戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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カテゴリ:おススメの本( 84 )

名著で学ぶ戦争論

今日の甲州は昼まで天気がもったのですが、午後から梅雨らしくなってしまいました。あいかわらず家の周辺では桃の香りが漂っていております。

さて、今日も簡単におススメ本の紹介を。
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『名著で学ぶ戦争論』
by 石津 朋之(編著)

これは最近発売された、いわば「戦略学」の基本文献/教科書を50冊簡単にまとめて紹介したものです。

このリストをみれば、欧米で戦略学の授業を受けた人間からすれば「ああ、やっぱりねぇ」というスタンダードなものばかり。

ただしそれらの本の内容はかなり高度なものもありまして、未訳のものも多く、入門書とは言えないようなものもけっこう含まれておりました。

また、ここで紹介されている本をみると、いかに良い本が日本でまだ邦訳されていないのかということまで実感としてよくわかると思います。

個人的にはキーガンの『戦争の様相』やブラックのものが一冊も入っていないこと、そして『戦略論の原点』が入っていないこと(苦笑)はちょっと気になりましたが、それでもこれだけのレベルのものをまとめて紹介したという意味は非常に大きいと思っております。

あまり初心者向けではないですが、欧米で戦略学/安全保障学で授業を受けたいと思っている方々には必読です。
by masa_the_man | 2009-07-04 00:20 | おススメの本 | Comments(27)

セックスと戦争

今日の甲州はまたまた昼間に晴れまして、梅雨などどこ吹く風で気持ちよい一日を過ごしました。

北朝鮮がまたミサイル発射して末期的な政治状況を晒しておりますが(私は秋までもたないと思っておりますが)、個人的には論文を書くだけという、至って平和な毎日を過ごさせていただいております。

実は近所に桃の集荷所というか共選所がありまして、最近はここからお世話になった人にお中元代わりに桃を発送しております。

この共選所の良い点は、センサーなどで外れた桃が外においてあってそれが無料で食べ放題なところでして、これを目当てに私は人に桃を発送してもらったあとについでにこのタダ桃を食らいつくのですが、ここ数日で本格的に季節に入ったようで、今は加納岩というちょっと小さめですが甘い種類の桃が味わえました。

首都圏などにここから出荷されているらしく、昨日は新宿の伊勢丹のデパ地下にも出荷したようで、最盛期である八月はじめあたりには、六個入りで一万円のもの(!)もここから出るとか。すごいもんです。

さて、またまたおススメの本を。今度は英語ものです。

戦略学や国際関係論などでは「戦争の原因」というのは昔から大きなテーマであり、これについての議論が元になって国際政治の理論が生まれたりしていることは、拙訳の『大国政治の悲劇』などをお読みになった方々はご存知の通り。

たとえばネオリアリズム系の理論書として有名なのはスティーヴン・ヴァン・エヴェラなんかのものがありますが、さらに重厚なものとして古典扱いされているのは、なんといってもジェフリー・ブレイニーが70年代に書いた、ズバリ『戦争の原因』(The Causes of War)。

ところがまだまだこのテーマについても議論は収まっておりませんで、基本的にその時代に流行している最先端の学問の考え方が入り込んでくるというパターンがけっこうあります。

地政学などはまさにその典型。

で、現在の「戦争の原因」論争で新たに取り入れられているのが生物学でして、その成果となったのが以下に紹介する

Sex and War: How Biology explains Warfare and Terrorism and Offers a Path to a Safer World
by Malcolm Potts and Thomas Hayden

というもの。

かなり過激なタイトルなんですが、内容はけっこうまじめでして、人間の集団的な暴力のルーツを自然から探るというもの。

とくにこの著者たちは「同種を殺すのは男性がいるから」ということでして、資源と領土をかけた戦いというのは生き残りのための戦略であることを認めます。

そうなると必然的に人類はこれからも争いを続けるという結論になりそうなんですが、この著者たちはけっこう楽観的でして、

「我々の行動のルーツを見つめ直し、女性に社会進出させ、暴れる若者を減らすような家族計画(つまり人口統制)をやっていけば大丈夫」

という主張をしております。おおっ、これは典型的なリベラル的結論(笑

こういう本はけっこう真面目に研究された割には結論は脱力系のものが多かったりするのですが、昨日のエントリーのような「西洋人の思考」という点から考えるとこういう結論が出るのも納得できるような。

