戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

来日中のミアシャイマー教授とは何者なのか?

今日の横浜北部は朝から快晴ですが、とにかく寒いです。今年一番の冷え込みでしょうか。

さて、すでにご存知のかたもいらっしゃるとは思いますが、私が著作を2冊翻訳したシカゴ大学のジョン・ミアシャイマーという学者が初来日中です。

大国政治の悲劇:改訂版
なぜリーダーはウソをつくのか

私は訳者という「特権」をフル活用しまして(笑)、来日初日となる11日(木)の夜の夕食会からご一緒させていただき、一昨日(12日)は、彼の来日最初となるイベントに参加してきました。

このシンポジウムのテーマは「中国の台頭とそれが東アジア全般に与える影響」という感じの、まさに日本にとっては重大なものだったのですが、ミアシャイマー自身は単なるコメンテーターの一人であり、最初に15分しゃべって、あとは会場からの質問に答えるだけ。

ところが世界的な学者に向かってこういうのは失礼かもしれませんが、ここでの彼の受けこたえが非常に鋭く、なんというか、彼の頭脳の鋭さがすでにいかんなく発揮されておりました。

その受け答えの様子を説明したいのですが、その前に「そもそもミアシャイマーの国際関係の見方ってどういうものなの?」という方もいらっしゃると思いますので、それを簡単に解説しておきましょう。

まずミアシャイマーの理論は、「攻撃的現実主義」(Offensive Realism)という名前がつけられております。

まず後ろの「現実主義」ですが、これは英語ではリアリズム(Realism)と言いまして、国際関係を対立や紛争をベースにして、パワー争いをする国家の動きを中心に冷酷に分析する理論のことです。

ではなぜ「攻撃的」(Offensive)なのかというと、これは国際政治全体を動かすメジャーなプレイヤーである「大国」(great powers)が常に拡大しようとして攻撃的に振る舞うものだと見ているからです。

そして「大国」が拡大しようとする理由は、国際社会(業界用語では国際システムといいます)の構造が、彼らを自然と拡大へと駆り立てるからです。

これをいいかえると、大国というのは国内的な事情や文化的な要因から拡大するのではなく、あくまでも「システム」という外的な要因から拡大せざるを得なくなる、ということなのです。

そしてこのように大国を拡大させようとする国際社会の構造は、互いを競い合わせることになるので悲劇的です。

だからこそ彼の本の題名は「大国政治の悲劇」なんですね。

これをまとめると、「システム的な理由から拡大しようと攻撃的に振る舞う大国を、冷酷にパワーの観点から分析する」というのがミアシャイマーの理論のキモなわけですね。

歴史的に「大国」たちの様子を見てみると、たしかにナポレオン戦争時代以降の近代のすべての「大国」たちは、一部例外を除いて、すべて攻撃的に拡大しようと行動してきました。

ナポレオンのフランス、ヴィルヘルム皇帝時代のドイツ、帝政ロシア、ソ連、帝国時代の日本など、たしかに歴史を見てみると拡大傾向をもつものばかり。

ただしその「一部の例外」があります。アメリカとイギリスです。

彼らは海に囲まれていた「島大国」であったために、陸の大国とは違って、ライバルとなる大国の土地を奪おうとはしませんでした。

それでも「大国」ですから、外への拡大への動機は残っておりまして、そのチャンスを活かしたのがアメリカです。

アメリカはとくに19世紀に、東部から西部へ一気に領土を拡大しておりますし、その後も(直接領土を獲得したわけではありませんが)南米やフィリピンのほうまで力を拡大していきます。

それが20世紀の前半にぶつかって第二次大戦の太平洋戦線につながったことはみなさんもご存知の通り。

つまり、大国は例外なく拡大しようとするのです。

このような国際政治の見方をするミアシャイマーですが、今回の訪日の際におそらく最もしゃべることを期待されているのが、一昨日のシンポジウムでもあったような「中国の台頭」というテーマ。

