戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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日本のネットユーザーたちはISISを打ち負かしている?

今日の横浜北部はよく晴れましたが、夕方から曇り始めました。寒さは少し柔いだような。

さて、遅ればせながら、いわゆる「ISISクソコラグランプリ」案件について、海外で最初にネット上で評価した英文記事を要約してみたいと思います。

掲載されているのはアメリカのマイナーなニュースサイトなのですが、日本のネットユーザーたちの勇気ある行動(?)を絶賛しております。

すでにネット上ではこの記事の一部が訳されているようですが、ここではちょっと長めにご紹介します。

この記事については今夜の生放送(http://live.nicovideo.jp/gate/lv205843016)でも詳しく解説してみたいと思っております。

===

ISISのプロパガンダにたいする日本のくだらない反応は、アメリカ政府が達成できなかったことを達成してしまった。

by E.A. ウェイス

●ISISは日本から人質解放の身代金として2億ドルを要求している。賢明なことに、日本政府はその要求を拒んでいる。

●ところがそれよりも素晴らしい反応――米政府が何度もやろうとして失敗したこと――を示したのは日本国民のほうであった

●今週のことだが、日本のネットのユーザーたちは、くだらなくて軽蔑的な画像をテロリストたちに見せつけるという、いわゆる「フォトショップ・バトル」を仕掛けることによって、一斉にISISを馬鹿にするような行動をとった

●もちろんこのような試みは捕虜を助けることにはつながらないだろう。しかしこれは(少なくとも小さな貢献だが)将来のテロを防ぐことにはつながる可能性をもっている。

●多くの人々が指摘しているように、ISISのというのは戦闘員を募集するのが(アルカイダよりも)非常にうまい。

●ISISには世界中の国々、つまりアメリカ、チリ、オーストラリア、そしてイギリスなどから多くの戦闘員が参加しており、自分たちの伝えたいメッセージをネットで対外発信するのが巧妙なのだ。

●たとえば英語でつくられた動画では、改宗を迫るようなポジティブな声明と、暴力を含んだ圧倒的なイメージが入り混じったものであり、まるでナチスの悪名高い「意志の勝利」というプロパガンダ映画の中で見られるような、権力を欲する人間の本質に訴えかけるようなものだ。

●ISISはソーシャルメディアを駆使しており、容易に過激化してしまう孤独を感じている若者たちにたいして自分たちを「ブランド化」するのに長けている。彼らのプロパガンダは明快で強力であり、いかなる政府によっても打倒されていない。

●もちろんアメリカ政府もネット上でISISにたいして「カウンター・プロパガンダ」のテクニックを使用したが、いずれも失敗している。彼らのやり方は、ISISにたいして批判的なジャーナリストたちの言葉を引用したり質の低い動画を作ることなどであり、古く臭くて冴えないものばかりであった。

●ガーディアン紙にたいして米国務省のアドバイザーを務めたことのある人物が語ったところによると、アメリカのやり方はISISをさらに強化することにしかつながらなかったという。

●「彼らは集まってきた戦闘員たちにたいして、ホラ見てみろ、俺たちは強力なんだ、その証拠がアメリカ政府の動きにあらわれているじゃないか!と言ったわけなんですよ」とはこの人物の言葉。

ではなぜそれほどまでに日本の反応の仕方は価値の高いものなのだろうか?その理由は、アメリカがやろうとしてもできなかったことを効果的に行ったという点にある。

●「カウンタープロパガンダ」で狙われるのは、相手側が行おうとしていることを邪魔することだ。ISISのそもそもの狙いは、自分たちを正義でありながら凶暴に見せるというところにある

●ところが日本のネットユーザーたちはISISのプロパガンダにたいして、間抜けなアニメのキャラクターを混ぜ込むことによってISISを恥ずかしい存在であるかのように描き出してしまったのだ。

●世界中のほぼすべての国のリーダーたちに警告されているISISに参加しようとしている若者たちは、ISISが非難されているがゆえに正しい存在であるとして、逆に「参加したい!」と考えてしまう。

