戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


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2018年 07月 12日 ( 1 )

今日の横浜北部も相変わらずの夏日でした。唯一の救いは午後少し曇ったことでしょうか。

さて、昨夜の番組でも少し触れた、米海軍大学の教授による新たな中国のシーパワー分析の記事の要約です。

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中国のシーパワーの可視化

By ジェームズ・ホームズ


海軍力を増強させるあたって、中国は様々なアイディアを使っており、それは時代の新旧だけでなく、洋の東西をも問わないものだ。


そして中国の海軍面での野望を理解しようとしている米軍のリーダーたちは、たとえば現代の車にもれなく備わっている「クランプル・ゾーン」(crumple zones:クラッシャブルゾーン) という防御システムを思いうかべることによって、この戦略をイメージできるかもしれない。


また、中国がシーパワーを蓄える際に研究している思想の中身や、人民解放軍海軍やその他の兵力が作戦・戦略面での目標を達成するために準備している実際の兵力や方法論を見ることによって、米軍のリーダーたちはその海洋戦略を理解できるはずだ。


過去の偉大な思想家たちの考えは、中国の戦略、作戦、そして戦術面の異なる面を浮き彫りすることによって、この理解の助けとなるだろう。


▼中国のシーパワー:人民解放軍海軍以上のもの


シーパワーはその国のもっている艦隊だけで考えるべきものではない。それは海軍だけの領域の話ではなくなっているからだ。空軍、陸軍、そして戦略ロケット軍などは、次第に外洋へとリーチを伸ばしており、シーパワーの陸上手段のような役割を果たしつつある。


「海軍」(Naval)とは「海洋」(maritime)の一部を構成したものであり、端的にいえば、「海洋」面での力を構成するツールの数は多いのだ。それらはすべて中国のさらに大きな「軍事戦略」の下位に属するものであり、さらには中国軍が仕えている「政治目的」に従ったものだ。


ところが常にこれがそのような状況であったわけではない。過去においては、遠い海を進んでいた艦隊同士が、制海権と、それがもたらす果実をかけて争っていた。艦隊同士は沿岸砲(射程は数マイルだった)が届かない数マイル沖で衝突しており、その指揮官たちは沿岸から離れて外洋での活動に集中していた


たとえばホレイショ・ネルソン卿のトラファルガー海戦における勝利(1805年)は、陸地から離れた水域で起こったものだ。それは純粋な「海戦」だったのだ。ところが帆船時代においても海軍の指揮官たちは沿岸砲の潜在性について少しは考えていた。英国の海戦の「神」であるネルソンでさえ、船は陸上の砦を倒すには向かないとアドバイスしている。


沿岸の砦を回避するのは、蒸気船の時代に入っても懸命な手段であることに変わりない。ユトランド沖海戦(1916年)ももう一つの艦隊同士に限定された戦いであり、イギリスの「大艦隊」はすべての船を北海に持ち寄り、ドイツの「大洋艦隊」もすべてのアセットをつぎ込み、砲撃戦を行っている。


ところが将来トラファルガーやユトランドのような戦いが起こるかというと、かなり疑わしい。長射程の精密誘導火力の出現によって、むしろ将来の戦いは、七五年前のソロモン諸島の戦いに似たものとなるだろう。この戦いでは、日米両国が半年にわたってガダルカナル島のヘンダーソン飛行場を巡って、陸海空すべての軍事力をつぎ込んで争っている。


この飛行場のコントロールをできた側は、南太平洋全域にわたる敵の海上輸送と島の基地を攻撃するための最初のポイントを獲得できるようになるのだ。陸上ベースのシーパワーは、ソロモン諸島の戦いの最大の目的であると同時に、それを戦うための最大の手段の一つでもあったのだ。


誘導ミサイル時代の到来は、陸上ベースのシーパワーの時代の到来や、そのリーチの拡大、精密誘導性、そしてその破壊力を早めただけだ。中国の戦略では、この火力革命を自らの優位としつつある。人民解放軍は、海洋面での使用可能なすべての力を中国の前進的な沿岸防衛に注ぐことになるだろう。