そしてミアシャイマー自身は、中国も「大国」であるために、国際的な「システム」の影響を受けて拡大せざるを得ないとみます。

そのために、彼は「中国の台頭は平和的?私の答えはノーです」と明快に答えるわけです。

参考までに、以下は去年末に中国で講演したミアシャイマーの様子。

もちろん一昨日のシンポジウムでもこのようなことを論じていたわけですが、会場の中には当然ながらミアシャイマーの理論をそこまで詳しく知らない人もいるわけです。

たとえば会場から出た質問の中に、

「中国は過去の大国とは違う統治機構(共産主義)や文化(儒教)を持っていますが、これらは彼らの地域覇権を目指した拡大には影響を与えるんじゃないですか?」

というものがありますが、当然ながら「国際システム」という要素だけを分析するミアシャイマーにとっては、政治体制や文化などの性格は関係ないということなるのです。

案の定というか、ミアシャイマーの答えは

「私は国際システムだけ見ますので、基本的にどんな大国でも一緒であり、例外なく拡大しようとします」

とバッサリ。

他にも、これまでミアシャイマーのことを全く知らなそうなご老人の方(もしかすると外務省かどこかのOB?)が、

「ASEANの地域フォーラムのようなマルチな信頼醸成による予防外交で軍事紛争は防げますかねぇ?」

という質問が出たのですが、これもリアリストのミアシャイマーにとっては問答無用の「ノー」のはず。

というか、こういう質問を聞く相手をそもそも間違っているような気が(苦笑

ところがミアシャイマーは相手を見て「過激なことを言ってはいかん」と思ったのかどうか、意外に「まあ効かないと思うんですが、わかりませんねぇ」とちょっとお茶をにごした曖昧な答え。

実際は「ノー」と言いたいところなのかも知れませんが、この場だけはなぜかソフトランディング狙いの答え方をしておりました。

この他にも色々と話はあるのですが、ここでは書ききれません。

とりあえず16日(火)夜の生放送で色々と話しますので楽しみにしていてください。

▼ミアシャイマー教授来日記念特番 生放送▼
http://live.nicovideo.jp/gate/lv202259729
2014/12/16(火)22:00~(番組冒頭は無料試聴可能です)

※21:00〜 通常の生放送もやります。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv201953949



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



Commented by 無花果 at 2014-12-17 03:42 x
ローマ法王が中国への配慮からダライラマとの面会を断った、などというニュースをみるにつけ、必要以上に中国に怯んでいる様子が伺えますね。
宗教地図の劣勢を塗り替えるために、中国をカソリックが教化したい、という思惑もあるでしょうが…。
Commented at 2014-12-18 11:11 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 待兼右大臣 at 2014-12-18 23:57 x
同志社大学での講演を聞きに行ってきました。
村田学長の実物を見れたのが一番の収穫かもしれませんが、本番の講演では、「shared primacy」は言葉として成立しないと始めから飛ばしていました。彼の前提は
1 国家は他国に対する恐怖がある
2 国家の究極目標は「生存(survival)」
3 生存のために他国を排除し覇権を求める
4 そのために「攻撃的(offensive)」になる
といったものでした。
他にもあるかもしれませんが、それは他の人が細くしてくれるでしょう。
個人的には
1 我が国の論壇では他国(特に中国)への恐怖がない
2 国家の生存に重きをおいていない
という点で、ミアシャイマーの議論の前提が成立しないといういみで、彼の理論の「特異点」となっているということと

A2ADは
1 対米の弱さゆえ
2 域内の覇権を指向
のどちらかか(あるいは双方の混合)
という質問もしたかったのですが、たの人からの質問が多かったので順番が回ってきませんでした
Commented by (^o^)風顛老人爺 at 2014-12-22 02:58 x
拝啓、奥山様

付記URLより

海国防衛ジャーナルへアクセス出来ます。
サイトに奥山様の本が沢山紹介されています。

m(_ _)m取り急ぎ乱文にて 敬具。
by masa_the_man | 2014-12-14 09:38 | 日記 | Comments(4)