戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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オバマ大統領の対外政策の失敗

今日の横浜北部は相変わらず晴れましたが、とりわけ真冬の寒さを感じました。

さて、久々にハーバード大学教授のスティーブン・ウォルトのブログから印象的な記事がありましたので、かなり短いバージョンとなりますが、その要約を。

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バラク・オバマは対外政策の失敗そのものだ
by スティーブン・ウォルト

私が2009年にこのブログを書き始めた時はちょうどオバマ大統領の誕生の重なっていて、当時の雰囲気として私の中にも希望と恐れが同居しているような状態であった。

彼の態度は知的だったし、彼の政策には同意できるものがあったが、その対外政策の狙いがあまりにも野心的なもののように見えたからだ。

そして現在はオバマ政権の終わりにあるわけだが、私の感想について述べておく必要がある。結果として、私の判断としてはあまり好ましいものではないと言わざるを得ないのが残念だ。

まずボジティブなところから述べてみよう。彼が政権を担った当初、なんといっても大恐慌並みの世界金融危機に入っており、失業率がアップし、数百万人のアメリカ人が家を失っていた。

二つの勝利なき戦争を行っていたし、オサマ・ビンラディンはまだ逃げており、世界におけるアメリカのイメージは最悪であった。

ところがそこから何が起こったのかといえば、アメリカの経済は復活して失業率はほぼ解消され、2千万人のアメリカ人は新たに健康保険を得ることができ、ゲイの人々は合法的に結婚できるようになったのである。しかもこのようなことを、彼は共和党の強烈な反対の中でやりとげることができたのだ。

対外政策の分野でも、イランと核合意をし、ビン・ラディンを捕らえ、パリ協定にサインし、キューバとの国交を回復した。国内的にも大統領としての立派な人物としての務めを果たしており、これは新たに政権に入ってくるトランプ氏とは対照的だ。

ところがオバマ政権はとりわけ対外政策の分野では悲劇的であった。彼は「リベラル・ヘゲモニー」という失敗した対外政策を変えるチャンスがあったにもかかわらず、そこから抜け出すことができなかった。そしてこれがトランプを生み出す結果にもつながったのである。

第一が2009年に行ったアフガニスタンに対する「サージ」(増派)である。これは始めから失敗することが目にみえていたものであるが、実際に実行してやはり失敗した。彼はブッシュ政権から引き継いだ「テロとの戦争」をさらに拡大してしまい、これをトランプ政権も引き継ぐことになってしまった。

第二が、「アラブの春」を読み間違えて、誤った対策をしてしまったことだ。彼らは始めからこれを「草の根」による民主制度を求めた運動だと勘違いしてしまい、その初期から誤った支援を表明してしまったのだ。これがリビアやイエメンへの介入やつながり、シリアではアサド排除に動くことになったのである。シリアに深入りしなかった点は評価できるが、そのプロセスは成功であるとはいいがたい。

第三が、中東和平プロセスについて「パレスチナ独立」を目指しつつも、いつものように失敗してしまったということだ。これはオバマ政権がこれまで失敗してきた親イスラエルのアドバイザーを雇ってしまったことで目に見えていたことだ。イスラエルに対して厳しい態度がとれないオバマ大統領が解決できるわけがなかったのである。

第四が、ロシアとの関係悪化である。政権初期の「リセット」はたしかに合理的ではあったが、自分たちの推進する東欧やロシア国内での民主化がモスクワ政府にとってどれほど警戒されるのかを想像することができなかった。プーチンのクリミア獲得についても予測できなかった。

第五が、アジアにおける「リバランス」の失敗である。これを宣言すること自体は間違っていないのだが、その優先順位を明確にできず、その優位をどんどん中国に明け渡して失っていってしまった。中国の主導するAIIBに参加しなかったのも(同盟国であるイスラエルや英国が参加したがっていたにもかかわらず)失敗であろう。

これらの失敗の理由は2つある。1つは彼の対外政策を実現する人々が基本的に「リベラルの十字軍」であり、アメリカの「グローバルなリーダー」的なポジションを守ることに血道をあげるような人物たちばかりであったことだ。しかも彼はアメリカの国益が何かを明確に説明せずに、安価にグローバルな問題を解決しようとしたのである。

彼が対外政策でどれを優先すべきかを明確に決断できなかったという点は、その政権最後まで続いたのである。

第2の理由は、これは国内外にかかわらず、オバマ大統領自身が敵の合理性というものを過信していたことだ。彼は考えの違う人間同士でも協力し合えるものだと信じていたようで、互いに議論したり意思疎通することによって協力してもらえると考えていたのである。

ところがネタニヤフ首相やプーチン大統領らの考えはアメリカ人の考えていることとは劇的に違う。結果的に彼らの同意は得られなかったわけだが、オバマ自身はとりわけ国内の相手が「アメリカの成功」よりも「オバマ・民主党の失敗」を狙っている人物であったことを見抜けなかったのである。

もちろんオバマ大統領は知性にあふれた規律のある、愛国的で尊敬すべき人間である。彼の人気の高さは意識調査における支持率の高さからでもうかがい知ることができる。

ところが彼の対外政策の成績は、ほぼ落第と言ってもいい。世界の状況やアメリカの立場も、彼が政権をとった時点から良くなっているとはいえないのだ。

アフガニスタンとイラクはすでに始まっていたので彼のせいではないかもしれないが、それでも彼の決断はそれを悪化させることには貢献している。

ところがトランプ政権になってさらに悪化するようなことになると、数々の失敗はありながらも、オバマ政権は懐かしがられるようになるのかもしれない。

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なかなか手厳しいですが、リーマン・ショックから立て直したという点だけはもっと評価されてもいいでしょう。

ただしあらためてこうしてみると、期待はずれだった部分はどうしようもないですね。
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Commented by りこ at 2017-01-24 20:28 x
誰だって(米国の元首に限らず)就任当初は未知数の可能性を秘めた存在であり、ましてや、願いを託されて立つ訳ですから、期待値も高い。けれど蓋を開けてみれば、これまた当然、期待を上回ったり、裏切れたり……
選んだ国民の責任と言えば、それまでですけど。
にしても、比較に意味は無いかも知れませんが、そう考えると、我が国の安倍総理は、トータルバランスで安定感のある方ですね。
「反日」界隈の方々が、徹底して敵視するのも納得です(笑)
by masa_the_man | 2017-01-23 23:59 | 日記 | Comments(1)