中国の海軍力には、空母や誘導ミサイル駆逐艦のような、戦闘艦隊を構成する目立った艦船が組み込まれている。その他にも、短距離用だが高速の警備船や、対艦巡航ミサイルを搭載したディーゼル電池式の潜水艦などがある。陸にある飛行場から飛び立つ、ミサイルを運搬する航空機も一定の役割を担うことができるし、トラックから発射する対艦ミサイルも、それと同様に「シーパワー」のツールの一つとして数えることができる。


人民解放軍は毛沢東式の「積極防衛」戦略を編み出しており、それを近年に「沖合水域防衛」と名前を換えているが、これらの海と陸をベースとしたシーパワーのツールを、「砦としての中国」やその沖合を、アメリカとその同盟国たちから守るための、一つの鋭い兵器として融合させている。


では彼らはこのような兵器をどのように準備するのだろうか?中国共産党の指導層がまず最初に考えるのが、東アジアと太平洋西部である


戦略とは、そもそも優先順位を設定すると同時に、それらを勇気を持って実行するためのアートである。そこから考えると、主要戦域――この場合は国土と接続水域のことだが――を、はるか遠い海での副次的な取り組みのために犠牲にするという考えは、合理的とはいえない。つまり、中国にとっての「アクセス」とは、本土から始まるのだ。


ところがもし人民解放軍の指揮官たちが本土を守ることができて、しかも中国が太平洋において陸上配備型の兵器やディーゼル潜水艦、そして高速攻撃船に興味を持っているとすれば、人民解放軍のリーダーたちは、海軍の水上艦隊のかなりの部分を犠牲にして、中国の地理的近郊の外へと繰り出すこともできるのだ。


時の経過とともに、これは遠洋において北京の対外政策の実現に貢献する、「遠征艦隊」へと発展する可能性もある。政治のリーダーたちが沖合の海での防衛に自信を深めつつある今、彼らは遠征的な目的に注目し、そこにエネルギーを注ぎ込みつつある彼らは海軍力を分割して「外洋防護」に回すこともできるし、本土で不要なリスクを背負わずに同様の任務を行うことができるのだ。


そして実際のところ、中国のリーダーたちは、域外への展開のために知的な面と物理的な面の両方において準備を進めている。これは注目に値する。なぜなら、外洋防護やその他の遠征的な展開というのは、戦略家や政治指導層が最も懸念する海域を支配下においてから、ようやく海軍がとりかかる任務だからだ。


北京は、インド洋をはじめとする海路への取り組みを気楽な気持ちで開始できたのであり、これは本土近くの海域における積極防衛を実行する上での海、空、そしてミサイル部隊を統合した能力について、指導層が自信を持ったことを示している。


これらはアメリカの国防計画担当者や、その地域にある同盟国・友好国たちにとってどのような意味を持つのだろうか?


これは、中国が地域の水域や空域における支配について段々と自信を深めているということだ。さらにこれは、アメリカと東アジアにおける同盟国・友好国が、中国の沖合の水域における防衛戦略に対抗するために不可欠なハードウェアを土台とした戦略を作成しなければならないことも示している。


もしこれができれば、アメリカは同盟国へのアクセスを確保して、アジアにこれらの国々を「戦略的ポジションを持たない状態」から救い出すことができる。太平洋西部でうまく競合できれば、人民解放軍海軍に対して中国本土だけを守るようシグナルを出すことができるのであり、間接的にはインド洋やその他の係争海域における中国からの圧力を緩和できる。


同盟関係を強化し、中国の拡大主義的な地域外における海軍のプレゼンスを抑制するためには、アメリカは戦略的な焦点を東アジアに移さなければならないのであり、海洋面でのエネルギーとリソースをこの地域に注がなければならないのだ。


▼目標:沖合の「クランプル・ゾーン」


中国には「接近阻止・領域拒否」(A2AD)戦略があることはよく言われていることだが、これをわかりやすくいえば、海と陸をベースにした兵器を使うことによって沖合に「クランプル・ゾーン」をつくろうとする試み、ということになる。


