戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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日韓合意について米専門家の見解

今日の横浜北部は朝から快晴です。真冬にしてはそれほど寒くないと感じるのは私だけでしょうか?

さて、昨年末の電撃的な日韓合意ですが、この問題について追いかけているアメリカの研究者の見解について探していたらFP誌のサイトにリンド教授の簡潔なインタビューがあるのを教えてもらいましたのでその要約を。

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日本の巧妙な「自責の念」の知恵

●第二次大戦中に日本軍によって女性や少女が性奴隷を強制された、いわゆる「慰安婦」を巡る、長年にわたる外交面での停滞に終止符を打つために交わされた日本と韓国による今週の月曜日(12月28日)の合意は、ジョン・ケリー米国務長官を含む人々に、その直後から賞賛を受けている。

●NYタイムス紙の社説では両政府がこの問題について「終わりを求めたことで賞賛されるべきである」と書いており、英ガーディアン紙もこの合意を「明らかな前進だ」と書いている。

●ところが国際政治における「謝罪」の専門家であるダートマス大学のジェニファー・リンド(Jennifer Lind)教授は、これについて微妙な感想を述べている。

●彼女が二〇〇八年に発表した『謝罪国家』という本では「歴史上の人権侵害について謝罪が最適な問題解決の方法である」とする一般常識に対して異議を唱えている。
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●では日本の謝罪についての彼女の見解はどのようなものであろうか?それはどうやら新たな歴史的な証拠の発見に基づくものというよりも、むしろ韓国を中国の台頭に対抗していくための統一戦線に引き戻すという意味合いが強いという。

●本誌はリンド教授にEメールを通じて見解をうかがった。以下はその要項である。

Q:日本の謝罪について驚かれましたか?そしてそれは正しい方向へ向かう第一歩となったのでしょうか?

A:私は今回の合意の中で「謝罪」そのものはそれほど興味深いものだとは思ってません。なぜなら日本は過去に何度も(慰安婦たちに対しても)謝罪しているからです。また、今回と同じような言葉は安倍首相の前からも(首相自身もこの夏に談話を発表しているが)何度か発せられたものです。

よって、今回の謝罪についての言葉は、このような文脈から考えれば別に驚くべきものではありません

ところが今回驚くべきなのは、二つの主要なグループが参加しているという点です。一つ目が、日本の保守派です。彼らは過去に行われた謝罪が行き過ぎていると感じていたのですが、今回に関してはその保守派が合意まで交渉を実際に行っているのです。要するに彼らも参加したということです。

もう一つのグループは、韓国政府です。よって今回はこの二つのグループが参加して合意したということは画期的であるということです。

もちろん参加していないグループとして挙げられるのは、韓国国民であり、当事者である慰安婦たちです。この両者たちのどちらかまたは双方ともが、今回の合意を最終的にぶち壊すことになるかもしれません。

Q:今回の謝罪に害があるとすれば、それはどのようなもでしょうか?

A:安倍首相と彼の保守系の支持者たちは 「慰安婦」に関連して実に様々な面から論じており、この問題に関する韓国政府側のしつこい姿勢に腹を立ててきており、怒りを感じております。よって全般的にいえば、彼らは今回の合意での謝罪については支持しないでしょう。

ところが安倍首相自身の政治的な立場は盤石です。なぜなら謝罪を嫌う保守派でさえ、今回の合意が(韓国との関係を改善するという意味で)戦略的に合理的であるということを認めざるを得ないという事実によって、さらに反対派まで相殺できるからです。

Q: あなたは謝罪が原因となって発生するナショナリスト側の反発の危険の可能性について書いたわけですが、今回の例からどのようなことが起こると予測しておりますか?

A: 謝罪に対する保守派からの反発は、謝罪が生み出してきたポジティブな効果を弱めることが多いわけですが、これは今回のケースには当てはまりません。なぜなら、合意を得たのは保守派の政府だからです。いいかえれば、反発をする勢力そのものが今回の合意の交渉担当者だったわけですね。

Q: 安倍首相は正しい判断をしたとお考えですか?

A: 韓国に手を差し伸べるのは日本にとって戦略的に賢明な動きです。日本は(中国から)より脅威を感じている側であり、日本は(中国からの脅威をそれほど感じていない)韓国よりも合意を必要としていたわけです。歴史問題は多大なる妥協を必要としているのですが、今回は日本側が(そして韓国側も)かなり妥協したわけですね。

Q: なぜ今回の実現までこれほどの時間がかかったのでしょうか?

