新刊のお知らせ[再掲]です。
この本については本ブログでも何度が言及しておりますが、主にスパイクマンの地政学的な世界観を使いながら、アメリカが主導する世界秩序に対抗する「現状変更勢力」である、ロシア、中国、イランという三つの大国が使っている
「プロービング」(probing)
という概念を説明しているのが最大の特徴であります。
本書で示されている結論は実にシンプルなもので、
「アメリカは同盟国を大切にしろよ!」
というものなのなので、結果的に現在のトランプ政権のとっている政策に反するものになっております。
ところが皮肉なことに、この本を出した後に、原著者の二人はなんとトランプ政権の官僚として、米国務省で働いております。
二人ともすでに辞めてはいるわけですが、たしかに本書で提案されている政策とは矛盾しているので、やはり思うところはあったものと推測されます。
このような本書ですが、その目次を示しますと、
1、序論:世界の辺境における米国の力
2,アメリカの同盟軽視
3,現状変更国の「探り」
4,米国の同盟国たちの反応
5,同盟の利益
6,提言
という形で、かなり理路整然となっております。具体的な流れを説明しますと、
まず序論で本書の内容をざっと説明
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次になぜアメリカは同盟を「負担」だと思い始めているのかを説明
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米国のライバルであるロシア、中国、イランが各地域で行っている「探り」のやり方を解説
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その「探り」を仕掛けられている米国の同盟国たちの動揺する動きを説明
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同盟国が米国にとっていかに大切な「資産」であるかを説得
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同盟を軽視しない政策を提案
という政策提言書のスタイルをとるものです。
解説にも書きましたが、これはあくまでも「アメリカ側から見た視点」ということなのですが、とりわけ地政学や安全保障の面から、日本を始めとする同盟国の存在意義を明確に示しているものとして、かなり貴重なタイプの本ではないでしょうか?
現在のトランプ政権の行動や、それに対する日本側の対処の仕方へのヒント、そして大きな地政学的視点を得られるという意味で、大いに参考となる本です。
どうぞよろしくお願いします。
(紀伊国屋の売り場から)