2014年 11月 06日
クルーグマンが「日本に謝罪せよ」 |
今日の横浜北部は朝から曇りがちでして、時おり小雨が降ったりやんだり。意外と気温は高めです。
さて、少し出遅れましたが、毎度のクルーグマンの「日本に謝罪せよ」という主旨の主張の要約です。
この記事はすでに日本でも話題になっていて、いくつかのサイトでは部分的な要約がありますが、これは私の訳のバージョンということで。
クルーグマン自身はすでに何年も前から同じような主張をしておりますが、最新版ではこの主張がかなり明確ですね。現在は来日中で、安部首相にも面会したとか。
===
日本への謝罪
by ポール・クルーグマン
●ほぼ20年にわたって、日本は「注意を喚起する物語」でありつづけてきた。つまり先進国経済のやり方として「やってはいけない例」としての客観的な教訓をわれわれに見せ続けてきた。
●結果的にいえば、日本は台頭に失敗した超大国であった。いつの日か世界経済をハイテクで支配するように見えたが、その後に終わりのないふけいきとデフレに苦しんでいるように見えたのである。そして西側の経済学者たちは日本の政策を手厳しく批判していた。
●実は私もそのような批判をした人間の一人である。後に連銀総裁になったベン・バーナンキもそうだった。そして近年になって、私は日本に謝罪しなければならないと気付かされることが多くなった。
●ただし私は「われわれの経済分析が間違っていた」と言いたいわけではない。98年に私が発表した、日本が「流動性のワナ」にはまっているという内容の論文と、バーナンキ氏が日本に対して「ルーズヴェルト式の覚悟を示して問題解決に当たれ」とする2000年に発表した論文には、それなりの意味があったように思う。
●なぜなら、われわれのアドバイスはある意味で、西洋諸国のほとんどが陥っている、日本が経験した長期的なスランプにこそ当てはまるように見えるからだ。
●ただしここで重要なのは「西洋諸国が日本と同じようなスランプに陥った」という点であり、しかも深刻さは増した状態にあり、これが全く予期されていなかったという点だ。
●われわれは一九九〇年代に、「もし欧米が日本のような問題に直面していたとしたら、われわれのほうがもっとうまく対処できたはずだ」と考えていた。ところがわれわれは日本という参考になる例を知っていたにもかかわらず、そのような対処を怠ったのである。
●2008年の(リーマン・ショック)以降の西側の政策は、「逆効果」とまで言えないかもしれないが、それでも日本の失敗が些細なものに見えるほど不適切なものだった。そしてそのために、西洋諸国の労働者たちは日本が避けることのできた苦しみを味わうことになったのである。
●私の言う「西側の政策の失敗」には、以下のようなものがある。
●第一は、財政政策だ。みなさんがご存知のように、1990年代初期に日本は公共投資の拡大を通じた景気刺激策をとっている。ところがあまり知られていないのは、96年以降に日本が消費税の税率を上昇させたにもかかわらず、公共投資を急速に縮小させ、景気回復の芽を摘んでしまったことだ。
●これは大失敗だったが、欧州における破壊的な緊縮政策や、2010年以降の米国でのインフラ投資の激減に比べればまだマシだ。日本の財政政策は、経済成長を促すには不十分なものであったが、西洋諸国の財政政策は積極的に成長を破壊してしまったのだ。
●第二の政策の失敗は、金融政策である。日銀は、デフレへの転落への対応が遅れたことや、回復の兆候が最初に見えてきた時に積極的に利上げをしてしまったことで、大きく批判されている。
●もちろんこれらの批判は当然と言えるものだが、日銀は2011年に欧州中央銀行が利上げを行って欧州を不況に陥れた時ほど、ひどいことをしたわけではない。
●さらにひどいのは、スウェーデンの中央銀行のとった政策だ。彼らはインフレ目標よりインフレが低く、まだ失業率が高い中で、利上げを敢行したのである。このおかげで、現時点でスウェーデンは明らかにデフレに陥っているように見える。
●このスウェーデンの中銀のケースにおいて驚くのは、副総裁の中の1人の意見を無視したという点だ。
●世界的な金融エコノミストであるラーズ・スヴェンソン(Lars Svensson)副総裁は、日本のケースを研究してきた人間であり、「早すぎる利上げは悪い結果を招く」と中銀内で警告を発してきた人物だからだ。そして彼の警告は聞き入られず、実際にその通りのことが起こってしまったのだ。
