戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

カテゴリ:おススメの本( 84 )

今日の横浜北部は風がありましたが蒸し暑かったですね。いよいよ真夏です。

さて、ここ数日チラホラ読んでいる本のご紹介。
b0015356_21182919.png


HARD THINGS
by ベン・ホロウィッツ

現在書店にも平積みされている本ですが、立ち読みしてみたら面白かったので即購入。

内容はアメリカ西海岸のベンチャー投資家の話でして、創業者としての心構えを自らの体験を通して語るというもの。IT関連に興味の有る方でしたら、シリコンバレーの歴史書としても読めるかもしれません。

もちろん私はこの辺のテクノロジー系の話は専門ではないのでなんと言えませんが、とくに響いたのが、経営者としての強烈な孤独感や、先の見えなさ、そして不安感などを、成功本という体裁ではなく、どちらかといえば失敗教訓本として書いているという点。

こういうところは、まさにクラウゼヴィッツの『戦争論』と近いものがありまして、戦争の不確実性とIT系の企業の経営の「手探り感」というのが、まったく瓜二つであることがよくわかります。

また、この本はクラウゼヴィッツの言うところの「摩擦」が企業内部においてどのように、そしてどこから発生するのかについて、かなり具体的に書いているところがとても好感持てます。

また、非常にリアリスト的というか、幹部や親友の「解雇の仕方」という、ちょっとドキッとするようなことも詳細にかかれており、日本とアメリカの企業文化の違いを知る上でも参考になります。

この手の本としてやや字が小さめで分量が多いのは仕方ないのかもしれませんが、翻訳も十分読みやすくなっており、起業家を目指さない人でも戦略的な感覚を身につけるという意味で勉強になることが多いです。オススメ。




ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』CD


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』

※詳細はこちらから↓

http://www.realist.jp/clausewitz-business.html



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2015-07-25 21:35 | おススメの本 | Comments(2)

次に出る本のご紹介

今日の横浜北部は朝は快晴だったのですが、午後から雷と雨になるという、なんとも真夏なパターン。

さて、久しぶりに本の紹介をしたいと思います。

といっても、単なる書評ではなく、次に私が出す本を紹介したいのです。
b0015356_2047258.jpg


Modern Strategy
by Colin Gray

原題はそのまま『現代の戦略』です。ただし中身は「20世紀の戦略」という感じです。

すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、わたしの指導教官の「主著」です。1999年に出版されたものですから発売からすでに15年以上たっておりますが、この分野ではさすがに時代を越えた「名著」と言っても過言ではないでしょう。

本文だけで365頁の大著でして、私が単独で手がけた翻訳としてはミアシャイマーの『大国政治の悲劇』に次ぐ長さを誇っております。いやー、長かった。

本書の内容については、すでに『戦略論の名著』という本の中で解説しておりますが、簡潔にその中心的な主張を言えば「戦略は普遍的なものである」ということです。

全般的にクラウゼヴィッツ主義者としてのトーンが色濃く、あらためて私が録音したこのCDも、無意識にこの本の影響を受けていたと今更ながら思わされる部分が多いです。

私が留学した頃、考えてみれば、周りのコースメイトたちはこの本の議論をベースにした知識を土台にしていたことに気づいたのは、翻訳をはじめてかなりたってからのことです。

私が2000年代後半に身につけた古典地政学以外の戦略学の知識は、今回紹介した本と、前回出版したこの本の中にほとんど詰まっていると言っても過言ではないですね。

また、議論の中では「戦略の階層」の実際の使用法が縦横無尽に味わえるのも魅力です。

翻訳原稿そのものの締め切りは8月始めでして、現在最後の追い込みに入っております。やや文章が長いところはあるかもしれませんが、原著者本人の「日本の読者のみなさんへ」という特別寄稿もあります

本ブログ恒例のタイトル募集についてはまだ未定です。できればいいのですが・・・・出版社に聞いてみます。

発売は9月末か10月始めまでになんとか。ぜひご期待ください。


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』CD


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』

※詳細はこちらから↓

http://www.realist.jp/clausewitz-business.html



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2015-07-24 22:51 | おススメの本 | Comments(0)
今日の横浜北部は一日曇りでして、午後は強烈なにわか雨がありました。梅雨まっただ中です。

