戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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防衛省は戦略環境の変化に応じて陸自から海自に予算を移せ

今日の横浜北部は薄く雲がありますが朝から晴れております。

さて、久々に更新です。先日の番組でも紹介した、自衛隊にリソース配分の変更を迫る内容の、ジャパン・タイムズ紙に掲載された記事の要約です。

原著者はMITの博士課程(日本研究)の研究生、訳はRogue Monkさんにお世話になりました。

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by ミナ・ポールマン 18-8/19

日本の自衛隊三軍には、名声と影響力において、常に明確なヒエラルキーがある。陸上自衛隊、海上自衛隊、そして航空自衛隊という順番だ。

冷戦中の陸上自衛隊(陸自)が地位を得たのは、その規模の大きさと、ソ連による北海道への上陸侵攻作戦への日本のこだわりのせいだった。同時に、陸自は長年にわたって予算獲得における影響力も長年にわたって獲得してきた。しかし、北朝鮮のミサイルから中国の海洋侵略まで、日本が直面する脅威の性質は変化した。そのため、陸自の役割と重要性は薄れつつある

最近の陸自の「水陸機動団」の創設は、こうした情勢に対する「官僚政治」というレンズを通して見れば一番分かりやすいだろう。

水陸機動団(米国の海兵隊を思い浮かべてもらいたい)は、中国の海洋侵略に対処する目的で生み出されたものだ。この部隊の任務は、日本の領土を奪還するための上陸作戦の実行だ。

こうした能力の保持は、戦術的には一見望ましいように思えるかもしれない。しかし、これはどうも戦略レベルで考えられたものでは無さそうだ。つまり、「水陸機動団が派遣される実際の状況は一体どのようなものか、そしてもしそうなった場合、どれほど危険な情況になっているのか」というレベルでの考えである。

実際考えなければならないのは、これが「日本にとって最も合理的な戦略なのか」ということだ。島嶼が中国に占拠された時点で、すでに日本は負けているからだ。

この新部隊は3月末に発足し、4月初めに初の演習を実施した。今年中にもさらに演習をする予定だと言われている。この部隊は約2100名から成り、日本の南西部に本拠を置いている。AAV-7水陸両用車やMV-22オスプレイ、チヌーク・ヘリコプターを擁する作戦に特化している。

AAV-7水陸両用車の導入が生産上の理由から遅れたことに関心を払う者はいた。しかし本当に関心をもつべきは、導入から40年になるAAV-7水陸両用車は珊瑚礁に適していないという事実だ。そして日本南西部の島嶼の85パーセントは、その珊瑚礁に囲まれているのだ。

遠く離れた島の防衛には、新たな種類の水陸両用車が必要だ。しかし日本は、すでにBAEシステムズに30輛のAAV-7を発注済みであり、最終的には2020年までに52輛を保有しようとしている。三菱重工は新たな水陸両用戦闘車両の開発を検討中で、このほうが日本が求めるものに適っているかもしれない。

しかし日本が求めるものに適う車両が生産されるのはまだ2・3年かかる。それまでAAV-7は国内の災害派遣に使えるかもしれない。しかし日本南西部の島嶼奪回作戦には適してない。

陸自は他の面でも改革を進めている。たとえばセバスチャン・ロビンは「機動戦闘車を優先させて戦車を破棄する」という日本の決定について分析している。

「自衛隊は、伝統的に高価な資産である主力戦車について、維持費が高く、想定される戦闘シナリオの多くで使いづらいことを認めたのだが、これはいままでにないほど将来を見通した考え方であった。もちろん16式機動戦闘車が理想的な解決策か否かは議論の余地がある。それでもこれまで重要視されてきたプラットホームが投資に見合った利益をもたらさないと認識できた部分は、世界中の多くの軍隊が学べる点ではないだろうか」

また陸自は初めて、海自の指揮下にない輸送船の購入を検討している。南西部の島嶼での緊急事態に迅速に対応するためだ。こうした変化が軍種間の協力を改善するのか劣化させるのか、その答えは今後出るだろう。ただし水陸機動団がもつ利点の一つは、協力体制の拡大なのだ。

さらに、イージス・アショアも陸自がミサイル防衛――これは日本の国防政策立案者の最優先事項だ――に関与するための一つの方法である。これまでの日本のミサイル防衛システムは、空自が運用するPAC-3と、海自のイージス艦に頼ってきた。ところがイージス艦の運用が海自の人員を逼迫しているため、海自はイージス・アショアによる陸自の関与拡大を歓迎するはずだ

ただしこうした変化も、すべては表面的なものかもしれない。日本を取り巻く脅威の環境は根本的に変わったため、陸自は国益のために、その優越的な地位を手放さざるを得なくなるかもしれないからだ。

エリック・ヘジンボサムとリチャード・サミュエルズは『インターナショナル・セキュリティ』の記事で、以下のような批判を行っている。

「陸自は自衛隊三軍のなかで優先的な扱いを受けている。・・・中国の脅威が一義的に海・空のものであるにも係わらず-―そして日本の列島という地理にも係わらず―-陸自は海自・空自よりも50パーセント増の予算を得ている・・・日本の防衛上の問題は、北からの陸上侵攻から、南への海空の脅威に変容した。それを考えるなら、三軍の間で予算を組み替えるべきだ。しかし防衛省はその代わりに、論理的には海・空に属する任務(新たな上陸作戦部隊など)を陸自に与えた」

2010年と2013年の防衛大綱で、日本は注目すべき転換を行った。静的防衛から動的防衛への転換であり、北のロシアの脅威から南西方面にある中国の脅威への転換である。それと同時に、日本は「解決策は問題に見合ったものでなければならない。予算と人員の優先順位は陸自から海自に変えるべきだ」と認識すべきである。

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日本の脅威認識と、それに対する自衛隊の予算配分について、かなり明確な提言をしておりますね。日本は懲罰的抑止を制度的に担保されておらず、あくまでも拒否的抑止しかできないことになっている点など、組織的な摩擦や政治的な事情のおかげで、このようにシンプルにものごとは進められないでしょうが・・・

あくまでも外国の日本研究者からの視点ですが、個人的には軍隊の最大の要件である「柔軟性」を考えさせてくれるという意味で、議論のたたき台やネタとしては有用な意見記事だと考えております。

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(那覇上空からの眺め)

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Commented by 赤い彗星 at 2018-08-30 12:35 x
このへんの話は最近JBpressでなかなか面白い議論の応酬がされていますね。
Commented by ミナミ at 2018-08-30 14:20 x
放送で和田さんが陸自はとにかく減らせばいいみたいな事を言っていたが、
少し違和感を感じた。抑止力はどうなるのかと。
陸自の戦力はサッカーで言うとGKの様な最も基盤的な抑止力だからだ。
災害対応要員の面もある。それでも海・空に転用すると言うなら慎重な研究が必要だろう。
今の14万人でもカツカツな気はするが。総兵員22.5万体制が変わらないとして、
せいぜいMAXでも1~2万人の転用、つまり陸自12万人が限界か、もはや限界超えだと思う。

この「総兵員を増やさずに陸自の転用」という方向性は、
防衛費を今後も全く増やさない為に「財務省」が言い出しそうな悪寒が物凄くします。
Commented at 2018-09-04 18:10 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by masa_the_man | 2018-08-30 08:20 | 日記 | Comments(3)