人間のキャパシティーを圧倒するテクノロジー |
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2022年 02月 04日
今日の横浜駅は雲が多いですがなんとか晴れております。 さて、久しぶりにテクノロジーに関する記事の試訳です。だいぶ古い記事ではありますが、その内容は古くなっておらず、講義などでも使っている考えさせてくれるものです。 ==== By トリスタン・ハリス 19-12/5 NYタイムズ 10年前、ハーバード大学の教授で社会生物学の父として知られるエドワード・O・ウィルソンは「今後100年間に人類が直面する危機を解決することができるか」と問われて、「もしわれわれが正直で賢いのなら可能だ・・・だが人類にとって最大の問題は、旧石器時代の感情、中世の制度、神のような技術を持っている点にある」と答えている。 このウィルソン氏の観察以降もテクノロジーの神通力は劇的に増大し、一方で私たちの脳の古代の旧石器時代の衝動は変わっていない。 ところが今日のテクノロジー企業、つまりFacebookやGoogleのようなデジタル・インフラ企業が、私たちの脳のキャパシティーを圧倒してしまったという不満が投げかけられることは少ない。むしろ聞かれるのは、テクノロジー企業が私たちの個人データを収集し、追跡しているという懸念や、そのような企業がただ単に巨大になりすぎているという懸念の方だ。 たとえば私たちがプライバシーの問題を解決できたと仮定してみよう。この新しいユートピアでは、私たちは自分のデータをすべて所有することになり、テクノロジー系の巨大企業たちはネット情報から私たちの居場所を追跡するのを禁じられ、私たちが共有に同意したデータにのみアクセスできるのだ。 気味の悪い広告を目にすることは減り、監視されているという心配は減るかもしれないが、オンラインの世界に関連した厄介なトレンドは対処されずに残るだろう。 社会承認や「いいね!」ボタンへの中毒は、私たちの注意力を破壊し続けるだろう。私たちの脳は相変わらず侮辱的な怒りのツイートへと引き込まれ、民主的な議論は子供のような「言った言わない」という水掛け論に取って代わられるだろう。ティーンエイジャーたちは、ネット上の社会的圧力やネットいじめにさらされ、精神的な健康を害されたままとなるだろう。 アルゴリズムによって過激主義や陰謀論に向かう「ウサギの穴」が作られ続けるだろう。なぜなら、人間の編集者に時間を割いて何が価値あるものかを判断してもらうよりも、自動化したほうが安上がりだからだ。そして孤立したオンライン・コミュニティで育まれた過激なコンテンツは、銃乱射事件を引き起こし続けるだろう。 このように20億人の頭脳に影響を与えることで、今日のソーシャルメディアは世界の歴史を動かすものとなる。ソーシャルメディアが解き放った力は、将来の選挙や、事実とフィクションを見分ける能力にまで影響を与え、社会の分裂を増大させるだろう。 ネット上のプライバシーは、取り組むべき問題であることは間違いない。だがどんなに優れたプライバシー保護法も、旧石器時代の感情がテクノロジーの誘惑に抵抗できる程度にしか効果がないのだ。 FaceAppというアプリは、最近、1億5000万人の虚栄心に訴えかけ、本人たちの名前と一緒に顔の画像を提供するように仕向けた。これがなぜ可能であったのかといえば、このアプリは何年も先の未来に登場するような、超高精度の肖像画を作成する機能を提供したからだ。ではこのアプリ(と1億5000万人の名前と顔)を提供しているの誰なのかといえば、サンクトペテルブルクにあるロシアの企業なのだ。 人々の虚栄心を刺激することができれば、人々は自分の顔をスキャンした情報を喜んで提供してくれるのだ。わざわざ選挙をハッキングしたり、有権者の情報を盗んだりする必要などなくなってしまう。 旧石器時代の衝動を持っている私たちは、テクノロジーの恩恵に抗うことができないのである。しかしこれは、単に私たちのプライバシーを損なうだけではない。集団的に行動を起こす能力も損なわれているのだ。 この理由は、旧石器時代の脳が世界の苦しみを全知全能で把握するようにはできていない、という点にある。私たちのオンライン・ニュース・フィードは、世界のあらゆる痛みと残酷さを集約し、私たちの脳を一種の学習性の無力感へと引きずり込んでいる。それに見合うだけの媒介を持たずにほぼ完全な知識を提供するテクノロジーは、そもそも人間的ではないのである。 旧石器時代の私たちの脳は、真実を追求するようにはできていない。自分の信念を確認するような情報は私たちを気持ちよくさせるものであり、自分の信念に挑戦するような情報は不快なのだ。 私たちがクリックするものをより多く与えてくれる巨大テクノロジー企業は、本質的にわれわれを分断するものだ。そのような企業が誕生してから数十年がたち、テクノロジーは社会をそれぞれ異なるイデオロギー世界に分裂させたのだ。 