さて、現在大きな注目を集めている南シナ海について少し。

私がいま住んでいるところにはテレビがないのですが、聞くところによると、本日のNHKの1900からのメインの報道番組であう「ニュース7」で、南シナ海埋め立て問題について、海外取材も交えて扱われたとか。

本ブログや生放送などをご覧の方にとっては、この中国の埋め立て問題というのは取り立てて珍しい話ではないかもしれませんが、個人的には(まだ足りないながらも)大手メディアがここまで取り上げるようになったかというのは、なんというか不思議な気持ちになります。

もちろんこの問題は、今後の国際政治の流れだけでなく、日本の今後の安全保障環境にも決定的な影響を与える可能性が大きいので目を離せないわけですが、日本のメディアは(その善し悪しは別として)総じて安全保障問題には関心が低めです。

そのような中で、当然ながらこの問題に最も関心をもつべきであろう防衛省から、非常に参考になるプレゼン資料(PDF)が公開されました。そのいくつかのキャプチャ画像は以下の通りです。

b0015356_21354790.png
b0015356_2136854.png

b0015356_21363134.png


この資料を見て最初に感じることは、なんというかその独特なプレゼンのスタイルの「匂い」でしょうか。一枚に情報が凝縮されて「テンコ盛り」という感じが(笑

このような資料はとくにこれまでの経緯を知る上で重要なのですが、孫子の頃から言われているように、戦略を考える上で重要なのは「相手がどのようなことを考えているのか」という点です。

ご存知の方は「いまさら」と感じるかもしれませんが、私は昨年の10月末に、この南シナ海問題について、とりわけ中国側の視点を教えてくれるような本を、ほぼ同時に2冊出版しております。
b0015356_22191240.jpg
一冊目はもちろんシカゴ大学教授のジョン・ミアシャイマーの『大国政治の悲劇』(改訂版:脚注付き)でありまして、この中の最終章となる第10章の中で、「中国の台頭は平和的にはならない」という自らの主張を論じる中で、中国にとっての南シナ海の問題について触れております。

ところがそれよりもさらに中国の南シナ海についての見解を教えてくれるのが、もう一冊のロバート・カプランというジャーナリストの書いた『南シナ海:中国海洋覇権の野望』という本です。
b0015356_21455065.jpg
この本は日本版のタイトルがテーマそのものずばりを言い表しているのですが、南シナ海周辺国の安全保障問題を旅行記のような形で説明しつつも、その歴史的な経緯や現地の政府高官へのインタビューなども交えるという、独特のスタイルで書かれております。

その中で、実際にカプランが北京の安全保障セミナーに参加した時の様子が書かれていてとても参考になる部分があります。以下にその部分を要約した形で書き出してみます。

===

●北京には怪しい「特効薬」があふれていた。それは「中国は守りに徹している間に、アメリカは侵略している」というものだ。その核心にあるのが南シナ海の問題だ。

●北京では、タカ派もハト派も関係なく「中国が近代に入ってから西洋の列強に大きな被害を受けた」という感情が深く共有されており、彼らは南シナ海の問題を、例外なく「国内問題である」とみなしている。

●なぜなら彼らは単純に「南シナ海は、海洋に伸びた中国の領土である」と認識しているからだ。

●ある晩、私が中国の学生向けに開催したセミナーでは、緊張に震えながら恥ずかしそうにしていた若者が、「なぜアメリカは我々の調和と慈愛に対して覇権で対抗しようとするのですか?アメリカの覇権は中国の台頭に直面すれば混乱を招くだけです!」と吐き捨てるようにコメントしていたほどだ。

●北京の理屈からいえば、アメリカの権益はまたして「覇権的なもの」と映る。北京の理屈から言えば、アメリカこそが「アジアを支配下におさめて、その莫大な戦力投射能力を、野蛮な形で発揮している」ということになる。

●つまりワシントン政府こそが南シナ海の紛争を「煽る」存在であり、中国ではなくアメリカこそが「抑止されるべき存在」であることになるわけだ。

●結局、中国は東アジアにおいて儒教の価値観を基礎とした冊封体制を2000年近くも維持してきたのであり、ヨーロッパの勢力均衡体制よりはるかに調和がとれて、戦争の少ない状態を維持してきたということになる。

●したがって平和の維持に関して言えば、「欧米諸国は中国に何も教える資格はない」というのが彼らの言い分なのだ。このような独特な感覚は、彼らの地理観によってもうかがい知ることができる。これについては究極の解決法のようなものは存在しないといえよう。