●よって、ここでわれわれが問うべき問題は2つある。
●第一が「みんなはなぜここまで間違ったのか」、そして第二が、「日本の失敗を教訓として考えることができる優秀なエコノミストを擁していた欧米は、なぜ日本よりもひどい状況に陥ってしまったのか」ということだ。
●最初の問いに対する答えは、「切迫した状況に効果的に対処するには、従来行ってきた慣習的な政策を打ち破る必要がある」というになるのかもしれない。
●均衡財政への舵取りやインフレへの断固たる対処のように、慎重かつ高潔な政策というのは、往々にしてより深刻な不況を導くことになるのだ。
●ところが有力者たちに方針を修正させるのは、至難の業だ。これはワシントンのエスタブリッシュメントの人々の財政赤字恐怖症を見ればよくわかる。
●西洋諸国が日本よりも間違った政策を行ってしまった理由についてだが、私はわれわれの社会の中に深い溝が横たわっているからだと考えている。
●たとえばアメリカでは、保守派が中央政府そのものに対する嫌悪感をもっているために、彼らは政府が失業率を克服するための失業者を助けるような、いかなる動きも阻止するのだ。
●欧州では、ドイツが有形資産を重視する政策や緊縮政策を主張しているが、これは主にドイツ国民がヨーロッパの南部の国々を救済するいかなる措置に対しても、敵対的な姿勢を持っているからだ。
●私は近日中に、欧米が学ぶべき日本の現状について書くつもりだ。とりあえずわれわれが覚えておかなければならないのは、「日本はかつてわれわれに警告を与える失敗例であったが、今はわれわれのほうがひどい状態に陥り、日本は目指すべき模範例になったように見える」ということだ。
===
金融・財政政策の面で、最近の欧米の間違いを指摘するために日本を引き合いに出して「謝罪せよ」と言っておりますが、日本も「うまくやっている」かと言われれば、実際はそこまで自信を持ってもよいのかどうか。


http://ch.nicovideo.jp/strategy

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal
さて、少し出遅れましたが、毎度のクルーグマンの「日本に謝罪せよ」という主旨の主張の要約です。
この記事はすでに日本でも話題になっていて、いくつかのサイトでは部分的な要約がありますが、これは私の訳のバージョンということで。
クルーグマン自身はすでに何年も前から同じような主張をしておりますが、最新版ではこの主張がかなり明確ですね。現在は来日中で、安部首相にも面会したとか。
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日本への謝罪
by ポール・クルーグマン
●ほぼ20年にわたって、日本は「注意を喚起する物語」でありつづけてきた。つまり先進国経済のやり方として「やってはいけない例」としての客観的な教訓をわれわれに見せ続けてきた。
●結果的にいえば、日本は台頭に失敗した超大国であった。いつの日か世界経済をハイテクで支配するように見えたが、その後に終わりのないふけいきとデフレに苦しんでいるように見えたのである。そして西側の経済学者たちは日本の政策を手厳しく批判していた。
●実は私もそのような批判をした人間の一人である。後に連銀総裁になったベン・バーナンキもそうだった。そして近年になって、私は日本に謝罪しなければならないと気付かされることが多くなった。
●ただし私は「われわれの経済分析が間違っていた」と言いたいわけではない。98年に私が発表した、日本が「流動性のワナ」にはまっているという内容の論文と、バーナンキ氏が日本に対して「ルーズヴェルト式の覚悟を示して問題解決に当たれ」とする2000年に発表した論文には、それなりの意味があったように思う。
●なぜなら、われわれのアドバイスはある意味で、西洋諸国のほとんどが陥っている、日本が経験した長期的なスランプにこそ当てはまるように見えるからだ。
●ただしここで重要なのは「西洋諸国が日本と同じようなスランプに陥った」という点であり、しかも深刻さは増した状態にあり、これが全く予期されていなかったという点だ。
●われわれは一九九〇年代に、「もし欧米が日本のような問題に直面していたとしたら、われわれのほうがもっとうまく対処できたはずだ」と考えていた。ところがわれわれは日本という参考になる例を知っていたにもかかわらず、そのような対処を怠ったのである。
