2014年 07月 03日
クレフェルト講演会満員御礼:その後の余談 |
今日の横浜北部は最近としては気温が低めで曇っております。
昨日はラジオ出演と講演会の司会という二つの大きな仕事をこなしてきました。ラジオのほうは相変わらずしゃべりが慣れませんが、前回ほどは緊張せずに話せたというか。
さて、クレフェルトの講演会というか、その後に彼との雑談で聞いたよもやま話についてここにメモ代わりに書いておきます。
クレフェルトとは前回の来日の時に自己紹介をしたくらいだったのですが、今回は彼の滞在先までアテンドを務めたこともあって、かなり突っ込んだ話ができました。
まず会場前の打ち合わせの時に、彼の得意な軍隊と女性に関する話になりまして、日本の自衛隊に女性が積極的に登用されている現状を憂いて、「君たちは国家的自殺(national suicide)に突き進んでいるね」と断言。
また、「女性の役割というのは戦士の家庭と子供を支えるところにある、従軍するところにはない。これはイスラム系のテロリストたちも同じことを言っている。私も彼らの言っていることは本当に合意する!」とも。
こういうハッキリした意見を言っているために、彼は色々なところで問題起こしているわけですが・・・・(苦笑
司会者という立場で少し裏方的な手伝いをしていたので、私自身はあまり講演を聞けなかったのですが、どうもこの内容はこの本をベースにしたもののように思いました。
聞いた限りでは、いつもの過激さが影を潜めていた感じでしたが・・・
ところが私が彼の滞在先である新宿のホテルまで一緒にアテンドして食事をすることになったので、これはチャンスと思い色々と質問をしてみると、出てくる出てくる、過激な意見が。
まずタクシーの中で、なぜか話がパレスチナ問題になりまして、「アラブの奴らはアホだ。彼らにはまったく戦略的な規律がない」という話を始めました。
そしておもむろに、「俺がパレスチナのトップだったらこうやる」と言って、以下の三つを実行することを明言。
1,イスラエル国内で行っているテロをすべてやめる。
2,1967年の第三次中東戦争で獲得したヨルダン川西岸およびガザ地区の入植地に住む人々(settlers)へのテロを停止する。
3,その代わりにその入植地を守っている兵士に対してのみテロ行為を行う
ということでした。
そうすると、殺された兵士の親たちの、入植地に住む人々に対する感情が悪化して、イスラエルの世論を分断できるからだということです。
「でも奴らは頭悪いからこんな統制のとれたことができなくて、小さなテロとかやっちまうんだ。だからアホなんだよ」とのこと。
まあ一般的に今のイスラエルも腰抜けになったというのが彼の意見みたいですが。
それ以外に聞いた話は以下のようにポイントフォームで。
●毎年の休暇は奥さんや息子さん(現在35歳独身)とドイツのポツダムで過ごすそうで、別荘を借りて自由に湖で泳ぐとか。今年は奥さんがケガしたみたいでまだ行けていないとのこと。
●体の障害(口唇裂)があってイスラエル軍に入隊できなかった。これは当時(60年代)のイスラエルではけっこう屈辱的な体験だったとのこと。その恨みがあって、「軍人よりも俺のほうが軍のこと知ってるぜ!」と証明したくて軍事史家になったようなもんだ、と述べていた。
●自分の子どもたちも同じような障害があったが、彼らは従軍している。今はイスラエル軍の基準も緩和されているからとのこと。
●手元にはすでに完成した原稿が三冊分あるそうで、ひとつは『戦争論』に関するもの。タイトルはMore On War。直訳すると「もっと戦争論」、もしくは「戦争論余論」。これはイエール大学出版から出したいらしが未定。
●あとの二冊は「良心」の歴史についてと、「平等」の歴史についての本。「良心」のほうは年末までに出るらしいが、とにかくもう軍事史については書くのはこれで終わりにしたいと考えているとのこと。
●戦争にはやはり普遍的なロジックがある。それをうまく論じているのは孫子とクラウゼヴィッツだけで、この二人以外には思想的な巨人はいないという。私も「ジョミニは?ボーフルは?」と次々に聞いてみたが、「全然」と釣れない返事(笑
●クラウゼヴィッツと孫子を比べると、孫子のほうが「対等な敵」を想定している点でよりゲーム的であり、戦略面での創造性には欠けると指摘していたのは印象的だった。