●したがって、われわれは再び「封じ込め」という概念に戻ってしまう。

(pp.234-35)

===

うーむ、なんというか、彼らにとっては南シナ海の問題というのはただ単に(国家の神話によって)「取り返しにきている」という感覚があるわけですから、彼らにとっては「完全に正義」な問題となってしまっているわけです。

もちろん彼らの狙いは、この海域で戦争を起こすことにあるわけでなく、あくまでも地政学的なパワーバランスを修正するためのポジションの修正にあるわけですから、必ずしも周辺国との軍事衝突を必要としているわけではありません。

ただ問題なのは、それを実現するためには軍事衝突が手っ取り早い、と勘違いしてしまう人間が北京や軍人たちの中に出てくる可能性を否定できない部分かと。

まあとにかくこれからもこの問題はダラダラと続きそうです。


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』CD


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』

※詳細はこちらから↓

http://www.realist.jp/clausewitz-business.html



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2015-06-18 22:15 | おススメの本 | Comments(5)

ローマ帝国の大戦略

今日の横浜北部は朝からよく晴れて初夏の陽気でした。そろそろ梅雨でしょうか?

さて、前回のエントリーに引き続きルトワック本の紹介ですが、今回は同時に原著が復刊されることになった、彼の博士号論文を元にしたローマ帝国に関する本です。

b0015356_2135339.jpg

The Grand Strategy of the Roman Empire: From the First Century A.D. to the Third
by Edward N. Luttwak

原題を直訳しますと、『ローマ帝国の大戦略:一世紀から三世紀まで』というシンプルなもので、内容も題名の通り、1世紀から3世紀までの300年間のローマ帝国の大戦略の違いを分析するというもの。

目次は大きく見ればかなりシンプルで、以下の通り。

===

▼推薦の言葉

▼はじめに

▼イントロダクション

▼第1章:ユリウス=クラウディウス体制:オクタヴィアヌスからネロ時代までの従属国と機動的な部隊
ーシステムの概要
ー従属国たち
―従属国たちの管理
―ローマ軍の戦術的構成
―部隊の戦略的派兵
―結論

▼第2章:フラウィウス朝からセウェルス朝まで:科学的な前線と、ウェスパシアヌスからマルクス・アウレリウスまでの妨害的な防衛
ーシステムの概要
―国境防衛:戦術的な面
―国境防衛:戦略的な面
―従属国システムの減退
―ローマ軍
ー結論

▼第3章:縦深防衛:3世紀の大危機と新しい戦略
ーシステムの概要
―脅威の変化
―帝国の新しい国境
―城塞都市と強化点防衛
―国境部隊
―地方部隊
―中央野戦部隊
―結論

▼エピローグ

▼補遺

===

これだと元の論文が3部構成で書かれていたことが一目瞭然という感じですが、ルトワックはこのように時代を完全に3つにわけて、およそ100年間ごとのローマの大戦略(grand strategy)の特徴をそれぞれ分析しております。

まず各時代のローマ帝国の大戦略を「システム」(体制)と名づけて、第1章で紹介するシステムは「覇権的拡大」、第2章のシステムは「領土安全保障」、そして第3章では「先細りする状況」というシステムであるとして詳しく解説していきます。

普通のローマ帝国に関する本を読むと、ローマ軍は戦術的にも好戦的であったというイメージがありますが、ルトワックによればそれは間違いで、たとえばユダヤ戦争におけるマサダ要塞の攻略戦(70-73年)などでは、極めて慎重な攻略法をとっていることを指摘しております。

というのも、ローマは紀元前146年までのカルタゴとの戦いで大規模な軍隊を使う戦争の戦い方における複雑さを学んでおり、それ以降の五賢帝の時代などの拡大期には、むしろローマ軍に好戦的な戦術を使わせるよりも、軍隊の存在による脅しを使う「強制外交」をとっていたと分析します。

つまりローマ人たちというのは、その領土の拡大期には「抑止」的な軍隊の使い方をしており、戦略における物理的な面よりも、むしろ相手の恐怖心にどこまで訴えかけることができるかという、いわゆる心理的な面をよく理解していたというのです。

このようにみると、まさにローマ帝国興亡史という感じですが、とりわけその戦略面・軍事面から見ているという意味では画期的なものかもしれません。地図や図、それに表なども意外に豊富です。

