戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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作戦実行メンタリティとは何か

今朝の恵比寿は晴れてて涼しく快適です。

さて、前回の話の続きを。

「新たな冷戦」に備えて日本は文化的にルトワックのいう「作戦実行メンタリティ」というものを獲得できるのかという話でしたが、そこまで書いて、私はそもそも大事なことを書き忘れていたことを指摘されました。

それは、「作戦実行メンタリティ」とはそもそもなんぞや、ということです。

この大事な概念ですが、文春新書のルトワック三部作では、形を変えながら通奏低音のように何度も出てくるものなので、「日本4.0」で出てきても雰囲気的にはわかったような気になりますが、やはり担当した訳者としては、この概念をここで明確にしておく必要があるでしょう。

今回の訪米も含めて、私が受け取った彼の言う「作戦実行メンタリティ」ですが、現在私は大きくわけて3つの特徴があると考えております。

まず一つ目の特徴が、「チープに行う」という点です。

これは彼の戦略アドバイスとしてはデビュー作の『クーデター入門』から一貫しておりまして、あらゆる軍事作戦では「最小の労力で最大の効果を上げることが大事だ」という、当然といえば当然の考えから来ております。

今回の『日本4.0』では、これが北朝鮮を空爆するための日本のF-15の改装の提案につながっておりまして、「イスラエルが30年前に自国のF-15を改装して地上攻撃型にできたので、日本もたくさん持っている空対空戦闘用のF-15を改造すべきだ」というアドバイスにつながっております。、

しかもこれには数年かけて多額な資金を投入する必要はなく、すでに国際的に流通している機材(増槽や空対地ミサイルなど)を購入して改造するだけで、短期間で安価に十分な能力を得られる、というのです。

逆にいえば、このようなインプロ的なことができない軍隊は、そのメンタリティとして非効率な官僚的な考えに毒されているいる、ということです。

このような指摘は、軍事組織としての肥大化を憂慮した『ペンタゴン:知られざる巨大機構の実体』という訳本の中でも繰り返し説かれているところでありまして、装備の性能の高さや調達面での公平性を厳格に求めすぎてしまうがゆえに、それに関わる余計なプロセスが膨れ上がってしまうことを問題視するわけです。

二つ目の特徴が「リスクを恐れない」ということです。

この例として、ルトワックはイスラエルのモサドの犯行といわれるイランの核科学者に対する暗殺作戦を、アメリカがバルカン半島介入で戦争犯罪人としてセルビア人のムラディッチを捕らえるのにリスクを恐れるあまりに失敗して中止した、「アンバーライト作戦」と対比して説明しております。

また、ルトワックは指摘しておりませんが、リスクを恐れない利便性という意味では、タイの警察が捜査などの連絡用にLINEを活用としていることなどもヒントになりそうです。ネットではLINEのセキュリティの脆弱性が指摘されて久しいですが、情報漏えいというリスクを恐れなければ、たしかにLINEグループのようなチャット機能は非常に利便性が高いわけです。

もちろん自衛隊は「ミルスペック」の要求や「情報保全」というリスクの観点から、LINEを部隊の活動に採用することはないでしょうが、利便性や効率性を最優先するという面では「スマホ使ってLINEで連絡」というのは、一つの大きなヒントとなります。

三つ目の特徴が、「すぐ実行する」です。

このメンタリティを示す良い題材としてルトワックが使うのが、2013年にフランスのオランド政権下で実行されたマリへの武力介入案件(セルヴァル作戦)です。この際にフランス軍は大統領に一言も文句を言わず、伝染病予防のためのワクチンを隊員に射たなければならないから待ってくれなどと言わずにすぐに実行しているわけですが、この即応性というものを評価しているわけです。

「いや、それは武力行使をいとわないフランスの話で、平和国家の日本では無理でしょう」

という反応は当然でしょうが、ここで逆にわれわれが考えなければならないのは、政治面を含めて、そのような実行の決断をできないことや、それに対処するための即応能力を持てていないリスクでもあります。

これだけテクノロジーの進歩や情勢変化の速い国際環境の中で、このようなメンタリティを持たないままで良いとは言い切れないところが、逆に日本の置かれた厳しさというものを感じさせてくれます。

果たして日本政府や自衛隊、さらには組織などに属するわれわれ日本人一般は、上記のような「最も利便性の高いことを余計なプロセスを経ずにリスクを恐れずにすぐ実行する」というメンタリティを持つことができるのでしょうか?

それともそれを持たずに「座して死を待つ」状態でいいのでしょうか。

日本のように「成熟した」組織文化を持った国や個人のレベルではなかなか難しいでしょうが、国際情勢が厳しいものとなりつつある時に、われわれにはこの国内の文化的な面を変えるべきか、変えてはいけないのか、それともはじめから変えられないのか、という問題としてますます問われてくるように思えてなりません。

そういう意味で、ルトワックの「作戦実行メンタリティ」という概念は、自衛隊だけではなく、これからものごとを成していくあらゆる人々にとって忘れてはならない有益なヒントをくれる概念であることは間違いないでしょう。

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(マハン・ホール)

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by masa_the_man | 2018-11-15 04:06 | 日記 | Comments(0)