車の先端のエンジンがある区画や、後ろのトランクの部分というのは、いわゆる「クランプル・ゾーン」を構成している。これらは「堅い盾」としてつくられたわけではなく、衝撃があるとうまく壊れるように設計された、犠牲的な構成部品なのだ。車の設計の最大の狙いは、車会社が最も価値をおいているものを守ること、つまり車内にいる「乗客の身の安全」である。


もし「クランプル・ゾーン」が完全に堅いものであれば、衝突した時の力は車内、そしてその中にいる人間に直接伝わることになり、彼らを死に至らしめる可能性が出てくる。「クランプル・ゾーン」はそのかわりに、衝突のエネルギーを吸収してやわらげる働きをするのだ。


近接阻止のメカニズムもこれと似ている。本土とその近海の安全は、北京が最も懸念するものである。ところが人民解放軍の指揮官たちは、自分たちが太平洋西部を「進入禁止地帯」にできるとはもちろん考えていない。彼らはアメリカの太平洋艦隊を域内の水域から完全に排除するための防衛線を設けることは無理であると知っているのだ。


軍事史では、長距離に広がった前線を守ることは極めて難しいことが示されている。「万里の長城」でさえ難攻不落の構造物ではなかったし、そもそもそれを建設した人々もそういうつもりで作ったわけではない。


どの軍隊も、このような防衛線のすべての線上において潜在的な敵に対して強い状態をつくることはできない。防御側は配備を分散させ、各個の戦闘力を薄くしなければならないのであり、この分散状態は、表面上は弱い敵部隊の集団でも、その線の一部では優位な状態になり、そこからの通過を許してしまうことになる。


▼海に向かうクラウゼヴィッツ


守る側にある人民解放軍がやろうとしているのは、日本やその他の同盟国や、すでにこの地域に前進配備している米軍への救援のために西進している米太平洋艦隊の増援に対して、なるべく高い(といっても完全にムリなものではないだろうが)コストを与えることだ。


そういう意味で、中国の沖合の水域の防衛について参考となる最初の思想家は、戦略思想の賢人の一人であるクラウゼヴィッツのものとなる。


クラウゼヴィッツは戦時に勝利する方法として三つ挙げている。これを簡潔にいえば、相手を粉砕すること、威圧すること、もしくは破産させることである。クラウゼヴィッツによれば、戦争においては「非常に勢力に開きのある国家間」に戦争があるのは一般的であり、力の弱かった方が勝者になることも往々にしてあることだ。


彼はつづけて「現実の戦争に講和の動機をもたらすものが二つある。第一は、以後の勝算が全然立たない場合、第二は、戦勝を得るための犠牲があまりにも大きい場合である」と述べている。


いいかえれば、もし中国が敵に自信をなくさせることができたり、もしくはワシントンが太平洋西部に侵入する「価格」を支払えないほど引き上げてしまえば、中国は大規模な艦隊同士の戦いで相手を倒すことなく勝利することができることになる。


このような海戦は、そもそも遠く離れた外洋での保護任務を必要とし、ここ二十年間で北京が大胆に投資してきた人民解放軍海軍の水上艦隊を、わざわざリスクにさらすことになる。


よって、人民解放軍の上層部は、アメリカの政治リーダーたちに対して、「活動中の太平洋艦隊を危険にさらし、アジアだけでなくユーラシア大陸周辺におけるアメリカの国益を守る米海軍の能力を危機にさらすような大きな損害を被るリスクを本気で背負えるのか?」と宣告できるようになる。


これに対してホワイトハウスは、高い代償の支払いや、海での敗北のリスクにうろたえるかもしれない。もしうろたえることになれば、北京は危機の際にきわめて貴重となる「時間」をかせぐことができるだろう。