これをざっと読んでみての感想ですが、どうしても現在のアメリカの大戦略との比較をしたくなってしまうほど現代的な示唆に富んでおります。また、戦略における心理的な面や相手の反応の重要性など、後に『戦略論』に集められたアイディアの数々がすでにここに現れていたことを発見したのも興味深いところでした。

この続編として、ルトワックは『ビザンツ帝国の大戦略』という大著を再び2009年に出しました。こちらはおそらく翻訳はされないでしょうが、さすがに本人も認めるだけあってなかなかの名著です。

このような本を「クーデター入門」と全く同じ著者が書いたとは思えないほどですが(苦笑)、その歴史分析の正確性はさておき、その後にローマ軍そのものに対する興味を喚起したという意味では、一つの功績があったと言えるでしょう。

そろそろこれの新板が出るようですが、果たして邦訳は実現するのかどうか。


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』CD


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』

※詳細はこちらから↓

http://www.realist.jp/clausewitz-business.html



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2015-06-04 23:04 | おススメの本 | Comments(5)

戦略文化の本:その2

今日の横浜北部は曇りがちでしたがすっかり初夏でした。午後から気温下がりました。

久々にブログ更新です。実はここ一週間くらいたまった疲れから体調を崩しておりまして、先週山梨に行った時などは実家でただ寝ているだけという悲惨な状況でした(苦笑

さて、すでに某学会で紹介した戦略文化に関する最近の本の内容のつづきを。

b0015356_23311188.jpg

Strategic Cultural Change and the Challenge for Security Policy: Germany and the Bundeswehr's Deployment to Afghanistan
by Carolin Hilpert

タイトルを直訳しますと、『戦略文化の変化と安全保障政策への課題:ドイツと連邦軍のアフガニスタン派兵』となるでしょうか。

著者は新人のドイツの女性学者でして、どうやらこの本は彼女がスイスに留学した後にドイツの国防大学で書いた博士号論文を著書にした、デビュー作のようです。

内容はもちろん「戦略文化」(strategic culture)という概念を近年のドイツの事例に当てはめて分析したものなのですが、むしろ国際関係論でいうところのコンストラクティビズムのアプローチに近いかたちで、「規範の変化」に焦点を当てております。

彼女がこの中で最も注目しているのが、ドイツが911事件以降にアフガニスタンに介入を決定し、しかもその中でバージャーカッツェンスタインらに指摘されているようなドイツの「反軍事的戦略文化」を変化させた、そのプロセスそのもの。

ご存知のかたもいらっしゃると思いますが、コンストラクティビズムというのはそもそもその出自が「冷戦終結を予測できなかったリアリズム&リベラルの穴を埋める形で状況の変化の理由を説明した」というところにあるために、これはむしろ得意分野と言えるところでしょう。

ところが戦略系のいわゆる「戦略文化」に注目していた人間たちには、この「変化」という部分に注目している学者が少なかったので、あえて私が踏み込んでみました、というのがこの著者の「売り」であります。

結論としては、戦略文化を用いた分析というのは決してリアリズムなどを越えることはなく、むしろ「外からの圧力」というものがドイツの戦略文化の変化に大きく貢献したと分析しており、「なんだかリアリズムの理論の結論と同じになっちゃった!」というもの。

必見なのは、ドイツ連邦軍がアフガニスタンで対反乱作戦を行うときに、最初は「平和維持活動」(ピース・キーピング)という名目で介入しながらも、すぐ現場の激烈な状況に現実的になってその姿勢を変え、最終的には「平和創作活動」(ピース・メイキング:つまり戦闘)へと変えていく様子を細かく追っている第六章などでしょうか。

日本が今後海外にどこまで派兵するかはまだ何もわかりませんが、ドイツがアフガニスタン派兵を通じて戦死者が発生する状況とどう向き合い、どのように国内政治の言説を変化させ、そしてどのような人物たちがキーマンとなってその変化を促したのかを克明に描いているという意味でも、いわば「先行事例」として参考になるもの(なって欲しくはないですが)と思われます。

本書は平易な英語で書かれていて読みやすいのですが、最大のネックはその値段。そもそも積極的に売ることは考えていないようで、強気の1万5千円越え、さらにはキンドルでも1万円を余裕で越えてます(涙

