今日の横浜北部は朝から快晴ですでに暑いです。
さて、大陸との関係と古典地政学のアイディアについて。
古典地政学の大御所たちの考えには、
「距離の離れた向こう側のユーラシア大陸の脅威をどうするか」
という問題意識があるということを説明しまたが、拙監訳の『
不穏なフロンティアの大戦略』も、まさにこの前提から議論を展開しております。
それは、ロシア、中国、イランというユーラシア大陸に位置する「大国」(great powers)に対抗して、島の大国(しかも地域大国で覇権国)であるアメリカが、世界をどう攻略していくべきかを説くものです。
こういうことを書くと、
「古典地政学の考え方は帝国主義的だ!」
と指摘して溜飲を下げようとする方も多いこと。つまりこのような戦略論には、実に帝国主義的な観点があってけしからんということですね。
ただしここで重要なのは、このような議論をすると、古典地政学の新旧の論者たちの大事な前提となる考え方を見誤ってしまうという点です。
それはつまり、彼らの考えの中に、
「自分たちは地理的に世界の中心に位置しているわけではない」
という認識があるということです。これを言い換えれば、
「世界の政治中心はユーラシア大陸である」
という自覚があり、自分たちはそこから離れた位置で安定した勢力であり、面倒なことは世界政治の中心である大陸からやってくるという考えがあるということです。
つまり彼らの世界観は、状況を客観的にとらえている観察者として、まずは
「自分たちが少数派のハズレ者だ」
というところから議論を始めているということです。
ところが自分たちはハズレ者であっても、世界の中心部から発生してくる難問とは無関係ではありません。
たとえば以下のような問題も、そのような世界政治の中心である「大陸」と、そのハズレにある「島」との関係性を考えさせてくれる一つのバリエーションです。
===引用===
毎日新聞 2019/07/24 20:19
オーストラリア(豪州)の大学に通う香港からの留学生らが24日、「逃亡犯条例」改正案に反対する香港での大規模デモを支持する集会をしていたところ、大勢の中国人留学生が乱入し、殴り合いになる騒ぎがあった。
香港のデモを巡る対立が海外にまで飛び火した形だ。
===引用===
これはみなさんもご存知のように、香港の民主主義や自治権をめぐる問題が、海外の島国(しかも自由民主主義陣営の雄の一つであるオーストラリア)で暴力事件という形で発生したということになります。
あくまでも問題の核心は香港と北京の間にあるわけですが、それが症状として海外に飛び火するというところがカギかもしれません。
つまり、この記事を書いている人も、問題はユーラシア大陸のもので、それが外にある島に害を及ぼしたと認識しているわけです。
ではその「島側」のリーダーたちはどうするか・・・これが古典地政学の戦略論の出発点となるわけですね。