今日の横浜北部は曇って雨も降りました。意外に寒いです。
さて、ルトワックの大戦略を説明してきましたが、ここで他の人たちの理論についても触れておきましょう。
今日紹介するのはジョン・コリンズという人です。
タイトルを直訳すると、『大戦略:原則と実践』ということになります。
この本の最大の特徴は、ルトワックよりも先駆けて、アメリカで初めて「大戦略」を中心的なテーマとして扱ったという点です。
最大の関心は、なんといっても「国家の安全保障」(national security)。
ところが著者のコリンズは、近代に入ってテクノロジーが進んできたことによって、この国家の安全が、他国による単純な武力攻撃や占領による脅威ではなくて、もっと別の形をとるようになったと言います。
そうなると、軍事的な脅威よりも、もっと多様な要素を考えなきゃいけないでしょ?ということで「大戦略」を掲げるわけです。
もちろんコリンズの視点では、国家の安全保障にとっての最大の問題は、国家が「生き残り」(survival)をできるかどうか。
そしてそのために必要になるのは、国家戦略(national srtategy)ということになり、「大戦略」はその戦略のうちの一つとなるわけです。
「ん?大戦略がトップではないの?」
と感じるかたもいらっしゃるでしょうが、コリンズはより「近代化した現代の国家」に焦点を当てていたため、ルトワックの考える大戦略の
階層のさらに上に「国家戦略」を置いて、それが国家の生き残りと安全保障の実現のために究極に重要なものだと考えたのです。
大戦略ですが、コリンズの長い定義を省略してそのエッセンスだけ言いますと、、
「国家戦略を実行する上で、あらゆる国力を最適に使うための科学とアート」
と述べております。するとその構造は、以下のような三層型になるわけですね。
国家戦略←国家安全保障への脅威←生き残り
↓
大戦略(国家のリーダー:ステーツマンが担当)
↓
軍事戦略(軍の将軍たちが担当)
そしてここでも明確なのが、コリンズが「大戦略」がその下に属する「軍事戦略」をコントロールすると意識している点です。
もうおわかりいただいたでしょうか?それは、ここでも軍事戦略とのつながりを無視していない、ということです。
「大戦略」を語るのであれば、その下の軍事との関連性を語るのは必須なのです。

(マハン)