戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ルトワックの『クーデター入門』のメモ

今日の横浜北部は朝から快晴で気温も上がりました。まだ梅雨前なのでそれほど蒸さないのが救いです。

さて、色々と忙しくしておりましたらあっという間に更新が遅れておりましたが、来週の火曜日の夜に放送する特番(http://live.nicovideo.jp/gate/lv221061132)でのルトワックの『クーデター入門』の内容について、目次や気になったところなどをメモ代わりに先にここに書いておきます。
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まず目次ですが、以下のようになっております。

====

▼まえがき

▼本書に寄せて(S. E. フィナ―)

▼第1章:クーデターとは何か
ー革命
ー内戦
ープロヌンシアミエント
―プッチ
―解放
―民族解放戦争、反乱、そのほか
ークーデターの定義

▼第2章:クーデターはいつ可能か
●クーデターの前提条件
ーその①経済的後進性
―その②政治的独立
―その③有機的統一:分派的利益・地域的政治単位

▼第3章:クーデターの戦略
●治安機構の中立化
●軍隊の中立化
―ポルトガル軍:1967年の状況:陸海空軍
―クーデターの戦略① 軍部への浸透
―クーデターの戦略② 警察力の中立化
―警察力の分析:パリ警察の場合:憲兵、地方警察、都市および国家警察
―クーデターの戦略③ 秘密機関の中立化:純粋な諜報活動、反諜報活動、反スパイ活動、国内の治安維持活動、国内の諜報活動

▼第4章:クーデターの計画
●政治的諸勢力の中立化:その1
ー戦略目標① 政府要人:儀礼的人物、閣内集団と強制手段を掌握している閣僚、ほかの閣僚と高級官僚
ー戦略目標② 政府外の要人
ー戦略目標③ 物的施設、装備:マスメディア、電信電話、都市への出入口の連絡、交通の要害、空港その他の交通施設、公共建造物
●政治的諸勢力の中立化:その2
ー戦略目標④ 宗教団体
ー戦略目標⑤ 政党:機械政党、反乱政党、官僚的擬似政党、先進国の政党
ー戦略目標⑥ 労働組合

▼第5章:クーデターの決行
●その前夜:決起のとき
●タイミング、結果、機密:最終点検
ー行動開始:襲撃目標:Aクラスの襲撃目標、Bクラスの〜、Cクラスの〜
●クーデター直後の情勢:新しい秩序を!
―自軍の安定化:まず内部を固める
―官僚機構の安定化:忠誓と協力
●「権力」から「権威の座」へ:大衆の安定化

====

うーん、非常に生々しいですね(苦笑)これはハンドブックというか、完全な「手引書」ですよ。

その他にいくつか書いておきたいことが。

まず第一に、ルトワックはクーデターしやすい国を見極めることの重要性を説いております。そうなると、適しているのはいわゆる「先進国」ではなく、むしろ「第三世界」の国々。

実行しやすい国の3要件として挙げているのは

①権力が少数の人間に集中、
②外国からの介入を受けにくい独立国、
③政治の中心が多数の機関などに分散していないこと。

というものです。北朝鮮はそれに当てはまりそうですが、なにぶん中国が介入してきそうなところがちょっと状況を難しくしているかと。

次に半分くらい読んだところでの感想なのですが、なんというか、国家のパワーの源泉(クラウゼヴィッツのいう「重心」)がどこにあり(秘密機関!)、それをどう分析してどこを動かせばいいのかを徹底的に論じているという意味で、意外に政治学の本として優れているのではないかと思った次第です。

もうすぐ出る本書の新板(2015年版)のまえがきには、原著の英語版が7刷され、日本語やロシア語、それに中国語(といっても繁字体の台湾版)を含む17カ国の言語に翻訳されたことや、実際のクーデターに使用されたと証拠つきで聞かされたこと(!)、それに本書が最も注目されたのはアフリカであったことなどが書かれております。

どうやら最初に本書(のフランス語版)を実際に使ったと思われるクーデターは失敗に終わったらしいですが、ルトワック自身は「俺の言った通りに実行しなかったからだ」と反論してます(笑