●ところがこのようにテロリストたちを骨抜きにして徹底的に馬鹿にしてしまえば、彼らの伝えようとするメッセージを軽くできるのだ。

●これはほんの小さな勝利にしか聞こえないかもしれないが、ISISの強みはネットのメッセージで新しい戦闘員を集めることができるところにあるという観点からみれば、日本のネットユーザーたちは、世界がISISと戦うための完璧な武器を提供したと言えよう

●ISISに参加しようとする者を説得して諦めさせることができれば勝ちである。とりわけ3万のイラク兵をたった800人のISISの戦闘員が打ち負かしたことを考えればなおさらだ。

●ISISは、南北戦争でシャーマン将軍が南部攻略の際に使った焦土作戦が、まるでローズ・パレード(下の動画)のように見えるくらい過激なやり方で、町から町へと侵攻しているのだ。



●その合間に彼らは数千人の戦闘員を集めており、ISISが自分たちのことをさも英雄であるかのように描き出すブランド化戦略を止めることができない限り、新入りの流入の勢いを止めることはできない。

●もちろん「生まれながらのテロリスト」というのはいるはずもなく、過激化は改宗的な経験を通じて起こるものだ。これを逆にいえば、正しい教育を使用すれば非過激化も可能であるということになる。

●さらに重要なのは(そして現実的なのは)、いままで動員に成功していたイメージを悪化させることができれば若者たちの過激化を阻止することができるということだ。

●このような考え方は、たしかにナイーブなものと聞こえるかも(もしくはカウンター・プロパガンダなどという言葉で興味を失う人もいるかも)しれない。だがここでちょっと低俗な例を使いながら、クソコラがどのような働きをもっているのかを説明させていただきたい。

●2012年にアメリカの歌手テイラー・スウィフトが“I Knew You Were Trouble”というシングルを発表して大ヒットしたことはみなさんもご存知だろう。



●ところがそのすぐ後に、この歌の「ヤギ・バージョン」がYoutubeにアップされたのだ。



●この「ヤギ・バージョン」を聞いたほとんどの人は、今までのような感覚でオリジナル版の歌を聞くことはできなくなったはずである。

●この働きを「対テロ戦」に活かすとすれば、このようなことになる。つまり、ISISが戦闘員を募集する動画にオナラの音を挿入するのだ。こうなると、誰もオリジナルの動画を深刻で真面目なものとして見ることができなくなってしまう。

●これは冗談に聞こえるかもしれない。ところがこのようなどちらかといえば「わかりやすい邪魔」によって、それを見た人々の記憶の中に一定のイメージを永遠に根付かせてしまい、ISISのプロパガンダの熱意や真剣さを失わせることができるかもしれないのだ。

●もちろんこのような戦術はいつも効くとは限らないし、戦闘員たちが参加する理由のすべてがISISのプロパガンダにあるわけでもない。

●ところがアメリカ政府が最近になって単にカウンタープロパガンダを作成し、若者がISISに参加するのを防ぐためだけの「海外対反乱作戦」に78億ドル(8000億円)の予算をかけることを決定したことを考えれば、日本のツイッターのユーザーたちが世界の誰よりもうまくやっているように見えるこのような手段は、明らかに重要なものと言えるだろう。