クラウゼヴィッツは、心理学的な効果のために軍のハードウェアを展開するこの中国のやり方に、賛意を表明するはずだ。


▼毛沢東の積極防衛


強靭な能力があれば、中国は抑止や強要ができるようになる。中国のシーパワーの次の顔は、毛沢東の睨んだ表情として言い表すことができる。


2015年に発表した最初の公式な軍事戦略として、中国の指導者層がわれわれに教えたのは、毛沢東式の「積極防衛」が、いまでも中国の戦略の作成に重要であるばかりでなく、「積極防衛という戦略概念こそが(中国共産党の)最大のエッセンスである」ということだ。


これが意味するのは、人民解放軍は固定化された防衛線を守ろうとしていないし、太平洋の外洋で決戦をしようとしているわけでもない、ということだ。


彼らは撤退戦をやろうとしているのであり、これはつまり、海域を譲りつつ、その合間に「クランプル・ゾーン」の内部のどこかで海軍による作戦行動を準備するために、米艦隊に断続的な攻撃を加えて分断化しようというのだ。


この「曲がるが折れない」というアプローチは、陸戦にルーツを持つ中国共産党の伝統に則したものだ


毛沢東は自身の考えを説明する際に比喩表現を喜んで使っており、たとえば中国の内戦時には紅軍の指揮官たちに対して「(強い敵軍を)深みに誘い込み」、敵の戦力を少しずつ削り取って分離し、小さくなった部隊からつぶすべきだと進言している。


「十本の指を傷つけるよりは一本の指を切り落とした方がよく、敵に対しても、一〇個師団を撃破するよりはその一個師団を殲滅した方がよい」と言っている。つまり指は一本ずつ切り落とせということだ。


毛沢東によれば、紅軍は手慣れたボクサーのように振る舞うべきだという。これについては1974年の「キンシャサの奇跡」においてモハメド・アリが対戦相手で筋骨隆々のジョージ・フォアマンに初期のラウンドで打たせて疲れさせ、最後のラウンドで自分はカウンターパンチをしかけて倒した例を考えてみればよい。


一時的な戦略的後退は、モハメド・アリや毛沢東の紅軍に役立ったのだ。今日の人民解放軍にも使えないわけがない。


実践的な面からいえば、人民解放軍は米海軍を数百マイル沖合で攻撃できるような兵器を集めており、太平洋におけるトラファルガーに先駆けて疲弊させておこうというのだ。これができれば、弱者である中国は、アメリカと対等に立てることになる。


人民解放軍が持つ実に多くの対艦ミサイルは、潜水艦や警備艇、そして「クランプル・ゾーン」を動き回る戦術航空機と相まって、そこに大胆に攻撃をしかけようとしてくる米軍に対して処罰を与えようとするものだ。


もし中国の「接近阻止」防御が強力になり、米太平洋艦隊に対して許容できないコストを与えることができるようになれば、北京は海軍戦闘部隊を温存できるようになるかもしれない。港を出ずに目的を達成できるのであれば、わざわざ大事な艦隊を近海に展開させてリスクにさらす必要もなくなるのだ。


クラウゼヴィッツや毛沢東は、このような戦略に賛同するはずだ。


▼マハンと砦


中国のシーパワーの次の二つの顔は、アルフレッド・セイヤー・マハンとテオフィル・オーブである。この二人の海軍士官は、自分たちがそれぞれ生きていた時代に長射程の精密度が上がっていた時に海洋における戦術を見通していた。


マハンは日露戦争時に、ロシアの司令官たちが太平洋艦隊を旅順港の沿岸砲の射程内で守ろうとしていたことを非難している。「要塞艦隊」は、海戦においては「急激に時代遅れ」になっており、この考え方のおかげで戦艦の作戦行動範囲が限定されつつ、指揮官たちに小心さを生じさせているというのだ。


しかし、旅順港の沿岸砲の射程が伸ばされて、黄海や日本海決戦が行われた対馬海峡まで攻撃できるようになっていたとすればどうだっただろうか?おそらく東郷平八郎の連合艦隊は、ロシアの大砲のおかげで自由な行動ができなかっただろうし、そうなれば結果はわからなかったはずだ。


