今日の横浜北部は、梅雨の晴れ間は五月晴れということで、実にスッキリとした一日でした。
さて、
米中関係が日に日に悪化していっておりますが、そこでも見ることができる「パラドキシカル・ロジックが発動している状況」について少し書きます。
昨日のエントリーでは、紛争が本格化してくると思わぬ状況が出てくることを説明しましたが、このような混沌とした状況を表しているのは、やはり戦場です。
とりわけ私がこの戦場におけるパラドキシカル・ロジックの発動した状態をうまく言い表せていると感じた記述が、ベトナム戦争に関するノンフィクション作品として最も優れたものの一つとされる、デヴィッド・ハルバースタムの『
ベスト&ブライテスト』の中にあります。
ニューヨーク・タイムズ紙の元記者であるノンフィクションの名手ハルバースタムは、この本の冒頭のまえがきとして書いた「娘への手紙」という文章の中で、記者として取材をしていた当時にサイゴンの激戦区で出会った、ジョン・バン中佐という人物について記述しております。
ある時この中佐たちの部隊が行っていた前線での戦いを取材し終わったあとに、ハルバースタムは中佐たちと一息つくために、一緒にベトナム料理を食べに街にでかけます。
そこで、著者のハルバースタムは、この中佐に驚かされることになります。
なぜならバン中佐は、レストランにつくと、部下の兵士たち全員に突然、
「ハシを利き腕ではない手で使って食べろ」
と命じたからです。
もちろん中佐は冗談半分の余興で命じた、とハルバースタムは考えたようなのですが、その時の中佐の
「ここでは何もかも逆さまですからね」
というコメントをとても印象的であり、実はそれがベトナム戦争におけるアメリカの誤りを象徴しているのでは?と考えます。
たしかにハルバースタムのこのような解釈は、私もわからないではないですが、それよりも重要だと思うのが、このバン中佐の
「何もかも逆さま」
というコメントが、まさにルトワックの解く「パラドキシカル・ロジックが発動した状態」と解釈できるという点です。
つまり戦場では、このような「逆さま」のような状態が(とりわけ戦略が間違っている場合には)発生するものであり、このバン中佐という超優秀な人間は、それを肌感覚でわかっていたので、
「利き腕じゃないほうの手でハシ使って食べろ」
と部下に命じることができたのかもしれません。
この続きはまた明日。
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