戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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テキサス独立を目論む“礼儀正しい”人たち

今日の横浜北部は、雨は降りそうもないですが、それでも雲が多い一日です。気温はすっかり春ですね。

さて数日前の生放送(http://live.nicovideo.jp/gate/lv212787071)でも解説した、活動を活発化させているテキサスの分離独立派についての記事です。

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NY Times
Secede? Separatists Claim Texas Never Joined United States
http://www.nytimes.com/2015/03/10/us/secede-republic-claims-texas-never-joined-us.html
By MANNY FERNANDEZMARCH 9, 2015

分離独立?アメリカに併合されたことはないと主張するテキサスの独立派たち
By マンニー・フェルナンデス

●「テキサス共和国」(the Republic of Texas)という私的団体は、過去に実在したテキサス共和国とは似て非なるものだ。

●その月例集会は、米連邦議会のものと同じように「議会合同会議」( joint sessions of congress)と呼ばれている。参加者たちは独自の金貨や銀貨を発行し、警察官にたいしてテキサス国家の代表であることを示すためのIDカードを携行している。

●「副大統領」は電話会社を定年退職した元会社員であるが、2011年にはオクラホマ州知事にたいして、オクラホマ州の領土が「テキサス国」の中の「地理的境界線内を不法侵入している」ために起訴されるおそれがあることを通達する手紙を送っている

●このような手紙でも、この団体の斬新な信条を他の政府などに納得させることではできなかった。その信条とは、「テキサスは法的にアメリカに属さず、独自の国家の状態を維持している」というものだ。

●このような考えの結果として、この団体は自分たちに政府を構成する責務があると主張しており、ヒューストン郊外のケイティに住む整体師が、外務省と裁判制度の一部を運営している。

●この団体のメンバーたちは、自分たちの「政府」は「いたずら」や「おふざけ」ではなく、真剣に運営されているもので、正統性のある三権分立による体制になっていると言っている。

彼らは「合同会議」を8時間も行い、その中で法律の制定も行っている(オクラホマ州知事に送った手紙は上院法案第1102-1201号で制定されたもの)。

●もちろんこの団体からの手紙をもらった州政府や連邦政府は、その手紙を「ゴミ箱に直行」させてしまうのであり、この団体の「大統領」である72歳のジョン・ジャーネック( John Jarnecke)もその事実を認めてはいる。

●ところがこのような状態は先月になってから一変した。

●この団体は2月14日のバレンタインデーに、ブライアンという町の外国戦争戦没者記念ホールに集まったのだが、その会合が始まったばかりの参加者の女性に花が配られ始めた時に、地元警察と連邦警察やFBIの捜査官たちに踏み込まれてしまったのだ。

●この時には逮捕された人は出なかったのだが、この団体の支持者の10数人が一時的に拘束されており、そのうちの何人かは指紋を採取され、携帯やブリーフケースを没収されたりしている。

● 当局よれば、このガサ入れには「テキサス共和国」が同州のカービルという町の判事や弁護士たちに大量に送った手紙などについての調査に関するものだという。

●当局によれば、この団体に関係した人物の中には過去に自らのナショナリスト的な信念を暴力的な過激主義にまで高めた者がいるという。たしかに1997年には7日間にわたって警察とにらみ合いをつづけて最終的に銃撃戦となり、団体のメンバーの一人が銃で撃たれて死んだことがある

●「テキサス共和国」のリーダーたちは、「先月のガサ入れを行った当局の者たちは、自分たちの送った正統な手紙に過剰反応して武力行使に出た」と述べている。

●「テキサス共和国」はカービルの判事に対して、団体の構成員の自宅が抵当流れになってしまった判断を下した責任があるとして、ブライアンの外国戦争戦没者記念ホールでの「審問」に出頭するよう命令している。

●この判事に送られた2通の手紙には「外国(テキサス共和国)で権力行使する証拠」を示すよう求める命令や、その文書の写しが国連に提出される可能性があるという警告が書かかれており、召喚状を送りつけられたのだ。

