今日のメリーランドは雲が多い朝からすっかり晴れました。ほぼ夏です。
さて、昨日の続きで「不穏なフロンティアの大戦略」について。
昨日の今日の話なのですが、実はさきほどこの本の原著者の一人である
ヤクブ・グリギエルに会ってきました。
彼との会話については後ほどどこかの媒体で公開することになるのかもしれませんが、その内容は実に興味深いものでした。
彼はつい先ごろまでトランプ政権の国務省で働いていた人物なのですが、もともとはポーランド生まれで、イタリアで高校まで出てからジョージタウン大学で学位をとり、その後にプリンストン大学で博士号をマイケル・ドイルと
アーロン・フリードバーグの下で修めたとのことです。
今回のインタビューの内容の詳細については省きますが、話をして印象的だったのは
「トランプ政権の方向性は正しいよ」
まず彼の認識では、アメリカにとってのライバル国であるロシア、中国、イランというのは、冷戦がおわった直後から、常にアメリカに対して低いレベルで競争をしかけていたというのです。
ところがアメリカの外交エスタブリッシュメントでは、そのような小さなレベルの挑戦についてはまったく気にかけておらず、2001年の911事件が起こってはじめて、いや、それが起こったあとの、かなり時間がたってから、
「ライバル国たちに挑戦を受けている」
と気づいたというのです。
なぜならそれまでアメリカは、例外主義の信念と一極状態へのおごり、そしてリベラリズムの思想にのっとって、国際政治から「大国間競争」を克服したと勘違いしていたからです。
ところがここ十年ほどのロシア、そして5年ほどの中国の動きを見てきたときに、アメリカのエスタブリッシュメントの中で
「どうやら世界はわれわれの思ったようには動いていないみたいだ」
という実感が出始め、それがオバマ政権を経てから、トランプ政権での政策転換としてあらわれたというのです。
つまり彼の認識では「大国間競争」は常に存在していたが、そこから目をそらしていたアメリカが、トランプ政権かわる前後から一気にそのリアリスト的な世界観の現実に気づいた、ということなのです。
その後に、なぜ地政学の理論を使うのか、実務家として状況をどのように見ているのかという話を色々としてくれましたが、厳しい世界観ながらも行き先については良い意味で楽観的にとらえているなという印象でした。
本書の中でも強く提示されている
「プロービング」
という概念についても詳細に説明してくれましたが、これについては機会があれば、のちほど詳しく書きたいと思います。
(マクドナルド)