戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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もしも「リアリズム」を使ってたら:その1

今日の横浜北部は快晴です。つい二週間ほど前まで「暖冬で・・」など言っていたのがウソのようです。

さて、テストの採点があったために遅れましたが、昨日アップする予定だったブログ記事の要約をアップします。

著者は前回のエントリーと同じく『米国世界戦略の核心』の原著者のウォルトなんですが、この人はこういう説明的な文章は本当に上手いですね。

長いので数回にわけてアップします。

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リアリストのアドバイスに従えばどうなっていた?
by スティーブン・ウォルト

●アメリカの対外政策を研究しているすべての人々にとって不思議なのは、対外政策についての最も権威があって有名なアプローチが公的な議論の場や、とりわけ主要な新聞などでは(実際はそのアドバイスに従っていたらよかったという証拠がたくさんあるのに)端に追いやられているのであろうか、という点であろう。

●このアプローチとは、もちろん「リアリズム」(現実主義)のことだ。もちろん私はリアリズムやリアリストたちがここ最近になって完全に無視されているということを言いたいわけではないのだが(あなたがいま読んでいるのはリアリストの文章だ)、公の場に出てきたり政策に影響を与える効果としての割合は、民主党の中の「リベラル国際主義」や共和党の中の「ネオコンサバティヴィズム」に比べると非常に少ない。

●この現状は、リアリズムが外交分野の研究の伝統として確立されていたり、ジョージ・ケナン、ハンス・モーゲンソー、ラインホールド・ニーバー、そしてウォルター・リップマンなどをはじめとするリアリストたちが過去にアメリカの対外政策について多くの鋭い指摘を行っているという事実を考えてみれば驚くべきことだ。

●また、リアリズムは国際政治におけるアカデミックな研究分野において根本的な視点の座を誰にも譲っていないのだが、それにはそれだけの理由がある。

●もちろんわれわれは一般的に、ここまで優れた理論であれば、対外政策の議論にも引用されるだろうし、ワシントンDC内部の実務的な議論や識者の議論の中でも典型的なりアリストたちが活躍している様子を見て取ることができるはずだと思うだろう。

●さらにいえば、過去25年間にわたるリアリズムの予測は、冷戦後に米国の対外政策の決定を支配してきたリベラルやネオコンたちの主張たちよりも、明らかに正確なものだ。

●ところが大統領たちは、何度もリベラル・ネオコン的なアジェンダを追求してきたのであり、リアリズムの教訓を無視してきたのだ。同様に、主要メディアも、リアリストたちの視点を普及させるような姿勢をほとんど見せてこなかった。

●嘆かわしいことに、その結果は自明である。冷戦が終わった時に、アメリカは世界のすべての主要国家たちと仲良くしていたし、アルカイダは「小さな迷惑」程度でしかなかったし、中東では本格的な和平プロセスが進んでおり、アメリカも「一極の瞬間」を享受できていたのだ。

●権力政治は過去のものに見えたし、人類は国際的な政治課題として繁栄、民主制度、人権などが支配的になる「グローバル化した世界」で財産づくりにはげむはずだったのである。リベラルの価値観は世界にあまねく広がるはずであったし、その広がりのスピードが遅くなるのであればアメリカがそれを後押しするということも考えられていたのだ。

●ところが現在に目を移してみると、ロシアと中国との関係の緊張感は高まっており、東欧やトルコでは民主制度が後退し、中東全体も「悪い状態」から「最悪の状態」に移りつつあるような状況だ。

●アメリカはアフガニスタンで数百億ドル使いながら14年間も戦っているのにタリバンはまだ生き残っていて、むしろ勝利しつつあるともいえるのだ。

●アメリカの20年間にわたる仲介でもイスラエル・パレスチナ間の「和平交渉」は頓挫しており、地球上でおそらく最もリベラル的な価値観が体現されたヨーロッパ連合でさえも、簡単な解決法の存在しない前例のない重荷に直面しているのだ。

●これらのすべては、以下のような仮説的な疑問を投げかけることになる。それは「アメリカと世界は、もし過去三人の大統領の対外政策を、リベラルやネオコンの代わりにリアリズムの教えるところに従って実行させたほうがまだマシだったのではないか?」ということだ。そしてその答えは「イエス」である。

●もちろんここで但し書きを書いておかなければならない。リアリズムというのは政治の動きにおいてパワー(権力)が中心にあり、国家は誰かから身を守ってくれるような世界政府が存在しない世界で自ら安全を確保することを主に懸念している、と見るのだ。

●リアリストたちは、国家が独立と自律性を維持するためには軍事力が必須になると考えているが、それは意図しない結果を生み出すこともある「粗野なツール」であることも認めている。

●彼らはナショナリズムやその他の土着的なアイデンティティが強力かつ持続的なものであると考えているし、国家はほぼ自己中心的で、利他主義があったとしてもかなり稀な存在であり、相手を信頼するのは難しく、規範と制度機関は強力な国家の行為に対しては限定的な影響力しか与えられないと考えるのだ。

●簡潔にいえば、リアリストたちは国際政治については概して悲観的な見方をするものであり、それがどれほど魅力的なものに見えようとも、イデオロギー的な理想図に従って世界を作り変えようとする試みに対して慎重に構えるのだ。

●もしビル・クリントンやジョージ・ブッシュ、それにバラク・オバマがリアリスの教える政策に従っていたら1993年以降のアメリカの対外政策はどれほど異なるものになっていただろうか?

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続きは今日中にアップします。

また、これに対するカウンター的な意見についても、数日後にアップする予定です。
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Commented by ぬぼ at 2016-02-04 07:42 x
リアリストが「もし」とか「…だったら」とかなんて、あまりに理想主義的で可笑しいですね。
自らの主張が受け入れられない現実や、人々の目先の人道主義に流れる傾向を考慮に入れるのも現実主義の範疇だと思っていたのですが。
Commented by masa_the_man at 2016-02-04 08:40
ぬぼ さんへ

>自らの主張が受け入れられない現実や、人々の目先の人道主義に流れる傾向を考慮に入れるのも現実主義の範疇

鋭いご指摘かと。ただしこれはあくまでも国際関係論や対外政策のアプローチとしての「リアリスト」の話なので、その辺の区別は必要かもしれません。

コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2016-02-02 12:05 | 日記 | Comments(2)