●クレフェルトは『ルトワックの戦略論』の原書の初版(1987年)が出る前に、出版社に請われて、アメリカのルトワックの自宅まで行き、細かく本の内容をアドバイスしたらしい。
●ここでインスピレーションを受けたのが「戦略はゲームである」というアイディアで、そのアイディアを具現化したのが数年前のウォーゲーミングについての本。構想30年とか。
●自分が今まで書いた本の中で自分を有名にした本は『戦争の変遷』だが、個人的に一番その完成度を気に入っているのは「戦争文化論」。
●今68歳。体調を崩し気味で、昨年には軽度の心臓の手術をしたし、最近はウィルス性の病気で10日間も入院した。
●第一次世界大戦前のドイツの状況は、現在の中国とそっくりだということ。とくに海の地理が似ていて、いくら巨大な艦隊を造っていても、外洋に出るのに苦労しているところはそのまま適用できるという。
●教えることは好きだが、もう大学の教員にはなりたくないという。授業でやや過激な(しかし学問的に真実なこと)を言うと、最近は学生が教師を告発したりしてすぐ問題にされてしまう。2008年にエルサレム大学を退職できて本当に清々したとのこと。
●現在は次に書く本を考えていない。もう書き尽くしたから当分は書きたくない。自分のウェブサイトにはたまにコラムを書くくらいになっている。
●数年前に日本のある企業に呼ばれて講演会でしゃべったが、あの時は相手が何を求めているかをわからなかったので自分のコメントが浮いていることがよくわかった。安全保障というテーマだったのに、自分が語ったのは「生きるか死ぬか」。
●クラウゼヴィッツは素晴らしいと思う。とくに戦争の本質についての議論はすごい。ただしロジスティックについて論述している箇所はまったくわかっていないと思う。「戦争論」自体もバラバラで酷い本だ。
●クリストファー・バスフォードらが私の『戦争の変遷』の中の「非三位一体戦争」の概念について批判しているが、彼らの指摘は正しいと思う。政府、軍隊、国民の三位一体は二次的なもので、やはり悟性、偶然、情動という三位一体のほうが一次的なものだ
●それでも私が言いたかったのは「クラウゼヴィッツはその時代の戦争観に縛られすぎている」ということ。シーパワーなどについてほとんど言及なし。小規模戦争について述べているのもたった一章だけだ。
●使える言語は4つ。オランダ語、ドイツ語、ヘブライ語、英語。
●日本では「補給戦」がポピュラーだと告げると、あんな昔に書いた本についてはそんなに興味がないと言っていた。日本では原著の第2版が翻訳されていないと言うと、「ああそうなのかい」という程度で、あまり関心のない様子。あまりにも多くの言語に翻訳されているので、どれがどれなのかすべて把握できていないからだとか。
●アメリカの対外政策について批判的に書いた本があるのだが、ロシア語でしか出ていない。向こうでは非常にポピュラーだが英語では出ていないから、君だけでなく、僕も読めないんだよと言っていた。
●『補給戦』や『エアパワーの時代』でもわかる通り、自分は既存の軍事史の見方に挑戦するのが好きだと言っていた。というか、むしろそれが自分の「宿命」なんだと笑っていた。
●核戦略についてはフリードマンの本ですべてが書かれてしまっているので、他の人たちは何も書けなくなっちゃったね、と言っていた。
●尊敬する戦史家としてはマイケル・ハワードを挙げていた。とくに彼のデビュー作である普仏戦争に関する本は「すごい本だよ」と絶賛。
●また日本に来るかと尋ねたら、「呼んでくれたらいつでも来るぜ」とのこと。ただし、しゃべるテーマは指図されたくないのでこちらに決めさせてくれと言っていた。その前の講演では2つのテーマを混ぜてくれと言われたので困った。2つは全く違うテーマだからだ。
●若手で優秀な研究者はピーター・シンガーだ。彼の優れた点は「多くの人に話を聞ける」という点だ。決して「単なるジャーナリスト的な人物」じゃない。いい仕事をしている。本や論文よりも、直接聞ける話のほうが重要だ。
===
などなどです。他にも思い出したらあとで加えておきます。


http://ch.nicovideo.jp/strategy

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal
昨日はラジオ出演と講演会の司会という二つの大きな仕事をこなしてきました。ラジオのほうは相変わらずしゃべりが慣れませんが、前回ほどは緊張せずに話せたというか。
さて、クレフェルトの講演会というか、その後に彼との雑談で聞いたよもやま話についてここにメモ代わりに書いておきます。
クレフェルトとは前回の来日の時に自己紹介をしたくらいだったのですが、今回は彼の滞在先までアテンドを務めたこともあって、かなり突っ込んだ話ができました。
まず会場前の打ち合わせの時に、彼の得意な軍隊と女性に関する話になりまして、日本の自衛隊に女性が積極的に登用されている現状を憂いて、「君たちは国家的自殺(national suicide)に突き進んでいるね」と断言。
また、「女性の役割というのは戦士の家庭と子供を支えるところにある、従軍するところにはない。これはイスラム系のテロリストたちも同じことを言っている。私も彼らの言っていることは本当に合意する!」とも。
こういうハッキリした意見を言っているために、彼は色々なところで問題起こしているわけですが・・・・(苦笑
司会者という立場で少し裏方的な手伝いをしていたので、私自身はあまり講演を聞けなかったのですが、どうもこの内容はこの本をベースにしたもののように思いました。
聞いた限りでは、いつもの過激さが影を潜めていた感じでしたが・・・
ところが私が彼の滞在先である新宿のホテルまで一緒にアテンドして食事をすることになったので、これはチャンスと思い色々と質問をしてみると、出てくる出てくる、過激な意見が。
まずタクシーの中で、なぜか話がパレスチナ問題になりまして、「アラブの奴らはアホだ。彼らにはまったく戦略的な規律がない」という話を始めました。
そしておもむろに、「俺がパレスチナのトップだったらこうやる」と言って、以下の三つを実行することを明言。
1,イスラエル国内で行っているテロをすべてやめる。
2,1967年の第三次中東戦争で獲得したヨルダン川西岸およびガザ地区の入植地に住む人々(settlers)へのテロを停止する。
3,その代わりにその入植地を守っている兵士に対してのみテロ行為を行う
ということでした。
そうすると、殺された兵士の親たちの、入植地に住む人々に対する感情が悪化して、イスラエルの世論を分断できるからだということです。
「でも奴らは頭悪いからこんな統制のとれたことができなくて、小さなテロとかやっちまうんだ。だからアホなんだよ」とのこと。
まあ一般的に今のイスラエルも腰抜けになったというのが彼の意見みたいですが。
それ以外に聞いた話は以下のようにポイントフォームで。
●毎年の休暇は奥さんや息子さん(現在35歳独身)とドイツのポツダムで過ごすそうで、別荘を借りて自由に湖で泳ぐとか。今年は奥さんがケガしたみたいでまだ行けていないとのこと。
●体の障害(口唇裂)があってイスラエル軍に入隊できなかった。これは当時(60年代)のイスラエルではけっこう屈辱的な体験だったとのこと。その恨みがあって、「軍人よりも俺のほうが軍のこと知ってるぜ!」と証明したくて軍事史家になったようなもんだ、と述べていた。
●自分の子どもたちも同じような障害があったが、彼らは従軍している。今はイスラエル軍の基準も緩和されているからとのこと。
●手元にはすでに完成した原稿が三冊分あるそうで、ひとつは『戦争論』に関するもの。タイトルはMore On War。直訳すると「もっと戦争論」、もしくは「戦争論余論」。これはイエール大学出版から出したいらしが未定。
●あとの二冊は「良心」の歴史についてと、「平等」の歴史についての本。「良心」のほうは年末までに出るらしいが、とにかくもう軍事史については書くのはこれで終わりにしたいと考えているとのこと。
●戦争にはやはり普遍的なロジックがある。それをうまく論じているのは孫子とクラウゼヴィッツだけで、この二人以外には思想的な巨人はいないという。私も「ジョミニは?ボーフルは?」と次々に聞いてみたが、「全然」と釣れない返事(笑
●クラウゼヴィッツと孫子を比べると、孫子のほうが「対等な敵」を想定している点でよりゲーム的であり、戦略面での創造性には欠けると指摘していたのは印象的だった。