もし沖合へ数百マイル射程が伸びていれば、おそらく戦争の結果は違っていただろうし、「要塞艦隊」の戦略は誤りでもなかったはずだ。そしてこれは中国にとっても、明らかに取るべき選択肢となる。


▼オーブ提督と「青年学派」


オーブ提督はマハンとは正反対の人物であった。彼は大英帝国の王立海軍のような、外洋型の覇権者に対抗しようという、19世紀の海軍戦略の派閥である「青年学派」の生みの親だ。


彼らによれば、フランスのように海洋面では後塵を拝する勢力は、魚雷、機雷、潜水艦、そして水上警備艇という形の「非対称的なテクノロジー」を使うことによって、沖合の海域から王立海軍を追い払うことができるというのだ。このような艦船や兵器は、軽量で安価なのだが、沿岸近くの戦艦や巡洋艦を相殺することはできた。フランスのような大陸国家にとっては、このような兵力でも十分であった。


オーブの生きていた時代のこのアイディアは、現在の状況にはさらによく当てはまる。テクノロジーは潜水艦や水上艇をかなり強力にしたのであり、これは「青年学派」の戦略に新たな息吹を吹き込んだと言える。


この「青年学派」と「要塞艦隊」のコンセプトを合致させれば、沿岸に火砲をおいて、これに小規模かつ安価でミサイルや魚雷で武装した水上艇などと組み合わせれば、海洋面での覇権者、つまり米海軍に対して対抗できるのだ。かくして、中国は沖合の水域における防御を遂行できるようになる。


▼ルーズベルトと「身軽な」艦隊


そして中国のシーパワーの最後の「顔」は、セオドア・ルーズベルトである。海軍大学が1908年に開催した「戦艦カンファレンス」の前に、ルーズヴェルト大統領はランドパワーとシーパワーの共生について長々と演説している。


彼にとって、この二つは軍事力を互いに補いながら強化してくれる存在であった。沿岸砲の砲手と小艦艇の乗組員たちは、海からの襲撃から港を守る任務を協力して担わなければならないのであり、これを行うことを通じて戦闘艦隊を外洋での敵艦隊との戦闘に集中させることができるのだ。


つまりこのような統合的な任務の分担によって艦隊を「身軽」にすることができるのであり、「敵艦隊の捜索と破壊」に集中してもらおうというのだ。ルーズベルト大統領によれば、この敵艦隊の破壊こそが「艦隊の存在を正当化できる唯一の機能」である。


このような洞察は、それから百年後の毛沢東主義者たちを喜ばせている。セオドア・ルーズベルトと毛沢東というのは、戦略においては実に奇妙な共通項をもっているのだ。ルーズヴェルトの沿岸砲と軽量の戦艦のように、人民解放軍が太平洋西部における沖合の防御で十分に密集的な群れをつくることができれば、人民解放軍海軍の水上艦船は「身軽」になるだろう。


これこそが沖合の水域での防御における最大の目標となる。人民解放軍は主に「要塞艦隊」と「青年学派」的なプラットフォームを使って本土を守るだろうし、これによって外の水域で水上艦隊のほとんどを(常設的ではなくても)定期的なプレゼンスに回すことができるはずだ。


したがって外洋での保護は、太平洋西部での積極防衛がうまくいくかどうかに左右されることになる。もし北京が「クランプル・ゾーン」を手渡しても負けることはないと考えるようになれば、中国の海洋周辺部の外での任務のために大規模なタスクフォースを自由に派遣できる、と感じるようになるはずだ。


▼まとめ:中国の戦略に関するアイディア


一つの戦略を構成するこれらの概念について、アメリカやその同盟国、そして友好国たちは、深刻に受け取るべきだ。中国のシーパワー――これは単なる現在の人民解放軍海軍の存在だけの話ではない――は今後も存在するものだからだ。


では米海軍の指導者たちはどうすべきなのだろうか?