●このガサ入れのおかげで、この団体はブライアンの外国戦争戦没者記念ホールの使用を禁じられてしまい、この団体の次回の会合は同州のウェーコという町の食べ放題のレストラン(Ace Buffet and Grill)で開催されることになった。

●この手紙に連名で署名した「共和国」の最高裁判官をつとめるケイティの整体師であるデイブ・クロウパ(Dave Kroupa)は、「やつらはジョン・ディリンジャー(有名な銀行強盗)みたいに踏み込んできて、しかもそれまで他のヤツらは息を潜めて隠れてたんですよ。女性たちはバラを持っていただけですよ?こんなくだらないことは私の59年の人生の中で初めてみましたよ」とコメントしている。

●ところがこの会合へのガサ入れのおかげで、団体はマスコミの注目を集めることになり、一般市民からの支持も得ることになった

●また、この「共和国」の政治的な「仮想現実」や、彼らの過激な世界観およびそれほど過激ではない支援者たちの様子が知れ渡ることになった。

●そのうちの何人かはアメリカの連邦・州政府と暴力的な衝突を起こしたことがあるが、その他は1836年から45年まで独立国として実在したテキサスの建国に興味をもっているだけの年金生活者であり、彼らは米連邦政府やテキサス州政府を打倒することまでは考えていない

●以前テキサス州の土地弁務官を務めたことがあり、この団体から職をしりぞくよう要求した手紙を受け取った経験を持つジェリー・パターソン(Jerry Patterson)氏は以下のように述べている。

●「彼らはヒマを持て余した人の良い老人たちによって構成された、無害で無知な興味深い団体でしかないですね。当局だってほっときゃいいんですよ。彼らは手紙以上のことをやろうとしているわけじゃないですし」

●ところが今回のガサ入れを担当したケリー郡の保安官によれば、彼らの手紙は、私的に裁判を行って召喚することを禁じる州の法律に違反していたという。ガサ入れに加担した大規模な調査官たちは、この団体の過去の経緯からどうしても必要であったと主張している。

●その証拠に、1997年には当時のこの団体のリーダーであるリチャード・マクラーレン(Richard L. McLaren)と彼の取り巻きたちがテキサス西部のあるカップルを誘拐して人質にとったことがあり、これが警察とのにらみ合いの状態に発展したことがあるという。

●この団体のメンバーの一人が銃撃戦で弾に当たって死亡しており、マクラーレン自身は投降して州の刑務所に投獄されている。

●また、他のメンバーたちも長年にわたって暴行や偽造罪、それに役人などへのなりすましの罪によって訴追されており、1998年には連邦レベルで大量破壊兵器の使用を脅した罪に問われている。

●「私自身はこの団体について問題はないですが、彼らが州の法律を違反した場合には何かしらの行動をとらなければならないですからねぇ」とはこの保安官の弁。

●また、「警察官を一人だけ派遣して逮捕してもいいわけですが、身の安全を確保するという意味ではどうしても人数を揃えなければなりません。たとえばウェーコの新興宗教団体によるFBIとの銃撃戦事件や95年のティモシー・マクベイ(Timothy McVeigh)というオクラホマ州ビル爆破事件の犯人、それにいわゆる”主権市民”たちの例を考えてみればおわかりいただけるかと」と加えている。

●つまり過激派が問題なのであり、その過激派のために慎重にならざるを得ないというのだ。

●もちろん「テキサス共和国」のリーダーたちはマクラーレンとのいかなる関係も否定しており、そのうちの何人かはテキサス分離独立運動が高まったごく最近になってから参加したのが明らかだ。

●たとえば去年の共和党の知事選の予備選に出馬した分離主義者( Larry Secede Kilgore)は、自分のミドルネームを「分離独立」(Secede)というものに変えて1万9055票を獲得している。

