戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man

アメリカはシーパワー国家である:ロバート・カプラン

今日の横浜北部はまたしても朝から快晴です。寒さもだいぶピークになってきました。

さて、ロバート・カプランがまた地政学系の新刊を出版したようですが、それに関連したような記事を連発しております。

ドラマの番宣のためにバラエティーに出まくっている主演俳優みたいな位置づけでしょうか?いや違うか。

===

アメリカは海洋国家だ
By ロバート・カプラン

アメリカは2つの海洋に挟まれた海洋国家である。海軍が世界最大であるだけでなく、その沿岸警備隊も世界で12番目の規模を誇る海軍であると言える。

米海軍はアメリカの第一級の戦略ツールであり、おそらく使われることのない核兵力よりも、ツールとしての有用性ははるかに高い

米海軍は平時・戦時にかかわらず世界の公海におり、海上交通路や主な海洋のチョークポイントを守っている。これによって実質的に世界の自由貿易体制を守っており、アメリカの同盟国たちに原油などのアクセスを保証している

さらに米海軍は、内陸部への攻撃能力も担保している。すなわち、イラク、アフガニスタン、そしてコソボなどへの爆撃は、インド洋やアドリア海における艦船からも行われたということだ。

歴史的にみれば、アメリカのこのような立場は特殊なものだったわけでなく、アテナイ、ヴェニス、そして大英帝国などはすべて偉大な世界的海洋国家であった。これにオランダやポルトガルを加えてもいい。

海洋国家というのは、もちろん例外はあるが、一般的にドイツやロシアのようなランドパワー国家と比べて穏健的であったということは言える。地上部隊は侵攻のために使われるものだが、艦船は親善寄港したり貿易を促進したりするものだからだ。

また海軍は、陸軍のように外国の領土を占領しない。陸軍は予測不能の事態に備えることが求められるが、海軍(と空軍)は日毎に戦力投射を行っているのだ。

アメリカはベトナムやイラクで不必要な戦争を行ってしまったのかもしれないが、アメリカのパワーそのものは減少しておらず、この主な理由は海軍と空軍の規模の大きさのおかげである。他にも、米海軍はアメリカに、地域の紛争に関与させつつもトラブルの外に置くことができているのだ。

もしアメリカが海洋国家であることを認めることができれば、われわれは対外政策においても失策を少なくできるだろう。なぜなら海軍力は商業や自由貿易秩序の保護に主眼を置いたものであり、帝国主義的な獲得や国益を目指すものではないからだ。

だからこそ海軍というのは、あらゆる時にどこへでも展開できるのであり、それに対して海外に大規模な陸上部隊を展開するということは連邦議会での議論が必要となってくることが多い

米海軍はおよそ300隻の艦船を持っているが、この事実は重い。なぜならもしその数が200であったら世界はかなり異なる状態にあるはずだからだ。現状よりも暴力はもっと発生していて、無政府状態的なものであるはずだからだ。

東アジアの平和は、実質的にアメリカの第7艦隊が守っており、第5艦隊は、イランと湾岸諸国(サウジアラビアを含む)との戦争を防ぐ役割を果たしている

この300隻体制の米海軍は、その他の軍種と合わさることによって世界のどの国よりも強いパワーをアメリカに与えているのである。

ところがここで覚えておいておかなければならないのは、この「強力なパワー」も「圧倒的なパワー」というわけではないということだ。世界のほとんどの紛争や政情不安のほとんどは、この二つの概念の間で起こっているからだ。

たとえ600隻の海軍、さらには現有のものよりも遥かに大きい規模の海軍を持っていたとしても、中東にある国家の崩壊を防ぐことはできないかもしれないからだ。

言い換えれば、アメリカは自国の国益を守りつつ、自分ではコントロールできない世界をやり過ごすために備えなければならないのである。

これについてもう少し詳しく説明してみよう。

アメリカの世界への影響力は徐々に下がっていくだろうが、他の大国が同じようにする能力も時の経過とともに下がっていくはずだ。なぜなら中国、ロシア、そしてヨーロッパ内の経済状況は、アメリカそのものの経済問題よりも深刻だからである。したがって、われわれのパワーは世界で絶対的な量としては下がるのだが、相対的に他の主要国や同盟よりも高まるはずなのだ。