===

まあ人質の生命を危険にさらしたという点からはあまり褒められるものではありませんが、それでもこの著者は日本のユーモアを交えた対処法を絶賛しておりますね。

ちなみに私のある知人は、今回のこの一連の動きについて、

クソコラの連中は、自分達が不謹慎で悪ふざけで不快で歪んだ狂った連中であることを自覚しているために「糞」と名乗っている。

その反対に風刺画の連中は、自分達が「ジャーナリズム」であり「表現の自由の旗手」であり「正義」であると錯覚している。

ゆえにクソコラの連中は「正常」であり、風刺画の連中は「狂人」である


というパラドックスを指摘しておりました。

もしかしたら、これは一つの真理を言い当てているのかもしれません。

とりあえずご参考まで。



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



Commented by tsugio67 at 2015-01-26 22:45 x
はじめまして。
毎週火曜の生放送、いつも楽しみにしてます。
今回の「クソコラグランプリ」、
テキサス親父が、かの悪名高い「捏造慰安婦少女像」
に、間抜けな顔を描いた紙袋をかぶせて笑い飛ばした手法
と同じですね。
Commented by だむ at 2015-01-26 22:48 x
ひとつあったのは、これまでISISが欧米に対してはネットメディア等を駆使して存在をアピールしていたのに対し、日本に対してはほとんどそうしたメディアを流していなかったから、欧米の反政府感情をもつ層に「残虐で強いクールな存在」と知られていても日本では「なんかしらんが割拠してる武装勢力」としてしか認知されていなかった点もあるのではと。

それに加えて、欧米人が中東に抱く「アラビアのロレンス」的なロマンチシズムが、日本人にはまったく存在していないということもあるのではないかと思います。
Commented by 大阪人K at 2015-01-27 00:11 x
北朝鮮をおちょくった映画で北朝鮮が過剰に反応したようにISISもクソコラに反応しているのが興味深いですね。
恐怖心を煽る者にとって、笑い者にされるというのは堪えるのでしょう。

>ゆえにクソコラの連中は「正常」であり、風刺画の連中は「狂人」である。

この視点に気付きませんでしたが、確かに言われてみればその通りです。(笑)
ただ、自覚しているくらいだったら、「その制作時間をもっと有意義なことに使えよ」と言いたくもなります。(笑)

ps
ヤギ受けました。
Commented by adentee at 2015-01-27 00:36
初めまして。
ツイッターはしていないんですが、とても興味深い記事でした。また寄らせていただきます。
Commented by のす at 2015-01-27 01:10 x
初めまして、なかなか興味深い記事でよかったです。

>それに加えて、欧米人が中東に抱く「アラビアのロレンス」的なロマンチシズムが、日本人にはまったく存在していないということもあるのではないかと思います。
いや、ロマンチシズム自体はありますよ、古い映画で見たイメージですけど。
ただ姿格好がアレじゃあ日本人から見たら忍者装束にしか見えないんじゃないですかねえ。
クソコラでも忍者コラがあったように。
外国人も日本人が浴衣とか着物とか和服着てなくてビル街だと日本のイメージが湧き難いのと同じだと思います
Commented by 山田ユキノ at 2015-01-27 03:05 x
ここ数日色々自分の中に渦巻いていたものがなんとなく静まりました。
うまいこと言えないですがこの記事に巡り会えてよかったです。
Commented by ロンズデーライト at 2015-01-27 10:27 x
こんにちは。クソコラの件で、正直ここまで大きくなったことには驚きを隠せませんでした。
しかし、私は一つ懸念していることがあります。不謹慎とかそう言う問題ではありません。実はこの「ISISクソコラグランプリ」と言うタグ、グローバル化して反ISIS活動の一種となっています。
反ISIS活動として有名なハッシュタグが「JeSuisCharlie」ですが、それはこの「ISISクソコラグランプリ」と明確に違う動機があり、完全に反ISIS(たまにイスラム)を意義としたものです。
一方で初期の「ISISクソコラグランプリ」は、どちらかというと単なる「遊び」目的でやっていたわけで、テロに対抗するとかそういう意志は全くと言って良いほど無かったわけです(多分)。しかし、外国人はどうも誤解している。「JeSuisCharlie」と同一視している傾向が見て分かります。
このまま行くと「ISISクソコラグランプリ」も「JeSuisCharlie」とおなじ道をたどってしまうでしょう。とはいえ、グローバルな存在になってしまった今、止めることは恐らく出来ないでしょう。
こうなった以上、一種のコミュニティを作り、馬鹿にするのはISISだけであり、イスラム自体を馬鹿にしないよう活動を制御した方が良いのではないかと考えています。
Commented by 樹林 at 2015-01-27 20:17 x
暴走族を珍走団と言い変えようというのと同じですね
クソコラは「糞みたいなクオリティの雑なコラージュ」という感じの意味で前から使われてきたので、
別に「自分達が不謹慎で悪ふざけで不快で歪んだ狂った連中であることを自覚しているために「糞」と名乗っている。」
のではないと思います。
Commented by 田中 at 2015-01-28 20:17 x
自衛官の募集ポスターはアニメキャラでやってたのでこれは世界観の違いと見るべき。
Commented by だむ at 2015-01-29 00:30 x
JeSuisCharlieとクソコラグランプリの差として、「自分自身を最低であると自覚してやっている」以外にも「嘲笑の対象はあくまでISIS」だということもあるかも。

