戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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呪いの政治学

今日の横浜北部は梅雨明けということで暑かったわりにはあまり日が照りませんでした。

久々の更新ですが、次の本の追い込みと番組の準備などに追われておりまして、なかなかブログのほうに時間をかけることができておりません。今週はなるべく毎日更新したいと考えているのですがどうなるやら。

さて、昨晩の番組のほうでも触れた、黒魔術(?)についての話題です。

ちなみに番組を見逃した方は、タイムシフト予約でもご覧になれますのでぜひ。

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彼らは相手の最悪の事態を祈っている。これは悪いことなのだろうか?
by エリザベス・マクアリスター

●ポルトガルのサッカーのスター選手であるクリスチアーノ・ロナウドは膝の腱炎に悩まされているが、これによってギリシャとの試合に出ることができなかった。そしてガーナの土着の聖職者であるナナ・クワク・ボンサムは、彼のケガの原因は自分のおかげだと宣言している。

●ボンサムはガーナのラジオで、ワールドカップでガーナとポルトガルが対戦する際に、ポルトガルのトップ選手であるロナウドが試合に出られないよう四ヶ月にわたって祈っていたと言ったという。さらに「彼らはケガの原因を特定できないでしょう。なぜならそれはスピリチャルなものだからです」と彼は述べていた。

宗教では、誰か特定の人間をやっつけるために祈るというのは、反則ではないだろうか?

●実は反則とはいえない。ネガティブな祈りというのは、実はけっこう頻繁に行われている。そして誰かを貶めるために祈るというのは――これは「呪いを込めた祈り」と呼ばれる――発展途上国の部族的な宗教だけに限定されているものではない。

●たとえばアメリカの福音書派の人々は、他人に災難が振りかかるようにするために、かなり目立ったお祈りキャンペーンに参加したりしている。

●たとえばここ五年間の中でも、アメリカ人に対して「オバマのために祈れ:詩篇109・8」というキャンペーンが展開された例がある。このスローガンが書かれた車のバンパー用シールやTシャツを見たひとは、詩篇109・8がネガティブな祈りであることに気づかないかもしれない。

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●ところがそこに書かれているのは「その日を少なくし、その財産(リーダーシップ)をほかの人にとらせ」というものなのだ。そしてその次に続く言葉(109・9)は、「その子らをみなしごにし、その妻をやもめにしてください」という怖いものだ。

●このキャンペーンを誰が最初に始めたのかは誰も知らないが、このスキャンダルは2012年にカンザス州の下院議長であるマイク・オニールのメディアに漏れたEメールから始まったものだ。

●オニール氏は、(旧約聖書の)詩篇のこの引用部分を同州の仲間の下院議員たちに送り、「とうとう私は、われわれのリーダーについての聖書の言葉を引用することができます。この箇所を見てください。まさに言葉の通りです。全員で頭を垂れて祈りましょう」と書いている。

●オバマ大統領の護衛をするシークレットサービスたちはこの「お祈りキャンペーン」に伴う脅しに気付いたが、米国民が実際に暴力を推進したという直接的な証拠が存在しないため、ACLU(リベラル派団体)やADL(反差別団体)のような団体たちも、このキャンペーン「オバマのために祈れ:詩篇109・8」は政治的なスピーチであるために法律的には問題ないとしている

●ところがこのような結論は、非宗教的なロジックによるものだ。たとえばACLUやADLは、祈りが本当に害を及ぼすものではないと想定している。

ところが多くの福音書派の人々の間では、ネガティブな形の祈りは「有効な兵器」であると考えられている。だからこそ彼らは「スピリチャルな戦い」という言葉を使い、経験のある「祈りの闘士」たちにそれを任せるほうが良いと考えるのだ。

●信者たちは、常に「悪」である「敵」の力を「呪い倒す」ための、仲介者として行動しているのだ。

●そして「戦うための祈り」の物理的な対象には、メタンフェタミンの工場や、堕胎を行う医院、ストリップ・クラブ、その他の「スピリチャル的な悪」の場所である。そしてそのような場所が閉鎖されたり警察にガサ入れされたりすると、その「闘士」たちは自分たちの手柄を誇ることになるのだ。

●また、ネガティブな祈りは、ハイチの多くの人々の世界観の中では「効果のある」ものであり、私がリサーチを行ったハイチでは、「侵略的な祈り」と呼ばれるものが、福音書派の人々やブードゥー教の人々の間で「効く」と思われているのだ。

