今日の横浜北部は、朝から曇っております。いよいよ梅雨間近。
さて、トランプ政権がオフショア・バランシングしているかもしれないという話の続きを。
先にお断りしておきますが、現在のトランプ政権はOB論者たちの言うようなオフショア・バランシングは行っておりません。
ところが私の見立てでは、OBが同盟国に及ぼすインパクトを、肯定的・否定的なものを含めて与えております。
その核心にあるのが、昨日のエントリーでも引用したブランズの
「反同盟的衝動」
であります。
その典型的なあらわれが、トランプ大統領のメルケル首相に対する厳しい批判。
たとえば先日アメリカの名門大学ハーバードの卒業講演で、メルケル首相は
トランプを猛批判する内容の演説をして話題になりましたが、これはそもそもトランプ政権の反同盟的な態度から発したものであります。
18年7月のNATO首脳会議で各国に「ただちに2%払え」と強く要求、さらに4%への目標倍増も求めていた
わけなのですが、こうなると
「我々同盟諸国に対してちょっと厳しいんじゃないの?!」
という不満も上がってくるわけです。そしてドイツは、まさにそのような不満を代弁する形で、
目標を大幅に下回ったのは、トランプ氏の最大の標的だった経済大国ドイツ・・・18年の国防費は17年から横ばいの同1.23%
だったわけです。
もちろんトランプ政権、もしくはアメリカ政府全体では、基本的に同盟を重視するという従来の路線は(まだ)変わっておりません。
たとえば実際の米軍の動きを見てみても、トランプ政権になってから世界のどこかの地域から米軍が撤退したという事実はないからです。
つまり「一時的にせよユーラシア大陸から軍を撤退させる」というオフショア・バランシングはまだ起こっておりません。
ただし政権内では、たとえば同盟関係を重視するジョン・ケリー前首席補佐官や、とりわけマティス前国防長官のような人物が、同盟諸国との関係を軽視する姿勢をとるトランプに抗議する形で辞職しているわけです。
このようなトランプ大統領の個人的な動きは、同盟国間に動揺をもたらすことになります。
そうすると何が起こるのかというと、これを察知した同盟国たちや地域の間で、実際にオフショア・バランシングが実行された時に発生すると言われる3つの現象、つまり、
1、三大戦略地域の情勢の不安定化
2、同盟国のバランシング
3、同盟国のバンドワゴニング
が実現する可能性が著しく高まってしまうのです。
これを言い換えると、トランプ政権はオフショア・バランシングにともなう「米軍の撤退」というフィジカルな動きをともなうことなく、トップであるトランプ大統領個人の反同盟的な態度や言動で同盟国たちを動揺させ、まるで実際にオフショア・バランシングの第一段階が実行されたかのような現象を発生させているわけです。
これこそがまさに「仮想オフショア・バランシング」の実態です
ここまで書いて時間切れです。続きはまた。
(2億円の裏庭)
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