https://twitter.com/LionTensyu/status/559530849532514304/photo/1
Commented by sdi at 2015-01-29 23:32 x
「ISISクソコラ」の前振りとして取り上げられることの多い「日本鬼子イラスト」にしても、評価される(もしくは単に「ウケル」)のは欧米の世論なんですよね。「日本鬼子イラスト」のとき、風刺の対象とされた中国の「糞青」達は「日本人は何がしたいんだ?」「自分たちが絵が上手いことを自慢したいのか?」という反応が多かったそうです。
「ISISクソコラ」にしても、このコラ-ジュ作品群に対して、ISILにシンパシーも支持も持たないムスリムの方々が許容してくれるかどうかです。今の所「コケにしているのはあくまでもISIL」ということは理解してくれてるのではないかと思いますが、コラの表現が過激になったりISIL以外を揶揄の対象になるなどエスレートするのは危険ですね。
Commented by 清野幹文化圏 at 2015-01-30 00:45 x
勉強になりました!!
Commented by へちま武士 at 2015-02-08 19:27 x

日本鬼子の擬人化でキモオタがご都合主義な情報のみを見て、「精神勝利」していたように、
ISISクソコラが物事を良い方向に持っていったと評価するのは早すぎると思います。

サラフィー過激派はネットでちゃかして精神勝利出来る相手では有りません。
「聖書預言」に基づいた長期戦略を有する集団です。
15年戦争の時みたいに、気迫とアイデアで敵を圧倒したみたいな精神主義は危険だと思います。

日本鬼子擬人化で精神勝利がネット上を駆け巡った時もそうですが、現実よりも「精神」「観念」がこの国では優先されるんだなあ、と悲しく成りました。
今これから日本国民はもっと現実主義な思考を始める時だと思います。
Commented by へちま武士 at 2015-02-08 19:35 x
先程は長文を申し訳ありません。
つまり私の意見としては、
「ISISを日本のネットユーザが打ち負かしている?」というのは現実的には何も動いていないのに、あたかも敵軍にダメージを与えている錯覚を与えかねない危険な感覚だという事です。
失礼いたしました。

Commented by 通りすがりのバカッター at 2015-02-17 23:52 x
外から得た情報だけで判断されている方も多いようなので、ちょっと補足を。
この糞コラは笑えりゃなんでもいい訳ではなく
1.イスイス団とイスラムは違うことを理解し近藤はやめよう。
2.イスラム教を尊重し、信徒に配慮しそれらをバカにしない。
3.殺害された「日本人以外の」人質の尊厳は守ろう。
4.殺害された「日本人人質」はアホやった結果だから止めないけど一応配慮できればしよう。
って自然発生ルールがある。
ネットの軽薄な遊びであり、別にそれを守る必要なんてないのに前3項目はほぼ守られている。
刺画との一番の違いはそこ。
ちなみに、本来フレンドリーに接して仲間に引き込むためのアカウントを、釣られる度に通報して200以上凍結させているので実効的ダメージも与えている。
まあ自由がどうこうとか勝利どうとかじゃなく、ましてや正義がどうこうでは全然なくて、全てはただのイスイス団への嫌がらせなんですけどねぇ
by masa_the_man | 2015-01-26 22:08 | 日記 | Comments(15)