万人受けする内容とは思えませんが、戦略文化についての最新研究としてはなかなか優れたものではないでしょうか。金銭的に余裕のある方々にはおすすめ。

明日にはもう一冊紹介します。




ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』CD


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』

※詳細はこちらから↓

http://www.realist.jp/clausewitz-business.html



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2015-04-30 00:07 | おススメの本 | Comments(3)

戦略文化の本:その1

今日の横浜北部は、曇ながらも時々晴れたり小雨が降ったり忙しい天気でした。

さて、次の週末に2度ほど研究発表をすることになっているのですが、そのうちの一箇所で「戦略文化」について話をしなければいけないので、それに使う参考文献を先にここで紹介して行きたいと思います。

とりあえずこれから数日間にわたって何冊か紹介していくつもりですが、今日はその1冊目。
b0015356_2346431.jpg

Reconsidering the American Way of War: US Military Practice from the Revolution to Afghanistan
by Antulio J., II Echevarria

タイトルを直訳すると、『アメリカ流の戦争方法の再考:独立戦争からアフガニスタンまでの米国の軍事の実践』という感じでしょうか。

著者はクラウゼヴィッツ関連の著作も多い、米陸軍大学のアントゥリオ・エチェヴァリア教授であります。

そのタイトルかもお分かりのかもいらっしゃるかもしれませんが、戦略文化系の文献としては古典的なラッセル・ウェイグリーの『アメリカ流の戦争方法』を当然ながら意識してつけられたものでありまして、ある意味ではこの本を批判するために書かれたような本です。

「戦略文化」(strategic culture)というのは1977年にジャック・スナイダー(Jack Snyder)という学者が、当時のソ連の行動を純粋なリアリスト的な合理的な行動主義的解釈では理解できないとして、そこに「文化」という要素を入れながらRAND研究所の発行している政策文書として発表してから議論が活発になった概念です。

ところがそれ以前から、古くはツキュディデスからリデルハート、もっと最近(といっても40年ほど前から)では上述のウェイグリーのような人物が、いわゆる「戦争方法」(way of war)という形で、ある国の軍隊の独自の風習というか文化のようなものがあるのじゃないか、という議論を行ってきました。

つまりここで大雑把にわけてしまえば(わけていいのかという議論もありますが)、軍事関する文化・風習を議論する派閥として、社会科学系の色彩が強い「戦略文化派」(startegic culture)と、軍事史の色が強い「戦争方法派」(way of war)の2派の伝統があることになります。

そして今回紹介する『アメリカ流の戦争方法の再考』という本は、どちらかといえば後者の伝統に属するものといえるでしょうか。

本書の結論だけいえば、ウェグリーの本などで一般的に認知されている「アメリカ流の戦争方法」、つまり大規模な量の部隊を一気に、しかも大量に使うようなやり方というのは、細かく見てみると全くウソで、まさにクラウゼヴィッツのいうような政治的な配慮というものが大いに作戦行動に制限をかけていたというもの。

それを証明するために、原著者のエチェヴァリアは、アメリカの独立戦争から最近のアフガニスタンの戦争まで、アメリカが関わってきた大規模な戦争だけでなく、国内や中南米への介入を含む、小規模な戦争や紛争まで細かくとりあげており、アメリカの伝統と思われていた「殲滅戦」的なものよりも、むしろ政治的なリスクの忌避が多く見られるとしております。

本全体の構成はかなりしっかりとしており、第1章のliterature review的なスタイルからはじまり、その後に理論的な章がつづいて、後半に事例研究に入るなど、まるで博士号論文のような書き方をしているのですが、驚くのはその文章の明快さと読みやすさ。

もちろんミアシャイマーほどの明快さではないのですが、文章がこなれているというか、伝えたいメッセージは比較的伝わりやすく、なかなか好感のもてる書き方してます。

ただし理論的な面では、「戦略文化派」のものと比べるととくに目新しいことを言っているわけではないのでやや物足りない印象が。まあこっちは戦史研究なので、仕方ないといえば仕方ないですが。

本全体では170頁ほどでそれほど分厚いわけではないですが、1頁あたりの文量がやや多目ですし、まあテーマがテーマだけに翻訳されるとは思いませんが、アメリカの戦史研究の簡易版としてはかなり参考になるものかと。


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』CD


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』

※詳細はこちらから↓

http://www.realist.jp/clausewitz-business.html



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2015-04-12 00:11 | おススメの本 | Comments(3)
今日の宮崎は朝は少し寒かったですが、昼間は強い日差しで暑いと感じるほどでした。

