イスラム聖戦士はジャンクフードがお好き |
さて、今週の番組(http://live.nicovideo.jp/gate/lv199750503)のほうでも少し触れたトピックですが、FTにISISの戦闘員たちのガキっぽい趣味や嗜好について紹介した記事がありましたので、その要約を。
今回は原文にはない写真による図説を多めに心がけました。
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「イスラム国」の戦闘員たちは自分たちが軽蔑している西側諸国のお菓子やガジェットが好き
by エリカ・ソロモン
●「イスラム国」の建国のためにシリアに続々と終結している外国の戦闘員たちは過去の復活を目指しているはずなのだが、自分たちが嫌う現代の西側諸国の菓子やガジェットへの好みは維持したままだ。
●シリアの現地の人々はこのような戦闘員たちが、首切りや集団虐殺などを使って支配しようとする恐怖の中で生きなければならないのだが、それでもすでに3年続いている内戦による経済危機を生き抜く方法を探っている。
●そして彼らの多くは、彼らが嫌う戦闘員たちの嗜好にあうものを供給するのが最も良い戦略だと考えている。
●シリアとイラクにまたがっている「イスラム国」は、イスラム教の預言者であるモハンマドのカリフ国を再建することを主張しているが、ここに属する多くの外国からの戦闘員たちの好みは、ポテトチップス、チョコレート、エナジードリンク、そしてノンアルコール・ビールなどである。

●ISISの宗教的な戒律や外国からの戦闘員たちの好みは、支配されている現地の経済を変革しつつある。アルコールを売っている店は閉鎖され、ジャンクフードや服飾――とくに戦闘服のようなスタイルのものを売る店――関係の店、そして携帯電話の店などは、それなりに利益を上げているのだ。

●「ISISが支配している地域の経済は、外国からの戦闘員たちによって活発化してますが、それ以外の分野はサッパリですよ」とはシリアの都市ラッカの中心地で服飾店を営む主人の話。
●シリア東部の田舎の人々の多くは、ISISの外国の戦闘員たちがやってくるまでレッド・ブルのようなエナジードリンクの類を見たことも聞いたこともなかったのであり、シリア東部の町デリゾールの店の主人たちも、まさか自分たちがヨーロッパや湾岸諸国から来た戦闘員たちの好みであるスニッカーズやバウンティーのようなチョコレートバーを売ることになるとは思ってもみなかったという。



●ある店の主人は、「このようなお菓子というのは、ここではまったく知られていなかったか、知っていたとしても高価で買えないようなものだったんですよ・・・でも戦闘員たちがこれらを要求するわけですから、私も彼らに文句はいえませんよね。問屋に行って注文するしかなかったんですよ」と答えている。
●「ISISの奴らはプリングルスとスニッカーズなどを箱買いして、前線で分けて食べているんですよね」

●ラッカのある店の主人によれば、レッド・ブルは250シリアリラ(1.5ドル:170円)、デリゾールではプリングルス一本5.5ドル(600円)するという。もちろんこのような値段は、平均で1日3ドルしか稼げない一般的なシリア人にとっては「高価」なものである。
●現地のビジネスマンたちはポテトチップスやノンアルコール・ビールを支配されている地域で買うのだが、軍のチェックポイントを通過するたびに支払う賄賂をカバーするために価格の10%を加えているという。
●エナジードリンクとチョコレートは、トルコとの国境を越えて運ばれてくるという。
●現地の人々によれば、ISISの外国からの戦闘員の平均月収は215ドル(25000円)であり、そこの一般市民の平均月収の2倍であるという。その上に現地で獲得する戦利品や3ドルの報酬や頻繁に支給されるボーナスなどがあるというのだ。
●「彼らは値札なんかチェックしてませんよね。金については気にかけていないみたいです」
●シリア東部ではいままで現地の店には古いノキアの携帯電話しかなかったのが、最近では最新型のスマホを並べている。デリゾールはシリア軍に包囲されていて1日20回も爆撃されているが、それでも熱心な売人たちが唯一の渡河地点を使ってサムソンのギャラクシーやアップルのiPhoneを求めて売買している状況に変わりはない。



●「デリゾールにはiPhone6もありますよ。ISISの戦闘員の中でもとくに湾岸諸国から来た奴らはスマホに夢中でして、最新型が出るとすぐさま購入するんです。現地の店になかったら30ドルとか40ドル余計に支払ってオーダーするように要請するくらいです」
●もちろん繁盛しはじめた商売の陰で、壊滅してしまった商売がある、それがシリアの町では中心的な存在であったカフェであり、現在は消滅してしまっている。
●「レストランでやることと言えば水タバコを吸うことくらいですが、これも禁じられてますよね。ISISの奴らは常にラッカのカフェを襲撃してますが、それがカフェが反逆分子や恋人たちの集まる場所だからです。この二つはISISにとっては絶対的に許せない存在ですからね」

●イスラム教の厳格な戒律では男と女を分けることが言われており、このおかげでレストランは現地の人々にとって人気のない場所になってしまったのだ。
●この店の主人によれば「ラッカのレストランは、一か所を除いてすべて宅配専門になってしまいましたよ。現地の住人たちは戦闘員たちとは一緒に食事したくないですから家に帰って食べるようになったからです。一か所開いているレストランはISISの戦闘員だらけですよ」という。
●店やカフェのオーナーたちはISISが支配する地域でなんとか生きていく道を見つけてほっとしているが、シリア人のほとんどにとっては戦闘員たちの単純なお菓子の好みでさえ自分たちが「下層の市民である」ということを思い起こさせる苦々しいものであるという。
●ある店の主人は、「奴らは宗教の名の下に統治して良い生活してますが、彼らは以外の人々は苦しんでいるわけですよね。お客さんの中には、奴らがジャンクフード食って体壊して死んでくれたらありがてぇのになぁという人もいますよ。でもわれわれには何もできないので悔しいところですが」とコメントしている。
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こういうことを言っては不謹慎かもしれませんが、なんとなくISISの戦闘員たちに「親近感が湧いた」というか、呆れたというか(笑
ISISの戦闘員というのは現地の人にとっては大災害以外の何ものでもないんでしょうが、彼らとて所詮「現代人」ですから、いくらイスラム教国の復活といういわゆる「復古主義」を掲げているとはいえ、現代の文明の利器のもたらす魅力的な嗜好にはさからえないわけで。
それにしてもこの地域の国境のゆるさというのは、まさに地続きだらけの中東における統治の難しさを表しておりますね。
また、このFTの記事も皮肉で毒が効いてまして、ISISを小バカにしている書き方です。


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