戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man

建設的な幻想

今日の横浜北部はやや気温は低めながら、よく晴れて気持ちのよい一日でした。

さて、久々に本の紹介を。

去年の8月に出たばかりの本でして、内容もコンスト的なものなのですが、イギリスの本屋で見かけて気になっていたのを、帰国後に日本の洋書店で発見して即購入しました。
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Constructive Illusions: Misperceiving the Origins of International Cooperation
by Eric Grynaviski

原題を直訳すると「建設的な幻想:国際協力の原因の誤認」という少々わかりにくいものでして、著者はエリック・グリイナヴィスキーというジョージ・ワシントン大学の准教授。

内容を簡単にいえば、「国家間の建設的な協力関係というのは、実は互いのカン違いによって生まれることのほうが多い」という、かなり逆説的なもの。

たしかにわれわれは一般的に「互いに相手の意図を完全に知ることができれば戦争にならない」という、まさに孫子的な常識を信じているわけですが、この本はそのような常識を完全に打破するような内容。

著者はこのような事例を、主に冷戦時のニクソン政権の米ソ間の「デタント」の交渉の時のエピソードから引っ張ってきておりまして、2章分をその事例研究に当てております。

本書の冒頭では、ヨーロッパ人としてハワイを初めて訪れたキャプテン・クックがほんの偶然から「神」として祭り上げられて奇妙な歓待を受けたエピソードをとりあげるなど、両者のコミュニケーションがうまくいかなかったからこそ互いに協力できた例を豊富に紹介。

国際関係論の世界では、一般的な「常識」として、交渉を行う両者が互いを知れば知るほど協力関係が生まれるという考えがベースになっておりますが、本書の著者はむしろ「誤った間主観的信念」(FIB)のほうが協力関係を生み出すとしております。

もちろん本書ではFIBが常に協力を生み出すということを主張しているわけではないのですが、それでも既存の国際関係論の常識を覆すような着眼点は興味深いこと請け合い。

細かい例としては、たとえば夫婦関係はむしろ互いに理解しきらないほうが幸せであるということや、友人関係なども逆に理解しすぎるとうまく行かなくなるなど、ミクロのレベルの人間関係の例に言及している点も面白い。

これを読むと、「ああ、人間は互いに理解しあえなくても協力はできるんだな」と安心できるという効能も。

書式自体はかなり論文形式なのですが、本文もたった160ページほどで文体も読みやすいです。おすすめ。





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by masa_the_man | 2015-03-06 17:31 | おススメの本 | Comments(0)