●2008年の(リーマン・ショック)以降の西側の政策は、「逆効果」とまで言えないかもしれないが、それでも日本の失敗が些細なものに見えるほど不適切なものだった。そしてそのために、西洋諸国の労働者たちは日本が避けることのできた苦しみを味わうことになったのである。
●私の言う「西側の政策の失敗」には、以下のようなものがある。
●第一は、財政政策だ。みなさんがご存知のように、1990年代初期に日本は公共投資の拡大を通じた景気刺激策をとっている。ところがあまり知られていないのは、96年以降に日本が消費税の税率を上昇させたにもかかわらず、公共投資を急速に縮小させ、景気回復の芽を摘んでしまったことだ。
●これは大失敗だったが、欧州における破壊的な緊縮政策や、2010年以降の米国でのインフラ投資の激減に比べればまだマシだ。日本の財政政策は、経済成長を促すには不十分なものであったが、西洋諸国の財政政策は積極的に成長を破壊してしまったのだ。
●第二の政策の失敗は、金融政策である。日銀は、デフレへの転落への対応が遅れたことや、回復の兆候が最初に見えてきた時に積極的に利上げをしてしまったことで、大きく批判されている。
●もちろんこれらの批判は当然と言えるものだが、日銀は2011年に欧州中央銀行が利上げを行って欧州を不況に陥れた時ほど、ひどいことをしたわけではない。
●さらにひどいのは、スウェーデンの中央銀行のとった政策だ。彼らはインフレ目標よりインフレが低く、まだ失業率が高い中で、利上げを敢行したのである。このおかげで、現時点でスウェーデンは明らかにデフレに陥っているように見える。
●このスウェーデンの中銀のケースにおいて驚くのは、副総裁の中の1人の意見を無視したという点だ。
●世界的な金融エコノミストであるラーズ・スヴェンソン(Lars Svensson)副総裁は、日本のケースを研究してきた人間であり、「早すぎる利上げは悪い結果を招く」と中銀内で警告を発してきた人物だからだ。そして彼の警告は聞き入られず、実際にその通りのことが起こってしまったのだ。
●よって、ここでわれわれが問うべき問題は2つある。
●第一が「みんなはなぜここまで間違ったのか」、そして第二が、「日本の失敗を教訓として考えることができる優秀なエコノミストを擁していた欧米は、なぜ日本よりもひどい状況に陥ってしまったのか」ということだ。
●最初の問いに対する答えは、「切迫した状況に効果的に対処するには、従来行ってきた慣習的な政策を打ち破る必要がある」というになるのかもしれない。
●均衡財政への舵取りやインフレへの断固たる対処のように、慎重かつ高潔な政策というのは、往々にしてより深刻な不況を導くことになるのだ。
●ところが有力者たちに方針を修正させるのは、至難の業だ。これはワシントンのエスタブリッシュメントの人々の財政赤字恐怖症を見ればよくわかる。
●西洋諸国が日本よりも間違った政策を行ってしまった理由についてだが、私はわれわれの社会の中に深い溝が横たわっているからだと考えている。
●たとえばアメリカでは、保守派が中央政府そのものに対する嫌悪感をもっているために、彼らは政府が失業率を克服するための失業者を助けるような、いかなる動きも阻止するのだ。
●欧州では、ドイツが有形資産を重視する政策や緊縮政策を主張しているが、これは主にドイツ国民がヨーロッパの南部の国々を救済するいかなる措置に対しても、敵対的な姿勢を持っているからだ。
●私は近日中に、欧米が学ぶべき日本の現状について書くつもりだ。とりあえずわれわれが覚えておかなければならないのは、「日本はかつてわれわれに警告を与える失敗例であったが、今はわれわれのほうがひどい状態に陥り、日本は目指すべき模範例になったように見える」ということだ。
===
金融・財政政策の面で、最近の欧米の間違いを指摘するために日本を引き合いに出して「謝罪せよ」と言っておりますが、日本も「うまくやっている」かと言われれば、実際はそこまで自信を持ってもよいのかどうか。


http://ch.nicovideo.jp/strategy

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by masa_the_man
| 2014-11-06 19:08
| 日記

