今日も横浜北部は真夏です。
さて、昨日のエントリーの続きを。
デモのやり方として、香港の学生たちは腕にラップを巻いたり、ガスマスクをしたりという催涙弾対策をしていることを説明しましたが、おそらく今回のデモで最も革新的なのは、それがSNSを活用して行われているという点でしょうか。
もちろんSNSの使用というのは、近年のあらゆるデモにおいては動員面で非常に大きな役割を果たしております。
その一例が、トランプ大統領が当選して政権発足の直後に行われた、2017年1月21日の
ウィメンズ・マーチ。
これなどは、後のSNSを通じたスピード感のある動員の典型例として話題になりました(ただし運動が定着するかについては疑問符も出ましたが)。
ところが今回の香港デモは、SNSそのものがデモ隊のオペレーション面において重大な役割を果たしていることを証明しております。
デモ隊に使われているのは主に
テレグラムらしいのですが、このようなアプリを使うことにより、デモ活動そのものがとても流動的に行われているようで、黒いシャツを着た学生たちは、
地下鉄で移動しながら、一箇所のデモに参加したあとに応援で呼ばれて別の場所でデモを行う、という動きを見せておりました。
このような活動は基本的にリーダーがいない状態で行われており、たとえば次のデモの場所について決定する場合もSNS上で投票が行われるなど、かなり直接民主制度的な、自発的でフラットな運動の運営が行われているように感じました。
これはエリート的なリーダーが運動の組織の中にはいない、もしくは目立たないという意味で、純粋なポピュリズム、つまり反エリートという意味での本当の「大衆運動」に該当するのかもしれませんね。
その他にも、香港のデモの特徴として私が感じたのは、
「行進中に誰かが音頭をとって全員が唱和することは少ない」
というものです。
ものすごい人数で行進はするのですが、みんなで同じ言葉を唱和しようという意気込みはあまり感じられず、
「デモのスローガンはあくまでも一部の人々が散発的に唱えるもの」
という、ややユル目な雰囲気を感じました。
日本のデモ、それに韓国のデモなどは「みんなでの唱和こそ命」という雰囲気はありますが、これも文化の違いなのでしょうか?
以上がデモ隊たちの行動について個人的に気になったところをいくつか指摘してみましたが、このデモは今後どのような結末を迎えるのでしょうか?
簡潔に言ってしまえば
「誰にもわからない」
というのが正直なところですが、個人的には着地点としては大きく4つの選択肢しか考えられないのではと思っております。
それらを以下に順番に示してみますと、
① 雨傘運動式の自然消滅
② 白シャツ隊らによる非合法介入
③ 香港行政府の民主改革
④ 天安門式の強制介入
となりますが、香港の
ある事情通に聞いたところによると、おそらく北京は①を狙っているだろうとのこと。
デモ運動全体的には③に行きたいのでしょうが、これはシステム的に考えても相当難しく、ましてや国際的に考えても④の選択肢は北京にとっての自殺行為に当たります。
いや、④を真面目にやったら、それこそ1989年当時の状態に逆戻りという可能性もあるわけです。
そうなると、このまま治安が崩壊してもデモ運動だけはダラダラ続けさせて、現地の住民たちの間に嫌悪感が広まったところで活動終了、というのがコスト的にも妥当であることになります。
ただしそれだとまた住民の間に不満が蓄積されるので、また数年後、もしくは今年の国慶節(10月1日)に再び怒りが爆発ということにもなりかねません。火種は残るわけです。
チャンスがあれば、これについてはどこかの月刊誌に某事情通の話と絡めて詳しく書いてみたいですが、現場からの報告は以上となります。