次に出る本の内容紹介:その1 |
さて、本日は朝から来月に出る予定の次の本の原稿チェックを行っておりまして、その内容紹介を少し。
何度も紹介しているのですでに耳タコという方もいらっしゃるとは思いますが、『クラウゼヴィッツの正しい読み方』に続いて出る予定の訳本が、

by William Strauss & Neil Howe
という本です。直訳すると題名は「第四の節目:歴史のサイクルから知るアメリカの運命」と言った感じでしょうか?
今日はその2回目のゲラチェックを行っていたのですが、近日中にその訳者解説を書かなければならないので、その予行演習としてここにメモ代わりに書いておきます。
原書を読まれたことのある方はご存知かもしれませんが、この本はいまから20年ほど前の1997年に出た本です。
しかもその内容は、なんというか、私がいままで訳したことのないものでありまして、なにが書かれているのかというと、これが非常に説明しづらい。
ざっくりいえば「アメリカの歴史を振り返ったもの」ということになるのかもしれませんが、その方向性としては未来予測というか、歴史の「波」について振り返ったもの、という感じのものです。
歴史の波といえば、地政学の分野ではロシアの経済学者であるコンドラチェフが提唱したとされる「コンドラチェフの波」というのが有名なところですが、これは70年ほどのサイクルで景気の上下があることを経済史から振り返ったもの、ということになるでしょう。
コンサル業を営む原著者のハウとストラウスは、そのような波だけにとどまらず、すべての人類の歴史において、20年ごとに移り変わる「世代」(ジェネレーションズ)が存在し、その集団が人生の段階を移り変わるときに、世の中の様相もそれまでのものと大きく変化する、としております。
アメリカの考えというのは、フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」という論文からもわかるように、どちらかといえば歴史が一つの方向に向かって進むというイメージを持つものが多いわけですが、このハウとストラウスはそのような考えは特殊であり、実は古代ギリシャ・ローマの時代から、人類は歴史が繰り返すことを知っていた、というところから話を始めるのです。
これを彼は「循環史観」と名付け、現在盛んな西洋の一般的な「線的史観」とわけて考えつつ、イギリスとアメリカの歴史は、20年ごとの節目の春夏秋冬があり、その4つの季節で1セットとなる、およそ80年から85年ごとのまとまり(サエクラム)を繰り返している、というのです。
おそらくここまで話を聞いて、一般的な人の感想は「まあ、そんなもんかな」というものかもしれません。
ところが彼らがスゴイ(のかどうか判断がつきかねますが)のは、このような
「20年×4世代(春夏秋冬)=1サイクラム:約80年」
という公式を元にして、それをなんと薔薇戦争の時代から現在(1997年)までのすべての期間や事件などにそれぞれ当てはめて、各世代やその時代の雰囲気に名前を付けて、それらを表などにしてまとめているという点なのです。
まず最初に私が感心したのは、一つの「世代」が形成されるとき、彼らが最初に生まれ育った時代(0〜20歳)までの雰囲気に大きな影響を受ける、としていることです。
具体的にいうと、私は1970年代生まれなので、私が成人するまでの80年代から90年代の時代の雰囲気、つまりバブルからその崩壊の頃の時代背景というものを身に着けているということです。
そして私のような人物が成人してから中年になるまで(20〜40歳)を見ると、若い時にはバブル崩壊後の就職氷河期、そしてそのまま「失われた20年」をすごすことになります。
このような時期を過ごしてきた私たちの世代は、全体的な傾向として、他の世代たちよりもサバイバルの技術を身につけていることが多く、世界に対してもリアリスティックに対処する傾向を持つ、と指摘されております。
私の世代は、日本では「団塊ジュニア」や「新人類」「ロス・ジェネ」「バブル世代」などと言われるわけですが、原著者たちはアメリカの同世代を「ジェネレーションX」や「第13代」という呼称で呼んだりしておりまして、この世代を主に1964年から84年までに生まれた人々である、と定義しております。
この本によりますと、この世代と似たような特徴を持った世代は、われわれの1サエクルム前、つまり1886年から1908年までに生まれた祖父の代に出現していたというのです。
しかも面白いことに、われわれとその1サエクルム前の世代、さらにその1サエクルム前の世代に、ハウとストラウスは共通の名前を付けております。
それが「遊牧民」(Nomad)というもの。
そういえば数年前に「ノマド」という言葉が流行りましたが、これをハウとストラウスたちは、私を含む世代たちの共通の呼称として使っているのです。
参考までにその前後の世代をそれぞれ述べておきますが、世代の並びというのは人類史を通じてそのほとんどが、
預言者→遊牧民→英雄→芸術家
となっており、これが1世代20年のまとまりの流れとなって、順番に繰り返しあらわれているというのです。
そうなると私のすぐ下の世代、つまり84年〜2004年生まれの若い人々は「英雄」(Hero)世代ということになります。彼らはいまでこそ「ゆとり世代」とか「草食系」と言われたりしておりますが、その1サエクルム前の彼らの祖父の代は、まさに第二次世界大戦を20歳から40歳までの若者として最前線で戦った本物の「英雄」世代であります。
そのさらに下の世代は「芸術家」(Artist)と呼ばれておりまして、2005年以降に生まれたまだよちよち歩きの世代か、もしくは戦争中に生まれた、石原慎太郎などを筆頭とするベビーブーマーたちよりも前の世代ということになります。
そして私たちよりもすぐ上の世代である「預言者」(Prophet)という世代は、1946年から64年までに生まれた、アメリカでいうところのまさに「ベビーブーマー」をカバーする世代でありまして、日本でも団塊の、いわゆる「戦争を知らない子供たち」も含まれ、彼らも現在社会の中で最も人口数の多い世代であります。
こういう世代構成で見ていくと、世代の移り変わりや、なぜサプライズが起こるのか、ということがわかるというのが原著者のハウとストラウスの議論なのですが、ここで時間がなくなってきてしまいましたので、続きはまた明日。

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