ロシアがシリア領内へ空爆開始 |
12月に出る訳書のゲラチェックで忙しい中、一作日は第一次世界大戦の権威であるヒュー・ストローンの講演、そして昨日はエドワード・ルトワックと個人面談をしてきまして、色々と知的刺激を受けてきました。
さて、久々の更新ですが、ロシアのシリア領土内で空爆を始めたことについて。
これについてすでに様々な解説記事が日本でも出ておりますが、イギリスのテレグラフ紙のウェブサイトのよくまとまった記事を発見しまして、興味深く読んだのですが、ここからわかるのは以下のような点です。
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●ロシアは表向きシリア領内の「過激派組織IS=イスラミックステート」を攻撃していると発表。
●ところが実際に空爆の対象としているのは、アサド政権に反対する非IS系の「自由シリア軍」(FSA)を中心としたグループ。ただしその爆撃対象には、アルカイダ系の「ヌスラ戦線」を含むジャイシュ・ファタハ(征服軍)から、アメリカが訓練をほどこした「穏健派」まで含まれる。
●そしてこの勢力を支援しているのはトルコ、カタール、サウジアラビア、
●結果としてロシアが狙っているのはアサド政権の延命だと思われる。好意的に解釈すれば、ロシアは反政府派のFSAを潰してアサド政権を延命させてから、結果としてISを打倒させようと思っているのかも?
●今後の焦点は、なんといっても地上軍の派遣が行われるかどうか。
●アサド政権のシリア政府軍とヒズボラ、それにイランから支援を受けた兵力がシリアに続々と集結中で、反政府が側の勢力に対して攻勢をかけようとしている。
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ここで浮かび上がってくる対立構図なんですが、宗教的にわければ意外に明確になります。それは、
反シリア体制派側=スンニ派:FSA、IS、カタール、サウジ、トルコ:アメリカ
vs
シリア政府軍=シーア派:アサド政権、ヒズボラ、イラン、イラク(マリキ政権):ロシア
もちろん現実は「ドイツ三十年戦争」の時のように、カソリック・プロテスタントが入り乱れてのバトルロイヤル状態と同じなわけですが、とりあえずシリア領内に限っていえば、
反シリア体制派(スンニ派)vs シリア政府軍(シーア派)
という構図が出てくるわけです。
ここで不都合なのは、実はアメリカは、化学兵器を使った反体制派やIS、それにアルカイダ系の勢力と近い関係にあるという事実。
国際政治はまさに平沼騏一郎首相が述べたように「複雑怪奇」ですが、宗教という一面から切ってみると、意外に勢力構造が明確に見えてくることもあるようです。
このニュースについては、次回の生放送(http://live.nicovideo.jp/gate/lv235238144)でももちろんとりあげますのでぜひご期待を。
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