あまりおススメではありませんが、西洋式の典型的なパターンのものであるという意味では読んでみるのもわるくないかも知れません。
by masa_the_man | 2009-07-03 01:01 | おススメの本 | Comments(0)
今日の甲州は梅雨時にもかかわらず雨がほとんど降りませんで、昼頃には日も射しておりました。夜になっても暑いですなぁ。

さて、久しぶりにおススメの本の紹介を。

二週間ほど前にイギリスに行っていた時に図書館で見つけて、その後に本屋で購入した本がこれです。

The Geography of Thought: How Asians and Westerners Think Differently...and Why
by Richard Nisbett

これは西洋人と東洋人の「世界観」の違いを心理学的な観点から分析したものですが、私の地政学のテーマにもからんでくるのでとても興味深いテーマでした。

ところが帰りの飛行機の中で読んでみると、何かがおかしい。なぜならどうも内容を私自身がよく知っているからです。

何か不思議な感覚のまま家に帰ってくると、なんと本棚に邦訳版があるじゃありませんか(苦笑)

「木を見る西洋人 森を見る東洋人:思考の違いはいかにして生まれるか 」
byリチャード・E・ニスベット

詳しくは読んでいなかったのですが、これはだいぶ前にさらっと読んだことのある本でした。

原題を直訳すると「思考の地理学」ということなので、これはまさに「東洋vs西洋」の世界観の違いを表している私の興味にドンピシャだと思ったわけですが、英語で詳しく読んでから自分で邦訳をすでに購入していたことを気付くとは・・・・。

この本の中で私が一番気に入った箇所は、邦訳版の5p〜6pにある、

西洋人が特定の事物を周囲の文脈から切り離して捉える傾向をもっていることや、「対象を支配する規則さえわかれば、その対象をコントロールすることができる」と信じている

という部分ですね。

前半はやや専門的な話が多いですが、知的刺激が満載の面白い本です。みなさんもぜひ。
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by masa_the_man | 2009-07-02 01:01 | おススメの本 | Comments(40)

安全保障ジレンマ

今日の甲州は朝からスッキリ晴れております。ほとんど雲がなく快晴で、うちから富士山の頂上も少し見えてます。

さて、久しぶりに本の紹介を。

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National Security Dilemmas: Challenges & Opportunities

By Colin S. Gray (foreword by Paul K. Van Riper)

知っている方もいらっしゃると思われますが、これは私の先生の最新刊本であります。

実は先生は去年の暮れあたりから自身の最高傑作と認めている『現代の戦略』(Modern Strategy)を越えるものを書いていると言っていたので、この最新刊はこれなのか???と思って注文してみたところ、中身はいままで陸軍のシンクタンクのために書いていたモノグラフを集めたものでした(苦笑

しかしこの本の良いところは、まずあのヴァン・ライパーが興味深い「まえがき」を書いているところでして、このライパーは海兵隊の軍人としての輝かしい経歴を持つ他にも、知識人として戦略業界(?)ではけっこう名が知られております。現在も政府のアドバイザーなんかを務めてますね。

ライパーはなんといっても二〇〇二年のウォーゲーム(ミレニアムチャレンジ)で伝説を作っておりまして、この時に敵側(イラン?)のチーム(レッドチーム)のリーダー役をつとめ、アメリカの船を「群れ戦術」(swarming tactics)を使って16隻沈めた実績を持っております。

次に良いところは、私の先生がこの本のイントロダクション的に書いた第一章の一番最初で、

This book is about control.

と書いているところでしょうか。

「コントロール」という言葉に敏感になっている私としては、個人的にもかなりニヤけてしまう最初の言葉でした。

本自体はかなり分厚く、内容もあまり初心者向けとは言えないのかも知れませんが、かなりフォーマットがしっかりとしており、いわゆる政府高官のためのブリーフィングペーパーのような作りになっていて、各章の最後にポイントフォームのような形でまとめが入っているという点でしょうか。

各章のトピックは「抑止論」や「RMA」、それに「先制攻撃論」など、いわゆる戦略のトピックの中でもここ数年に話題になったものを扱っているわけですが、相変わらずクラウゼヴィッツのエッセンスを上手く活用しているなぁという印象があります。
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by masa_the_man | 2009-05-20 11:43 | おススメの本 | Comments(6)