今日の横浜北部はよく晴れました。花粉がすごいようで完全に春の陽気です。
さて、すでにご存知でしょうが、いよいよ『ルトワックのクーデター入門』が発売になりました。

エドワード・ルトワック著『ルトワックのクーデター入門』(芙蓉書房出版)
まだ書店には並びきっていないようですが、おかげさまでリアルの書店で出ているところではかなり好評のようで、一部ではこの週末だけで完売したところもあるとか。東京駅前の某大型書店の本店では100冊も追加注文が入ったと聞きました。
タイトルだけみると冗談のように思えますが、実は本気の内容の本です。
目次は以下のとおりです。
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2016年版へのまえがき
初版まえがき(1968年)
ウォルター・ラカーによる序文(1978年)
第1章 クーデターとは何か?
第2章 クーデターはいつ可能か
第3章 クーデターの戦略
第4章 クーデターの計画第5章 クーデターの実行
補遺A 弾圧と経済
補遺B クーデターの戦術的側面
補遺C 統計データ
訳者あとがき
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ここで一つ注意していただきたいのは、本書は日本でも長年絶版状態になっていた初版の日本語版であるエドワルド・ルトワック著、遠藤 浩訳『クーデター入門:その攻防の技術』の復刊ではなく、2016年に出た改訂版である原著の日本語版、という位置づけであることです。
ようするに初版の『クーデター入門』とは別の本である、ということです。
もちろん内容そのものはオリジナルの『クーデター入門』と今回のものは、訳した私の感覚からすると90%は同じなのですが、たとえば日本語版の方はかなり古い表現の仕方が含まれていたり、いくつかの箇所では誤訳があったため、今回の本ではかなり手を入れております。
すでにお読みになった方はおわかりでしょうが、この本は、その一義的なテーマ(権力の奪取)とは違って、本質的には本格的な政治分析の本です。
詳しくは「訳者あとがき」の方にも書かせていただいたのですが、さすがにルトワックのデビュー作だけあって、後に発展させていく戦略論の論理についての基本となる考え方がすでにつまっていて興味深いものです。
翻訳作業を終えて、現段階で訳者として印象に残っているのは、やはり最後の第五章の、クーデターを成功させた直後の実行部隊の不安定さと、その対策についての議論の部分でしょうか。
そして意外に読み応えがあるのは、経済成長と国民の治安維持(弾圧)について書いた「補遺A」でしょうか。目のつけどころが鋭いと関心しました。
「訳者あとがき」で書き忘れたのですが、この本は当然ながら、日本のような近代式の組織的に複雑化した国家には(残念ながら?)使えません。もし日本で使用する価値があるとすれば、それは「ゲームや小説などの創作ものの参考書」ということになるでしょうか。
そして究極的にはこの本が描こうとしているのは、もしかしたら「人間とは何か」というなのかもしれない・・・・ここまで感じていただけたら、その訳出作業に関われた者としては本望かと。
ということで、ぜひよろしくお願いします。
(左が旧版、右が新版)