戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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2018年 06月 19日 ( 1 )

最近番組で米朝首脳会談が実現した最大の要因として「北朝鮮が核武装したから」という指摘をしたわけですが、

それに対して、


「核武装がスゴイという分析は単純すぎる」というものや

「アメリカには露中に対抗するという奥深い戦略がある」

「むしろワナとして北朝鮮を国際社会に組み込んだのだ」

「むしろ勝ったのはアメリカだ」


という批判がありましたが、これらに対していくつか反論をしてみたいと思います。


まず「単純すぎる」という主張に対して私が言いたいのは、たしかにその通りかもしれないが、それでも全体的な問題の核心は核兵器にあり、この最大の問題から目をそらせてはいけないということです。


日本人としては目をそむけたいのかもしれませんが、核兵器というのは本当にすさまじい効力を持っておりまして、現在の国際社会で「大国」と呼ばれる国は、もれなく核武装をしております。そしてパキスタンのような核武装を達成した国はアメリカにつぶされずに、達成できずに解除されてしまったリビアは、トップのカダフィが殺されております。


つまり核武装は、少なくとも北朝鮮の金正恩委員長にとっては「体制保証」のための切り札であり、自分を国際社会において米国とも対等に話をするのを可能にしてくれたもの、ということになります。


もちろん「体制保証の切り札」というのが私の単なる主観的な判断であるという可能性はありますが、少なくとも状況的に金正恩自身がそう考えていることは明らかでしょう。


次に「勝ったのはむしろアメリカだ」という批判ですが、私はそれらは「希望的観測」としては非常に正しいと思いますし、むしろ今回のシンガポールの会談ではそのような「アメリカの勝利」という結果であったら良かったと個人的には思っています。ところが残念なことに、それらはあくまでも「希望的観測」でしかないのです。


今回のトランプ大統領の「敗北」や「核武装」について、私は以下の2点が論拠として挙げられると考えております。


①小国であっても核武装すると別物

まず一点目は、トランプ大統領が現地時間で6月15日の朝の、記者との受け答えにおける発言です。この時のトランプ大統領はホワイトハウスの庭を歩きながら、何人かの記者たちと「カジュアルな記者会見」という形で質疑応答を行ったわけですが、この時の受け答えで、以下のようなものがありました。


===


記者:大統領、あなたは金正恩氏と、北朝鮮に拘束されていた(米国人学生の)オットー・ウォーンビアー氏を死に追いやった状況について熱心に語ったとおっしゃってましたね。それと同時に、金正恩氏の人権侵害の経歴を擁護しております。なぜそんなことができるんですか?


トランプ大統領:「なぜかって?それは私が(米国にいる)あなたとあなたの家族が核兵器で破壊されることを望んでいないからです」


===


おどろくべきことに、これは文字起こしされて、ホワイトハウスの公式HPに掲載されています。


この発言がなぜおどろきなのかというと、世界最強のアメリカという国家のトランプ大統領が、どこまで本気かどうかはさておき、


北朝鮮の核兵器が怖いから会談した


と公式に認めてしまったという事実です。つまり彼は、「小国でも核兵器を持てば慎重に扱わなければやばい」ということを認めてしまったのであり、おそらく北朝鮮だけでなく、その他の核武装を望む国々にも「核武装の素晴らしさ」というものをあらためて認識させてしまったということです。


②トランプに深い思慮はない


二点目は、トランプがあまり考えなしに政策を決定しているという事実です。


これについてはニューヨーク・タイムズ紙の記事で報告されているホワイトハウスの最新の状況から、その様子をうかがい知ることができます。すでに『炎と怒り』という暴露本でも有名ですが、トランプ政権はカオス状態にあります。


しかもさらに新しい状況を報告したその記事では、ホワイトハウス内のムードは、大統領が直感だけで行動しようとますます自信を

深めていることに対する、茫然自失の諦めの状態にあると書かれているのです。


このような状況で、トランプ大統領に「アメリカには露中に対抗するという奥深い戦略がある」、「むしろワナとして北朝鮮を国際社会に組み込んだのだ」と言い切れるかというと、私はかなり難しいと考えております。


もちろんこれについて「リベラルで反トランプのNYタイムズ紙だからこういう見方をするんだ」という反論もできるでしょう。


ただし突発的な米韓軍事演習の中止の決定による混乱や冒頭に紹介した「核兵器で殺されなくない」という発言など、どう考えても彼がそこまでものごと深く考えて決定しているとは思えず、この記事で報告されている政権内のカオスは事実であると考える方が自然です。


「経済制裁が効いて金正恩が会談に乗ってきたからトランプの勝利」というのも、1つの議論としてはあるでしょうが、本当にそのせいで会談が実現したのかどうかは、北朝鮮側の証拠がないので、実際のところはわかりません。


さらに中国側が軍事演習をやめるように金正恩に頼んでいた、という報道があったことからもわかるように、「北朝鮮を中国から引き離し米国側に取り込んだ」という議論はやはり無理でしょう。


ということで、私は現時点では今回の米朝会談はやはりアメリカの「北朝鮮を核武装国として認めてしまった失敗」であり、あらためて核武装の効力を国際的に喧伝してしまった、トランプ大統領の思いつき的な「失策」だと考えております。


トランプ大統領はたしかに素晴らしい不動産取引のできる人なのでしょう。それでも国際政治における「ディール」ができるかどうかは、

やはり別の能力だと考えたほうがよさそうです。

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(伊丹空港の上空からの眺め)



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by masa_the_man | 2018-06-19 09:33 | 日記 | Comments(3)