簡単に言えば、テクノロジーは私たちの頭脳を凌駕し、世界で最も差し迫った課題に対処する能力を低下させたのだ。このミスマッチを利用した広告ビジネスモデルが(人々の関心や注目の度合いが経済的価値を持つとする)「アテンション・エコノミー」を生み出した。その見返りとして、私たちは人間性を「無料」まで格下げしたのだ。 このような状態は、われわれを深刻なほど不安定な状態に追いやることになる。20億の人間がこのような環境に閉じ込められ、「アテンション・エコノミー」が私たちを自らの生存に不適応な文明へと変えてしまったからだ。 だが良いニュースもある。われわれは自分たちの脳と自分たちが使うテクノロジーとの間にあるこのミスマッチを認識できる、唯一の自己認識できる生き物だということだ。つまり、私たちはこうした流れを逆転させる力を持っている存在なのだ。 ここでの最大の問題は、われわれがこの挑戦に立ち向かえるかどうかであり、自分自身の内面を深く見つめ、その知恵を使って根本的により人間的な新しいテクノロジーを生み出せるかどうかということだ。過去の賢人たちは「汝自身を知れ」と言った。われわれは自分たちの限界を正直に理解することでは、神のようなテクノロジーを再び調和させなければならないのだ 以下は抽象的な話に聞こえるかもしれないが、具体的にわれわれが取り組むことができるものだ。 第一に、政策立案者はハイテク企業に対して特別な税、すなわち「格下げ税」を創設するのだ。この税は、われわれの注意力を引き出し、消耗させることに基づく彼らのビジネスモデルを法外に高価なものにする一方で、ジャーナリズム、公教育、人間の価値や社会への貢献を優遇する新しいプラットフォームの創造に富を再分配させるものだ。 第二に、われわれを依存症でナルシストな過激派に変えることで利益を得る無料のソーシャルメディア・プラットフォームに参加する代わりに、画面の外で我々の生活に力を与える機能のために「いいね!」を避けるサービスに購読料を支払うことに同意し、これらのサービスを本質的に人類の最善の利益のために働くような受託者にさせるのだ。 第三に、デジタル・プラットフォームには、悪意のあるバイラル・コンテンツや「ディープフェイク」(人工知能によって本物に見えるように加工された動画)などのテクノロジーの歪曲による偽情報を広める代わりに、私たちを守るメディアインフラを抜本的に強化させるのだ。 2020年の米国大統領選挙の候補者たちは、テクノロジーが我々の頭脳を凌駕しようとする競争がもたらす脅威について自らを教育すべきであり、ニュースメディアは彼らの責任を追及しなければならない。どの大統領も「アテンション・エコノミー」の問題に取り組むことなしに、選挙公約を効果的に実現することはできない。 人間的な技術を作るためには、人間の本質を深く考える必要があり、それは単にプライバシーについて話すこと以上のことを意味する。つまり精神面で大きな改革を迫られる時がきたのだ。私たちは、自己認識や批判的思考、理性的な議論や考察といった人間の持つ長所と、弱点や脆弱性、そして自分自身でコントロールできなくなった部分を理解する必要があるのだ。 テクノロジーと和解する唯一の方法は、自分たち自身と和解することなのだ。 ==== テクノロジーの進化と人間のミスマッチを説いた、実に興味深い論考です。テクノロジーは単なるツールだという意見もありますが、社会を大きく変えるだけでなく、人間の本質そのものを暴き出しているという点は考えさせられます。 さらにもう一歩踏み込んで考えると、やはり人間はテクノロジーによって変えられているとも言えます。 新しいテクノロジーの登場と、それによって変化する将来戦を考える際には、ここで触れられた論点は実にさまざまなヒントを与えております。 ということで繰り返しになりますが、さらに大きな米中関係などについては最新の音声レポートも作成しましたので、ご興味のある方はこちらもぜひ。 さらに「インド太平洋戦略の地政学」も発売となりました。よろしくお願いします。 (フィリピンを望む) ▼〜奴隷人生からの脱却のために〜 「戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから! ▼〜あなたは本当の北京の工作の手口を知らなかった〜 ▼〜あなたは本当の「孫子」を知らなかった〜 ▼〜あなたは本物の「戦略思考」を持っているか〜 「奧山真司『一発逆転の非常識な成功法則〜クーデター入門に学ぶCD』」 ▼〜あなたは本当の「国際政治の姿」を知らなかった〜 「奧山真司『THE REALISTS リアリスト入門』CD」 ▼〜"危機の時代"を生き抜く戦略がここにある〜
by masa_the_man
| 2022-02-04 12:43
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