A: 国際政治において謝罪が行われることは極めてまれで、基本的に国家が謝罪するということはありえません。日本はその少数の例外の一つであり、ドイツもそうでしょう。他国はこのような問題では謝罪しません。

Q: 第二次世界大戦の残虐行為は、欧米に比べてなぜアジアの政治舞台でまだ残っているのでしょうか?

A:西欧ではソ連という共通かつ深刻な脅威に対抗するために互いを必要としておりました。なので彼らは過去(そして極めて生々しい感情的な人権問題など)を忘れることに合意する必要があったわけです。日韓両政府には、互いを結びつけ合うほどの共通の脅威はありませんでした。なぜならそれぞれがアメリカによって安全保障面を担保されていたからです

Q:中国が国際的に何か謝ったことがあるでしょうか?

A:私の知る限りないですね。とりわけ中国政府は自国民に対する歴史問題があります。経済政策の失敗で数千万人が死んでおり、文革でも長期的な苦しみを与えていますよね。ところが中国共産党はこれらの歴史問題や国家の過去についての探求を検閲して禁止しているのですから。

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これをお読みのみなさんには様々なご意見があるでしょうが、とりあえず第三者の専門家の意見ということでは貴重ですね。

このインタビュー記事についての私のコメントは、のちほどメルマガなどでぜひ。


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Commented by bou at 2016-01-03 09:09 x
まだに、25年半島を見続けてきた保守派の私からしたら、安倍首相の下で行われたものであれば、忸怩たる思いはあるものの、実施してしまったものはいたしかたない、これをどう次に利用できるか、(どうせ韓国は裏切るので)次の機会までにどうやって速やかに国際世論を味方にできる反撃を加えられるかと
いう思いです。
今回は正直不明点も多いので是非奥山先生のご高説をいただければと思います。

カナダのcbcを見ていると、早速中韓系の歴史団体がインタビューを受けていて、日本の教育システムを変えなきゃダメだとプロパガンダしてましたね。何とかsexslavesをやめさせたいのですが、本当に多勢に無勢です。
Commented by 鳥男 at 2016-01-03 20:45 x
10年前から変わってないこの構造
homepage3.nifty.com/ronten/nishio.htm
つまり、保守政治家(と演じてる)安倍晋三は自覚して保守に反する政治行為を行ってるという分析
正確には安倍晋三は国家主義者ではあるが、保守派ではなく小泉竹中路線(経済的にも国際政治的にも)の後継者。
保守派は長年に渡ってまんまと騙され利用されたということ。
Commented by 待兼右大臣 at 2016-01-04 00:53 x
引き続き待兼山界隈で暮らしている待兼です。

今回の「妥協」は、よく言われる
国内基盤が強力な政治家は「大胆な」国際的妥協ができる
という一種のパラドックスの有効な一例となるでしょう。

大前提として
1 中国の台頭
2 「植民地責任」と言う考え方の登場
3 慰安婦問題の他国への飛び火
と言う情勢の前に

「戦勝国理論」による日本封じ込めの重要性が低下したことに韓国や中国が気づかなかっただけです。
Commented by 待兼右大臣 at 2016-01-04 00:55 x
(承前)
このFOREIGN POLICY の記事でも「sexual slavery」と言う言葉を使っていますが
個人的には、これは「予想の範囲内」です。そうでもしないと、
海外メディアも「捏造」の片棒を担ぐことになりますから。
そもそも、欧米は「戦勝国理論」などに代表される

(先の大戦の)日本は「世 界 に 比 類 の な い」残虐な国家
(戦前の日本=ナチス)

という日本像を維持したいという「底意」がありますから「慰安婦」を

世界に類例のない極悪非道の制度

に「仕立て上げる」必要があります。そのためには「慰安婦の独自性」を
針小棒大的に強調する必要があります。
Commented by 待兼右大臣 at 2016-01-04 00:56 x
(承前)
これは、国内で「捏造」が明らかになったため、苦境に立たされた
わが国の左翼(サヨク)勢力が