さて、少し遅れましたが、ようやく新刊が届きましたのでご報告です。
b0015356_23320926.jpg
そうです。タイトルをみなさんから募集した、あの「現代の軍事戦略入門」がようやく完成しました。

まあ本の内容からいいまして、あまり派手は本ではなく、それに合わせて装丁も地味といえば地味かもしれませんが、専門書などを扱う大型店には並んでいるかもしれませんのでぜひお手にとってみてください。

ちなみにアマゾンにはもう入荷されているようで、注文可能となっております。

次に出す訳本もまたタイトルを募集するつもりですので、またよろしくお願いします!


by masa_the_man | 2015-03-13 23:36 | おススメの本 | Comments(6)

建設的な幻想

今日の横浜北部はやや気温は低めながら、よく晴れて気持ちのよい一日でした。

さて、久々に本の紹介を。

去年の8月に出たばかりの本でして、内容もコンスト的なものなのですが、イギリスの本屋で見かけて気になっていたのを、帰国後に日本の洋書店で発見して即購入しました。
b0015356_21412850.jpg

Constructive Illusions: Misperceiving the Origins of International Cooperation
by Eric Grynaviski

原題を直訳すると「建設的な幻想:国際協力の原因の誤認」という少々わかりにくいものでして、著者はエリック・グリイナヴィスキーというジョージ・ワシントン大学の准教授。

内容を簡単にいえば、「国家間の建設的な協力関係というのは、実は互いのカン違いによって生まれることのほうが多い」という、かなり逆説的なもの。

たしかにわれわれは一般的に「互いに相手の意図を完全に知ることができれば戦争にならない」という、まさに孫子的な常識を信じているわけですが、この本はそのような常識を完全に打破するような内容。

著者はこのような事例を、主に冷戦時のニクソン政権の米ソ間の「デタント」の交渉の時のエピソードから引っ張ってきておりまして、2章分をその事例研究に当てております。

本書の冒頭では、ヨーロッパ人としてハワイを初めて訪れたキャプテン・クックがほんの偶然から「神」として祭り上げられて奇妙な歓待を受けたエピソードをとりあげるなど、両者のコミュニケーションがうまくいかなかったからこそ互いに協力できた例を豊富に紹介。

国際関係論の世界では、一般的な「常識」として、交渉を行う両者が互いを知れば知るほど協力関係が生まれるという考えがベースになっておりますが、本書の著者はむしろ「誤った間主観的信念」(FIB)のほうが協力関係を生み出すとしております。

もちろん本書ではFIBが常に協力を生み出すということを主張しているわけではないのですが、それでも既存の国際関係論の常識を覆すような着眼点は興味深いこと請け合い。

細かい例としては、たとえば夫婦関係はむしろ互いに理解しきらないほうが幸せであるということや、友人関係なども逆に理解しすぎるとうまく行かなくなるなど、ミクロのレベルの人間関係の例に言及している点も面白い。

これを読むと、「ああ、人間は互いに理解しあえなくても協力はできるんだな」と安心できるという効能も。

書式自体はかなり論文形式なのですが、本文もたった160ページほどで文体も読みやすいです。おすすめ。





ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』CD


ビジネスと人生に活かす『クラウゼヴィッツ理論』

※詳細はこちらから↓

http://www.realist.jp/clausewitz-business.html



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2015-03-06 17:31 | おススメの本 | Comments(0)
今日の横浜北部は朝から雨がシトシトと降っておりました。意外に気温は高めでしたが。

さて、FT紙が年末恒例の「今年の良書」を週末版で紹介しておりましたので、そのリストをご紹介します。

いくつか分野があるのですが、今回紹介するのはコラムニストのギデオン・ラックマンがおすすめする政治分野のものが9冊。

すでに邦訳されているものは訳書の方を紹介しております。今夜の生放送(http://live.nicovideo.jp/gate/lv199750503)でもやります。

===

1, Roy Jenkins: A Well-Rounded Life
by John Campbell
b0015356_0185417.jpg

イギリスの左派の政治家の評伝。よく書けているとのこと。この手の外国の政治家の評伝というのは最も邦訳されにくいものかと。

2,The Contest of the Century: The New Era of Competition with China--and How America Can Win
by Geoff A. Dyer
b0015356_0205717.jpg

