戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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イギリス訪問記:その3

今日のイギリス南西部は朝からスッキリ快晴です。気温も上がってようやく初夏らしくなってきました。

さて、昨日の元指導教官の自宅への訪問について少し。

おそらく3年ぶりだと思うのですが、元コースメイトたちと一緒にコリン・グレイを訪れてきました。

彼の自宅は、大学のあるレディング駅から電車でたったひと駅向こう(といっても10分ほどかかりますが)のワーキンハムという緑豊かな住宅地の中にありまして、友人たちと集まってそこからタクシーで5分ほど行くと到着しました。
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(先生の自宅)

久々にお会いした教授はしゃべりも相変わらずシャープで戦略ジョークを飛ばしながら軽快なトークはできるのですが、去年の暮れに発作を2回ほど起こしたようで、足腰は弱っており、左目の一部も見えなくなってしまったと申しておりました。

結局彼の家の庭と居間で、あとから来た米軍ドクター生たち(私の後輩にあたります)を踏まえて、六人ほどで先生の話を聞くことに。

彼の最近の懸念は、戦略や政治を科学的にやろうとする風潮が強まっていることであり、今回話題になったのも「アートである政治を科学的に研究するのは不可能だ」ということ。

英国の大学でも米国にならって無理やり数量的・科学的に教えようとする傾向が強まっていることを相当心配しているようでした。

その後は個別に米国の戦略系学者の様子や、サイバー関係の人間が2人いたのでサイバーと抑止の問題、それに昔の教育環境といまの教育環境の違いからグレイがどのようなドクター論文を書いたのかなどなど、とても興味深い(マニアックな)話題が交わされました。

一つ面白かったのは、戦争学の権威であるローレンス・フリードマンが書いた『戦略』という本(邦訳予定あり)についての話題。

実はグレイはフリードマンとほぼ同世代であり、もちろん互いに知っていて、同じく核戦略について論じてきたわけですが、とりわけ戦略については(仲は悪くはないのですが)見解は異にしております。

ところが去年の暮れに出版社のほうから「フリードマン本の書評を(好意的に)書いてくれ」と言われ、病気をするまえに一字一句細かく隅々まで読んだそうです。

ところが読んでみた結果が「非常につまらん本である」ということであり、とりわけ戦略の定義や捉え方にまったく同意できない、駄作だ、ということでした。

しかしこのようなことを正直に書いてしまうと本人が20年かけて書いた努力をバカにしてしまうことにもなりますし、本人も怨みを持つかもしれず、学問的に正直に生きるか、それともウソを書いてごまかすかの瀬戸際に立っている、と述べておりました。

私を含めてこの本を読んだことがある人間がその場に何人かいたわけですが、たしかにみんなも同じような感想を持っており、アマゾンなどのレビューでも過大評価だという意見で一致しておりました。

また、話題に出たのはマーチン・ファン・クレフェルトでありまして、数年前のケンブリッジ大学での女性兵士のテーマの講演で猛烈に批判されて切り上げて帰ってしまった事件の真相や、クラウゼヴィッツの三位一体を見過ごしていたことを認めた事件などについて意見が交わされました。

およそ2時間半でしたが、体調が悪い中、わざわざ元学生たちと興味深い話をしてくれた教授には感謝でした。最後にはおみやげとして新刊2冊をサイン入りでもらい、もちろん私が翻訳した『現代の戦略』にもサインをもらって帰りました。
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(新刊2冊)

本日はこれから母校の現役の学生たちの前でゲスト講師としてルトワックの『中国4.0』の内容を話してきます。どういう反応があるのか楽しみです。

余談ですが、以下は先ほど食べてきた今朝の朝食。典型的なブリティッシュスタイルということで。これで日本円で1000円ちょうどくらい。
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Commented by いつも通りすがり at 2016-06-07 15:34 x
>>戦略はアートである
なるほど、予想外の技術や環境、人の心が大きなファクターになりますものね。芸術にも、レイアウト、パースペクティブ、色彩学などもありますが、それはいわば着想や画材箱の中身の一部に過ぎないわけですしね。不確定要素を減らせれば減らせるほど良いということなんでしょうけど、公式の使いドコロ、前提条件は肝に銘じて置かないとダメなんでしょうね。
にしても、1000円定食(笑)…
かつて東京が世界一物価が高いなんて教科書に書かれていたのを思うと、隔世の感。
by masa_the_man | 2016-06-06 21:39 | 日記 | Comments(1)