慰安婦の特殊性

を強調して、「だから、【慰安婦】は特別に批判されなければならない」
との主張に変化してきたことにも現れてきています。

これと同じ動きが国内だけではなく、世界的に起ることになります
そうしなければ、欧米にも「戦時性暴力」問題が降りかかることになるからです

それを「レイシズム」と批判するのは可能ですが、それを指摘すると
「歴史修正主義」という批判を食らうというのが悲しい現実です

秦郁彦氏が「慰安婦と戦場の性」の「あとがき」でそれとなく指摘したように
慰安婦問題の本質は、

冷戦終結により、社会主義に変わる「錦の御旗」を慰安婦を筆頭とする
「歴史認識」に求めたもの

だからです。そして、その側面支援として、

第二次世界大戦での 「戦勝国-敗戦国」という図式を利用した

ことにより、韓国の反日感情と欧米の「戦勝国理論」をサヨクは利用することができたのです。
ここで、サヨクと韓国側との結束が始まりました
(背景として、「在日問題」をサヨク側が支援したこともあります)

だからこそ、この問題は、政治の次元では「封印」して学術の場面で戦うべきなのです。
それでも、わが国の歴史学会は左翼が優勢なので、その点での問題点は残りますが。
Commented by プシュケ at 2016-01-04 20:59 x
>>なぜなら、合意を得たのは保守派の政府だからです。いいかえれば、反発をする勢力そのものが今回の合意の交渉担当者だったわけですね。

上記のこの部分ですが、自民党内には親韓派や親中派が多くいる(親米派よりも?)という分析が抜け落ちている気がしますね。
自民党が選挙でものすごーく頼りにしている公明党は親韓派でしょうし。あと、公明党頼りで、財務省と対立しているかもしれない安倍政権がホントに強い政権かと言われると、疑問に思いますね。
Commented by 大阪人K at 2016-01-04 21:42 x
今回の展開で喜んでいるのは北朝鮮とシナでしょうね。

日本はいつものように負け犬となった訳ですし、韓国は韓国で朴槿恵大統領が暗殺されるかもしれないリスクを背負いましたから・・・
(親子揃って暗殺では、さすがに不憫に感じます。)

何が悲しくて、北朝鮮とシナを喜ばさなければならないのか、つくづく情けなくなる今日この頃です。
Commented by 待兼右大臣 at 2016-01-04 23:12 x
補足です
「慰安婦」問題で注目すべき点は、慰安婦問題を
追求している側は

日本人慰安婦を徹頭徹尾無視している

と言うことです。
「村山談話」を発表した際、村山総理が、日本人
慰安婦について質問された際に、「絶句」した
ことにも、このことが現れています。

このことは、「世界」の2000(2001?)年12月号で
「今後の課題は、見落とされてきた【日本人】
 慰安婦の問題」
と認識していた記事があったのにも関わらずです

で、朝日新聞が「誤報」を正式に認めた後
「アリバイ程度」に日本人慰安婦に関する書籍が
2冊ほど出版されましたが、全般情勢としては
さほど変わりません。

また、ある歴史学者は
「戦地でレイプされる方が慰安婦になるよりまし」
といわんばかりの「暴言」も吐いています。

と言うことで、「女性共通」の問題と言うのが
「あとづけ」で、本当は、

日本による【世界に類例のない】植民地支配の実例

として、「慰安婦」を利用しようとする底意があるので、日本人慰安婦は

邪魔な存在

として、「なかったこと」にしたいのです。
Commented at 2016-01-05 16:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ヒマンジ at 2016-01-06 19:09 x
今回の合意は明らかに米国主導のシナリオです。
日本や韓国の本意ではありません。
Commented by フォロン at 2016-01-11 22:47 x
ジェニファー・リンド女史の分析も、合意直後のホワイトハウスと国務省の歓迎メッセージも、海外大手メディアの報道も、慰安婦の悲惨さよりも今後の安全保障政策に関するものがほとんどでした。
逆に見れば、米国が主導する新たな安全保障体制への移行を「韓国の慰安婦問題」が阻害していたという事です。
米国から見れば、地域の抑止力を向上させるための安全保障体制構築に見向きもせず、70年以上も前の歴史認識を中共と共に外交問題化して、中国共産党礼賛の軍事パレードにまで参加した韓国に疑念を持つことは当然でしょう。
今回の合意は、当初、韓国政府が望んでいなかったものかもしれないが、OP-CONを委ねている立場上、米国の指示に従ったと見るのが自然だと思います。
韓国の外交姿勢が、いかに歪んでいるかの証左になりました。
by masa_the_man | 2016-01-03 08:19 | 日記 | Comments(11)