、「テクノロジー」というものには、人間の思想や感情が込められやすいからです。

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テクノロジーに関する罵詈雑言コメントと「宗教戦争」

●ある読者から以下のようなコメントをいただいた。

●「君が今日NYタイムズに載せた記事はくだらないね。ギャラクシーSIIIはダサいし、冷たく感情の感じられない、失敗作だ。単なる次世代携帯というだけで特徴がない。画像はキレイになったけどビジョンはない。昔のあなたの記事はよかったけど、今は僕たちにゴミを勧めているのかい?あなたはクビになって別の人のわかっている人に記事書いてもらいたいです。」

●このようなコメントをいただくのは、テクノロジー系の批評家の仕事のうちの一つだ。舞台や音楽系の批評家も同じようなメールを送りつけられていることは想像に難くない。

●ぶっちゃけ言うと、最近の私のこのようなコメントに対する反応は「好奇心」である。このような読者には一体何が起こっているのだろうか?たんなる大量生産品になぜここまで感情的になれるのだろう?

●上のコメントをくれた読者について少し考えてみよう。

●まずこのコメントをくれた時点で、まだその携帯は発売されていないのだ。つまり彼はそれをまださわって試せるわけがなかったし、コメントのような判断ができるわけがなかったのだ。

●では彼がここまで断罪できる根拠は何だったというのだろう?

●80年代から90年代の最新テクノロジーに関する「宗教戦争」の図式はもっとシンプルだった。アップルとマイクロソフトの二大巨頭しか存在しなかったからである。

●アップル側の人々は、マイクロソフトが発展したのは品質ではなくアイディアを盗んで活用したからという理由で批判していた。逆にマイクロソフト側の人々は、アップルの製品がキザでエリートっぽく、しかもやたら高いことに文句を言っていた。

●しかもそこには「判官贔屓」という要因もまざっており、好きなチームに肩入れして応援するという心理が働いていたのだ。

●もちろんマイクロソフトとアップルの間の憎しみ合いはまだ続いている。私は先日ある製品発表会で同業者のコラムニストと似たような罵詈雑言コメントをもらうことを確認して大笑いしたばかりだ。

●ところが最近はまた新しい「宗教戦争」がはじまった。グーグルvsフェイスブックだ。カメラだとニコンvsキャノン、電子書籍リーダーだとキンドルvsヌックだ。そして今はサムソンだ。

●ではなぜ多くの人が私のような携帯電話のレビューアーの書いた記事にわざわざ自分の時間をつかって大量の罵詈雑言メールを送ってくるのだろうか?

●政治学ではこのような現象に「敵対的メディア認知」(the hostile media effect)というコミュニケーション理論の名前がつけられている。

●これは、あなたがあるトピックに関心をいだいていて、たまたま見たメディアの報道の仕方が自分の見解と異なると、実際にその報道がいくら中立的なものであったとしても「バイアスがかかっている」と感じる現象のことだ。

●この現象は、エレクトロニクス業界だと「恐怖」という強力な感情によって、さらに大きく増幅されるのだ。

●たとえばある製品を購入してしまえば、あなたはすでにこの製品に固定されることになる。ようするにあなたはあるブランドにすでにコミットしてしまったということだ。

●しかもそれが電子書籍リーダーであれカメラであれ、とにかくすでに多くの資金をつぎ込んでいるのだ。

●そうなると誰かが別ブランドの新しい製品を素晴らしいとコメントしたとする・・・これはすでに別の製品を持っている彼らにとっては恐怖以外のなにものでもない

●そうなるとあなたはこのコメンテーターのことを、あたかも自分の製品、そしてあなた自身、そしてあなたの「知性」を酷評したと勘違いしてしまうのだ。なぜなら賞賛した製品はあなたが選んだ製品ではないからだ。

つまりこのコメンテーターは「あなたは間違った選択をしました」と自分に対して言っていることになり、無駄金を使ったように感じさせることになるのだ。

●さらには社会的に見られる姿という点においても恐怖を加速させる。アップルの製品は単なる機器ではなく、最近はそのデザインのおかげで「ファッション」になってきたのであり、あなたが持っているものはあなた自身を表すように思えてしまうのだ。

●たとえばマイクロソフトのZuneはデザインの優れた音楽プレイヤーだったが、生産打ち切りになってしまった。その理由は、iPodのほうがかっこよかったし、iPodをもってダンスするシルエットの広告がかっこ良かったからだ。

●逆に人々は、Zuneをもっているおかげで哀れみを感じてもらいたくないのだ。

●ここでまた同じメカニズムが発生する。新しくてよい製品を褒めると、読者には「あなたは選択を間違えた」ということだけでなく、「あなたにはセンスがない」と言っているように聞こえてしまうのだ。

●それはまあよいとしても、ではなぜ電機製品でこういう現象が起こるのだろうか?なぜ朝食のシリアルやレンタカー会社、それに保険会社のブランドの間でこういう戦いは起こらないのだろうか?

●もちろんその答えは、それが日常的に比較検討されないからだ。たとえば朝食用のシリアルについて毎週比較するような記事なんか書かれないのだ。

●ところがネットというのもこの要素の一つに入っている。テクノロジー系の製品が「宗教戦争」で争われる理由は、インターネット自体がテクノロジーにのっとった場だからだ。

●しかもその匿名性のおかげで、ネットでは人前では言えないような過激なことも言えてしまうのだ。

●私はネット上でもっと大人な、落ち着いた議論ができればいいと思っている。どのような携帯を持っていても個人の価値には関係ないことを学んでくれたらなおいい。

●ところがこんなことを言っても、それはまるで「われわれはもっと身体を動かすべきだ」とか「国家はもっと仲良くすべきだ」と言っているようなものだ。ようするにわれわれの「人間の本質」の中には、なかなか変化させることができないものがあるのだ

●そして明らかに最新ガジェットに関する人間の感覚は、その内の一つであろう。

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結論は、戦略学でも中心的なテーマになっている、人間の本質(human nature)の不変性というところに落ち着きました。
by masa_the_man | 2012-08-29 00:00 | ニュース | Comments(1)
遅れましたが、メルマガを更新しましたのでお知らせします。

今週は先週に引き続き尖閣問題を考える上で最も大切になってくる適切な「前提」を、具体的に二つほど挙げております。

これについてはみなさんもそれぞれ意見があると思うのですが、できればそれを聞かせていただきたいところですね。

とにかく必要なのは、日本の「世界観」と中国の「世界観」を知ることかと。片手落ちではダメです。

ということでご興味のある方はこちらまでぜひ!

▼尖閣衝突の「前提」を考えよう(その2)▼


by masa_the_man | 2012-08-13 11:43 | ニュース | Comments(1)
お知らせです。現在販売中の経済誌、「東洋経済」と「エコノミスト」に、カプラン著、拙訳の『インド洋圏が、世界を動かす』が紹介されました!感謝!

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by masa_the_man | 2012-07-26 10:10 | ニュース | Comments(0)