●クレフェルトは『ルトワックの戦略論』の原書の初版(1987年)が出る前に、出版社に請われて、アメリカのルトワックの自宅まで行き、細かく本の内容をアドバイスしたらしい。
●ここでインスピレーションを受けたのが「戦略はゲームである」というアイディアで、そのアイディアを具現化したのが数年前のウォーゲーミングについての本。構想30年とか。
●自分が今まで書いた本の中で自分を有名にした本は『戦争の変遷』だが、個人的に一番その完成度を気に入っているのは「戦争文化論」。
●今68歳。体調を崩し気味で、昨年には軽度の心臓の手術をしたし、最近はウィルス性の病気で10日間も入院した。
●第一次世界大戦前のドイツの状況は、現在の中国とそっくりだということ。とくに海の地理が似ていて、いくら巨大な艦隊を造っていても、外洋に出るのに苦労しているところはそのまま適用できるという。
●教えることは好きだが、もう大学の教員にはなりたくないという。授業でやや過激な(しかし学問的に真実なこと)を言うと、最近は学生が教師を告発したりしてすぐ問題にされてしまう。2008年にエルサレム大学を退職できて本当に清々したとのこと。
●現在は次に書く本を考えていない。もう書き尽くしたから当分は書きたくない。自分のウェブサイトにはたまにコラムを書くくらいになっている。
●数年前に日本のある企業に呼ばれて講演会でしゃべったが、あの時は相手が何を求めているかをわからなかったので自分のコメントが浮いていることがよくわかった。安全保障というテーマだったのに、自分が語ったのは「生きるか死ぬか」。
●クラウゼヴィッツは素晴らしいと思う。とくに戦争の本質についての議論はすごい。ただしロジスティックについて論述している箇所はまったくわかっていないと思う。「戦争論」自体もバラバラで酷い本だ。
●クリストファー・バスフォードらが私の『戦争の変遷』の中の「非三位一体戦争」の概念について批判しているが、彼らの指摘は正しいと思う。政府、軍隊、国民の三位一体は二次的なもので、やはり悟性、偶然、情動という三位一体のほうが一次的なものだ
●それでも私が言いたかったのは「クラウゼヴィッツはその時代の戦争観に縛られすぎている」ということ。シーパワーなどについてほとんど言及なし。小規模戦争について述べているのもたった一章だけだ。
●使える言語は4つ。オランダ語、ドイツ語、ヘブライ語、英語。
●日本では「補給戦」がポピュラーだと告げると、あんな昔に書いた本についてはそんなに興味がないと言っていた。日本では原著の第2版が翻訳されていないと言うと、「ああそうなのかい」という程度で、あまり関心のない様子。あまりにも多くの言語に翻訳されているので、どれがどれなのかすべて把握できていないからだとか。
●アメリカの対外政策について批判的に書いた本があるのだが、ロシア語でしか出ていない。向こうでは非常にポピュラーだが英語では出ていないから、君だけでなく、僕も読めないんだよと言っていた。
●『補給戦』や『エアパワーの時代』でもわかる通り、自分は既存の軍事史の見方に挑戦するのが好きだと言っていた。というか、むしろそれが自分の「宿命」なんだと笑っていた。
●核戦略についてはフリードマンの本ですべてが書かれてしまっているので、他の人たちは何も書けなくなっちゃったね、と言っていた。
●尊敬する戦史家としてはマイケル・ハワードを挙げていた。とくに彼のデビュー作である普仏戦争に関する本は「すごい本だよ」と絶賛。
●また日本に来るかと尋ねたら、「呼んでくれたらいつでも来るぜ」とのこと。ただし、しゃべるテーマは指図されたくないのでこちらに決めさせてくれと言っていた。その前の講演では2つのテーマを混ぜてくれと言われたので困った。2つは全く違うテーマだからだ。
●若手で優秀な研究者はピーター・シンガーだ。彼の優れた点は「多くの人に話を聞ける」という点だ。決して「単なるジャーナリスト的な人物」じゃない。いい仕事をしている。本や論文よりも、直接聞ける話のほうが重要だ。
===
などなどです。他にも思い出したらあとで加えておきます。


http://ch.nicovideo.jp/strategy

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by masa_the_man
| 2014-07-03 15:01
| 日記