FTのワシントン特派員による米中間の競争についての分析。両国の国内問題についての比較が興味深い。

3,Revolt on the Right: Explaining Support for the Radical Right in Britain
by Robert Ford & Matthew J. Goodwin
b0015356_0253072.jpg

最近英国で勢力を伸ばしつつある反EU勢力の英国独立党(UKIP)についての初めての学術的研究。

4,暴露:スノーデンが私に託したファイル
by グレン・グリーンウォルド
b0015356_0273695.jpg

米政府最大のリークを実行したスノーデンについて、彼と近い存在の著者による初めての著作

5,南シナ海 中国海洋覇権の野望
by ロバート.D・カプラン
b0015356_031236.jpg

世界で最も戦略的な海域である南シナ海についてのルポ。訳者はもちろん本ブログの著者!

6,World Order
by Henry Kissinger
b0015356_0334120.jpg

いまだ影響力の大きい外交家の説く、四つの文明(欧。イスラム、米、中)から見た世界観と、勢力均衡の実現を訴えたもの。

7,日本‐喪失と再起の物語:黒船、敗戦、そして3・11 (上下巻)
by デイヴィッド ピリング
b0015356_0391450.jpg

FTのアジア編集長による日本楽観論。よく取材されているし文章もうまい。

8, Talking to Terrorists: How to End Armed Conflicts
by Jonathan Powell
b0015356_0444812.jpg

ブレア政権のトップの補佐官を務めた人物による、北アイルランド紛争から見た紛争解決法。

9,Age of Ambition: Chasing Fortune, Truth, and Faith in the New China
by Evan Osnos
b0015356_0494872.jpg

ニューヨーカー誌の北京駐在記者による中国国内の個人主義の台頭と一党独裁体制のルポ。全米ノンフィクション賞を受賞。

===

以上です。

キッシンジャーのものは、そのうちに邦訳版が出そうですね。

個人的に興味あるのは3,8,9でしょうか。

そのうちに他の分野のものもアップします。



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



by masa_the_man | 2014-12-02 00:54 | おススメの本 | Comments(1)
今日の横浜北部は朝から晴れましたが、午後は少し曇りました。

さて、久々に本の紹介を。私が翻訳したことのあるロバート・カプランが、またまた新刊を発売しました。

今回のテーマは、なんと南シナ海。これは私が二年前に国際会議に出た時にあるBBCの記者に「カプランが書いている最中らしいぜ」と聞いたものです。

Asia's Cauldron: The South China Sea and the End of a Stable Pacific
by Robert D. Kaplan
b0015356_21474218.jpg




タイトルを直訳すると、「アジアの大釜」ということになりますが、Youtubeに上がっている出版記念講演会の話からすると、南シナ海が20世紀におけるミッテルオイローパ(中欧)のようなもので、ここが21世紀の地政学的な問題の中心地になる、というものです。

本は冒頭から本人が現地を旅した様子から始まり、これはまさに『インド洋圏が、世界を動かす』の書き方とそっくりでありまして、違うのは扱っている国と地域。

今回はベトナム、フィリピン、マレーシア、それに台湾や中国までが中心です。

これは見方を変えれば、私が翻訳した本の続編という形で見てもよろしいかと。

まさその時と同じように、現地に行って、政治家などに直撃インタビューなどをかましたり、現地でボートを借りて人々の生活から地域の歴史について思いをはせたり。

個人的にはスパイクマンの理論や、ミアシャイマーのような理論家の文献まで丁寧に引用している部分や「日本海」としっかり表記していることに好感(笑)がもてましたが、意外に中国に甘い見方をしているところが気になるところ。

ということで、南シナ海は「アジアの地中海」であり、「海の環境」であるために第一次大戦のような紛争にはならない、という予測など、なかなか知的刺激にあふれる、しかしながら適度にバランスのとれた興味深い分析をしております。

やや詩的な表現を多用しておりますが、本編は200頁弱なので、英語が読めるかたはぜひ挑戦なさってみては。おすすめです。

余談ですが、上の動画は本当に面白いですな。カプランが現地に行った時の取材の仕方の秘訣などについて語っております。

「印象に残ったことはすぐにノートにとれ」ということであり、「何度も長期滞在してみろ」、「現地の人に何も語られない中に真実がある」というのがその秘訣らしいです。


プロパカンダ&セルフプロパカンダCD

by masa_the_man | 2014-03-29 22:18 | おススメの本 | Comments(0)