今日の横浜北部はよく晴れております。台風はどこに行ったのでしょうか?
さて、本日はやや主旨を変えて、竹島沖で韓国が警告射撃を行なったことから明らかになったロシアと中国の軍事面での協力関係の深化について。
以下に要約した記事を書いたのは東アジアの安全保障の専門家であるガディですが、結論としては19世紀型の中露間の軍事同盟関係が進展中という分析です。
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By フランツ・ステファン・ガディ
July 25, 2019
昨日(24日)のことだが、人民解放軍空軍とロシア空軍が、共同で長距離航空パトロールを初めて実施しており、これには2機のH-6K爆撃機と、インド太平洋地域における核を搭載できる長距離爆撃機となる2機のTU-95MSが参加している。
ロシアの国防省によれば、この任務の狙いは「グローバルな安定の強化」にあるというのだが、これはなぜ共同の爆撃機による警戒監視飛行が地政学的に重要なのかを説明する、三つの理由を示していた。
第一の理由は、あるレベルにおいて、アメリカとその同盟国たちに向けて、「露中は、以前よりも自己主張の強くなったアメリカの核政策や、崩壊しつつある軍備管理の合意に直面した結果、直接的な軍事協力はまだなくとも、特定の核関連の問題については政治的に手を携えはじめた」というシグナルを送ることを意図したものであった。
今から一ヶ月前には、中国の習近平国家主席とロシア大統領であるウラジーミル・プーチンが、共同声明の中で「既存の軍備管理や軍備縮小、そして不拡散体制についての合意を破壊しようとする、いかなる行為も受け入れられるものではない」と強調している。
なぜこの二国の空軍が警戒監視を朝鮮半島の近くで行なったのか、その理由を説明するのが核兵器の存在だ。
中国とロシアは、朝鮮半島にアメリカによって配備された長距離レーダーを含んだTHAADシステムに何度も懸念を表明している。北京とモスクワはこの配備を「無謀なもの」であり、その地域の「戦略バランス」を破壊する可能性が高いと主張している。
とりわけ中国は、THAADの配備について自国の第二撃能力を無効化する可能性があるとして懸念を表明してきた。
今回の合計4機の核兵器搭載可能な爆撃機の朝鮮半島沖における飛行は、アメリカのミサイル防衛システムの配備後の現状維持状態が実現してしまったことに対するこの二国の憤りを強烈に強調することになったのだ。
それに加えて、トランプ大統領は、アメリカとロシアだけでなく、中国(先制不使用政策を採用している)の核弾頭も制限する、新たな核管理条約を追求することに意欲を示している。
もちろん中国はこのような条約に全く関心を示していないのだが、それでも核の分野における中国とロシアとの協力関係の深化は、いかなる将来におけるアメリカとの軍備制限交渉においても、中露のポジションを強めることになる。
中露が統一戦線を張ることができれば、将来の両国の地上配備型の中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルに関してアメリカが交渉(といってもこれは今いかなる状況においても存在しないのだが)で譲歩を勝ち取ることは、さらに難しくなる。
また、今回の空中警戒監視行動を、過去の中露の海軍演習と異なるものにしているのは、核の分野である。なぜなら海軍同士の演習では、これまで両国とも弾道ミサイルを発射できる攻撃型潜水艦を参加させていないからだ。
第二の理由は、今回の警戒監視行動は空の分野において中露が技術面で新たな協力のレベルに達したことを強調するものであり、この両大国の軍事的能力の向上を見て取ることができる点だ。
今回の中露による爆撃機の任務は、NATO諸国間ほどの相互運用性を必要とはしないが、それでも将来におけるさらなる協力深化の可能性が示されている。
今回の警戒監視の最大の狙いは、中国の軍部の報道官によれば「共同運用能力の向上」にあったという。
防衛専門家でありドミトリー・ステファノヴィッチが指摘するように、もしこの両軍が共同で空中給油ができるようなレベルに達すると、たしかに地域の戦略バランスに対するインパクトは無視できないものとなる。
第三の理由は、今回の中露の爆撃機を使った任務の大きな意味合いとしては、この両国が軍事面での結びつきを強めていることを証明したという点だ。
中国の新しい防衛白書では、「中国とロシアの軍事関係は、さらに高いレベルに成熟しつつあり、新たな時代における中露の包括的戦略パートナーシップの連携を豊かにしており、グローバルな戦略的安定の維持において重要な役割を果たしている」と述べられている。
この意味でとりわけ注目すべきは、去年開催されたロシアの大規模軍事演習に、中国の陸上兵力が旅団規模で初めて参加したということだ。
今週はじめにロシア政府が発表した布告によれば、両国は現在、新たな軍事協力合意について交渉中だという。
興味深いのは、今回の爆撃機による警戒監視飛行に関する両国の国防省の発表では、ロシアと中国が「2019年軍事協力計画」という名前が引き合いに出されていた点だ。
もちろんこれまではそのような計画がこれまで公表されていなかったため、これが何を意味するのかは謎のままだ。ところがそれが存在するという事実だけで、これまでの知られざる協力関係のレベルが伺い知れるといえよう。
ただし、中露は軍事協力の深化にもかかわらず、まだ同盟関係にあるわけではない。中国は「同盟ではなくパートナーシップ」を求めていることは、昨日の軍部の報道官によって強調されていた。
中国とロシアは集団防衛体制へと進みたいとは思っておらず、いざ戦争が起こった時に互いを守ることを約束するような公式な安全保障条約を結んではいない。
また、両国は互いのことを、低いレベルであるとはいえ「安全保障上の脅威」だとみなしているのだ。
中露の軍事的な結びつきは、NATOのような永続的かつ高い互換性を持つ軍事同盟と同じようなレベルを持った二国間関係には至っていない。
中国とロシアは、むしろ英仏協商のような、19世紀型の軍事同盟になりそうだ。それはつまり、両者とも独立して統一指揮系統を持たず、作戦面ではその場しのぎで連携しつつも全体的には共同して戦争を戦う戦略を持つというタイプのものだ。
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核分野での協力という点を強調しているのが印象的ですね。
韓国内におけるTHAADの配備が戦略バランスに大きなインパクトを持っていたと分析しております。
現在の中国とロシアとの関係については、「反米で協力が進んでいる」とする見方と、「やはり仲が悪い」という見方で議論が対立する構造が見てとれますが、著者のガディはこの中間の立場をとっておりますね。
私は彼よりもやや悲観的、つまり協力はしつつも19世紀の英仏ほどは協力できないと見ておりますが・・・
(川崎重工業)