核開発を続ける北朝鮮 |
北朝鮮は非公開施設で核兵器用の燃料の生産を継続(米政府関係者)
18-6/30
アメリカの諜報機関は、北朝鮮がここ数ヶ月でいくつもの施設において核兵器用の燃料の生産を増加させていて、しかも「金正恩はトランプ政権との非核化交渉においてより多くの譲歩を得えようとしているにもかかわらず、これらの施設を隠そうとしているのではないか」と考えているという。
これは米政府関係者がNBCニュースに語った情報によるものだ。
これまで報告されることのなかったこの情報分析の報告書は、トランプ大統領が示している意見に反するもののように見える。
トランプ大統領自身は6月12日の金正恩との歴史的な米朝首脳会談のあとに「北朝鮮からの核の脅威は消滅した」とツィートとしているが、この報告の分析をよく知る十数名以上の匿名の米政府関係者たちによれば、CIAをはじめとする諜報機関による分析官たちはそのように見ていないという。
彼らは北朝鮮が、トランプ政権からあらゆる譲歩を勝ち取りつつ自分たちの生き残りにとって不可欠であると考える核兵器に固執している、と見ている。
この記事に関して、ホワイトハウスからのコメントはすぐには得られなかった。
5人の米政府関係者は最新の情報分析の報告書の中身を引用しつつ、「米朝はここ数ヶ月間において外交交渉を行っていたわけだが、その合間にも北朝鮮は濃縮ウランの生産を加速させていた」と述べている。
米朝は会談の席で非核化に「向かって取り組む」ことに合意したが、それ以上の細かい合意は明記されていない。トランプ大統領の指示により、米軍は朝鮮半島における軍事演習を中止したのだが、これは金正恩に対する大規模な譲歩であった。
北朝鮮もミサイルの発射実験と核実験を止めているが、その最新の分析の報告書の内容をブリーフされた米政府関係者によれば「彼らが核関連物資を減らしたり生産を止めたという証拠はなにもない・・・逆に彼らがアメリカを騙そうとしている完全に明白な証拠は存在する」という。
その情報分析の報告書に詳しい他の4人の政府高官たちも「北朝鮮はアメリカを騙そうとしていた」と述べている。彼らによれば、アメリカの諜報機関は近年において北朝鮮の情報収集を強化しており、このおかげで長年にわたって世界で最も諜報的に難しいとされていた北朝鮮の内情について、かなりのことがわかってきているという。
ただしNBCニュースは、米政府関係者によれば情報源をリスクにさらす可能性のある、報告書の中身の詳細のいくつかの部分については報告を差し控えることに合意した。
米政府関係者の一人は、「北朝鮮が長年隠そうとしていて、しかもわれわれが知っていることは実に多くある」と述べている。
たとえば北朝鮮は寧辺(ヨンビョン)という核施設以外に、少なくとももう一つの核濃縮施設を持っていることは長年知られている。
ミドルベリー国際大学院モントレー校東アジア核不拡散プログラム部長、ジェフリー・ルイスによれば、北朝鮮が2009年に寧辺の核濃縮施設を建設したあとも、そのペースの速さから判明したのは、このような施設をつくるのが彼らにとってまったく最初というわけではなかったということだ。
1994年の北朝鮮との核合意を交渉したジョエル・ウィットも、アメリカ政府関係者たちは常に寧辺以外にもう一つの隠れた核濃縮施設があると考えていたという。彼によれば「もっとほかにもある可能性について信じていましたね」とのことだ。
政府関係者によれば、その情報分析の報告書の結論は、秘密の施設は複数あるということだ。そして最大の問題は、金正恩がその存在を認めようとするかという点だ。
クリントン政権で働き、スチムソンセンターの上級研究員で、38ノースというサイトを創設したウィット氏によれば「人々が、北朝鮮にすべての施設を明らかにしてもらいたい、と思う理由はまさにここにあるのです」という。
この情報分析の報告書は、38ノースの「北朝鮮は公表している核施設である寧辺で、いまだに施設の改修をつづけている」とする記事の直後に報告されたものである。
CIAの元分析官で、現在はヘリテージ財団の北朝鮮専門家であるブルース・クリングナーは「寧辺で見られる活動は、すべての核兵器計画を破棄するとした北朝鮮の意図とは矛盾してます・・・もし平壌が非核化合意の要件の一つである核施設の破棄に本気であれば、拡張計画を続ける理由はほとんどないはずなのですが」と述べている。
ただしアメリカの諜報機関で働く別の職員は別の見方をしており、核兵器とミサイルの実験をやめるという金正恩の決定が予期しないものであったことや、実際に米朝間で交渉ができているという事実はポジティブな一歩であることを指摘している。
ただしこの職員も、同時に諜報関係者たちが「金正恩の政権はアメリカを騙そうとしている」と想定していることを認めている。
「施設の数、兵器の数、そしてミサイルの数でも、われわれを欺くための工作は続いています・・・われわれも注視しておりますよ」と彼は述べた。
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記事の中身は、アメリカの諜報機関の最新の報告書の内容を知る人物の意見と、北の専門家たちの見解をまとめた上で、「やっぱり北朝鮮は核開発をやめていない」と結論づけたものです。
われわれの側からみれば、「金正恩は騙してけしからん!」ということも言えそうですし、実際にその通りにけしからんわけですが、そのような倫理・道徳的な判断はさておき、
「もし自分が金正恩、もしくは北朝鮮の軍のトップの立場だったら?」
と考えると、上記のように「核開発施設を寧辺以外に複数隠してもっておく」「核兵器の開発を秘密裏に継続する」というのは極めて合理的な選択肢となります。
なんと言っても、核兵器は北朝鮮のような貧乏な小国にとっては、アメリカをはじめとする大国に潰されないための、体制保証の最大のカードになるわけですから。
「選択肢はなるべく残しておく」
というのは戦略論の鉄則の一つですが、北朝鮮の場合は、この別の選択肢とは「寧辺以外の秘密の核施設」になるわけです。
これで事実上、アメリカやその同盟国である日本や韓国は、「核保有国としての北朝鮮」という存在に直面するわけですが、これからさらに北朝鮮の核の脅しによって振り回されることになりそうで、かなり気が重いです。
それにしてもトランプ政権の迷走ぶりにはあきれるばかりです。

(ボンダイ・ビーチ)
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