第一に、ここで明確にされた中国の海洋戦略を突き動かすアイディアについて、真剣に考え抜くことだ。過去の良いアイディアは、精密誘導兵器やセンサー技術の進化のおかげで、その有用性が認められつつある。


クラウゼヴィッツ、マハン、オーブ、そしてルーズヴェルトという中国のシーパワーをあらわす五人の顔は、人民解放軍の指揮官たちの戦略的企図を瞬間的に理解させてくれるものだ。


第二に、米軍は中国の「クランプル・ゾーン」を突破するための編成と対抗策を考え抜かなければならない。もちろんこういうのは単純であるが、やはりクラウゼヴィッツが指摘したしたように、人間の意志の争いにおいては単純なものこそ難しいのだ。


第三に、中国の作戦行動のパターンを研究すべきだ。もし人民解放軍海軍が地域外に一定数の水上艦隊を長期にわたって展開するようになれば、これは中国が積極防衛に自信をつけてきたことを示すことになる。


インド洋に永続的に船団を展開できるようになれば、北京が沖合の水域での防衛を十分なものだと感じている証拠となる。そしてこれは、アメリカやその同盟国、そして友好国たちにとって、克服し難い圧倒的な障害物となるだろう。


北京が南アジアの港湾へのアクセスをどれほど求めているか、その態度だけでもその兆候はつかめるはずだ。船というのは兵站面での支えがなければ本土から遠い場所で長期にわたって活動できないものだからだ。北京が基地の権利に関する交渉を増やせば増やすほど、人民解放軍海軍の海外における行動の自由は増えていくからだ。


端的にいえば、中国の船乗りと飛行機乗りたちの広い世界における行動の仕方が、共産党のリーダーたちの「クランプル・ゾーン」における信頼度の高さを物語るのだ。そしてこれによって、このゾーンの突破のための方法論や、そのために必要となるハードウェアなどが示される可能性もある。


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いかがでしょうか。

アメリカの典型的な中国脅威論を前提とした「中国のシーパワー分析」の論文でしたが、ここでの特徴は、中国の戦略をあらわすためにここ十年ほどでよく使われている「A2AD」という概念をわかりやすくするために「クランプル・ゾーン」と言い換えたことと、五人の戦略思想家のアイディアを使って、そのシーパワー論の全体像を説明したという点です。

アメリカでこのように中国の脅威を喧伝してくれるのは、日本の立場からするとやはりありがたいと思うわけですが、私がここで少し気になるのは、このホームズの分析がやはり「アメリカ人向け」のものであるという点です。

中国の歴史や文化にそれほど関心のないアメリカ人にとっては仕方のない部分はあるのですが、拙訳『真説孫子』でも指摘されたように、やはりもう少し中国の戦略思想のバックグラウンドの部分はおさえておいて欲しかった、というのが正直なところです。毛沢東だけではなんとも物足りないわけです。

ただし、五人の戦略思想家を使った分析などは意外に斬新であり、個人的に気になったのは、クラウゼヴィッツ系の人はあまり引用しない、『戦争論』の第一編第二章のいわゆる「コストインポージング」的な言葉をあえて引用してきている部分と、オーブの「青年学派」という「弱者がいかに強者に対抗するか」という基本的な戦略的アイディアを持ってきている部分でした。このようなアイディア勝負の論文は、やはりアメリカ人ならではのものかと。

これを訳したあとの私の率直な感想としては、中国はさておき、日本も中国に対しては「弱者」の側に立って「青年学派」的な装備や戦略を追求することを真剣に考える時期に来ているのではないか、というものです。

もちろんアメリカという強力な「矛」があるために、日本は「盾」だけを考えていればよかったのでしょうが、どうもその「盾」も、著者のホームズが指摘するように、近年のテクノロジーの進化(とりわけ長射程化と小型・安価・軽量化)によって、大きく状況が変わってきております。

しかしこれは自戒も込めて言うのですが、もしかしたらこのような「現実はすでに大きく変わっている」ということに気づいて、それに対処するための行動を実際にとることのほうが、国防においては最も重要だといえます。よって、この論文のような新しいアイディアについて、われわれはもっと敏感であるべきなのかもしれません。



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(ダーウィン港入り口)

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by masa_the_man | 2018-07-12 01:19 | 日記 | Comments(2)