これらを踏まえて考えると、米海軍はアメリカの国家の「体力」を図るバロメーターとなる。艦船のような「海洋プラットフォーム」というのは恐ろしく高価なものであり、米海軍の規模の艦隊を維持する能力は、税金という形での国民からの支援や、GDPにおける健全な増加が必要になるからだ。

大規模な海軍は、その国がどのような国かを写す鏡である。中国、ロシア、そしてヨーロッパの経済面での構造的弱さを考慮に入れてみれば、彼らが長期的にも米海軍に追従できるかどうかは疑問なのだ。

最大の疑問は、短期的な脅威となっているロシアではなく、長期的な脅威である中国のほうだ。彼らは本当に経済改革を行うことができるだろうか?これについて私も答えようがない。

よって、米海軍の規模に注目しよう。それがアメリカの地政学的パワーの1つの指標であるのは確実だからだ。

===

あらためて「現代はまだシーパワーの時代の時代であり、それを主導するのはアメリカだ」という地政学的な主張ですね。

カプランは私が翻訳した『インド洋圏』から地政学の理論書を相当読み込み始めたようで、それまでの現地からのリポート記事を少なくする代わりに、それまでの体験を理論的にまとめて述べていたのが地政学関連の書籍だったことに気づき、そこから地政学にはまったそうです。

今回の新刊はどちらかといえば以前所属していたストラトフォーの人々、とりわけゼイハンをはじめとする人々の議論を援用したように見受けられますが、あらためてアメリカはシーパワーであることを確認しているという点では貴重です。


b0015356_11491272.jpg

(南の島)

▼奴隷の人生からの脱却のために

戦略の階層」を解説するCD。戦略の「基本の“き”」はここから!
戦略の階層を徹底解説するCD

▼~あなたは本当の「孫子」を知らない~
奥山真司の『真説 孫子解読』CD
奥山真司の『真説 孫子解読』


▼~これまでのクラウゼヴィッツ解説本はすべて処分して結構です~
奥山真司の現代のクラウゼヴィッツ『戦争論』講座CD
奥山真司の現代のクラウゼヴィッツ『戦争論』講座

▼~これまでの地政学解説本はすべて処分して結構です~
奥山真司の地政学講座CD 全10回
奥山真司の地政学講座 全10回



奥山真司のアメリカ通信LIVE

奥山真司のアメリカ通信LIVE
Commented by 待兼右大臣 at 2017-01-26 23:45 x
シーパワーといっても、つまるところ
軍艦行動(公海自由)と戦力投射(power projection)という「戦力の通り道」という気がします
(この点ではランドパワーも同じかもしれません)

「通り道」といえば、Parag Khannaの"Connectgraphy"の邦訳が『「接続性」の地政学』という邦題で出ました。

私のように、鉄道(や「交通系」)から地政学に入った者にとっては、シーパワーやランドパワーといっても、つまるところ、交易路という「Connectgraphy」の方が理解が早いです。

わが国の「Connectgraphy」という点で言えば、「地政学」を意識せずに(著者曰く。「『サヨク』系のライターからの誘いを受けて書いた」という)、交通マニアの視点から見た『帝国日本の交通網: つながらなかった大東亜共栄圏』(若林宣著、青弓社)が面白いです。

「ぼくがかんがえたさいきょうのちせいがく」を説明するなら、「等高線」と「交易路(Connectgraphy)」で、ランドパワー、シーパワー、エアパワー、宇宙、サイバーをひっくるめて説明することになると思います。
Commented at 2017-02-11 22:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by masa_the_man | 2017-01-26 17:24 | 日記 | Comments(2)