メルマガ：第38号

いよいよ９月ですね。

今日は防災の日ですが、以下の写真にあるように、非常食用の羊羹を買ってみました。

ということで新刊『認知戦』から、いよいよ中国の工作についてです。

2025年8月17日発行（第38号）
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今週の戦略関連のニュースで注目すべきは、先週に引き続きやはりトランプ大統領とプーチン大統領の会談ですね。

先週の時点では、当事者であるウクライナのゼレンスキー大統領の参加の可能性があるという話でしたが、結局は参加せず、アラスカのアンカレッジにある米軍基地にプーチンがやってきて会談が行われました。

■ 【速報】米露首脳が並んで共同会見　和平合意に至らずもアメリカ・トランプ大統領「一定の進展があった」　ロシア・プーチン大統領「会談は建設的で有益。次回はモスクワで」（8/16 FNNプライムオンライン）
https://news.yahoo.co.jp/articles/ea947152adc1da55608105c2f55c38e491e47fd0

予期されていた通り、何も成果はなかったようですが、私は結果的にトランプがプーチンに利用されただけだと考えております。いずれにせよ戦争はまだ長引きそうですね。

その影に隠れてあまり目立っておりませんでしたが、地政学的に画期的なことがトランプ政権によって行われていました。現地時間８月８日ホワイトハウスにおけるアゼルバイジャンとアルメニアの和平実現に向けた共同宣言が行われたことです。

■ アゼルバイジャンとアルメニア 米仲介で和平へ 共同宣言に署名（8/9 NHK）
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250809/k10014889441000.html

このニュース、ロシアのコーカサス地方からイランに抜ける南下ルート上にあった二カ国がともにロシアと関係を悪化させたという意味では、ますますロシアの権威の弱体化を印象づけるものとなりました。

とりわけこの宣言には、南カフカスの戦略的な輸送回廊における米国の独占的な開発権が含まれているという点で、米国の権益が直接及ぶという意味でもロシアにとっては大きなショックだったと思われます。

もちろんこの回廊（トランプ・ルート）の安全をどこまで確保できるのかは今後の課題ですが、少なくともロシアも今回の会談で、ここにアメリカの影響力が及ぶことを認めた格好になっています。

■ ロシア「トランプ回廊」を支持　アルメニアの物流ルート（8/15 KYODO）
https://news.yahoo.co.jp/articles/2a64430f7cbfbdea1f7a49df1aa69186d0412db1

これによってロシアはイランとの陸路を断絶されることになります。この地域の戦略地図は確実に塗り替わっていますね。

さて、先週は数日後に刊行されるイタイ・ヨナト著・奥山真司訳『認知戦　悪意のSNS戦略』の中から、「ロシアが仕掛ける認知戦」についてご紹介しました。そして今週は、いよいよ日本にとって最も関心のある中国のSNS上の工作に関する部分をまとめてご紹介します。

・「新刊 『認知戦　悪意のSNS戦略』」（8/3）
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・「ロシアが仕掛ける認知戦」（8/10）
　https://guccipost.co.jp/blog/mokuyama/?p=258

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中国が仕掛ける認知戦
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▼中国の工作

著者のヨナト氏によれば、中国共産党は、旧ソ連時代にコミンテルンを通じて培われた影響力工作の手法を学び、それを自国流に改変して取り入れてきたということです。

1949年の中華人民共和国の成立直後からもこの種の工作活動は展開されてきましたが、とりわけ習近平政権下では、主要な戦略能力の一つとして重視されるようになったとしています。

中国ではこの種の活動を「三戦」――世論戦・心理戦・法律戦――と総称し、さらに経済戦や外交戦と組み合わせることで、包括的な影響力工作（influence operation）の体系を築いています。このことは、拙訳『目に見えぬ侵略』や『見えない手』などでも詳しく解説されています。

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ヨナト氏によれば、その工作の規模は膨大であり、中国には諜報活動を担う政府機関が国家レベルから地方レベルまで存在し、その数は実に40機関（ロシアはたった２機関）に及ぶと言います。

また、中国の地方行政区画単位でも、国外向けの影響力作戦が展開されており、加えて、国有・民間を問わず、多数の企業を作戦に利用しているとのことです。

中国にとってサイバー攻撃と影響力工作は不可分であり、両者を統合的に運用するのが特徴だと分析しています。

特筆すべきは、2024年の夏に中国企業からの内部リークで政府のために活動する中国系ハッキング企業の実態が明らかになったというニュースです。

彼らの業務の9割はハッキングで、残り1割が影響力工作であったといいます。例えばX（旧Twitter）のアカウントを乗っ取り、情報発信に利用する事例が確認されました。

ヨナト氏によれば、こうした事実は中国がサイバー能力を直接的に影響力拡大に活用していることを示しているといいます。このリークと同時期に、中国政府は軍の運営方針の大規模改編に着手しており、現在も再編中とみられています。

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目次は以下のとおりです。

▼コロナ禍の影響
▼広がるネガキャン
▼日本への警告

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近況報告
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お盆休みに入ってから外で行うイベントがなくなったので、ようやくじっくりとたまっていた原稿に向き合って色々と片付けております。

そこではたと気づいたのですが、どうも締切が「お盆休み」や「夏休み」の明けに設定されていることが多いんですよね・・・。

誰かがSNSでつぶやいていましたが、学者や作家のような職業というのは、年中休みというわけではなく、むしろ「夏休みの最後の10日間」が毎日続いているような感覚だと言っておりましたが、言いえて妙だと実感しました。

休み明けの締め切りは辛いです。

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（井村屋のえいようかん）

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