この本のまえがきにあるルトワック自身の言葉も印象的です。

===

本書は、実際に国家権力を握るために活用できるような、クーデターのテクニックを紹介することを目的としている。やる気と材料があれば素人にもできるという意味で、本書は料理本に似ており、その狙いはクーデター実行のための知識を提供することにある

・・・本書は政治的には中立の立場に立ってクーデターのテクニックを論じたものであり、国家の権力を奪うという目的のためだけに書いたものであって、その後の政策をどのようなものにするかはまったく感知するところではない

===

とにかく刺激的な本であることだけは確かです(苦笑

火曜日の特番でじっくり解説する予定です。


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Commented by だむ at 2015-05-30 23:00 x
これは再翻訳して、某インプレスからB5版で「できるクーデター」として出版した方がいいのでは
Commented by 待兼右大臣 at 2015-05-31 03:13 x
「本書に寄せて」の"S. E. フィナ―"が
"The Man on Horseback"のSamuel E Finer
を指すのであれば、日本では「ファイナー」と表記される方が一般的です。

「フィナー」=「ファイナー」を前提とすれば、氏が『クーデター入門』に巻頭言を寄せているのはうなずけます。
上記の"The Man on Horseback"は「サミュエル」つながりでもあるハンチントンの『軍人と国家』(The Soldier and the State)と並ぶ政軍関係論の古典中の古典なのですが、"The Man on Horseback"は

クーデターの比較類型論に過ぎない

と評されることもあるからです。
ファイナーはクーデターを行う政治力学(Military Intervention in Politics)を問題とし
ルトワックはクーデターの方法論を問題とした
と理解すれば、氏が巻頭言を寄せた意味の一端が創造できます。

余談としていえば、政群関係論の必読文献と化しているのに、"The Man on Horseback"は未だに邦訳が出ていません。ケネス・ウォルツの『Theory of International Politics』も邦訳が出たというのに・・・
Commented by masa_the_man at 2015-05-31 09:44
だむ さんへ

>某インプレスからB5版で「できるクーデター」として出版

柔らかくアプローチしたいですね(笑)コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2015-05-31 09:48
待兼さんへ

>日本では「ファイナー」と表記される方が一般的です。

なるほど、そういうことですか。ここでは訳書の通りに表記してみましたが、いわれてみれば確かに。

>氏が巻頭言を寄せた意味の一端が創造できます。

そういえばいまでも買える原著(1979年版)ではウォルター・ラカーが巻頭言を書いているんですよね・・・・いずれにせよビッグネームに書いてもらってます。コメントありがとうございました
Commented by とおる at 2015-05-31 12:21 x
> ・・・本書・・・、国家の権力を奪うという目的のためだけに書いたものであって、その後の政策をどのようなものにするかはまったく感知するところではない。

「アラブの春」を思い出します。
国家権力を奪うのが失敗しても、国家権力の崩壊、騒乱・内乱を起こし、自滅するのを、(内政不干渉と言いつつ)周囲から暖かい目で見守るとか。
中国に適用して解説など、いかがですか?
Commented by sdi at 2015-05-31 16:37 x
このクーデターしやすい条件に、社会主義諸国の政体が見事に壷にはまりますね。それゆえ、かの社会体制の国は軍に対する党のcontroleの確保に躍起になるのでしょうけど。
クーデターしやすい、ということは「クーデターされやすい」ということにも繋がりますからクーデター後の政権維持のため、ますます統制を強化する方向にバイアスがかかりますね。
Commented by kjzrat at 2015-05-31 20:40 x
怖いタイトルですね。
これまで起きた実際のクーデターに当てはめてみると面白い事がわかるかも?と期待してます。
Commented by 中山太郎 at 2015-06-01 09:24 x
ルトワックみたいな頭の良い方は、こうしてクリアーに整理されたクーデター読本を書くことができます。
しかし、古今東西クーデター成功の後の政治をどうするかについては、良い本はありません。それで、皆うまくいっておりません。毛沢東しかりヒットラーしかりーーーー。金日成はうまくやったほうかもしれません。まだ、3代目が頑張っておられます。
頭の良いルトワックは、泥沼の世界になる政治の問題をうまく避けているのでしょうね。百通りの国民がいたら百通りの解があるのだよと突き放しておられるのでしょう。
by masa_the_man | 2015-05-30 20:34 | 日記 | Comments(8)