戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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米国の海軍力についてのインタビュー記事

今日の横浜北部はあさから晴れまして、昼間は上着もいらないほど小春日和でした。これで本当に真冬なんでしょうか?

さて、シーパワー関連の話題について簡潔にまとめられていたインタビューがありましたので、その要約を。インタビューされたのは米海大の教授で、近年のアメリカの政権で国防総省の幹部としても働いた経験を持つトマス・マンケンです。

彼はこの教科書本の中の戦略論の章を書いたことでも有名で、最近の編著として有名なものに対中国のこの本があります。

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海戦
by トマス・マンケン

Q:冷戦終結以降に海軍力はどのように変化したのでしょうか?米海軍はこれらの変化にどのように対応してきたのでしょうか?

A:: 水上艦船、潜水艦、そして航空機などは大規模な投資ですから、そこからその海軍の長期を見据えた計画が見えてきます。したがって米軍を含む世界の多くの海軍に冷戦時代の名残りがあるのは当然のことと言えます。ところがこの例は、急速に近代化を進めている中国の人民解放軍の海軍には当てはまりません。そのほとんどの戦力は冷戦後に準備されたものだからです。

冷戦後に段々と明らかになってきた海軍力に関する大きな変化の1つは、いわゆる「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)能力の発展と拡散であり、相手の海軍が沿岸近くや、さらには外洋に至るエリアにまでその活動能力を弱体化させることを狙ったものです。

精密誘導弾やセンサー、そして指揮系統の能力の拡大によって、航空機(海軍のものもの含む)や水上艦艇は段々と脆弱になってきています。その結果として、潜水艦がシーパワーにおける重要な役割を果たすようになってきているし、今後もそれは変わらないでしょう。

敵たちのA2/AD能力の高まりのおかげで、米海軍の脆弱性は増加しており、ここから生まれる戦術・作戦・そして戦略レベルでの問題を米海軍は解決しようとしています。彼らはA2/ADの脅威から身を守り、それらの脅威を無力化する作戦概念を考えようとしているのです。

Q:では冷戦後に海軍力の分野で起こった。、最も重要なテクノロジー面での発達やイノベーションはどのようなものでしょうか?

A:いくつかあります。その中で最も重要なものの1つは、無人機関連の技術の発展であり、これは飛行機(UAVs))だけでなく、水上艦艇(USV)や潜水艦(UUVs)の分野にも当てはまります。今後は無人システムが、偵察から攻撃目標設定(ターゲティング)に至る、実に様々な分野で活躍することを目撃するようになるでしょう。

それ以外の新しいテクノロジーで実用化が見込まれているのは、水上艦艇などから発射される、防空・ミサイル防衛用のレーザー兵器や電磁式のレールガンでしょう。

レイザー兵器に関してはすでに実用可能であることが証明されており、ミサイルとミサイル防衛の間の戦力バランスを変化させることになると見込まれております。レールガンが実用化されれば、海軍の部隊が地上の目標を攻撃する能力が高まることになります。

Q: 海軍力に関するこれらのテクノロジー面での変化をうながした外的・内的な要素(新興国、予算の変化、国家の新しいトップなど)には、一体どのようなものがあるでしょうか?

A:  もちろん米海軍の変化を促したものには、内的なものと外的なものの両方があります。米海軍は予算面での制約に直面しており、その最初は冷戦後の縮小の時、そして次にブッシュ政権でイラクやアフガニスタンでの戦争に戦うための予算が必要となった時、そして現在では再び予算縮小の時期に直面しているわけです。このような予算削減状況に対処するための1つの方法として、能力は低いがその数は多い、沿岸域戦闘艦(LCS)の建造が計画されたのです。

ところが近年の軍事技術の高まりによって、中国の能力の向上や、ロシアが挑発的になっています。アメリカが中東で対暴動作戦に従事している間に、中国は海洋やエアパワーの分野で技術を向上させており、ロシアはミサイル技術の分野で最先端を進んでおり、とりわけ海上発射型の巡航ミサイルでは目覚ましいものがあります。

モスクワが最近のシリアにおいて、水上・水中発射型の巡航ミサイルで地上の目標を攻撃したことは記憶に新しいところだと思います。

Q: 現在のアメリカの大統領候補たちの多くは米海軍の規模の縮小を憂いており、より大きな規模、つまり少なくとも合計600隻の規模の海軍が必要であると述べておりますが、これは戦いや船の能力における劇的な変化を考えると間違った考えなのでしょうか?あなたは米海軍が予算的な制約のために能力の低い艦船を調達していると答えてますが、彼らに不足しているのは何なのでしょうか?

A:21世紀でも過去の海戦でも、量と質の両方が重要であることに変わりはありません。保有艦船の数は、プレゼンスの誇示や侵略の抑止、そして同盟国を安心させることなどが海軍の重要な任務の1つであり、船は一度に1つの場所にしか存在できないからです。

ところが質のほうも重要です。プレゼンス、抑止、そして安心の提供は、実際に戦闘力がありそうだという印象の信頼度を基礎においたものだからです。LCSのような艦船は、比較的安価に購入できるという意図で作られたものですが、そこでは戦闘力の信頼性の低さが犠牲になっており、これは最終的に侵略者を抑止する効果や同盟国たちの安心を犠牲にすることになっているのです。

Q: 米海軍は将来の脅威に備えるために、民間企業などと新しいテクノロジーをどのように開発しているのでしょうか ?

A: 私はこのまま予算的な制約がつづけば、米海軍は新たなテクノロジーの開発面で民間企業に頼ることは増えると考えております。全体的に言って、米国防総省が民間企業からアイディアだけでなく、その開発費用の捻出も頼るようになるでしょうね。

Q: 海軍の役割の変化についてあなたはどのように見てますか?

A:米海軍は一九四五年以降に大規模な敵に対して一度も戦ったことはないですし、冷戦が終わってソ連崩壊後は対等な能力を持った国には直面してません。戦争の様相は変わりつつあり、中国は急速にその能力をもった競争相手になりつつあるのです。

この二つの事実は、米海軍にとって大きな示唆を与えております。なぜならそれが、何を調達し、どのようなコンセプトを発展させ、どのように水兵を教育・訓練すればよいのかに影響を与えるからです。

とにかくここで言えることは、米海軍がエキサイティングで挑戦的な時代に直面しつつあるということですね。

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戦略に関するすべての理論書の前提としてあるのが「人間は未来予測をできない」ということなのですが、これは私が今回訳出したグレイ本でも(とくに後半の核戦略の章で)強調されております。

未来が予測できないとなると、われわれはあらゆる可能性に対処できるように考えなくてはならず、そうなると戦略を考えるのは必然的に難しくなります。

そこで必要になってくるのは「フィクション」的なアイディアなのですが、すでに確定した過去を研究する歴史学者たちの中には「このようなフィクションなどは許せない」となってしまうわけです。

上記のマンケンの記事を読む際にわれわれが心得ておかなければならないのは、「われわれのうちの誰もが未来を正確に予測できず、常にものごとを手探りの状態で進めている」という事実です。

もちろんメディアを普通に見ていると、われわれとそれほど能力の違わない政治家や官僚たちを、彼らがまるで全知全能の神であるかのようにとらえ、その事実に気付かずに無自覚に批判しているジャーナリストや批評家たちがおります。

ただし彼らだって未来を完全に予測できないことを理解できれば、政治家や官僚に対する見方も少しは変わってくるかもしれません。
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(近所の大型書店で目撃した『現代の戦略』)


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by masa_the_man | 2015-12-25 22:05 | 日記 | Comments(0)