ハイチの多くの人々は、病気や失業、盗みの被害、事故、そして死などの出来事を、スピリチャルな面での攻撃による結果だととらえている

●ところが、このようなネガティブな戦術の手柄を誇って公言するような土着の聖職者たちを探すのは難しい。大多数の聖職者たちは、「スピリチャル面での知らない攻撃相手からの想像された攻撃に対抗するために防御的な活動をしている」と答えるものだからだ。

●そういう意味で、ロナウドを標的にして成功したとするナナ・クワク・ボンサムのような例は珍しい。西側のメディアは彼のことを、伝統的な聖職者だがメディアやテクノロジーにも大きな理解を示していて、自分の宗教を現代のグローバル化した時代の現代の若い世代にも訴えかけることができると考えている人物だと紹介している。

●もちろんこのガーナの聖職者の主張を、単なるメディアの注目を集めるためのものであり、祈りが効いたのも、実は単なる偶然だとして片付けるのは簡単だ。

●ところが多くのアメリカ人は、ポジティブな祈りや、ポジティブな考えのパワーを信じているのではないだろうか?そして勝負が行われるということは、そこにはそれぞれポジティブとネガティブの願いがかなったということにならないだろうか?

●どうやらスポーツの世界と宗教界はこの原則を理解しているように思える。

●たとえばスペインの新聞が最近報じたところによると、アルゼンチン出身のローマ法王は、ワールドカップでアルゼンチン側に祈ることはないと誓ったという。

===

いいですねぇ、こういう国際政治の「野蛮な面」を正直に書いている記事というのは(笑

アメリカのような合理性だけで政府のシステムを作っているような国家が政治運動ではいまだに「呪いキャンペーン」のようなことをやっているわけで、つくづく「合理性」だけでは人間が説明できないことを感じざるをえません。

それにしても自分の失脚をここまで必死に祈られているオバマさんも大変です。



奥山真司のアメリカ通信LIVE


http://ch.nicovideo.jp/strategy
奥山真司のアメリカ通信LIVE

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal



Commented at 2014-07-25 19:15 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 大阪人K at 2014-07-27 19:20 x
お久しぶりです。

英語圏
「人を呪わば穴二つ」
という諺があるのかと調べてみたら、こんなのが
http://kotowaza-allguide.com/hi/hitowonorowabaana.html

Curses, like chickens, come home to roost.
呪いはひよこがねぐらに帰るように我が身に返る。

Curses return upon the heads of those that curse.
呪いは呪う人の頭上に帰ってくる。

まあ、私の周囲で人を呪うようなお方が何人かいられましたが、どの方もご自身が災難に見舞われています。(見事なまでに・・・)

よって、この呪いを行っている方々にそのような不幸が訪れるのではないのかと、老婆心ながら心配をする今日この頃です。(笑)
Commented by ゆうすけ at 2014-07-28 21:29 x
先生の五月書店から出てる、「地政学 米国の世界戦略地図」を購入したいのですが、アマゾンで中古品で13500の破格の値段で売られています。これはアメリカの陰謀でしょうか(笑)?もっと安く買うことはできないですか?
Commented by よもぎねこ at 2014-08-01 23:34 x
>宗教では、誰か特定の人間をやっつけるために祈るというのは、反則ではないだろうか?

 全然反則ではないですよ。
 キリスト教も仏教も戦争の時など、自分の勝利を祈願して、敵の不運を祈りました。

 元寇の頃など日本全国の神社仏閣がモンゴル軍の退散を祈りました。 当時の神社仏閣に言わせれば「だから神風が吹いた」のです。

 まして宗教上の悪をなす者の滅亡を願うのは、どの宗教でも熱烈にやっていました。
 だってこれはその宗教を信仰する人達からすれば、正義の祈りですから。

 現在のイスラム過激派を見ていればわかるように、宗教を信じる者にとってはその宗教こそが正義なのですから、その正義に逆らう人間は悪魔なのです。

 悪魔を滅ぼす為の祈りは黒魔術とは認識されません。 黒魔術と言うのは神ではなく悪魔に祈って、悪魔の力を借りて願望をかなえようと言う魔術です。

 敵を呪う祈りでも、神に祈る場合は黒魔術とは言いません。
 人を呪う事を神に祈るからこそ、宗教は怖いのです。

 ちなみにワタシは民主党政権が成立した時、近所の神社に行って「民主党政権が一日も早く崩壊しますように。」と絵馬に書いて奉納してしまいました。
by masa_the_man | 2014-07-24 06:00 | 日記 | Comments(4)