●「テキサス共和国」の大統領であるジャーネック氏は同州のフレデリックスバーグで建設業を経営しているのだが、この団体の参加者を「分離独立主義者」と呼ぶのは間違いであると指摘している。

●「われわれはわざわざアメリカから分離独立する必要はありませんよ。なぜならそもそも併合されたという事実さえないわけですから」

●ただしこのガサ入れの効果が一つあった。彼らの手紙が増えたことである。

●この時に拘束された内の一人は保安官を「自由を侵害するものだ」と非難しており、その賠償として金塊か為替かその他の組み合わせによって300万ドル(3億円強)支払うよう主張している。

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アメリカはとりあえずまだ世界で「テロとの戦争」を行っているわけですが、自国の中にもこのような分離独立団体がいるんですよね。

とくに最後の「大統領」の一言は、「歴史修正主義」というかなんというか(笑

基本的にどのような「帝国」でも自国の領内に分離独立派を抱えるわけですが、アメリカもやはり例外ではないわけです。

というか、実はどの国の中にも主流派と異なるマイノリティが必ず存在するわけで、日本にとってもこのような事態は例外ではありません。

しかもこのようなマイノリティへの注目や多元化というのは、ネットのような可視化を進めるメディアやテクノロジーの多様化によって、ますます進んでいると言えますな。

ただし問題は、一方的にこのような「分離独立派」たちの存在を高めるだけでなく、彼らの中の意見の違いをあぶり出す方向にも作用するという点です。

いいかえると、ネットのようなテクノロジーは「国家」という大きな集団の単位から「分離独立派」という小単位のグループへの分裂の動きに向かわすように見えがちですが、同時にこれはこのグループ内の分裂にも作用するということです。

結局のところ、話は政治的単位のまとまりとしてはどのようなサイズが適正なのかというアリストテレスの頃から人間を悩ませてきた問題への回帰です。

いやあ、いくら世の中が進んでも、政治ってのは難しいもんです。





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Commented by 待兼右大臣 at 2015-03-18 21:48 x
わが国でも、「嫌韓派」というのは2002年の日韓W杯以来「静かなブーム」となっていたのですが、「行儀が良い」ためにさほど話題にならず、行儀の良さが祟って、却って「弾圧」されていたのですが、「在特会」という過激派(「Foreign Policy」ではTea party と同様の新興過激保守団体として取り上げられていました)が世に出て初めて、マスコミが「ヘイトスピーチ」という形で取り上げるようになったのも

>>過激派が問題

ということのひとつの側面なのかもしれません
Commented by 大阪人K at 2015-03-21 09:23 x
今回はマイノリティーネタで
「呼ばれて飛び出てジャジャジャーン」
ような気がしたので、久しぶりにコメントを書かせて頂きます。

>同時にこれはこのグループ内の分裂にも作用するということです。

この様子を実際に見たことがありますが、もう凄いです。
幸い私は安全地帯にいましたから、問題なかったですが・・・

何がややこしいかと言えば、分裂したグループが別の分裂したグループとつるんだり対立したりと離散集合を繰り返すという修羅界の様相でしょうか。(笑)
(その様子を僅かばかりとは言え、観れたというのは宝くじに当たるよりも難しく、貴重な経験でした。正直なところ、そんなもの観るよりも宝くじに当たる方が嬉しいですが・・・)

>いくら世の中が進んでも、政治ってのは難しいもんです。
結局、人が馬鹿であることは時代が経ても変わらないことに帰結するのでしょうか・・・

Commented by 西 at 2015-03-23 21:11 x
問題なのは過激な少数に投資する連中は良く現れるのと過激な行動を見てバイオレンスを目的に烏合する輩が現れる事です。そうすると穏便な自治を希望していた派は消えて行きますし。地域で暴力的な活動も起きて来る。どこでも同じようですが問題が酷くならない秘訣でもあるんですかね。
by masa_the_man | 2015-03-18 15:18 | 日記 | Comments(3)